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2022.05.26

機械学習とディープラーニングの使い分け方とは?- 特徴やできることも解説

最終更新日:

 

近年、技術の発達により、機械学習やディープラーニングが私たちの生活、そして社会に大きな影響を与えています。

Google翻訳やSiri、スマートフォンの顔認証もその影響の例として挙げられます。

みなさんは、そんな機械学習とディープラーニングそれぞれの特徴を理解し、使い分けられていますか?

この分野は多くの情報によって混乱しがちでもあるため、それぞれを正しく理解し、使い分けることが大切です。

そこで本記事では、機械学習とディープラーニングの使い分け方やその特徴、できることなどをご紹介していきます。

また記事の後半では、機械学習やディープラーニングを活用する際のおすすめプログラミング言語を紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください!

 機械学習とディープラーニングを使い分けるために

機械学習とディープラーニングを使い分けるための第一歩として、はじめにそれぞれの定義を簡単にご紹介していきます。

まず機械学習とは、与えられたデータを元にして複数のルールやパターンを学習し、分類や予測をする技術のことです。人工知能(AI)の分類の1つとして知られ、さまざまな分野で活用されています。

一方、ディープラーニングとは脳の神経回路を模したニューラルネットワークと呼ばれる学習モデルを用いる機械学習の一つです。入力層、隠れ層、出力層の3つから成り立っており、この「隠れ層」が何層にも深いことから「深層学習」とも呼ばれます。

作成:AINOW編集部

したがって、機械学習とディープラーニングは全く別々のものではなく、機械学習の中にディープラーニングが含まれるという認識が正しいといえるでしょう。

作成:AINOW編集部

▼機械学習について詳しく知りたい方はこちら

ディープラーニングについて詳しく知りたい方はこちら

機械学習とディープラーニングを理解する

そしてここからは、より詳しくその機械学習とディープラーニングを理解するために、それぞれの学習方法や特徴の違いについてご紹介します。

機械学習とディープラーニングの学習方法

機械学習の学習方法は、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の大きく3つに分類されるものです。

それに対して、ディープラーニングの学習方法は非常に多く、次々と新しいものが出ていますが、代表的なものとしてはCNN(畳み込みニューラルネットワーク)RNN(リカレントニューラルネットワーク)などが挙げられます。

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機械学習とディープラーニングの特徴

機械学習とディープラーニング、それぞれの特徴で決定的に違う点は、「あらかじめ人間がデータを加工して学習させるか」という点です。

機械学習は、人間が手元のデータをいきなり入力するのではなく、機械が学習しやすいように、処理対象の特徴の強弱を表す数値(特徴量)を算出・加工し、入力するという特徴があります。

それに対してディープラーニングは、最適な特徴量を自動的に抽出することができるので、あらかじめ人間がデータを加工する必要がありません。

これを踏まえると、ディープラーニングの方を使うべきと思われる方が多いでしょう。しかし、機械学習を使った方がメリットが大きい場面もあるので、次の章ではそれぞれを使い分ける指標をご紹介します。

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機械学習とディープラーニングを使い分ける指標

機械学習とディープラーニングを使い分ける指標は以下の4つです。

  1. より早く結果を出したいか
  2. 大量のデータを用意できるか
  3. ハードウェアのスペックは高いか
  4. 説明責任が必要か

それぞれ解説していきます。

 ①より早く結果を出したいか

より早く結果を出したい場合、主に機械学習が用いられます。機械学習の方が必要な演算能力が少なく、学習するスピードが早いからです。

それに対して、ディープラーニングはより多くのデータを処理するため、その分長い時間を要してしまうデメリットがあります。

  ②大量のデータを用意できるか

従来の機械学習では処理できないプロジェクトで、大量のデータを用意できる場合、主にディープラーニングが用いられます。

ディープラーニングは複雑な処理を行える分、多くのデータを必要とするからです。

機械学習は、人間によって構造化された限定的なデータセットがある際、そのデータを入力することで対応できますが、複雑な処理には向いていないというデメリットがあります。

 ③ハードウェアのスペックは高いか

ハードウェアのスペックが高い場合は、ディープラーニングを用いることができます。ディープラーニングは複雑な処理を行うため、機械学習よりも高いスペックを要求するからです。

ここでのスペックとは、単なるメモリ容量や処理速度だけではなく、コンピュータ内の処理パーツのことも指します。

従来のCPUというコンピュータの頭脳の役割を果たすパーツは、機械学習における並列処理が苦手なため、GPUという並列処理が得意なパーツを搭載しているかが重要です。

ただし、高性能のGPUは100万円を越すものもあるなど、高いコストになってしまうというデメリットもあります。

  ➃説明責任が必要か

機械が自動的に特徴量を抽出するディープラーニングは便利な半面、「その判断をなぜ下したか」という説明が行えない、いわゆる「ブラックボックス問題」が伴うデメリットがあります。

特にこの後紹介する自動運転や医療診断など、人の命が関わる分野において、その説明責任が果たせないということは、大きな倫理的問題に繋がります。

こうした観点からも、ディープラーニングを用いるかの判断は慎重に行う必要があるでしょう。

そして次の章からは、機械学習とディープラーニングそれぞれのできることや活用事例をご紹介します。

機械学習でできること

機械学習でできることは以下の3つです。

  1. 設備の異常検出
  2. 交通管制
  3. 株式予測

それぞれ解説していきます。

①設備の異常検出

設備の異常検出には、複数のパターンの学習・分類が得意な機械学習を用います。

設備の異常は稀であるため、サンプルの少ない異常データを機械に学ばせるのではなく、多くの正常範囲内のデータを機械に学ばせるケースが多いです。

そして、その正常データから逸脱した数値を機械が検出(外れ値検出)することによって、設備の異常を見つけます。

最近では、日立製作所が2023年に水力発電所の点検の一部をAIが行うと発表するなど、各社で実用化が進んでいます。

➁交通管制

交通管制とは、道路の渋滞や危険を防止するために、交通量を管理・抑制することです。機械学習は、与えられたデータからの予測も得意なため、この交通管制に用いられます。

例えば、リアルタイムの交通量のデータを元に、各車両の目的地までの経路・時間を予測し、信号の制御を最適化することで、混雑を最小限に留めることができます。

実際、米ピッツバーグ市街で行われた実験では、このシステムにより自動車での移動時間が最大25%、アイドリング時間は40%以上減少しました。

日本でも、2022年に住友電気工業と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の行った交通管制の実証実験が成功するなど、実用化に向けての動きも進んでいます。

③株式予測

前述にもある通り機械学習は、データから予測を計算することが得意なため、株式予測との親和性も高いです。

例えば、過去の価格推移や現在の経済状況を機械学習に学ばせることで、リアルタイムに価格が変動する株価の価格推移を予測し、最適なタイミングでの売買を行ってくれます。

最近では、投資アプリを運営するグリーンモンスターがスマートフォン向けアプリに、株価騰落の予測機能を搭載するなど、活用が拡がっています。

ディープラーニングでできること

ディープラーニングは機械学習の要素技術の1つであるため、ここでは機械学習技術の中でもディープラーニング技術が得意な分野を紹介します。

ディープラーニングの得意分野は以下の5つです。

  1. 画像認識
  2. 音声認識
  3. 自然言語処理
  4. 自動運転
  5. 医療診断

それぞれ解説していきます。

①画像認識

画像認識とは、画像から特徴をつかみ、構成する各部分を識別する技術です。

機械学習は、画像認識の際、「データのどこに注目すべきか」をあらかじめ人間が設定しなければなりません(特徴量の設定)。

しかし、画像のような複雑なデータに対しては、人間が特徴量の設定を行うことが難しいという課題を抱えていました。

そこで、適切な設定を自動的に発見できるディープラーニングを使うことによって、人間が気付かない各データの特徴を利用した画像認識が可能となりました。

ディープラーニングを活用した画像認識技術は、顔認証システムにも使用されています。最近では、2022年3月から東京ドームで、マスクを着用したままの顔認証による入場と決済が行えるようになりました。

このように、コロナ禍によってもディープラーニングの画像認識技術は進化しています。

画像認識とは|機能・事例・仕組み・導入方法など徹底解説>>

➁音声認識

音声認識とは、AIが人の発した言葉を認識する技術です。

こちらも先ほどの画像認識と同様、機械が自動的に音声データの「どこに注目すべきか」を発見してくれるという理由で、従来の機械学習よりもディープラーニングの方が技術的に適しています。

私たちの身近な例でいうと、スマートスピーカーの「Amazon Echo」やAppleの「Siri」などに、この音声認識の技術が用いられています。

「Amazon Echo」出典:Amazon公式サイトより

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③自然言語処理

自然言語処理とは、人間が普段使う日本語や英語などの言語を、コンピュータに処理させ、構文分析や意味分析などを行う技術のことです。

人間の使う言語は、先ほどの画像データや音声データとは違い、もともと数値化されているものではありません。

したがって言語のその曖昧さが、よりコンピュータの処理を複雑化させています。だからこそ、より複雑な処理に適したディープラーニングが用いられるのです。

私たちの身近な例でいうと、Google翻訳やDeepLなどの機械翻訳、さらに文字変換予測にも用いられています。

出典:DeepLより

今さら聞けない「自然言語処理(NLP)」とは?>>

➃自動運転

自動運転とは、コンピュータが運転における「認知」「判断」「操作」を行うことです。ディープラーニングはその中でも、「認知」に大きく関わっています。

具体的には、先ほどご紹介した画像認識の技術を活用して、車の周りにいるのが人間なのか物体なのかを識別し、その後の「判断」に繋げる役割を果たします。

最近では、この自動運転の機能を搭載した車が各社から発売されました。

また日産は、2030年をめどとして、ほぼすべての販売車に自動運転機能の搭載を発表するなど、今後も自動運転の技術は、ますます普及していくでしょう。

自動運転とは? 各レベル説明と15の実例を紹介>>

➄医療診断

ディープラーニングの技術は、医療診断にも頻繁に活用されています。

例えば、レントゲンやMRI診断での画像認識活用です。

2021年、Googleは病院以外でも診察が行える技術として、スマートフォンで撮影した写真を送り、複数の質問に答えると、皮膚病であるか診断できるサービスを欧州で試験的に開始しました。

今後も、医療分野でのAI市場が世界中で拡大するとみられ、2027年には2019年比約18倍の7兆3000億円にのぼるとの予測があります。

基礎からわかる医療AI ー医療現場の現在から未来までわかりやすく解説>>

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機械学習とディープラーニングにはPythonが向いている

これから機械学習やディープラーニングなど、AI関連のプログラミングを学びたい方には、Pythonがオススメです。

その理由は次の3つです。

  1. 充実したライブラリ
  2. 学習がしやすい
  3. コミュニティが大きい

それぞれ解説していきます。

①充実したライブラリ

Pythonは世界中で利用されているため、広い分野の科学計算用ライブラリが作成されています。

さらに、人工知能ライブラリも充実しているので、機械学習やディープラーニングとの親和性も高いです。

機械学習ライブラリを一挙紹介!|初心者におすすめのライブラリ5選>>

➁学習がしやすい

Pythonは、シンプルな言語を目指して開発されたため、コードの量が少ないです。

また、記述のルールが決まっており、その文法規則(インデント)を必ず使用するので、初心者でも読みやすいという特徴があります。

さらに、Pythonはコンパイル(記述したプログラムをコンピュータが実行しやすい言葉に書き換える処理)が不要です。初心者にとっては、手間が省けるので学習をスムーズに進めやすい言語といえるでしょう。

③コミュニティが大きい

現在、Pythonは世界でもっとも勢いのある言語といわれています。

そのため、開発コミュニティ内の議論も活発であり、困ったことがあれば検索して解決することも容易です。

例えば日本の有名なPythonコミュニティとして、「Python.jp Discordサーバ」や女性向けの「PyLadies Tokyo」が挙げられるので、気軽に参加してみましょう。

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まとめ

今回は、「機械学習とディープラーニングの使い分け」について解説してきました。

まずは、機械学習とディープラーニングのメリット、デメリットをしっかり把握することが大切です。

その上で、機械学習とディープラーニングそれぞれを適切に使い分けることがプロジェクト成功のポイントになります。

また、ビジネスでAIを使う方だけではなく、これから機械学習やディープラーニングを学ぶ方も本記事を参考にしてみてください。

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