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最近、若者のテレビ離れが進んでいます。この記事をご覧になっているみなさんの中にも、テレビをあまり見ないという方もいるのではないでしょうか。
今ではYouTubeやNetflix、Amazon prime videoなどの動画配信サービスが浸透し、テレビではなくスマートフォンで自分が観たい時に観たい番組を観ることができるので、「若者のテレビ離れ」と言われるのも納得できます。
そんな中、若者のテレビ離れが進んでいるテレビ業界では、AIを活用することで課題を解決しようとする動きが出てきました。
近年、様々な分野で活躍し注目が集まっているAIですが、テレビ業界を変えることができるのでしょうか。このような疑問に答えるため、現段階でテレビ業界に活用されるAIについて調べてまとめました。
▶《AI事例25選》産業別にAIの活用事例をまとめました>>
【この記事でわかること】 ※クリックすると見出しにジャンプします |
目次
AI搭載テレビとは
AI搭載テレビとはその名の通り、AIが搭載されたテレビです。スマートスピーカーのように、ユーザーの声に反応して音声での指示が可能です。
ユーザーの見たい番組を即座に写すなど、ユーザーの行動を学習して、より便利な使い方を提案してくれます。
また、さまざまなスマートスピーカーとの連携ができるテレビが出てきており、家電同士の連携ができます。膨大な番組情報の中からユーザーの求めた番組を検索してくれるので、効率的にテレビを楽しめるでしょう。
そもそもテレビ業界にAIって必要なの?
出演者にディレクター、カメラマン、大道具、音響、照明たくさんの人の協力の上で、テレビ番組がつくられています。本当にテレビにはAIは必要なのでしょうか?
テレビ制作者は?
ディレクターやリサーチャー(取材先を探す人)はいつも必死にネタ探しをしています。どんな番組が多くの人に観てもらえるのか、どんな企画がウケるのか、日々模索しています。
そして番組を立ち上げたり、収録に間に合うように取材を行います。しかし、いくらネタが充実してても視聴率が上がらなかったら番組は終わってしまいます。「今人気の番組を真似した番組」がよく生まれてしまう原因になっています。
視聴者は?
どの番組を観ても似たり寄ったりだと思ったことはありませんか?
YouTubeなど、自分が好きなテーマをいつでも選べるようになった今、わざわざテレビをつけて視聴するというスタイルも崩れつつあるのかもしれません。
テレビを見ていて、筆者も同じようなキャストや企画ばかりだなと思うことがあります。
「新しさ」がテレビ業界には最近足りていないのかもしれませんね。
AIの活用が徐々に進むテレビ領域
分析や学習が得意なAIこそ、これらの問題に取り組むのに最適だと思いませんか?
既存のデータから視聴率などを分析し、そこから新しい企画を提案したり、過去の映像を学習させることで新しく撮った映像の編集をしたり、AIを活用することで今までの悩みを解決してくれるかもしれません。
ちなみにテレビ業界だけでなく、ゲーム業界にもAIは活用されています。
▼AIについて詳しくはこちら
テレビ業界でAIはどのように活用されているのか?
テレビに搭載されているAIはユーザーがどんな番組を好んで見ているのか、どんな時間帯に見ているのかなどの情報を収集し、蓄積します。そのデータを分析し、ユーザーの視聴可能な時間に好みの番組を提案してくれます。
地上波やBSなど膨大な数の番組がある中で自分が見たい番組を自分で見つけるのはなかなか難しいでしょう。AI搭載テレビは、ユーザーの好みを学習して提案してくれるので、テレビをより楽しめます。
リアルタイム文字マスク
「リアルタイム文字マスク」とは、提供クレジットの表示中、背景に文字のようなものが映ったときにリアルタイムで自動的にぼかしを入れる技術です。
このシステムは、動く文字を瞬時に識別するものであり、AIの弱点である「意味の理解」が必要ありません。むしろ、AIの得意分野を活かした技術だと言えます。
テレビ業界では、提供クレジットの背景に文字が映るのは放送事故だとされています。
これまで、生放送中に瞬時にぼかしを入れるのは不可能とされていましたが、このシステムのおかげで放送事故の抑止につながりました。
スポーツ中継
スポーツ中継にもAIが活用されています。
テレビのロードレース中継で、走っている選手にチーム名や名前が表示されているのを見たことがあるでしょうか。
AIが走っている選手を識別し、即時にチーム名や名前を表示するシステムがスポーツ中継で活躍しています。特に、ロードレース中継はカメラで選手の顔を確実に捉えることが難しいスポーツです。したがって、このようなシステムは視聴者にランナーの情報を明確に伝えるのに役立っています。
また、AIが走っている人の距離を識別し、選手間の距離を自動で表示できるシステムも誕生しています。
このようなAIのシステムのおかげで、生中継の映像にも即座に正確な情報を入れられるのです。
AIをテーマにした番組
最近では、AIをテーマにした番組の作成も進んでいます。
以下で解説していきます。
AIが企画を考え、Pepperが司会をやる新感覚の番組
2017年の10月から2018年の3月まで『AI-TV』という番組がフジテレビ系列で放送されました。この番組は、AIと手を組み、様々な企画を考えてもらい、それを実際に若手芸人が実践するというコンセプトの番組です。
この時のAIは、”AI-CD β”という名前で、CMの優秀作品に贈られる広告賞の受賞作品10年分のデータがインプットされていました。リクエストを入力することで、過去のデータを元に、面白いであろう企画の内容を勝手に導き出してくれます。
その上、司会のpepperは人の表情や声から感情を予測する「感情認識機能」を持っているため、状況に応じた見事なMCを披露しました。
AIの開発に挑戦したNHKスペシャル
NHKスペシャルは、日本の現状や社会の課題について取り上げるドキュメンタリー番組で、30年以上続く長寿番組です。
そのNHKスペシャルが、新たな視点としてAIの開発に挑戦しました。その企画が『AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン』(2017.7~不定期放送)です。
人口動態統計などの大量の公的データをAIにインプットし、導き出された分析結果を「AIの提言」として番組で紹介しています。
不定期の放送ですが、とても興味深い内容ばかりなのでぜひチェックしてみてください。
初回視聴率もAIが予想!結果は、、、?
先ほど紹介した『AI-TV』では、初回放送が始まる前にAIを使って視聴率を予測していました。そのサービスは”SHAREST β版”と言って、電通が開発し、2017年にリリースされたものです。
このサービスでは、一週間も前に番組の視聴率を予測することができます。しかしながらこのサービスはあまり正確ではなく、『AI-TV』の予測が5.0%だったのに対して実際は2.9%でした。
その後、電通は新たに”SHAREST_RT”というサービスをリリースしました。入力できるデータの量を増やすことで、より高度で安定的に視聴率予測できるようになりました。
今後さらに正確性が増せば、CMの広告効果を高めつつ、視聴率予測をする業務を効率化できると期待されています。
スポーツ中継がAIによってレベルアップ
テレビ撮影において、カメラマンは必要不可欠な存在です。カメラマンの技術もAIで大きく変わろうとしています。
特にスポーツ中継では、AIの活用が進んでいます。なんと、AIカメラが一台とパソコン一台。これだけで中継が可能になります。これによって人件費や撮影の準備、編集などの手間を省けるので、現場にとってはいいことばかりです。
筆者も実際にAIカメラ「Pixellot」(イスラエルの企業「Pixellot Ltd.」)で撮影したバスケットボールの試合を拝見しましたが、ボールや人の動きをしっかり捉えており、ズームイン・ズームアウトも完璧と言えるものでした。
これほど手軽なのであれば、プロにとどまらず、部活やクラブチームの撮影も簡単に行えます。
今後は人間の手で撮影されるものが減って行き、スポーツだけではなく、音楽番組などにも活用されていくのではないでしょうか。
AIによるテレビの視聴方法の変化
ここまでは、テレビをつくる際に使われるAIの活用事例を見てきました。しかし、テレビ×AIの関わりの事例は、制作側だけでなく視聴者側にも見られつつあります。
その代表的な事例が「AI搭載ネットプレイヤー」と「AI搭載テレビ」です。現在、ネットプレイヤーやテレビにはさまざまなAI機能が搭載されており、世の中に普及しつつあります。
以下では実際にAIが搭載されたネットプレイヤーとテレビを紹介しつつ、各製品の概要や魅力など解説していきます。
AI搭載ネットプレイヤー|『ココロビジョン』
シャープが開発したネットプレイヤー「ココロビジョン」には、人感センサーが搭載されており、帰宅すると自動でテレビの電源がオンになります。
そしてAIがユーザーの好みの番組を学んでオススメを勝手に表示してくれます。
さらには音声機能も搭載。リモコンのマイクに観たい番組を話しかけると探す手間が省けます。また、自分のスマートフォンと接続もできます。
ココロビジョンのホームページには「そっとサポート」というキャッチコピーがあります。ユーザーにAIと寄り添ってほしいという思いが伝わるサービスですね。
アイリスオーヤマ『LUCA(るか)シリーズ』
アイリスオーヤマは、2019年からテレビ業界に本格的に参入し、”色鮮やか、目に優しい”をコンセプトとした「LUCA(るか)シリーズ」を販売しました。
同製品の最大の魅力は、スポーツやニュース、映画など、視聴中の番組のジャンルに合わせて、それぞれのコンテンツの特長を最大限活かすよう、視聴に最適な画質と音質に自動で調節できる点です。
具体的に述べると、視聴者が見やすいようにAI技術で導き出した画質と音質への自動調整を実現できます。
例えば、音楽番組では音楽がダイナミックに聞こえるよう、スポーツ番組では選手の表情や動きがはっきり分かるように番組ジャンルを認識し、ジャンルに合わせて画質と音質を調整できます。
またリモコンに高性能の音声認識回路とマイクが内蔵されているため、スマートスピーカーより簡単かつ高精度に音声操作できる点も同製品の特長です。そのため、買い物帰りや作業中で両手が塞がっているときなど、さまざまな利用環境に対応できます。
音声操作モードを起動するウェイクアップワードの「ねえ、るか」「るか、てれび」に続き、あらかじめ設定された28種類の操作ワードを、音声操作リモコンに向かって発話するだけで、電源のオン・オフや、チャンネル変更、音量の調整などを手軽に操作することができます。
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4K液晶『ビエラ JX950シリーズ』
「ビエラ JX950シリーズ」はPanasonicから発売されているテレビです。
AI技術により、自動で最適な画質・音質に調整してくれるのが特徴です。「自宅でエンターテインメントを楽しむ時間」をより豊かにすることがコンセプトの商品なので、さまざまなコンテンツを臨場感溢れる画質・音質で楽しめます。
シャープ『新・AQUOS 4K』
「新・AQUOS 4K」はシャープで発売されているAI搭載テレビです。AIがユーザーの好みを学習し、おすすめの番組を音声で知らせてくれます。
前述した「ココロビジョン」に対応しており、ユーザーのよく見る番組や時間帯から分析をし、各ユーザーの好みをおすすめします。
また、人感センサーが搭載されており、人が近づくと挨拶をして自動的に電源を入れてくれます。
ユーザーの好みを学習してくれるので、ユーザーは取り入れたいコンテンツを無駄なく取り入れられます。
まとめ
今回はAIがテレビ業界でどのように役に立っているのかを解説してきました。人間ではなくAIがテレビを作るのも面白いですよね。
とはいえ、AIは未だ完璧な技術ではありません。テレビ業界でも完全な導入は進んでいないのが現状です。またAIが作る番組など、AIに関する番組は多くの人には観てもらえない深夜帯ばかりに放送されがちです。
しかし、今回紹介した技術がより発展していけば新しい番組のコンテンツが生まれる可能性は大いにあります。
若者のテレビ離れが進んではいますが、これからのテレビは今までよりもワクワクしたものになるかもしれません。ぜひ楽しみに待っていましょう!