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「DXを進めるためにデザイン思考をどう活用すべきか知りたい」と思っている方は多いのではないでしょうか?
DXの推進になぜデザインが必要なのかを理解できれば、
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といったメリットがあります。
そこで今回は、DXの推進にデザインが必要な理由を解説します。
また、DXの推進にデザインが必要な理由だけでなく、DXの推進にデザインをどう活用するかや、DX推進にデザインを活用した成功事例も解説します。
目次
DXとは
DXとはテクノロジーを活用して業務プロセス、プロダクト・サービスや事業・経営を変革することです。
つまり、デジタル化を「手段」として、製品・サービス・ビジネスモデルの変革を進めることを意味します。
▼DXについて詳しく知りたい方はこちら
デザイン思考とは
デザイン思考とは、ユーザーが何を求めているのか理解し、そのニーズを満たすために必要なテクノロジーやビジネス、アイデアの間を行き来し常に思考することです。
そして、ただ思考するだけで終わらず、それをサービスなどの形でアウトプットすることを指します。
ここで注意すべきは、デザイン思考はデザイナーやクリエイターだけのものではないことです。
「デザイン」と聞くとどうしてもクリエイティブ職に必要なものとイメージしてしまいますが、今や営業やコンサルタント・事業開発などすべてのビジネスパーソンが備えておくべき考え方となっています。
DXの推進にデザイン思考が必要な理由
DXの推進には、サービスやシステムを利用するユーザー(自社の社員も含める)に寄り添い設計することが大切であるため、デザイン思考が必要です。
なぜなら、せっかくサービスやシステムを作ったとしても、ユーザーに使ってもらえなければ意味がないからです。
つまり、デザイン思考を取り入れることで、DXの失敗防止につながります。
よくあるDXの失敗例に、高度なデータ分析ツールを導入したけれど従業員のデジタル技術へのリテラシーが低いために、結局使われないまま放置されてしまうことが挙げられます。
このような失敗を起こさないために、ユーザーが求めているものを適切に理解し、サービス・システム設計に反映する「デザイン思考」が必要です。
▶DXの失敗パターンから学ぶ!DXを成功させるポイント3つを紹介!>>
デザイン思考の5ステップ
デザイン思考に必要なのは以下の5ステップです。
それぞれ解説していきます。
1.共感
ユーザーの気持ちに徹底的に共感するために、インタビューやアンケート、観察などを実施します。このステップの目的は、ユーザーが自分では認識していない課題やニーズを知ることです。
2.課題の定義
生活者に充分に共感できたら、生活者の課題を明確にするために課題を定義します。
デザイン思考における課題定義とは、例えば「忙しい母親が時短できる料理道具を作るには?」のような技術中心ではなく、「忙しい母親が家族に健康的な食事を作るには?」というように、人間中心の考え方が基本です。
3.アイデアの発想
「アイデアの発想」とは、新しい価値を発想し生み出すことです。このステップの目的は、正しい答えを出すことではなく、課題解決の可能性を最大限に広げることです。
これにより、創造的かつ革新的なアイデアを生み出せます。
4.プロトタイプ(原型・試作品)
先の3ステップで考えたものを「手を動かして」形にします。デザイン思考におけるプロトタイプとは、完璧なものを作って課題点を見つけることではなく、まずは簡易的に作り、アイデアの改善点を見つけることです。
このステップで頭で考えていたアイデアを形にし、新たな気付きを得られます。
5.検証
最後は、自分が考えついたアイデアやプロトタイプをユーザーに試してもらい、どんな反応があるのか、またどう改善すべきかを検証します。
検証は、自分のアイデアの解決策や問題点を見つけるためだけでなく、ユーザーに対する理解をより深めることも目的です。
DXの推進にデザインをどう活用するか
未来IT図解 これからのDX デジタルトランスフォーメーションによると、DXは「DXの環境整備」と「DXの実践」の2つに分けられます。
ここからは、DXの推進にデザインをどう活用するのかを、「DXの環境整備」と「DXの実践」の2つに分けて紹介します。
DXの環境整備に必要なデザイン
ビジョンの形成
社内のDXに対する意識を高めるためには、「DXで何を実現したいのか」という共通のビジョンを持つことが重要です。
また、社長などの一部の人がビジョンを決めるのではなく、従業員一人ひとりが議論することで納得感のあるビジョンを策定でき、DXをスムーズに進められます。
そこで、ワークショップを開催し、従業員のリアルな意見をイラストなどでアウトプット・共有することでビジョンの形成を手助けできます。
マインドセットの構築
DXガイドラインでは、マインドセットとして仮説検証を繰り返すことが推奨されていますが、これはまさにデザイン思考です。
デザイン思考:仮説検証を繰り返し、サービスやシステムを利用するユーザー(自社の社員も含める)に寄り添って設計すること |
変化の激しいデジタル社会では、ユーザーの好みの移り変わりが早いため、仮説検証のサイクルを高速で回すことによって素早く事業を創出できます。
システムの要件定義
サービスやシステムを利用するユーザー(自社の社員も含む)のニーズを把握し、どのようなデジタル技術やITシステムが必要かを考える際、デザイン思考が役立ちます。
よくITシステムを導入する際、「技術的なことは分からないからITベンダーに丸投げしよう」とする方がいます。
しかし、自社の顧客ニーズをもっとも把握しているのは外部のベンダーではなく自社です。
そのため、開発の丸投げによりユーザーにとって使い勝手が悪いサービスが開発され、利用が進まないという失敗が起きます。
このような失敗を防ぐために、ユーザーが何を求めているのかを把握し、それをシステム設計に反映する「デザイン思考」が大切です。
そこで具体的にすべきことは、デザイナーが要件定義から関わり、ITベンダーに対して自社が何を実現したいのか、現場が何を求めているのかを明確にして伝えることです。
DXの実践に必要なデザイン
データの活用
顧客の購買情報などのデータの「集計」で終わらせず、データの「統計」を通じて新たな施策を打つ際に「デザイン思考」が必要です。
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つまり、
データの集計→顧客の状況(ニーズ)把握→機能 |
などの改善のサイクルを繰り返すことにより、利用者の増加につながります。
これはまさに、デザイン思考(ユーザーが何を求めているのか理解し、そのニーズを満たすためにサービスなどの形としてアウトプットすること)を活用しているといえます。
DX推進にデザイン思考を活用したAirbnbの成功事例
Airbnbは、サンフランシスコに本社を置く民泊シェアリングサービス企業です。
手続きはすべてWEB上でできる手軽さと、ホテルや旅館と比べて手ごろな価格、また現地の生活者の暮らしに近い宿泊体験の提供により、世界192カ国の33,000の都市で宿を提供するまでの民泊最大手企業として成長しました。
ちなみに、Airbnbの創業者3人のうち2人はアメリカ最高の美大とされるロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(Rhode Island School of Design, 通称RISD)を卒業した生粋のデザイナーです。
創業当初の状況
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デザイン思考の活用
Airbnbの創業メンバー達はほとんどお金がないにもかかわらず、初期にターゲットとしていたニューヨークのユーザーに直接会いにいくために計4回もNYに行き、インタビューを重ねました。
この事実から、Airbnbは実際に顧客に会い、ユーザーが抱える課題を明確にし、解決策を見つけ出すことを大切にしていることがわかります。
また、新入社員は全員入社1週目にAirbnbを利用して旅行し、サービスを実際に体験してもらう文化もつくりました。そして帰ってきたらフィードバックを貰い、それをもとに機能などの改善を繰り返したのです。
新入社員の意見により機能改善した実例
Airbnbの機能の1つに、泊りたい物件があったとき、ユーザーが星のマークをクリックする機能がありますが、新入社員の意見によりハートマークに変更したところユーザーのエンゲージメントが30%も増加したのです。
現在は、最終的な意思決定はデータに基づき行っているAirbnbですが、データに振り回されず「ユーザーが何を求めているのか」を追求し続けた結果、世界的な企業に成長したのです。
▶DXの成功事例はこちらの記事で30個まとめて詳しく解説しています>>
失敗しないためのDX推進3ステップ
失敗しないためのDX推進には、以下の3ステップが重要です。
それぞれ解説していきます。
ステップ1:目指す姿を明確にする
ステップ1では、理想の自社の姿を明らかにしましょう。
なぜなら、自社の目指すべき方向を明確にし、社内で共有することで、DXに向けて従業員が同じ方向を目指せるためです。
その結果、DXが途中で頓挫してしまった…というよくある失敗を未然に防げます。
ステップ2:現状を分析し、自社の強みを探す
ステップ2で重要なのは、自社の現状を分析し、強みを探すことです。
なぜなら、DXではデジタル技術とデータで自社の強みを拡大することが重要だからです。
具体的には、ビジネスモデル、製品やサービス、業務、組織、プロセス、企業風土などの項目で自社の現状を分析しましょう。
ステップ3:目指す姿と現状のギャップを埋める戦略を立てる
ステップ3で重要なのは、DXをデジタイゼーション・デジタライゼーションに分類して考えることです。
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目指す姿と現状を明確にした上で、どのような流れでアナログなデータをデジタル化し、そこにどのような技術をかけ合わせていくのか検討することが、DX戦略の軸です。
▶DX推進の3ステップについては、こちらの記事でも詳しく解説しています>>
DX推進に必要な3つのマインドセット
DX推進に必要なマインドは以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
1.挑戦
DXを推進する上でもっとも重要なマインドは「挑戦」です。
なぜなら、DXは成功するまでに長い時間(3~5年程度)がかかり、かつ成功するまで数多くの失敗を乗り越える必要があるからです。
そのため、困難な課題に直面しても「現状を変えたい」という強い意志をもち、挑戦し続けることがDXを推進する人材にもっとも重要なマインドといえます。
2.課題発見力
DXを推進するためには、まず解決すべき課題を洗い出し、仮説を立て、それをデジタル技術で解決することが重要です。
なぜなら、現状の課題を発見できなければ、DXの目的である「製品・サービス・ビジネスモデルの変革」は実現できないどころか、以前と何も変わらない状態に陥るためです。
そのため、DX人材にはこれまでの知識や経験にこだわらず、「何が顧客にとってベストか」を考え抜き、現状の課題を発見していく姿勢が必要だといえます。
3.巻き込み力
DXの推進では、相手の意見を聞き、周囲を巻き込む「巻き込み力」も大切です。
なぜなら、DXの目的は「製品・サービス・ビジネスモデルの変革」であり、これは一部署ではなく全社で協力しなければ実現できないためです。
特に新規事業を立ち上げる際は、他部署から新たに人材を集める必要があるため、「巻き込み力」が重要になります。
▶DXを推進する人材に必要なスキルやマインドセットについて詳しく知りたい方はこちら>>
【初心者必見】DXとデザインについてのおすすめ書籍
デザイン思考と組織文化の変革で実現するDX
DXの実現に必要な人間中心の「デザイン思考」と「組織文化の変革」について理解を深められます。
それにより、「DXはAIやIoTなどの技術改革がメイン」という誤解を解消し、DXの本質を正しく認識できる書籍です。
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DX時代のサービスデザイン 「意味」の力で新たなビジネスを作り出す
「サービスデザイン」を経営やマーケティングに導入できていない企業や行政担当者、起業意欲のある学生に向けて執筆された、初学者用の書籍です。
※サービスデザイン:サービスを利用するユーザーの体験と感情の価値を最大化するように、提供側の活動をデザインすること
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まとめ
今回はDXの推進にデザインが必要な理由や、DXの推進にデザインをどう活用するかなどを解説しました。
DX推進の基本となる「デザイン思考」の考え方をインプットしたあとは、本記事でも紹介したDX推進の3ステップに沿ってアクションしましょう。
▶DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントはこちらで詳しく解説しています>>
◇AINOWインターン生
◇Twitterでも発信しています。
◇AINOWでインターンをしながら、自分のブログも書いてライティングの勉強をしています。