最終更新日:
近年、マーケティングオートメーション(MA)という言葉が注目されています。しかし、漠然としたイメージはあるものの、効果的な活用法が分からないという方もいるのではないでしょうか?
この記事では、MAを活用する際に必須となる「シナリオ設計」について、その概要から設計ステップ、設計の際のポイントまで紹介します。
目次
MAのシナリオとは?
シナリオとは、主に映画などの脚本や台本を指す言葉として使われています。つまり、シナリオとは「行動の筋書き」であると言えるでしょう。マーケティングオートメーションにおけるシナリオとは、ユーザーが購入に至るまでの細かい行動を想定し、購入へ誘導するための筋書き作りです。
また、今はまだ利用に至っていないけれど今後利用する確率が高い見込み顧客を顧客へと誘導するためのアプローチの設計図であるとも言えるでしょう。どの顧客(見込み顧客)に、どういった内容のアプローチを、どのタイミングで行うのかをシナリオによって事前に設定します。
例えばダイレクトメールの活用では、むやみに配信をしても効果は期待できません。事前に設定したシナリオに基づいて配信することで、その効果を発揮します。
シナリオは「誰に」「何を」「いつ」「どのように」の四要素で構成されています。この要素を含めることで、最終目標を決め、それに達するための筋書き作りが可能になります。
▶︎マーケティングDXについてこちらの記事で解説しています>>
シナリオの求められる4要素
シナリオには以下の4つの要素が求められます。
1.「誰に」
シナリオを作成する際にまず必要なのがターゲット、そしてペルソナです。
ペルソナとは仮面を指す言葉ですが、マーケティングにおいては意味が転じ、架空のユーザー像を意味します。顧客の年齢や性別などの属性による「ターゲット」層を大まかに設定し、ターゲット層の中で具体的な人格などの情報を付け加え、架空の人物を想定したものが「ペルソナ」です。
2.「いつ」
シナリオには、行動のタイミングの想定が必要です。
例としてメール配信による集客シナリオを立てるとしたら、いつメールを送り、ユーザーはいつ頃それを開封し、いつ頃サービス情報に行き着くのかや、特定のページを閲覧するなど、アプローチのタイミングを想定するものです。
3.「何を」
シナリオにおける3つ目の要素は、「コンテンツ内容」です。
コンテンツの内容がユーザーの需要とずれていては、ユーザーは離れる一方です。ターゲットの属性からニーズを分析し、それに合致したコンテンツ作りが重要となります。
4.「どのように」
最後に、ユーザーに対してどのようにアプローチするかが重要です。どんな媒体を経由してコンテンツを配信し、ユーザーにアプローチするのかを設定します。
具体的には、メール配信、SNS、ダイレクトメール、自社webサイト、店頭での接客、営業などが挙げられます。
シナリオ作成の4ステップ
シナリオ作成の4つのステップについてそれぞれ解説します。
ステップ1:ペルソナを設計
まず最初に、対象となるターゲット・ペルソナを設定します。どういったユーザーにアプローチをするのか、その対象を定めることからシナリオ作りは始まります。
この設定は、客観的な根拠に基づいた情報を参考にしましょう。具体的には既存顧客の情報、一般公開の調査データ、アクセス解析結果、アンケート、営業担当によるユーザへのヒアリング情報などの多角的なデータを活用します。
また、ターゲット設定では、ユーザーを複数の軸で分類します。
まず、企業と顧客の関係性を軸に分類するライフサイクル軸があります。これによって、まだ購入に至っていない「見込み顧客」から、「新規顧客」「一般顧客」「優良顧客」、そして以前利用していたが最近遠のいている「休眠顧客」などへ分類することが可能です。
次に、「メールを開封してURLをクリックしたユーザー」「購入経験のあるユーザー」などユーザーの実際の行動によって分類する顧客行動軸があります。また、年齢や性別、職業や年収といった顧客の属性によって顧客属性軸でも分類が可能です。
ステップ2:タイミングを設計
シナリオは、ユーザーが購入に至るまでの行動を想定するためにタイミング設定が必要です。アプローチを「いつ」「どれくらいの頻度で」行うのかを設定します。過剰にアプローチを行ったり、アプローチのタイミングを逃してしまうと、ユーザーの関心を削いでしまいます。
いつ、どれくらいの頻度のアプローチが効果的か、慎重に検討を行いましょう。
ステップ3:コンテンツを設計
次に、ユーザーがどのような悩みを抱えているかを明確にしましょう。最適な内容のコンテンツが作成可能となります。
既存のデータから、ターゲットのニーズを分析し応えるだけでなく、意図した方向に誘導できるようなコンテンツ設定も効果的でしょう。
ステップ4:アプローチ方法を設計
最後にアプローチ方法を設計します。シナリオは、ユーザーを購入という最終目標へ導くために設定するため、ユーザーに刺さるような媒体を活用することが必要です。
アプローチの手段には、店頭での接客、営業、セミナー、(ダイレクト)メール、SNS、自社webサイトなどがあります。どれを利用するかによって、シナリオ作成も大きく変化します。
シナリオ作成の6つのポイント
今回紹介するシナリオ作成のポイントは以下の6つです。
1.カスタマージャーニーを練る
カスタマージャーニーとは、顧客の購買プロセスのことです。設計したペルソナがどのように購入に至るのかを検討することが、シナリオ作りでは重要になります。ユーザーが購入に至る際には悩みがあり、その解決に向けて情報収集を行い、製品検討へ進み、購入へ繋がるといったプロセスが殆どです。
そのため、このカスタマージャーニーに合わせた適切なタイミングのアプローチによって製品検討の際に競合優位性を高められます。カスタマージャーニーがなければ、それぞれのシナリオが場当たり的なものになってしまいます。
カスタマージャーニーが土台にあるシナリオ作りを心掛けましょう。
2.複数コンテンツ
ユーザーへアプローチできるコンテンツの数が少ないと、マーケティングの幅も同時に狭くなります。そのため、ペルソナやカスタマージャーニーに沿って、コンテンツもその都度追加していくのが効果的です。
マーケティングオートメーションによって、メールを自動配信すれば、新コンテンツや、コンテンツ内容の向上に人員を割くことも可能です。どのような媒体でユーザーたちは情報収集するのかを考慮したうえで、複数のコンテンツを提供することでマーケティング活動を広げられます。
3.トリガー設定
次に、トリガーと呼ばれるユーザーが特定のアクションを起こしたときにコンテンツを提供するタイミング設定が重要です。例えば、Webサイトから資料をダウンロードした時にメールによってイベント情報を配信するなど、ユーザーの行動やそこから想定される心理に合わせたアプローチが効果的です。
最適なトリガーの策定はなかなか困難となります。そのため、マーケティングオートメーションによって収集管理したユーザーの行動データを参考にトリガーを思案しましょう。
4.データ収集
シナリオ作りの際に、様々な要素を設定します。これらを決めていく際に単なる想像では結果に繋がりません。仮説は重要ですが、データに基づいたものである必要があります。
アンケートや営業担当によるユーザーへのヒアリング、サイトへのアクセスデータの解析や、これまでのユーザーの分析など、データ収集がシナリオ作りでは前提となります。
5.PDCAサイクルを回す
PDCAとは、Plan(計画)/Do(実行)/Check(評価)/Action(対策・改善)のプロセス循環によってマネジメントの品質を向上する事を目的とした概念です。
シナリオとは机上の空論にすぎません。実行に移し、結果を検証し、改善することで効果的なシナリオへの移行が可能になります。
シナリオに沿って誘導ができた場合は、その要因を分析して更に良いマーケティングを目指して改善できます。ユーザーが想定から外れた場合は、改めてカスタマージャーニー・トリガーを見直すか、ペルソナ自体を見直すことが必要です。
ユーザーの反応から分析し、PDCAサイクルを回すことで、より精度が高いシナリオの作成が可能です。
6.セグメント・セグメンテーションの設計
セグメンテーションとは、自社の市場や顧客を区分(セグメント)に分類することです。多くのMAツールにはセグメント機能が備わっています。どのセグメントに分類されるかによって、シナリオを違う方向に走らせることになります。
例えば、DXサービスを提供する企業では、DX学習に懸命なユーザーはシナリオA、DXをすでに実務で進めているユーザーにはシナリオBを走らせるなどセグメントによって内容が変わってきます。
各セグメントに最適化したシナリオを一気に構築するのは困難で、調整も大変です。そのため、当初は小規模に展開し徐々にシナリオを複数設定し、PDCAを回しながら改善することをおすすめします。
効果的なシナリオ設計を目指しましょう
いかがでしたでしょうか。やみくもにアプローチをするのではなく、緻密に計算することで、ユーザーを誘導し、顧客として獲得することが可能になります。
今回の記事で紹介した設計プロセスやポイントを参考に、シナリオ設計を実施してみましょう。