
「AIエージェント」という言葉が社内で急速に広まり、既存のRPAとの違いを上司や他部署から尋ねられて困った経験はないでしょうか。
両者は業務を自動化する技術という共通点を持ちながら、判断能力とルールに基づく実行という点で明確に異なります。
違いを理解せずに導入すると、既存のRPA投資が無駄になったり、自動化の対象を必要以上に狭めてしまったりする恐れがあるでしょう。
本記事では、AIエージェントとRPAの違いを比較表で整理したうえで、業務ごとの使い分け方や組み合わせ方、導入の進め方まで解説します。
読み終える頃には、自社のどの業務にどちらを当てるべきかを自信を持って判断できるようになります。
目次
AIエージェントとRPAの違いを比較表で確認
AIエージェントとRPAの違いは、判断のしかた・得意な業務・導入のしやすさという3つの軸で比較すると整理しやすくなります。
両者は「何を基準にタスクを実行するか」が根本的に異なるため、機能を並べるだけでは違いが伝わりにくいためです。
| 観点 | AIエージェント | RPA |
|---|---|---|
| 判断のしかた | 状況に応じて自ら判断する | あらかじめ決めたルール通りに動く |
| 得意な業務 | 非定型業務(問い合わせ対応、市場調査など) | 定型業務(データ入力、請求書処理など) |
| 導入のしやすさ | 業務設計や運用ルールの整備が必要 | 手順が決まっていれば短期間で導入できる |
| 想定外の入力への対応 | 状況に応じて対応方法を変えられる | 想定外の入力に弱い |
表で挙げた3つの軸について、それぞれの違いを次の見出しから詳しく見ていきます。
AIエージェントとRPAは判断のしかたが違う
判断のしかたの違いは、AIエージェントとRPAそれぞれの動き方を比較するとわかります。
AIエージェントは状況を判断しながら自ら動く
AIエージェントは、目的を与えられると状況を読み取りながら次に取るべき行動を自ら判断します。
あらかじめ全ての手順を人が設計する必要がなく、想定外の入力があっても状況に応じて対応方法を変えられるためです。
たとえば顧客からの問い合わせでは、内容を解析して回答を作成するだけでなく、過去の対応履歴を参照して優先度を判断します。必要に応じてエスカレーションするところまで、一連の対応を担えます。
業務の手順を細かく設計しなくても着手できるため、非定型な業務にも自動化の範囲を広げられます。
RPAは決められたルール通りに動く
RPAは、人があらかじめ設計した手順どおりに操作を繰り返す仕組みです。
画面操作や入力の手順を一つひとつ記録したシナリオに沿って動作するため、判断や解釈は行いません。
データ入力や請求書の転記、システム間のファイル移動など、手順が変わらない業務では高速かつ正確に処理を繰り返します。
手順が決まっている業務であれば、AIエージェントより短期間かつ低コストで自動化を始められます。
AIエージェントとRPAは得意な業務が違う
得意な業務の違いは、非定型業務と定型業務のどちらに向いているかで整理できます。
AIエージェントは非定型業務に向いている
AIエージェントは、判断や解釈が必要な非定型業務に向いています。
状況によって対応内容が変わる業務では、ルールを事前にすべて用意することが難しいためです。
顧客からの問い合わせ対応、市場調査や競合分析、過去の実績データを踏まえた需要予測に基づく在庫の最適化などが該当します。
これまで人が判断していた業務の一部を任せられるため、担当者はより難易度の高い業務に時間を使えます。
RPAは定型業務に向いている
RPAは、手順が決まっている定型業務に向いています。
例外が少なく処理内容が固定されている業務ほど、設計したシナリオのまま高い精度で繰り返せるためです。
データ入力、請求書処理、システムへの転記、決まったフォーマットでのレポート作成などが代表例です。
定型業務をRPAに任せることで、人はミスの確認や判断が必要な業務に集中できます。
AIエージェントとRPAは業務の性質で使い分ける
使い分けの基準は、業務に判断や例外対応がどれだけ含まれているかで決まります。
例外や判断が必要な業務はAIエージェントを選ぶ
業務の中に判断や解釈が求められる場面が含まれる場合は、AIエージェントを選ぶのが適しています。
想定外のパターンが発生しやすい業務ほど、ルールをすべて事前に用意するRPAでは対応しきれないためです。
問い合わせ内容によって回答や対応部署が変わるカスタマーサポート、条件が毎回異なる調査業務などが当てはまります。
判断が必要な業務までAIエージェントに任せられれば、人が確認・調整する工数を減らせます。
手順が固定された業務はRPAを選ぶ
手順が固定されていて例外が少ない業務は、RPAを選ぶのが適しています。
シナリオどおりに動くRPAは、決まった作業であれば人よりも速く、間違いなく処理を繰り返せるためです。
請求書のシステム入力、決まったフォーマットのデータ転記、定期的なレポート出力などが向いています。
定型業務を切り分けてRPAに任せることで、AIエージェントの導入・運用コストを抑えながら自動化を進められます。
AIエージェントとRPAは組み合わせて使うこともできる
2つの技術は競合するものではなく、組み合わせることでより広い範囲を自動化できます。
ハイパーオートメーションという考え方
判断が必要な工程をAIエージェントが担い、実行部分をRPAが担う組み合わせ方をハイパーオートメーションと呼びます。
単独では対応範囲が限られる2つの技術を組み合わせることで、判断から実行までを一連の流れとして自動化できるためです。
「頭脳」であるAIエージェントが状況を判断し、「手足」であるRPAが正確に実行するという役割分担で説明されることが多くあります。
既存のRPA資産を置き換えずに活用しながら、自動化できる業務の範囲を広げられます。
AIエージェントが判断しRPAが実行する連携例
連携の代表例は、問い合わせ対応におけるAIエージェントとRPAの役割分担です。
内容の解釈や本人確認といった判断が必要な部分と、システムへの登録作業のように正確性が求められる部分では、適した技術が異なるためです。
社内ヘルプデスクでは、AIエージェントが「パスワードを忘れた」という問い合わせを解析し、本人確認まで対応します。実際のパスワード再発行とシステムへの登録作業は、RPAが担うといった連携が見られます。
このような役割分担により、これまで人が介在する必要があった業務プロセス全体を自動化の対象にできます。
既存のRPAはAIエージェントの登場でなくなるのか
既存のRPAは、AIエージェントの登場によってなくなるわけではありません。むしろ実行を担う基盤として使われ続けます。
構造化された定型業務は今後も発生し続け、そうした業務ではRPAのほうが低コストかつ確実に処理できるためです。
構造化された業務ではRPAが今も使われている
手順が変わらず例外が少ない業務では、RPAが今も第一の選択肢です。
AIエージェントに同じ処理を任せると、判断のための処理が余計に発生し、コストや速度の面で不利になりやすいためです。
請求書のシステム入力や決まったフォーマットのレポート作成など、構造化された業務は多くの企業で発生し続けます。
既存のRPAをそのまま使い続けられる業務を見極めれば、AIエージェント導入のコストを必要な範囲にとどめられます。
AIエージェントはRPAを実行基盤として使うこともある
AIエージェントが判断した内容を、RPAが実行部分を担って処理する構成も広がっています。
AIエージェントに実際のシステム操作まで担わせると、誤操作や想定外の挙動が起きた際の影響が大きくなるためです。
AIエージェントが問い合わせ内容を判断し、実際のデータ入力や登録作業はRPAに任せるという役割分担が代表例です。
RPAを実行基盤として活かせば、既存の自動化資産を無駄にせずAIエージェントの導入を進められます。
AIエージェントとRPAの活用事例
実際に企業がAIエージェントとRPAをどのように使っているのか、それぞれの事例を紹介します。
AIエージェントの活用事例
大和証券グループ本社は、AIエージェントを使って顧客との面談内容を自動で記録する仕組みを導入しました。
従来は営業担当者が面談後に手作業で記録を作成していましたが、生成AIによる自動記録に切り替えています。
入力にかかる時間は従来と比べて45%減り、記録できる文字数は4倍に増えたと報告されています。2025年1月に始まり、支店の営業担当者の約80%が利用しています。
記録作業にかかる時間を削減できた分、担当者は顧客への提案など付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
RPAの活用事例
極東開発工業は、200社以上の取引先とやり取りする請求書業務にRPAを導入しました。
請求書の公開作業、取引先による承認確認、承認後の電子保存という3つの工程を自動化しています。
導入前は担当者1人あたり1日1時間ほどかかっていた請求書対応の時間がほぼゼロになり、1人あたり月20時間の削減につながっています。
手順が決まっている確認作業をRPAに任せたことで、担当者は取引先対応など人の判断が必要な業務に時間を使えるようになりました。
AIエージェントとRPAの導入を進める3つのステップ
AIエージェントとRPAを導入する際は、次の3つのステップで進めると業務に合った選び方ができます。
- 自社の業務をタイプ別に洗い出す
- 業務に合うツールを選定する
- 小さく試して効果を検証する
手順を踏まずに導入すると、業務に合わないツールを選んでしまい、投資が無駄になるおそれがあります。
ステップ1:自社の業務をタイプ別に洗い出す
導入の第一歩は、自社の業務を定型業務と非定型業務に分けて洗い出すことです。
業務のタイプによって適したツールが異なるため、洗い出しが不十分だと選定を誤りやすくなります。
手順が変わらない請求書処理やデータ入力は定型業務、内容によって対応が変わる問い合わせ対応や調査業務は非定型業務に分類できます。
業務を整理しておくことで、次のステップでツールを選ぶ判断基準が明確になります。
ステップ2:業務に合うツールを選定する
洗い出した業務のタイプに応じて、RPAとAIエージェントのどちらを使うかを選定します。
タイプに合わないツールを選ぶと、想定した効果が得られなかったり、余計なコストがかかったりするためです。
定型業務にはRPA、判断が必要な業務にはAIエージェント、両方を含む業務は組み合わせて使うといった判断が基本になります。
この段階で判断基準を明確にしておくと、導入後の運用や見直しの判断もしやすくなります。
ステップ3:小さく試して効果を検証する
選定したツールは、一部の業務や部署に絞って小さく試すことから始めます。
全社に一度に導入すると、想定していなかった問題が発生した際の影響が大きくなるためです。
対象範囲を1つの部署や業務に限定し、削減できた時間や精度を確認したうえで対象範囲を広げる進め方が一般的です。
小規模な検証を経ることで、自社に合った運用方法を見つけながら無理なく導入範囲を広げられます。
AIエージェントとRPAに関するよくある質問
AIエージェントとRPAの違いに関する質問は以下の4つです。
- AIエージェントとRPAはどちらが安く導入できますか
- AIエージェントとRPAを両方導入する場合、費用対効果はどう考えればよいですか
- AIエージェントとRPAはどちらも生成AIを使っていますか
- RPAだけで自動化を進めている企業はAIエージェントに移行すべきですか
質問に対する回答を確認して、自社の自動化の方針を検討する参考にしてみてください。
AIエージェントとRPAは競合ではなく補完し合う関係
AIエージェントとRPAは、判断能力とルールに基づく実行という点で明確に異なります。AIエージェントは非定型業務に、RPAは定型業務に向いており、どちらも自社の自動化戦略に必要な技術です。
導入を検討する際は、自社の業務を定型・非定型に分けて洗い出したうえで、業務に合うツールを選び、小さく試しながら範囲を広げる進め方が適しています。
既存のRPAは、AIエージェントの登場によって不要になるわけではありません。判断が必要な業務にAIエージェントを組み合わせることで、これまで自動化できなかった範囲まで対象を広げられます。
まずは自社の業務の中から、判断が必要な業務と手順が固定された業務を書き出すところから始めてみてください。
















