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2021.11.18

『Support DX Summit 2021』で9社が次世代のカスタマーサポートを牽引する取り組みを発表

2021年9月30日に一般社団法人サポートデジタル協会(Support DX Initiative、以下SDI)が、革新的なカスタマーサポート体験を提供する企業や活動を表彰するオンラインイベント『Support DX Summit 2021』を初開催しました。今回は、イベントの発表内容や審査員からの総評について紹介します。

▼『Support DX Summit 2021』について詳しく知りたい方はこちら

カスタマーサポート業界のDXを先導する各社の取り組み

Wix.com Ltd.

Wixは、脱ベンダー企業の潮流が進む中で注目されているノーコード・ローコードツールを開発した第一人者として知られています。

Wixのサービスは、世界190カ国で約2億人のユーザーに利用されています。Wixは、それだけ多くのユーザーを週7日間24時間体制でカスタマーケアを提供しています。従来までのような電話対応の他、さらに一歩踏み込んだサービスに取り組んでいます。

日本では、約1分でユーザーに折り返す仕組みを整備し、機械と人間のバランスを取りながら、ユーザーが自己解決できるような仕組みをとっています。世界の数カ所に拠点を置いていて、常にどこかの国で日本のユーザーからの問い合わせに日本語で対応できる体制を取っています。

また、Wixは「スマートルーティング」という仕組みで、ユーザーのたらい回しを防ぎ、課題に適したエキスパートが対応しています。さらに、感情分析を導入していて、AIが表現を分析し、構造化データとして分析し、ユーザーの満足度向上に努めています。

株式会社SBI証券

SBI証券は、個々の施策では想定の範囲内のことしかできないが、複数の施策を組み合わせることで大きなDXの取り組みが可能になるとしています。

そのようなSBI証券では、チャットボットとWeb接客ツールを組み合わせて、カスタマーサポートに取り組んでいます。

従来は解決までに工数がかかるため利用率が高まらず、満足率も伸び悩んでいましたが、この取り組みによって課題や疑問を持ってサイトに訪れたユーザーがワンクリックで解決できるようになります。

また、ユーザーのサイトの滞在時間にあわせてチャットボットが出現し、画面遷移なしで解決まで導きます。

この取り組みでは、個人情報をマスキングした上でユーザーの操作画面を録画し、ユーザーがどこのフェースで困っているかを明確にし、さらなる改善の施策に向けて活用を進めています。

株式会社セブン銀行

セブン銀行は、カードレスで入出金できる「Myセブン銀行」アプリについて紹介しました。同アプリは、銀行らしさではなく、コンビニらしい口座を目指し開発されました。

通常、銀行口座を開設するまでに多数の項目に入力するため、工数がかかります。しかし、「Myセブン銀行」はRPAを導入し事務仕事を効率化しているため、申込みから最短10分で口座を開設できます。また、スマホでも入出金できるため、カードレスで取引が可能です。

ユーザーの使いやすさを追求し、「シンプルで 親しみやすく わかりやすい」をモットーに、UI/UXを設計しています。セブン銀行は、アプリは一度開発して終わりではなく、セキュリティと信頼性を加味しながら、開発を進めるとしています。

ヤマト運輸株式会社

ヤマトは、「送る」「受け取る」を便利にするサービスを目指し、ヤマト運輸のLINE公式アカウントなど、ユーザーとのデジタル接点を増やしています。

クロネコメンバーズには、5000万人以上のユーザーに利用されています。デジタル接点だけではなく、アナログでの接点と両立するなど、ユーザーの目的に応じて各チャネルで提供するサービスを整理しています。Webやアプリでは、荷物の受け取り日時や受け取り場所の変更など、各種手続きやお問い合わせをスムーズで簡単に行うことができます。

ヤマトは、ユーザーにとって身近なチャネルでサービスを展開したいと考え、LINEでのサービス提供を始めました。セールスドライバーやコールセンターでの会話を研究し、会話フローを洗い出し、利用しやすいようにしました。また、ユーザーの生活に溶け込む体験づくりを重要視し、定期的にオリジナルスタンプを配布するなどしています。

ヤマトは、今後もデータを活用してユーザーの行動を分析し、より良い体験を目指していくとしています。

株式会社三越伊勢丹

三越伊勢丹は、デジタル化により、次の2つの取り組みを進めています。

  • 顧客とデジタルを組み合わせた「最高の顧客体験」の提供
  • グループの強みをデジタルに展開し「新しい顧客体験」の提供

三越伊勢丹は、コロナ禍で店舗が休業になりました。その中でできることを考え、昨年の緊急事態宣言明け後すぐにLINEとzoomを連携し、ビデオ接客を実施しました。そして、三越伊勢丹リモートショッピングアプリ(MIRS)の開発に至りました。

同アプリにより、店舗のすべての商品をどこからでもオンライン上で購入できます。チャットでの接客やビデオ上での接客、決済など購入までの工程を1つのアプリで完結します。

三越伊勢丹は、アプリ開発を通じてオンライン上でいつでもどこでも接客を可能にし、個々人にあわせたリテンションビジネスの構築を目指していくとしています。

三井ダイレクト損害保険株式会社

三井ダイレクト損害保険は、次の3つを目指し、サポートDXに取り組んでいます。

  • 既存ビジネスを改革し、業務効率化・合理化を実現する
  • データ・デジタル技術の活用により、新たなビジネスモデルを創造する
  • ノウハウを国内外で相互展開、グローバルにDXを推進する

そのような三井ダイレクト損害保険は、2018年よりお客さまセンターにチャットサービスを導入し、手続きに関するお問い合わせやサポート、補償内容に関して案内しています。

チャットサービスを運用するにあたり、3つのハードルがありました。

1つ目は、ノンボイス特有のコミュニケーションになることです。ノンボイスでは、ユーザーの言い間違えがあった際に正しく認識できない可能性があります。ユーザーが使うキーワードを人が正しく把握する必要があるのです。

2つ目は、有人チャット運用の確立することです。AIとオペレーターの掛け合わせで対応することで、デジタルCX(Customer Experience)へのシフトを目指しています。

3つ目は、ユーザーへの浸透です。有人対応でユーザーにヒアリングしたことにより、チャットボットの存在がわからない人が大勢いることが判明しましたが、使い方を案内することで次回から多くのユーザーに利用されるようになりました。

三井ダイレクト損害保険は、お客さまセンター部と損害サポート部とマーケティング部が部門横断でデータを共有することにより、イノベーションを起こすことも可能にしました。

現在(2021年10月時点)では、月に1万件以上ものお問い合わせをチャットボットが対応しています。今後もデータを活用し、VoC(顧客の声)の分析を深化させ、ユーザーにとっての「やさしい」を追求するとしています。

株式会社ベネッセコーポレーション

ベネッセは、「心のオムニチャネル化」を目指し、こどもちゃれんじと進研ゼミでDXの取り組みを進めています。

近年、商品をデジタルシフトしているため、保護者からのお問い合わせも通信環境やデジタルデバイスに関する内容に変化しています。ベネッセは、顧客サポートも変化する必要があると考え、2つの方針で顧客サポートのDXを始めました。

1つ目は、デジタル接点により利便性の向上です。ユーザー自身で課題を解決するサポートを展開しています。アプリとチャットを連携し、チャットボットがお問い合わせを受け付け、解決まで誘導します。それにより、人にしかできないタスクに人員を割いています。

2つ目は、電話での顧客サポートです。電話窓口で子供の学習ログを参照しながら対応しています。商品のデジタルシフトにより、ログがデータとして記録されるようになりました。そのデータを活用し、オペレーターが保護者に対応するため、保護者からは信頼度と納得感を得ることができます。

この2つの取り組みにより、チャットボットやLINEでの対応件数が約5倍の67万件に増加し、97%もの満足度を獲得しました。

ベネッセはDXの取り組みにより、カスタマーサポートからユーザーへのコンサルティングに転換し、顧客に寄り添ったサービスを提供するようになりました。今後も、進化する技術を使いながら、利便性の向上と顧客サポートを向上させるとしています。

福井県

福井県は、県民サービスにボイスボットを導入し、ドライバーからの道路規制に関するお問い合わせを24時間対応可能にしました。

福井県は豪雪地帯であるため、冬の時期は1500台ものトラックがスタックし、数時間も物流が止まってしまうことがありました。そのため、ドライバーからは道路が通れるかどうかのお問い合わせが数多く寄せられていました。

そのような中、HPとボイスボットの2軸で対応し、対応率100%を実現しました。ボイスボットは、方言や地方の道路の愛称にも対応していています。

福井県は導入前と比較し、210%ものお問い合わせが増加したと発表しました。そして、約70%がボイスボットにより解決しています。

これにより24時間365日対応可能になったため、福井県は今後、高速道路でも対応できるようにしていくとのことです。

審査員からのコメント

三木香氏(株式会社ミックデザインワークス 代表取締役)

カスタマーサポートのDXが進む現代で、便利、スムーズだけでなく、カスタマーサポートをブランドの印象まで繋げる動きが出てきており、消費者が何に悩んでいるかだけでなく、アクセス時の感情などを分析し、カジュアル、フォーマルの程度や、トーン&マナーを定めていく必要が出てきました。

DXが進むと同時にデジタル上で相手の気持ちを汲み取ることが難しくなりがちですが、今回の『Support DX Summit 2021』では、各社様々な工夫が凝らされており、来年も楽しみです。

砂金信一郎氏(LINE株式会社 AIカンパニー CEO)

カスタマーサポートのDXにおいて重要なのは、人間がシステムの都合に合わせて制限されるのでなく、システムが人間に合わせて柔軟に対応できる。という形を作ることで、今回紹介された取り組みの中にも、そのようなものがありDXが進んでいることを実感しました。

しかし、日本ではこのような取り組みを紹介する場は無く、海外に遅れを取っていた分野なので本日はとても良い機会だったと思います。次回はより進んだ事例を見られるよう楽しみにしています。

大木清弘氏(東京大学 経済学部准教授)

今回紹介された取り組みは、顧客体験をアップデートするだけでなく、働き方やビジネスモデルも変えようとしており、双方に利益のある素晴らしいフォーマットだと感じました。

また、今回ご参加頂いた方々の取り組みは非常に影響力があるので、業界全体を変革するトリガーになって頂くために、是非これからも継続していき日本の経営の新しい姿を作っていってもらえればと思います。

大坂祐希枝氏(一般社団法人カスタマーサクセス推進協会 代表理事)

どの取り組みも非常に刺激的で、顧客接点のDXによってKPIが上手く循環しており、カスタマーサポートの満足度を上げるのが企業の成功に繋がっていることがよく伝わってきました。

また、今回は自治体の方も登壇してくださったことが印象的で、カスタマーサポートと言うと企業を思い浮かべてしまうが、公共でのカスタマーサポートの成功も非常に重要で、社会全体が良い方向へ変わっていく良い道標になるのではと思いました。

山田和弘氏(株式会社メルコイン Customer Service部 部長)

どの発表も非常に興味深く、大変身になる時間でした。感想としては、ここ1〜2年で世の中が強制的にアップデートされた、というのがあって、日々のライフサイクルが変革を迎えている中で、合わせてカスタマーサポートも変化していっており、今新しいDXも普遍的になっていくんだろうな、と感じるような内容でした。

本日発表いただいた皆様は、お客様体験が良いものになっていき、変化していく過程をリードしている方々だと思うので、業界全体を変革するために継続して取り組んで頂けたらと思います。

三島健氏(グーグル合同会社 第一広告営業本部 モバイル・アプリ統括部長)

今まではCS(カスタマーサポート)という言葉だったが、現在はCX(カスタマーエクスペリエンス)が普遍的になっていることや、新型コロナウイルスの影響で”当たり前”が変わってきた、という状況で、そこに対し前向きに取り組み、課題にどう向き合うか、ということを考慮したサービスが出てきたことは良い傾向だと思います。

これからは、企業の努力だけでなく横の連携として取り組んでいき、世の中のカスタマーサポートDXの仕組みに影響を与え、働き方の変革にも繋げて頂ければと思います。

閉会の挨拶 石井智宏氏

今回の『Support DX Summit 2021』は第一回ということで、運営上至らない部分もありましたが、色々な方のご支援の上で無事に開催することができ感謝しております。イベントとしても、ノミネート30社以上と沢山の団体様にエントリー頂き、各界でご活躍されている方々を審査にお呼びでき、良い物になったのではと思っています。

カスタマーサポートは「縁の下の力持ち」と捉えられるかもしれないですが、社会において非常に重要な部分を担っており、もっと陽があたって良いのではないかと感じています。
なので、Support DX Summitはサポート界を「カンヌ映画祭」を目指しており、サポート界における「最先端のお祭り」になればと思っています!

さいごに

第1回目として開催されたSupport DX Summit 2021は、カスタマーサポートで括られていましたが、職種ごとにさまざまな特色、背景があり非常に革新的な取り組みが見られました。記者としては、参加できて非常に光栄なイベントです。

「カスタマーサポートに届いた意見を集めるだけではなく、その意見にたどり着くまでの過程を洗い出すことで、社内全体に向けてのフィードバックを行うことができる」といったシステムには、サービスがさらに進化していく可能性を感じますね。

来年もまた開催されるとのことですので、AINOWでは引き続きSupport DX Summitを取材していこうと思います!

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