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2022.10.30

DXとAIの違いとは|AI活用事例やDX推進のポイントを徹底解説

最終更新日:

デジタル化が急速に進む昨今、AIはDX推進において欠かせない要素となっています。

しかし「AIとDXの違いが分からない」「AIの導入方法が分からない」という方も多いのではないでしょうか。

こちらの記事では、DXとAIの違いから、DX推進におけるAIの活用事例・導入時のポイントなどを解説します。

DX・AIの違いとは

デジタル技術の発展に伴い、近年「DX」「AI」という単語を耳にする機会が増えてきました。しかし「DXとAIの違いが分からない」「両者の関係性は何か」と悩む方もいらっしゃると思います。

DXは「データやデジタル技術の活用を前提とした経営や組織体系の改善を行い、環境変化の中でも成長し続けること」を指します。対して、AIは「人間の行動や思考を、人間の代わりに実現する技術」です。

DXにおけるデジタル技術には「IoT」や「AI」などが含まれます。つまりAIとはDXを実現するための一手段なのです。

こちらの章ではDX・AIそれぞれの詳細から、AIに関連する用語などを解説します。

▶AIとIoTに関しては、こちらでより詳しく解説しています。>>

DXとは

こちらでは、DXとは何かについて解説します。経済産業省は、DXを以下のように定義づけています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

要約すると、DXとは「データやデジタル技術の活用を前提とした経営や組織体系の改善を行い、環境変化の中でも成長し続けること」となります。

政府は積極的にDXを推進しており、政府主体の制度である「DX銘柄」や「DX認定」なども存在します。また各経営者もDXを重要視し、多くの企業がDXに着手、もしくは着手しようとしているのが現状です。

今やDXは、企業の経営に欠かせない要素の一つとなっています。

引用:経済産業省 DXリテラシー標準 ver.1.0>>

▶DXについてはこちらでより詳しく解説しています。>>

AIとは

AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。

現状AIの明確な定義は存在しませんが、総務省では、

「AI」とは、「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念」

としています。

言い換えるとAIは「人間の行動や思考を、人間の代わりに実現する技術」を指すのです。

AI(人工知能)の代表的な技術には、顔認証システムなどに利用されている「画像認識」や、スマートスピーカーなどの「音声認識」が挙げられます。

引用:総務省 第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0>>
▶AIについてはこちらでより詳しく解説しています。>>

IoTとの違い

AIと混同されやすい言葉に「IoT」があります。IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。

IoTとは「モノをインターネットに接続し、相互に情報を交換する仕組み」を指す言葉です。

IoTの代表的な活用事例には「外出先からエアコンの温度を設定する」「ペットの健康状態を遠隔地から把握する」などの遠隔操作が挙げられます。

AIはモノが無くても存在できますが、IoTは電化製品などのモノが無ければ利用価値がないため、AIとの決定的な違いは「ハードウェアの有無」だと言えます。

▶AIとIoTの違いについては、こちらでより詳しく解説しています。>>

ディープラーニングとの違い

またAIに関連する言葉に「ディープラーニング(深層学習)」があります。ディープラーニングとは画像認識・将来予測など、大量のデータをもとに特定の出力を行う作業を人の手を介さずに実行できるよう、コンピューターに学習させる手法を指します。

ディープラーニングは機械学習の一つであり、AIが自律的に学習することを目指します。ニューラルネットワークという、多くの複雑な情報を処理する分析構造が採用されているため、より高精度な分析や認証が可能です。

ディープラーニングは防犯カメラなどの「画像認識」や外国語翻訳などの「自然言語処理」などに活用されています。

▶ディープラーニングについてはこちらで詳しく解説しています。>>
▶ディープラーニングと機械学習の関係性については、こちらで詳しく解説しています。>>

なぜDXが必要なのか

ここまで、DXとAIの違いについて解説しました。しかし中には「そもそもなぜDXを進める必要があるのか」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

DXが必要な背景には、以下の3つの理由があります。

  1. 2025年の壁
  2. 働き方の多様化
  3. 市場ニーズの変化

こちらの章では、それぞれの理由について詳しく解説します。

2025年の壁

「2025年の崖」とは経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」の言葉を引用したものです。

DXレポートの主な内容は以下の通りです。

  • 多くの経営者が将来の成長・競争力強化のために、DXの必要性について理解している
  • しかし、既存システムが事業部門ごとに構築・過剰なカスタマイズがされているため全社横断的なデータ活用ができない
  • 既存システムの問題を解決・業務自体の見直しが先行するためDX推進が難しい

現在21年以上使われている基幹系システムが全体の2割であるのに対し、2025年では6割に上り、システムの維持管理費が高額化しIT予算の9割以上を占めると予測されています。

また現状のままでは、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるとも予測されています。
そのため、2025年までに既存システムの改革・運用改善を行う人材を確保する必要があるのです。

▶「2025年の崖」問題についてはこちらで詳しく解説しています。>>

働き方改革の推進

働き方改革とは「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を指します。

現在日本は「少子高齢化」「育児や介護との両立」などの問題に直面していますが、DXはこれらの問題を解決する可能性があります。

例えばセキュリティ環境の整備やコミュニケーションツールの活用により、「リモートワーク」や「在宅勤務」などが実現可能です。これらは働き方改革の柱である「柔軟な働き方がしやすい環境整備」に当たります。

このようにDXは働き方改革と強い相関があります。積極的なデジタル技術の利用により、時間や場所を選ばない働き方が実現できるのもDX推進の魅力です。

参照:厚生労働省 「働き方改革」の実現に向けて>>

市場ニーズの変化

消費者ニーズの多様化やデジタル技術の発達、市場のグローバル化など、目まぐるしいスピードで日々環境は変化しています。そのような中で企業が生き残るには、市場やニーズの変化にいち早く気づき、柔軟に対応するスキルが必要不可欠です。

また、環境変化は新しいサービス・ビジネス創出のチャンスでもあります。

例を挙げると、「ZOZOTOWN」や「Amazon」はオンラインマーケットをいち早く活用したことで、今や国内外問わず圧倒的なシェアを誇っています。

DX推進により、市場での優位性を図ると同時に、新しいビジネスチャンスを得ることが可能です。

AIにできること

AIはDXを推進するために必要なデジタル技術の一つです。AIにできることは、大きく分けて「データの認識」と「データの予測」の2つに分けられます。

またデータの認識には「画像認識」「音声認識」「自然言語処理」などが挙げられます。

こちらの章では、AIにできることを詳しく解説します。

データの認識

AIが登場する以前のシステムでは、画像や音声などの処理は難しく、認識精度は不十分でした。しかしAIの活用により、膨大なデータの処理が可能になり、複雑なテキストを認識できるようになりました。

  1. 画像認識
  2. 音声認識
  3. 自然言語処理

上記3つが、AIが認識可能なデータです。それぞれ詳しく解説します。

①画像認識

画像認識」とは、AIで写真や映像を認識することを指します。AIによる画像認識の精度は人間を凌駕しており、現在様々な分野で活用されています。

画像認識の代表的な例は、AIが目、口、鼻などの特徴を基に、人間の顔を照合する「顔認識」です。なりすまし防止、パスワードを記憶する必要がないなどのメリットがあります。

近年ではスマートフォンのロック解除や空港での搭乗にも利用されており、我々の生活に広く普及しています。

②音声認識

音声認識」とは、人間の発話を解析した上で、テキストに変換したり他のデバイスを操作したりする技術を指します。AIの活用により音声認識の精度が飛躍的に向上したため、画像認識と並び広く実利用されている技術です。

音声認識を活用した身近な製品は「Siri」や「Google アシスタント」です。特に「Siri」は話しかけるだけでスマートフォンの操作を代わりに行うため、多くの人々に利用されています。

また音声認識は我々の日常だけでなく、企業の業務効率化にも活用されている技術です。具体例を挙げると「議事録の自動文字起こし」や「電話での問い合わせの自動対応」などがあります。

③自然言語処理

自然言語処理」とは、人間が使う話し言葉や書き言葉などのテキストデータを解析し、処理する技術を指します。

自然言語処理を活用した代表的な例は、Google翻訳やDeepLなどの「機械翻訳」です。自然言語処理の進化は目覚ましく、数年前であれば不自然で読みづらかった翻訳も、現在は人間が話したり書いたりする文章と遜色のない翻訳を出力してくれます。

依然として、曖昧な言い回し等は処理できないものの、十分実用できるため広く利用されています。近年では言語翻訳だけでなく、「検索エンジン」や「予測テキスト」などにも活用されています。

データの予測

「データの認識」と並ぶ、AIの代表的な技術が「データの予測」です。「AI予測」とも呼ばれます。
AIの活用により、大量のデータから未来の出来事や数値などを予測することが可能です。

現在データの認識は業界を問わず多くの製品やサービスに活用されています。例えば、医療業界では「インフルエンザの流行予測」などが、金融業界では「株価予測」や「商品需要予測」などが挙げられます。

従来未来予測は勘や経験に依存していましたが、AIの活用により予測の属人化を防ぎ、高精度な予測が実現可能です。

AIを活用したDX推進の事例

AIの活用により、DX推進に成功した事例は数多くあります。

  1. 無人決済システム
  2. 介護ロボット
  3. スマートスピーカー
  4. AI採用システム
  5. 不良品検品

こちらの章では、AIを活用した5つのDX推進事例をご紹介します。

①無人決済システム

無人決済システムとは、カメラやセンサーから取得されるデータの活用により、商品を手に取るだけで自動会計ができる技術を指します。

代表的なサービスは、株式会社TOUCH TO GOの無人決済システムです。こちらのシステムは、商品をスキャンすることなく、会計ゾーンに立つことで自動的に支払いが完了します。

既に実用化も進んでおり、株式会社ファミリーマートや株式会社紀ノ國屋などで導入されています。

参照:株式会社TOUCH TO GO | 日本で唯一実用化されている省人化 無人決済店舗システム>>

②介護ロボット

医療業界における、代表的なAI活用事例に「介護ロボット」が挙げられます。介護ロボットの活用により、介護対象者の入浴や排せつ、移動などのサポートが可能です。

「超高齢化社会」に突入し、医療関係者が不足している昨今、介護ロボットの注目が高まっています。

実際に導入された介護ロボットには、介護者の移乗支援をする「マッスルスーツ」や利用者の見守りを行う「シルエット見守りセンサー」などがあります。

「高価格」や「患者への配慮」などの理由で現在は広く実利用されていませんが、厚生労働省が介護ロボットの開発・実用化を支援しており、今後普及が進む可能性が高い技術です。

参照:【介護ロボット】導入事例10選!導入までの手順も解説>>

③スマートスピーカー

人々の生活にAIが活用された事例として、代表的なものは「スマートスピーカー」です。スマートスピーカーとは音声操作に対応したAIアシスタントが搭載されたスピーカーであり、音声だけで様々な指示を行えます。

スマートスピーカーを用いて、「音楽再生」や「対応家電の操作」、「ニュースや記事の読み上げ」が可能です。例えば「音楽流して」と伝えれば音楽を流し、「ニュースを読んで」と伝えればその日のニュースを自動で読み上げます。

今やAmazonやAppleなどを始め、多くの企業がスマートスピーカー製品を提供しており、我々の日常に浸透しています。

④AI採用システム

AIは企業の採用活動でも利用されています。今やAIは採用における「書類審査」や「広告求人」、さらには「面接」にまで導入されている技術です。

AIが採用に活用されることで、採用担当者の負担軽減や採用業務の効率化を図れます。大手企業もAI採用システムを導入しており、例を挙げると「ソフトバンク株式会社」や「株式会社吉野家」などがあります。

AI採用のデメリットとして「求職者のAI採用に対する抵抗感」「AIによる差別」などが挙げられますが、依然として注目される技術です。

⑤不良品検出

AIは製造業界でも活用されています。生産ラインにおける不良品検出とは、製品の汚れやキズなどの外見的欠陥を見つけ、検品を行う作業です。

今や不良品検出ソフトは数多く存在しており、代表的な製品に日本電気株式会社の「NEC Advanced Analytics – RAPID機械学習」が挙げられます。

従来不良品検出は全て目視で行われていましたが、人の目には限界があり不良品を見逃してしまうことも多々ありました。しかしAIの活用により高精度な検品が可能になり、さらには人手不足の解消や検品速度の向上にも繋がります。

参照:NEC Orchestrating a brighter world>>

DX推進における3つのポイント

ここまで、DX推進におけるAIの活用事例をご紹介しました。しかしAIの活用だけでは、適切にDXを推進できません。

DX推進の際、必要なポイントは以下の3つです。

  1. 明確な目標の設定
  2. データの収集
  3. IT人材の確保と教育

それぞれ詳しく解説します。

明確な目標の設定

DX推進において最も重要なのは「明確な目標設定」です。AI導入により、どのような課題を解決できるのか、どのような状態を目指すのか、社内で共通認識を持ちましょう。

AIの種類によっては、効果が発揮されるまでに時間がかかる場合もあります。長期的な期間を要する場合は社内の混乱を避けるためにも、綿密な計画が必要です。

また、AIはあくまでDX推進の一手段のため、目標設定の際は「AIの導入」が目標にならないように気を付けましょう。

データの収集

目標設定の後に必要な行動は「データの収集」です。与えるデータによってAIの精度が変わるため、どれだけデータを収集できるかがDX成功の鍵を握ります。

また大量のデータをただ収集すればいいわけではなく、データの質も考慮する必要があります。なぜなら、誤ったラベリングやデータの偏りは、AIの認識や予測精度を著しく低下させるからです。

AIの利点を最大限発揮するためには、データの量と質の2つが重要です。

AI人材の確保と教育

AIを導入しても、それらを使いこなす人間がいなければ無用の長物となってしまいます。DX推進には、AIの知見を持ち、DXを先導できるような人材が必要です。このような人材を、一般的にAI人材と呼びます。

AI人材に関する代表的な職業は「エンジニア」や「データサイエンティスト」「AIプランナー」などです。しかしそういったAI人材は不足しており、確保が難しいと言われています。

そのため社内研修やAI研修サービスなどを活用し、既存の社員をAI人材として教育することも視野に入れる必要があります。

AI導入時の注意点

AIはDX推進に役立つ技術ですが、人間とは別の存在のため、導入の際は注意すべき点が複数あります。

実際、AI導入による「差別」や「誤認」などが起こっています。またAIを導入した際、「ユーザーのプライバシー保護」も考慮しなければなりません。

こちらの章では、AI導入時の注意点を解説します。

AIによる差別・誤認

AIは時に差別的な判断や誤認を犯してしまいます。

AI差別の実例には、マイクロソフトのAIボット「Tay」が挙げられます。Tayはユーザーと若者らしい言葉で会話する予定でしたが、次第に人種差別的発言が多くなり、利用停止となりました。こうしたAIによる差別の一因には、偏ったデータやラベリングなどがあるとされます。

またAIによる判断ミスの代表例として、2020年に米ミシガン州のデトロイト警察が、顔認識AI技術を活用した捜査で誤った男性を拘束したことが報じられています。

AIは万能ではなく、100%の精度は保証できません。AIのデメリットも理解しながら社会に応用していく必要があります。

個人情報の保護

ユーザーが登録したプライベートな情報とAIの組み合わせにより、ユーザーに最適な広告を提供したり、嗜好を予測したりできます。しかし個人情報の保護には特別注意を払う必要があります。

2019年には、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就活生の「内定辞退率」を販売したことが発覚しました。こちらは、学生の許可なく個人情報を他社に販売したことが問題視された事件です。

AIはデータを用いてユーザーに多くの恩恵を与える技術ですが、プライバシー性の高いデータはユーザの許諾を得てから活用するなど、配慮が求められます。

AIはDX推進におけるツール

ここまでDX推進におけるAIの活用方法を、AIの特徴などとあわせて解説しました。AIはデジタル技術の一つであり、DX推進のための一手段でしかありません。

またAIは利便性の高い技術ですが、プライバシーの保護やバイアスなどの危険性を孕んでいるため、扱いには注意が必要です。

AIを導入する際は、導入の目標を設定したうえで良質なデータを収集しましょう。ぜひ、こちらの記事を参考にしてAIを活用したDX推進を行ってみてはいかがでしょうか。

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