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2018.03.29

【佐藤理事インタビュー】ディープラーニング協会は国内のAI状況をどう見ているのか

最終更新日:

2017年10月、日本ディープラーニング協会(以下JDLA)の設立が発表されました。

ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指して設立されました。G検定やE資格などのイメージが強い方も多いでしょう。

日本ディープラーニング協会(JDLA)について詳しくは、この記事を参考にしてみてください。

日本ディープラーニング協会(JDLA)

JDLAはいくつかの委員会に分かれて運営されています。検定事業は試験作成委員会が取りまとめており、他にもいくつかの委員会があります。

そして委員会の中で、ディープラーニングの産業活用を推し進めているのが、産業活用促進委員会です。言葉の通りディープラーニングを産業で活用していくために、さまざまな取り組みを進めています。

今回の記事は、普段はなかなか知ることができない産業活用促進委員会の活動について紹介します。委員長で元クロスコンパス社長の佐藤さんに取材しました。

佐藤 聡
1989年東京理科大学工学部機械工学科ロボット研究室で初めてニューラルネットに触れる。人工知能を用いた自動演奏を実現すべく、株式会社ローランド入社。その後、ソフトウエア会社勤務を経て起業。20年弱の期間、主にJavaによる多種多様なシステム構築・経営に従事。2011年人工知能技術開発に特化した株式会社クロスコンパスに創業メンバーとして参加。2014年10月に代表取締役に就任。また、2017年10月に設立が発表された「日本ディープラーニング協会」の理事ならびに「産業活用促進委員会」の委員長に就任

ーー産業活用促進委員会は日本におけるディープラーニングの活用について何を課題視しているのでしょうか?

佐藤さん「私たちディープラーニング協会・JDLAのミッションは、二つあります。一つ目は人材の育成、二つ目は産業活用の推進です。

人材の育成については、AI業界の人材不足が嘆かれています。ということは、ディープラーニングとしての人材もとても少ない現状です。これは大きな問題だと認識しています。

人材が育成されないと、産業活用が推進されません。そのため、人材不足を課題として対策にあたっています。

産業活用の促進も課題です。日本ではオープンイノベーションが進んでいません。

時系列データを用いた予兆や異常検知のノウハウがあっても他の業界に横展開されません。会社の外にオープンにしても良いノウハウが共有されていないんです。

さまざまな業界で共通して使える部分の開発を、さまざまな人が同時に行っています。これは開発時間の無駄であり、人材が足りていないのにも関わらず、さらにディープラーニングの活用促進を遅れさせています。今後は、知識を共有化していくことが大切だと考えています。

オープンイノベーションとは言っていますが、細かなノウハウや知見なども含めて匿名性を担保して共有することで産業の底上げにつながればいいなと考えています。」

ーー産業活用促進委員会は、その課題のために何に取り組んでいるのでしょうか?

佐藤さん「ノウハウや知見のオープン化という文脈では、まず委員会でさまざまな知見を蓄積しています。
具体的には事例共有専用のSlackチャンネルを設置して、積極的にさまざまな事例などを収集しています。

まだSlackはJDLAの会員や賛助会員など限定で運営していて、まだ一般に見られるようにはなっていません。産業活用推進委員会に一定程度の知見が蓄積されれば、書籍やWebで発信していこうと考えています。

また、ディープラーニングの市場調査も行います。AI全体やIOTを絡めた市場調査はありますが、ディープラーニングに限った市場調査はまだありません。ディープラーニングの現状を正確に把握するために市場調査を行っていく予定です。どの分野でどのように使われているのかなども明らかにしていきます。

ーー人材不足解消のためには何か取り組みをされていますか?

人材不足の改善のために、マッチングイベントをやろうと考えています。JDLAが実施しているG検定やE資格の合格者と企業を結ぶイベントです。

G検定とE資格それぞれの対象とする人材

ディープラーニング人材が不足していると聞くとエンジニアが足りていないと考えがちですが、プロジェクトマネージャーなどのエンジニア以外の職種でもAIの知識が必要になっています。そのため、まずはAIについて幅広い知識を問うG検定に合格した人を呼んで企業とマッチさせ、産業活用や人材不足を軽減させていきたいと考えています。

また、G検定を受けている人は、なにか違う仕事をしている人が多いです。つまり実業をやっている人が多いんですね。
AIだけではなく、AI以外の知識があるからこそ、AIを活用していくことができます。今後は、AIとそのほかの分野をブリッジで対応できる人材が必要になってくると考えています。

他の業界の人は、AIの理解が少ないため、カバーが必要なんですよね。」

 

ーーなぜオープンイノベーションが進みづらいのでしょうか?

佐藤さん「さまざまな理由がありますが、一つは知財の取り扱いです。

AIの開発物の知財(著作権などの権利関係)のガイドラインが今のところありません。そのため、契約の見本となるガイドラインを策定するなどの取り組みもしていきたいと考えています。」

ーー国際的には何か取り組みはありますか?

佐藤さん「中国などの巨大な国の資本を持っている国と戦わなければならないと思っていますが、逆にそういう国と連携もしていきたいです。

ディープラーニング協会の活動は当然日本が基軸になっていますが、どこの国から見ても黒船的なスゴイ会社は世界にあるので、そことは仲良くして仲間にならないといけないなと考えています。」

ーー今のディープラーニングの状態は佐藤さんはどのように見ているのでしょうか?

佐藤さん「AIという言葉が先行してしまっていますよね。そのため、あえてディープラーニングということで対象を絞っている。フェイクAIとか言われることもありますが、ディープラーニングはそこに含まれてはいけません。また、ディープラーニングは今後AIとは言われなくなる可能性もあります。

今、私たちが当たり前に使っている技術も、当時はAIといわれていたものがあります。しかし、時間が経つことでAIとはいわれなく、ひとつの技術として見られることが多いんです。」


意外な視点を得ることができた取材でした。検定を行っているディープラーニング協会の見据える人材不足はエンジニア不足だけではなく、AIの活用を進めていくブリッジ人材だったんですね。

また、オープンにしてもいい情報とオープンにしてはいけない情報を明確に区別できるようにし、日本としてディープラーニングを積極的に活用していきたいものです。

今後もAINOWはJDLAの取材を通して、ディープラーニング領域を俯瞰しながら、みなさんにお伝えできればと思います。

2018.03.26 取材・編集:おざけん@ozaken_AI

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