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DX推進に当たり、できる限り費用を削減したいと思いませんか?実はDXに関する投資額を減税できる制度が存在します。
今回はDX投資に関する費用を減税する方法を紹介します。
目次
DXが注目を集めている理由
DXとは、データやデジタル技術といったテクノロジーの力を企業が利用して優位性を獲得し、顧客や社会を豊かにすることを意味し、注目を集めています。
DXが注目を集めるきっかけと言えるのは「2025年の壁」です。2025年の壁とは、日本企業の基盤となっていた既存システムが複雑化・老朽化・ブラックボックス化していき、既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや日本経済の停滞が起きてしまう現象です。
このまま日本がデジタル化を進めなければ、国際競争に負けてしまい最大で年間12兆円もの損失がでると予想されています。しかし、このレポートには、もしDXが実現できれば2025~2030年に実質GDP130兆円超の押し上げができるとも述べられています。
このように企業は、デジタル化が要求されているのです。実際に企業のDXは推進されています。
▼DXについて詳しく知りたい方はこちら
▶︎2025年の壁について詳しくはこちらの記事で解説しています>>
DX投資促進税制の背景にある政府のデジタル改革
与党は、デジタル改革として、行政のデジタル化・マイナンバーカード普及の促進・舵取り役となるデジタル庁の新設を含め、デジタル施策に力を入れる姿勢を表明しています。この背景としては、先ほど説明した2025年の壁やコロナ禍で行政サービスがデジタル化できていない課題が浮き彫りとなったことがあげられます。
DXに関する投資額を減税するにはDX投資促進税制を活用
企業は、人手不足解消・競合優位性獲得・新たな市場価値の創出のためにDXを推進しなければなりません。しかし、既存の事業に加えてDXを推進するには、ITサービスや体制構築にコストがかかってしまいます。
そこで、企業がDXに取り組む際に、減税など投資するコストをおさえられる制度が存在します。DX投資促進税制です。
DX投資促進税制の概要
DX投資促進税制とは、企業のデジタル改革への投資を促進する目的で、2021年度の税制改正により創設された税制です。適用対象は、2023年3月31日までに事業適応計画が認定され、事業の用に供した資産です。
大臣が定める事業適応計画に基づいてDX推進を実施すれば、投資額に対して税額控除を受けるか、特別償却30%のどちらかを選択できます。
▶︎DX投資促進税制についてはこちらの記事でも解説しています>>
経済産業省が掲げる投資促進税制
DX投資促進税制は、経済産業省がかかげている施策です。経済産業省はDX投資促進税制の他にもさまざまなDXに関する施策が存在します。
▶︎経済産業省が進めるDXに関連する施策が気になる方は、こちらの記事を参考にしてください>>
DX投資促進税制の適用条件
DX投資促進要件は以下のとおりです。
このようにデジタル要件(D要件)と企業変革要件(X要件)があります。デジタル要件の②クラウド技術の活用のクラウドとは、インターネット等を介してオープンにデータの処理・保管等を行える技術と整理されました。
また、取締役会等で承認を得た全社全体でのDXへの取り組みが対象となります。
DX投資促進税制の適用条件:対象資産
- ソフトウェア
- 器具備品
- 機械装置
- 繰延資産(クラウドシステム移行に使う初期費用)
DX投資促進税制の適用条件:対象企業
DX投資促進税制の対象事業者は「産業競争力強化法」の【事業適応計画(仮称)の認定】を受けた青色申告法人です。
産業競争力強化法とは、農林水産省が定めた、我が国経済を再興すべく、我が国の産業を中長期にわたる低迷の状態から脱却させ、持続的発展の起動に乗せるため、産業競争力の強化に関する施策を総合的かつ一体的に進めるための法律です。
青色申告は所得税、法人税の申告方法のひとつで、一定の帳簿書類を備付けることが要件となっている代わりに、節税に役立つさまざまな特典を受けられます。事前に税務署へ青色申請書を提出する必要があります。
大企業と中小企業で減税額は異なる?
大企業と中小企業で減税額は異なりません。しかし、4点の注意が必要です。
- 親会社・子会社のようなグループ関係にない事業者とデータを連携する場合、税額控除は「取得価額×5%」となる
- 地方税について税額控除を選択した場合、中小企業者等の法人住民税にしか適用されない。
- 以下3つのうち、1つも当てはまらなければ、大企業は適用されない
当期所得が前期所得以下の場合
継続雇用者給与等支給額が継続雇用比較給与等支給額より多い場合
当期設備投資額が減価償却費×30%より多い場合 - 繰越欠損金控除は、中小企業と大企業で異なる(後に説明)
DX投資促進税制に認定されるまでのステップ・必要書類
まずはDX投資促進税制の対象となるDX認定を受ける必要があります。
認定審査事務は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行います。IPAの審査後、経済産業省が認定してDX投資促進税制の対象となるのです。
DX認定制度をクリアし、大臣が定める事業適応計画に基づいてDX推進を実施すれば、投資額に対して税額控除が受けられるか、特別償却30%のどちらかを選択できます。
DX認定制度とは、2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度です。政府が策定した「企業経営における戦略的なシステムの利用の在り方」をもとに、DXを取り入れた、優良な企業戦略・経営をする事業者の申請に基づいて認定する制度となります。
<DX認定を受けて減税の準備>
以下の3ステップでDX認定を受け、DX投資促進税制で減税の準備をしましょう。
①「申請のガイダンス」を確認
まずはDX認定制度への申請にあたり、各種必要となる準備、手順をまとめた「DX認定制度申請要項(申請のガイダンス)」を確認しましょう。
②必要提出書類のダウンロードと準備
認定申請書と申請チェックシートをダウンロードして記述します。内容の記載方法や事前準備については「申請のガイダンス」に記載してあります。
認定申請書の設問(5)については、「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」を利用して結果を提出された場合を除き、補足資料の追加提出が必要です。
③Web申請システムで申請及び、必要書類の提出
Web申請システム「DX推進ポータル」より申請及び、必要書類を提出します。このWeb申請システムは、GビズIDを取得しなければなりません。
▶︎DX認定についてより詳しく知りたい方はこちらの記事を参照してください>>
事業適応計画認定申請書の作成
DX認定を受けて、事業適応計画の認定申請書を作成しましょう。経済産業省では、事業適応計画のポイントを解説しています。
事業適応計画には、①事業適応の目標、②事業適応の内容および実施時期、③事業適応に係る経営の方針の決議または決定の過程を記載します。
<税額控除か特別償却30%を選択>
続いて、税額控除か特別償却かを選択します。
- 税額控除
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除したものです。
- 特別償却30%
特別償却とは、DX投資促進税制の適用条件である対象資産を購入して利用した際、通常の償却額に加えて、取得価額に30%を乗じて計算した金額を、上乗せして償却できます。
繰越欠損金控除上限引き上げ
DXを含めた経営改革に取り組む企業向けに、繰越欠損金の控除上限の特例が新たに設けられます。中小企業が100%、大企業は50%を上限としていますが、特例の対象となれば、大企業のみ一定の欠損金について最大100%まで引き上げられます。
事業適応計画の認定を受け、ポストコロナに向けた取り組みや、必要となる投資内容を含めた計画書を事業所管大臣に提出し、認定を受ければ特例が適用されます。
研究開発税制について
研究開発税制は、研究や開発にかかった費用を法人税から控除する制度です。税制改正によって、クラウド関連のソフトウェア研究開発費が研究開発税制の対象に含まれました。
その他のDXに役立つ補助金
減税の他にも、DXに関する補助金が存在します。
▶︎DX関連の補助金についてこちらの記事で紹介しています>>
国税庁からのDX投資促進税制に関する注意点
ここでは、国税庁が発信したDX投資促進税制の事業適応計画に関する注意点です。
事業適応計画
デジタル(D)要件(データ連携・共有、レガシー回避、サイバーセキュリティ)
◆他の法人等が有するデータ又は事業者がセンサー等を利用して新たに取得するデータと既存内部データとを合わせて連携すること
◆クラウド技術を活用すること
◆情報処理推進機構が審査を行う認定(DX認定)
企業変革(X)要件(ビジネスモデルの変革、アウトプット、全社戦略)
◆商品の製造原価が8.8%以上削減されること等
◆生産性向上や売上高の上昇の目標を定めること
・計画期間内で、ROAが2014年~2018年平均を基準値として1.5%ポイント向上
・計画期間内で、売上高伸び率≧過去5年度の業種売上高伸び率+5%ポイント
◆投資総額が売上高比0.1%以上であること
引用:https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei21/03.htm#a01
DXに関する投資を減税するには投資促進税制を活用しましょう
今回はDXに関する投資額を減税できる、DX投資促進税制を紹介しました。DX投資促進税制を利用すれば、DX推進にかかるコストをカットできます。
手続きには多少の時間や手間がかかるため時間に余裕を持って取り組みましょう。