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京都薬科大学の赤路教授らの研究グループは、株式会社Preferred Networks(以下、PFN)との共同研究により、AI技術を取り入れた医薬品探索研究法を開発しました。
また、その技術を活用し、新型コロナウイルス感染症COVIS-19治療薬のリード化合物※1を発見しました。
10年以上の時間と数百億円のコストがかかる創薬業界
一般的に、創薬は、基礎研究から製造・販売まで10年以上かかり、その費用は数百億円以上かかるとされています。また、その成功率は2万分の1以下と極めて低い確率です。
創薬業界では、開発までにかかる膨大な時間と費用が大きな課題となっています。
そのような中、創薬の過程にAIを取り入れたAI創薬では、これまで研究者の知見に大きく依存していた「医薬品探索研究」という分野にディープラーニングと大規模な計算資源が導入されています。
これにより、候補物質の探索や分子設計などの医薬品開発工程の大幅カットや、人間が発想できない新しい分子構造の提案ができると期待されています。
創薬AIにより新型コロナウイルス治療薬のリード化合物を創出
京都薬科大学は、これまでに重症呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)の治療薬開発を目指した基礎研究を継続して行っていて、「ペプチド型化合物」や「非ペプチド型環状化合物」を創製していました。この2つの化合物は、SARS原因ウイルスの増殖に必須の酵素機能を阻害する働きがあります。
この基礎研究とPFNが開発したAI創薬により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖に必須の酵素(メインプロテアーゼ※2)を阻害できる有望なリード化合物を創出しました。
今回の研究では、PFNのAI創薬とプライベートスーパーコンピュータMN-2によって提案された複数の化合物のうち、13化合物を京都薬科大学で合成しました。そして、それらの活性評価を行った結果、約半数の7化合物で新型コロナウイルスのメインプロテアーゼの活性を阻害できました。
今回の大学での基礎研究の成果とAI創薬の融合により、化合物設計の方針に高い実現可能性を与えました。また、コンピューターが設計した化合物の薬としての合理性評価にも繋がっています。
基礎研究の蓄積と最新のAI創薬の融合は、今後の新たな医薬品開発の手法に貢献するでしょう。
駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。