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株式会社オープンハウスが AI・RPA技術の研究開発を実施し、 ディープラーニングや遺伝的アルゴリズムなどの高度な技術を活用することで従来は人が手作業で行わざるを得なかった不動産の業務を自動化、 既に10テーマの実現により年間25,700時間の工数削減に成功、 一部テーマにて特許出願中となったと発表しました。
オープンハウスでは2018年より、 AI・RPAによる業務の自動化の取り組みを始めました。内製で既存のAI・RPA技術を活用した開発を行うだけでなく、事例のない先駆的な応用研究も実施、スペックが求められるGPUマシンはクラウドを活用し、低コストでの導入を実現しているとしています。
また、課題とされる高度なAI人材の採用については、海外での新卒採用を実施、既に下記の物件資料作成の機械学習モデルの開発を行うなど初年度から成果を出しています。
具体的な事例は以下の3つです。
オープンハウスでは昨年度より宅地の仕入検討時におけるプラン図の作成(宅地区割り)の設計作業の自動化の研究開発に取り組んできました。
この研究開発についてはバーチャレクス・グループの株式会社タイムインターメディアに委託、 遺伝的アルゴリズムを2次元の図形分割問題に適用することで複雑な建築ルールを遵守しながら最適な区割りプランを提案するシステムをタイムインターメディア のAIソリューション「進化計算DARWIN(ダーウィン)」により開発しています。
区割りを実施する際の制約条件となるパラメータを入力するとそれを遵守した状態でのプラン候補を提示。 このアウトプットをCADファイルとしてダウンロード、 人が確認することで作業工数を8割程度削減することが可能です。 現在は実証研究として現場でのトライアルを開始、 実現すれば世界初の試みとなります。 なお本技術については特許出願中とのことです。
2つ目の事例は顧客への説明資料の抜粋・編集の自動化です。オープンハウスの仲介業務において従来、顧客に提示する資料は社内の膨大な数の資料を営業が人手で検索・編集・結合しており、 煩雑かつ単調な業務に工数を多く割いていました。
ここにディープラーニングを活用することで、 工数を大幅に削減することに成功。 具体的には汎用画像分類モデル(ResNet)に対して転移学習を行い、不動産資料に特化した分類モデルを開発、 社内のファイルサーバに保存された各種営業資料を分類して必要な資料の抜粋、 編集を自動化しました。
また、媒介物件資料の帯部分を検知するモデル作成も行い、物体検出モデル(Faster-RCNN)の転移学習により開発、 これを物件資料に適用することで帯の差し替え作業を完全に自動化することに成功しました。
この2つの機械学習技術を活用した資料の編集・加工の自動化システムにより年間20,000時間の工数削減を実現したとのことです。
3つ目はRPAの取り組みです。仲介業や開発業務において実際に物件現地を案内・視察する際、 地図や謄本情報等、 物件関連資料が必要になる機会が多く存在します。
しかし、それらの資料の多くは社内ネットワーク内からのみアクセスできるシステム内に存在するなど、 外部で取得することは不可能あるいは敷居が高いものでした。
そのため、 今まではオフィスにいる社員に電話して取得して送ってもらうしかありませんでしたが、障壁も高く、 そもそも詳細な案内・調査を諦めるケースもありました。
今回、 この一連の物件関連資料の社内外複数システムからの取得、 及びその送信を、 RPA(Robotics Process Automation)技術を活用する事で自動化、 外出先からもスマートフォンから最低限の必要事項を記入したメールをロボット宛てに送るだけで、 1~2分程度で必要資料を集めて送付するロボットを開発。
これにより年間1,920時間の工数削減を実現するだけでなく、 心理的に取得をためらってしまった物件紹介・開発における機会損失回避にも貢献しているとのことです。
今後もオープンハウスでは、このような最先端ITによる不動産業務の自動化を通じて、 働き方改革の推進、 不動産業界のイノベーション事例の創出に取り組み続けるとしています。