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2021.11.09

DXに必要な4つのテクノロジーと選び方を解説|成功事例やあるあるな失敗も

最終更新日:

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「DXを推進したいけれど、AIやIoTなどテクノロジーの種類がさまざまで、どれを選ぶべきかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか?

本記事を読めば、自社に適したテクノロジーがわかり、効率的にDXを進められるというメリットがあります。

そこで、今回はDXに必要なテクノロジー4つとその用途、各テクノロジーを活用した事例もあわせて紹介します。さらに、DXのありがちな失敗パターンや成功させるポイントなど、より実務に役立つ情報も紹介します。

DXとは?

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンにより提唱された概念で、「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」ことを指します。

▼DXについて詳しく知りたい方はこちら

ビジネスにおけるDXの定義

先ほどDXの意味を解説しましたが、ここではビジネスにおけるDXの定義を紹介します。それは、AIやIoTなどのテクノロジーを活用し、業務プロセスやサービス・経営を変革することです。

つまり、テクノロジーの活用による

  • 今までになかった製品・サービス・ビジネスモデルの創出
  • 業務プロセスを再構築し、生産性アップ・コスト削減・時間短縮を実現

などがビジネスにおけるDXの定義です。

ポイントは、テクノロジーの活用はあくまで「手段」であり、目的は「製品・サービス・ビジネスモデルの変革」であることです。

▶DXの基礎知識についてはこちらの記事で詳しく解説しています≫

テクノロジーとは?

DXの定義の解説で何度か「テクノロジー」という言葉が出てきましたが、ここではその意味を解説します。「テクノロジー」は、一言でいうと「科学技術」です。

  • 科学:理科的な知識のこと
  • 技術:科学を生かして、人間の生活に役立たせる方法のこと

つまり、テクノロジー(科学技術)とは、理科的な知識を使って生活を役立たせる方法を指します。

具体例は「DXに必要なテクノロジー4つ」で紹介しますが、私たちの生活でもっとも身近なテクノロジーにスマートフォンがあります。スマートフォンの内部は電気回路が含まれており、理科の知識によって設計されているといえますし、その結果私たちはネット接続・電話回線・GPSなど多くの便利な機能を利用できているためです。

DXに必要なテクノロジー4つ

「DXを実現するためにはどのテクノロジーを使うべきかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか?

ここでは、DXに必要なテクノロジーの中でも代表的なものを4つ紹介し、それぞれの用途・各テクノロジーによりDXを実現した事例も解説します。

  1. AI
  2. IoT
  3. ビッグデータ
  4. RPA

①AI

「AI」とは、「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称です。

AIは人間の行動の一部をソフトウェアにより再現できるため、若者人口の減少による働き手不足の解消につながると数年前から注目されています。

  • 用途

1.業務の効率化

AIは、企業・医療・教育における単純作業を人間の代わりに実行します。企業であれば、ルーティン作業をAIに任せることで、業務の効率化を図れます。

医療においては、CT・MRI画像などからAIが病状を診断することで、診断時間を約80%削減できます。AIは人間の脳では記憶しきれない量のデータを持っているため、さまざまな病気について学習し、診断できるのです。

教育においては、テスト採点の自動化・生徒に合った学習の最適化などにAIが役立っています。

2.データの分析・予測

AIは膨大な量のデータを集めて分析・予測することに長けています。そのため、膨大な量のデータを分析する必要がある企業経営・デジタルマーケティングなどに役立ちます。

  • AIによりDXを実現した事例

1.【業務効率化】メルカリのAI出品

メルカリのAI出品は、AIの活用によりユーザーの業務を削減し、UX(ユーザー体験)を向上させた事例です。フリマアプリでおなじみのメルカリでは、商品の撮影時に出品者が商品情報を入力する手間を省き、AIが自動で商品名・カテゴリ・ブランドなどを予測・記入してくれます。

今までは出品する商品の情報を調べ、詳しく記入する必要があったことを考えると画期的です。AIの活用により、ユーザーはより手軽に出品できるようになったため、現在も多くのユーザーに利用され続けています。

2.【データの分析・予測】Netflixの視聴傾向の分析

大手動画配信サービスNetflixは、AIの役割の一つである「膨大なデータの分析・予測」を活用し、ユーザーのサービス体験向上を実現しています。

具体的には、キャストと視聴率の関係、ストーリー性と離脱率の関係、どのジャンルが多く視聴されているかなど膨大なデータをAIに学習させ、より多くのユーザーが満足するコンテンツの制作に役立てています。

▶AIの定義やメリットはこちらの記事で詳しく解説しています≫

▶AIの活用事例はこちらの記事で詳しく解説しています≫

②IoT

IoT」は、「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット化」を指します。例えば、エアコンの遠隔操作、話しかけるだけで楽曲が再生されるスマートスピーカーが挙げられます。

  • 用途

1.モノを操作する

IoTの代表的な機能が、離れた場所にあるモノを遠隔操作する機能です。例えば、工場内の装置の状況を把握し、エアコンの温度が適切でなければ自動で調節するなどが挙げられます。

2.モノや人の状態を知る

例えば、ウェアラブルのIoTデバイスを装着することで、人の健康状態(心拍数や呼吸・血圧・睡眠時間・姿勢など)をデータに残し、観察するなどが挙げられます。また、サービスの利用頻度や利用時間などユーザーの情報を手に入れられるため、商品の改善や開発にもつながります。

  • IoTによりDXを実現した事例

1.【モノの操作】Amazon

大手通販サイトAmazonの倉庫は、インターネットからの注文に応じて、担当作業員の位置まで棚が自動で移動するシステムが導入されています。このシステムにより、大量の注文を効率よくさばけるため、Amazonの強みである「素早い商品配達」を支えています。

2.【モノや人の状態を知る】Uber

タクシー配車サービスの先がけ的存在として有名なUberは、IoTを活用してユーザー体験の向上を実現しています。

具体的には、スマートフォンのGPS(位置情報)をもとに自分のいる場所にタクシーが来る仕組みを構築しました。これにより、利用者は駅前などのタクシーが止まっている場所に移動する必要がなくなり、ユーザーの利便性アップを実現しました。

▶︎DXとIoTの違いについては詳しくはこちらの記事で紹介しています≫

③ビッグデータ

ビッグデータ」とは、一般的なデータ管理・処理ソフトウエアで扱うことが難しい、巨大で複雑なデータです。

  • 用途

1.需要予測

顧客データ・販売データ・SNSへの書き込みデータなどから消費傾向を分析し、今後の需要を予測できるため、新商品の開発に役立てられます。

2.商品・サービスの品質向上

設備や製品にセンサーなどを取り付けて利用状況を収集し、故障や部品の交換時期などを予測します。それにより、きめ細やかな保守とメンテナンスの実現につながり、商品満足度をアップできます。

  • ビッグデータによりDXを実現した事例

1.【需要予測】食べチョク

株式会社ビビッドガーデンが運営する「食べチョク」は、ビッグデータを活用し、事前に収入を予測する体制の構築を目指しています。なぜなら、農業事業者にとって、収入予測がしづらいことが大きな負担であるためです。

具体的には、「食べチョク」で高評価の農家に株式会社Momoが提供する農業向けIoTキット「Agri Palette」を導入し、畑から土壌・空気・日照量のデータを取得します。そして、食べチョクの評価と上記の栽培データの統合により、事前に顧客からの評価を想定できるシステムの構築を目指しています。

これが実現すれば、数年後には農業事業者が収穫前に収入の予測をつけられる社会になっているかもしれません。

2.【商品・サービスの品質向上】ダイドードリンコ

日本の清涼飲料メーカー「ダイドードリンコ」は、ビッグデータの活用により売り上げ1.2%アップを実現しています。

具体的には、以前はZの法則に従い、主力シリーズ「ブレンドシリーズ」を自動販売機の左上に配置していました。しかし、自動販売機にアイトラッキングを取り付けて調査すると、自動販売機に限っては下段に視線が集まることがわかりました。

  • アイトラッキング:視点の場所や、頭部に対する眼球の動きを計測し、追跡する方法

その後、下段に主力製品を配置した結果、売り上げが前年比1.2%アップとなりました。

▶︎ビッグデータとは?|詳しくはこちらの記事で紹介しています>>

④RPA

RPA」とは、「Robotic Process Automation」の略称で、人の代わりにデジタルロボットがPC上の動作を代行することです。

例えば、請求書データの入力自動化や、顧客データ収集の自動化などが挙げられます。RPAにより、作業時間の短縮・ヒューマンエラーの削減などの生産性アップが期待できます。

AIと混同している方も多いかと思いますが、

  • AI:「人工知能」の名の通り、AIは人間の「頭脳」を代替する存在。人間の代わりに、RPAなど他のツールに指示を出すこともできる。
  • RPA:人間が今まで行っていた「手作業」を代替するツール。AIのように能動的に判断することはなく、記憶した業務内容を自動的に繰り返すのみ。

といった明確な違いがあります。

  • 用途

業務の効率化

RPAは定型的な作業の自動化が得意なため、業務の効率化を実現できます。定型的な作業の例として、電話やメール対応などのサポート業務・データの収集・分析業務などがあります。

  • RPAによりDXを実現した事例

【業務の効率化】ドン・キホーテ

株式会社ドン・キホーテは、大手ディスカウントストアでおなじみの「ドン・キホーテ」にRPAツールを導入し、約170の業務を自動化しました。

自動化した業務の例としては、キャッシュレス決済の決済情報とレジデータの照合です。中国人旅行客のAlipayやWeChat Payの情報は、手動でレジデータと照合していたのをRPAにより自動化し、1日数時間発生していた業務をすべて削減しました。

また、ドン・キホーテの各店舗向けの分析レポート配信も自動化し、社内システムから売り上げ関連データなどを抽出することで、事業戦略に必要なレポート作成も効率化しています。

▶︎RPAとは?|詳しくはこちらの記事で紹介しています>>

【DX推進】テクノロジーを選ぶポイント

DXのビジョンの明確化

まずは「DXで何を実現したいか」を明確にし、各テクノロジーの特性を把握した上でビジョンに適したものを選ぶことが大切です。もし「今はAIが流行しているから」といった理由で選べば、自社の「DXで成し遂げたいこと」とテクノロジーの特性の不一致が起きる可能性があるためです。

例えば、業務効率化を図りたいならRPA・AI、膨大な顧客データを分析して新商品の開発に役立てたいならAI・ビッグデータの活用を選びます。

テクノロジー先行で考えるのではなく、「DXで自社サービスをどう変えたいか」などのビジョンの明確化から始めることをおすすめします。

DX推進でありがちな失敗パターン3つ

DX推進において起こりうる失敗は以下の3つです。

  1. 間違った組織変革
  2. 持続的な取り組みではない
  3. 一時的な成果重視のプロジェクト

それぞれ解説します。

失敗①間違った組織変革

DXを進める際、テクノロジーに詳しい人々を集めるだけでは上手くいきません。

ビジネスモデル・経営戦略を全社的な目線で考え、プロジェクトを進められる/外部に委託する際適切な人材を見分けられる、といった能力を持つ人材の活用が重要です。

失敗②持続的な取り組みではない

現代のデジタル社会は変化が激しく、求められる取り組みは常に変化します。例えば、コロナウイルスの感染拡大により対面接客のニーズが減り、オンラインでの接客や購買のニーズが高まったことは近年の代表的な変化です。

人々の生活の質を向上させ便利にするためには、変化にすばやく適応しつつ、価値を与え続けられる組織・人材を創造し続けなければいけません。

▶DX人材の育成方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています≫

失敗③一時的な成果重視のプロジェクト

DXでは、今までの会社の方針・考えにとらわれずに、ビジネスモデルの変革・デジタル技術の活用を進める必要があります。もし一時的な成果を求めて既存の考えの枠から出ずにDXを進めると、他社サービスとの差別化が難しくなるほか、ユーザー体験の向上があまり期待できないことになりかねません。

そのため、一時的な成果の実現にDXを活用するのではなく、「ユーザーの満足度向上のための戦略を考案→実現するためにDXを用いる」という思考の転換が重要です。

▶︎DXの成功例・失敗例について詳しくはこちらで紹介しています≫

DXを成功させる4つのポイント

DXを進めるうえで重要なポイントは以下の4つです。

  1. 戦略的な目的策定
  2. DX人材の育成
  3. 部門間の連携・全社への拡大
  4. ユーザー(消費者)視点を忘れない

それぞれ解説します。

①戦略的な目的策定

DXを推進するためには、戦略的な目的策定が必要不可欠です。

なぜなら、目的もなくテクノロジーを導入してDXを進めると、導入したもののユーザー(自社の社員も含む)の課題解決につながらなかったという事態が起こりうるためです。

そのため、なんとなくテクノロジーを導入するのではなく、「現状の問題をデジタル技術によりどう解決し、人々のニーズを満たすか」と逆算的に考えましょう。

▶DX戦略|ビジネスを成功に導くDX推進法・ロードマップについてはこちらの記事で詳しく解説しています>>

②DX人材の育成

DXの推進には多くのエンジニア・マネジメント人材が必要であるため、DXを先頭で進める人材が欠かせません。

しかし、現在DX人材は不足しており、外部からDX人材を確保することは困難です。そのため、自治体や企業では職員のDXに関する知識を深めるといった、DX人材の育成が必要となるでしょう。

▶DX人材の育成方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています≫

③部門間の連携・全社への拡大

DXの導入が一部の部門だけで終わってしまい、会社全体としてDXが実現できていないケースが散見されます。

一方、DXの導入による企業の変革には多くの時間と労力がかかることも事実です。そこで、まずは自社の状況を把握し、小規模な施策から取り組みましょう。例えば、既存の業務で無駄なものをAIツールやRPAツールに代替させるといったものです。

ポイントは、最初は小規模スタートで構いませんが、徐々に規模を拡大することです。部門間での連携など横断的な体制を構築し、全社でDXの実現を目指しましょう。

④ユーザー(消費者)視点を忘れない

DXを進める際、いつのまにかユーザー視点が欠けて「利益」重視になり、サービスをあまり利用してもらえなかったという失敗はよく起こります。

そのため、「DXがエンドユーザー(商品・サービスを最終的に利用する人)にとって本当にプラスになるのか」を常に考えつつ、進めることが大切です。

【初心者必読】DXのおすすめ書籍

ここからは、DX初心者におすすめの書籍として、「いちばんやさしいDXの教本 人気講師が教えるビジネスを変革する攻めのIT戦略」「デジタル技術で、新たな価値を生み出す DX人材の教科書」の2冊を紹介します。

DXおすすめ書籍①いちばんやさしいDXの教本 人気講師が教えるビジネスを変革する攻めのIT戦略

DXに必要な知識と実行ステップについて、現場目線で丁寧に解説されています。

また、DXを小さく推進し、徐々にビジネスプロセスやビジネスモデルの変革を目指せるように、豊富な図を用いて解説されている点もポイントです。

DXの推進担当者から最先端の技術に興味がある人までを対象としたDX人材の入門書です。

DXおすすめ書籍②デジタル技術で、新たな価値を生み出す DX人材の教科書

日本の大手企業3000社以上にヒアリングを重ね、500社近くにDX人材育成サービスを提供する株式会社Standardの2人が、DX人材をテーマに解説した書籍です。

45個の業界別のDX事例も掲載されており、より具体的にDX人材について学べます。

まとめ

今回は、DXに必要なテクノロジー4つを中心に紹介しました。
自社に適したテクノロジーを選んだ後は、こちらの記事を参考にDXを本格的に推進していきましょう!

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