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AINOWライターのゆーどーです。
近年、企業の採用業務においてAIが活用されていることを知っていますか?
AIを導入することにより、作業効率がアップすることが注目され、一次選考や面接で活用されることが多くなってきました。
実際に、作業効率が75%カットされたという事例もあります。劇的な成果を残す一方、過去には「女性差別」のような問題点も生じています。
今回は、AIによる採用業務について、AIの採用によるメリット・デメリットを紹介します。
また、企業での実際の導入例や、採用活動でAIを活用する際に気をつけることについても紹介します。
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目次
AIの進歩により変化する採用業務
毎年3月から夏にかけて、就職活動をする学生たちが、一斉にエントリーシートを提出し、選考が始まります。
人気企業や各業界の大手企業には、数万枚ものエントリーシートが届きます。各企業の担当者は膨大な工数を割いて、エントリーシートを振り分けていきます。
エントリーシートが通過すると、次は、個人面接や集団面接を行います。面接を担当する人は、1日あたりで多くて数十人を面接する作業が数週間続きます。
このように採用業務にはたくさんの工数がかかっています。そのような中、最近の企業では、AIを活用することで採用業務を効率化しています。
では実際に、採用業務のどのような場面でAIが活用されているのでしょうか。次で説明します。
採用業務でAIができることとは?
企業の採用活動でAIが活用されている場面は主に2つあります。エントリーシートの合否を振り分ける時と、面接を担当する時です。これらの各項目について紹介します。
AIでエントリーシート選考の効率化
採用業務において、AIにエントリーシートを読み込ませて、通過するエントリーシートを判断するAIがあります。このAIは、企業の人事部の間でも広く知られています。
この場面でAIを活用することで、エントリーシートの合否を決める時間を大幅にカットできます。
また、時間カットだけではなく、過去のエントリーシートをコピーしていた場合、そのコピーを見極めることもできます。
例えば、この際にAIを活用する場合は、まず、過去の合格者のESと不合格者のESをすべて学習させます。そして、AIがその中で合格したパターンや、企業が求める人材像を学習させ、それらにマッチした人のエントリーシートが通過するという仕組みです。
不合格になったESは再度、人事担当者がチェックするという二重チェックの仕組みを取り入れている企業もあります。
AIが面接官になり、合否判断
今はAIが面接まで担当する事例が生まれていることを知っていますか?
AIが一次選考となるESを判断し、さらに面接まで担当することで、各企業の採用担当者の業務も格段に減少し、迅速に採用を進めることができます。
面接では過去の面接の内容を学習させ、コメントの解析をします。そして合否を判断します。アメリカでは、AIが対応したESや面接がスコア化されるサービスも提供されています。
AIが面接を担当することで、面接官による学歴などの先入観がなくなります。そのため、優秀な人材を逃すリスクが減る効果があります。
このメリットは学歴をネックとして抱えている学生も偏見をもたれないという点では大きなメリットです。しかし、学生が抱く熱意が伝わらないという点はデメリットです。
では、ここからAIが採用業務に携わるメリットとデメリットをまとめて紹介します。
そもそも「AI」とは
AIとは「Artificial Intelligence」の略です。人間の行動の一部をソフトウエアが再現することで、ビジネスでも日常生活でもさまざまな作業を行うようになることを指します。
AIを「コンピューター上の自然知能」「人間のような知能を持ったコンピューター」と考えても間違いではありませんが、AIは明確に定義されているわけではありません。
AI採用の5つのメリット
AI採用には以下、5つのメリットがあると考えられます。
それぞれ解説していきます。
①採用基準の明確化
人事部がしっかりとした採用基準を作ったとしても、面接官の主観が入ることは否めません。
たとえ優秀な人材であっても、面接官と相性が悪ければ不採用になることもあります。
一方、AIは基準を設けることで客観的に判断できます。
②人件費の削減
一人当たりの面接時間を30分程度と考えたとしても、50人面接すれば25時間かかります。とくに応募者が多い会社であれば、膨大な時間がかかることになります。
そのため、書類選考や一次選考の段階でAIを採用する企業が増えているのです。
③ミスの低減
履歴書やエントリーシートの選択・選別、メールのやり取りなど、人間が担当するよりも正確で精度の高い作業が可能です。
ヒューマンエラーを防ぐには、AIが最適だと考えています。
④少人数制の導入
AIは採用担当者の面接回数を減らすだけでなく、選考の半分の力を削ぐので、より少ない人数で採用できます。
⑤24時間利用可能
AI面接を導入することで、24時間対応が可能になります。
これにより、時差のある海外人材や、他社を併願している新卒者、なかなか時間を合わせられない転職者などの面接が可能になります。
AI採用の5つのデメリット
AI採用には以下、5つのデメリットがあると考えられます。
それぞれ解説していきます。
1.採用基準の明確化
基準は明確化されていますが、表面的な基準しか見えず、人材のポテンシャルを捉えられない恐れがあります。
2.根拠が説明できない
AIは過去のデータをもとに自動的に判断するため、「なぜ不採用になったのか」「なぜ採用されたのか」など、評価の根拠を詳しく説明できない場合があります。
3.データ蓄積の必要性
ビッグデータにもとづく意思決定を行うことで、より高い角度からの採用活動が可能になります。そのため、長期的に採用データを収集することが必要です。
AIを導入したからといって、最初から自社に合った採用活動がうまくいくとは限りません。
4. 表面に現れないものを判断する
書面やデータだけではわからない候補者の熱意ややる気をAIはまだ判断できません。熱意ややる気には、時にポテンシャルが現れることがあります。
その可能性を排除してしまうリスクもあります。
5.AIだけでは完結しない
現段階では、AIだけでは最終面接を完了させることはできません。
したがって、時間は短縮できても、最終的には人間の手が必要になります。
AI採用の3つの導入事例
1.ソフトバンク
2017年にAI採用を導入し、エントリーシートの選考に活用しました。ソフトバンクは業界最大手の人気企業で、年間数万枚のエントリーシートが送られてきます。この膨大な数の書類をAIで評価した結果、従来の選考にかかる時間を約75%短縮することに成功したそうです。さらに、担当者が抜け漏れのないよう熱心にチェックするフローもあります。
2.サッポロビール
2019年度からは、エントリーシートの審査工程にAIを導入する予定です。この工程に費やしていた600時間のうち、約4割を削減できたといいます。ソフトバンクと同様に、AIで不合格となったエントリーシートは、採用担当者が再度フォローします。この成功があったからこそ、同社はしっかりとしたシステムを導入することができたのです。
3.アマゾン
すべての企業がAI導入に成功しているわけではありません。アマゾンでは、過去の選考結果を入力することで、評価に男女差が生じる結果となりました。これは、AIが過去の記録から学習する能力が、メリットだけでなくデメリットにもなりうることを示す好例です。
AIエンジンを搭載した採用サービス
書類選考AIツール「PRaiO」
PRaiO(プライオ)とは、三菱総合研究所が開発した「HaRi(ハリ)」というAIエンジンを活用したサービスです。HaRiとはHR領域の課題を解決するするAIエンジンのことです。
PRaiO(プライオ)の特徴を下にまとめました。
- HaRiは、就活生が提出したエントリーシートの「優先度」「文章特徴」「辞退可能性」を予測します。
- 過去のエントリーシートを読み込み、合格・不合格だけではなく、「内定辞退率」も学習し、企業が重要視する点も組み込んだ各企業のオリジナルのモデルを作成できます。
対話型AI面接サービス「ShaiN」
ShaiNとは、世界で初めて作成された対話型AI面接サービスです。すでに150社以上の企業が導入しています。
SHaiNサービスの特徴は3つあります。
- 1つ目は24時間365日世界中どこにいても面接が行える点です。
- 2つ目は、面接AIには独自開発された「戦略採用メソッド」をベースにAIが構築されていている点です。そのAIがヒアリングを行います。
- 3つ目にAIがヒアリングした面接の評価が可視化されることです。面接者の評価が10段階評価で表します。
AIエンジン搭載の採用支援システム「i-web AI」
i-webAIとは、プレエントリーの早期段階から「企業と就活生のマッチング度」や「就活生の志望度」を予測するサービスです。
i-web AIの特徴を下にまとめました。
- i-webが所有する就活生のあらゆるデータ(セミナーへの参加状況やエントリーシートなど)をベースに企業との「マッチング度・志望度」を予測することができます。
- このサービスは、マッチング度が低いと判断された学生に対し、人による選考を行うことができます。
- i-web AIは、志望度が低い学生に対し、社員との接点を多く設けるなどの措置が可能になります。
今後、採用でAIを使う上で必要なこと
従来のように人が採用をする際には、データに潜む潜在的な偏見が反映されてしまいます。この偏見は人間が明確に認識し、指摘することは難しいです。
その無意識の偏見を採用に反映させないために、正しくAIの採用サービスを活用することは、企業的にも社会的にも好影響を与えるとも言えます。
しかし、先述したように採用にAIを導入することで、データに含まれる企業のバイアスや、差別問題が増幅する可能性があることも事実です。
そのため、AI学習させるデータは多様性を含ませることが重要です。また、公平な採用をするために、現場で活用するAIの予期しない結果に対して随時対応できるエンジニアやシステム開発者が携わる必要があります。
これらのような点を配慮することで、AIにより生じてしまう「予期せぬ結果」にも対応することができます。
まとめ
採用担当の重労働をカットするAIサービスが浸透する一方で、AIを活用したことで大きな問題を起こしてしまった企業もあります。
今はAIが人材業界に浸透し、さまざまなサービスが生まれたばかりです。そのため、企業が採用で導入するAIが学習するデータは十分に揃っているとは言えません。
採用業務にAIを導入して失敗した場合、企業のバイアスを露呈することに繋がる可能性もあります。長年大手として活躍している企業ほどの裏側に隠れるバイアスを完全に払拭することは困難です。
しかし、今日開発されるAIを活用した採用サービスは、さまざまな観点から志望者を判断することが可能になっています。
1年後、2年後には間に合わなくとも、今後人の偏見が混在した採用活動がなくなり、平等性が増した採用が可能になるのではないでしょうか。
駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。