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2021.11.12

DXの鍵となるアジャイル開発・組織について解説-ウォーターフォールとの違いや事例も紹介!

最終更新日:

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DX推進にあたり、激しいビジネス進化に対応しなければなりません。そのため、従来の開発方法や組織体系では対応できなくなります。

DX推進にあたり既存の開発方法や組織体系を見直しませんか?今回の記事では、激しいビジネス環境の変化に対応できるアジャイル開発・アジャイル型組織について説明し、成功ポイントを紹介します。

目次

DXとは

まず、DXについて紹介します。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応しながらデータとデジタル技術を活用して、社会や顧客のニーズを基にサービスやビジネスモデルを変化させることです。

またそれに伴い、組織や業務プロセス、企業文化・風土に改革を起こし、競争上の優位性を確立することでもあります。近い将来、デジタルによって大きな産業構造の変化が急激に進みます。

そのため、DXとは「インターネットであらゆるモノがつながる新しい社会に向け、生き残れる組織改革」「顧客の支持を得られる商品・サービスを新たに生み出し、競争を生き抜く」という経営課題でもあります。

アジャイル開発とは

まず、アジャイル型組織について紹介します。

従来のウォーターフォール型開発と違い、最初に決めた計画の通りに一つひとつ工程を進めるのではなく、逐一で設計・開発・検証・計画を繰り返す手法です。

ウォーターフォール型開発との違い

ウォーターフォール型開発とは、開発手順を1つずつ確認しながら工程を進めていく手法です。開発を各工程に分けて作業を進めます。ウォーターフォール型開発は、開発手順を1つずつ確認するため、効果検証までのスケジューリングがしやすいのが特徴です。

しかし、工程を1つずつ進めるため、効果検証までに時間がかかってしまいます。また、プロジェクト開始時にしか要件定義の機会がないため、進行中や検証後に仕様変更が生じた場合、多くの工数が必要となってしまいます。

それに対して、アジャイル型開発は、システムの優先順位を決めるために毎日ミーティングをし、スムーズに連携をとるスクラムという手法がとられるため、素早い軌道修正が可能です。

アジャイル開発が向いている組織・プロジェクト

アジャイル型開発は、チーム数が少ない組織に向いています。また、検証を繰り返しても良いプロジェクトが向いています。チームで動くため、とくにはじめてアジャイル型開発を導入する際には、数人数でトライしてみましょう。

アジャイル型開発の3つの手法

アジャイル型開発には以下の3つの手法が取られます。

  1. スクラム
  2. エクストリーム・プログラミング
  3. ユーザー機能駆動開発

それぞれ解説します。

①スクラム

アジャイル型開発の中で、最も頻繁に採用されている開発方法です。

スクラムのルールはスクラムガイドで定義されています。1~2年おきに内容が改訂されているため、確認しましょう。

スクラムは、顧客要求を価値・リスク・必要性という項目という基準にして並べ替え、現在の状況や問題点を常に明らかにします。その順で、タイムボックスという固定の短い時間に区切って作業を進めます。

定期的に進捗状況や作っているプロダクトで期待されている成果を得られるのか、仕事の進め方に問題がないかどうかを確認します。これはスクラムでいう検査です。適応と呼ばれるやり方に問題があったり、もっとうまくできる方法があったりすれば、やり方そのものを変えます。

スクラムの流れは以下です。

1.デイリースクラム
毎朝チームで集まり、チーム全体の状況を把握するミーティングを開催します。2.リリースプランニング
リリース時に、開発するプロダクトの機能の実装順序や開発期間について、チーム全体で計画を立てます。3.スプリント計画
要件定義からテストまでのサイクルで、プロダクトのどの機能を実現させるか計画を立てます。4.スプリント
要件定義からテストを繰り返す期間です。スプリントプロセスでは機能の追加や変更、削除は認められません。5.スプリントレビュー
ここまでの期間で完成したプロダクトを試行します。6.反省
振り返りはスプリントごとに行います。

②エクストリーム・プログラミング

スクラムはスピーディーに成果物を作りますが、エクストリームプログラミングは継続的な成長に主眼を置く手法です。
このエクストリーム・プログラミングには、以下5つの価値が提唱されています。

  • コミュニケーション
  • シンプル
  • フィードバック
  • 勇気
  • 尊重

③ユーザー機能駆動開発

ユーザー目線で価値ある機能を中心に開発を進める手法です。開発する機能によってチームを分けて計画・設計しコーディングをするため、大規模な案件に対応しやすいのが特徴です。

スクラムの進め方

スクラムは以下の3つのステップに沿って進めます。

  1. プロダクトバックログを作成する
  2. スプリントバックログを作成する
  3. スプリントを実施し、成果物を評価する

これから詳しく解説していきます。

1.プロダクトバックログを作成する

顧客が製品に求める機能を洗い出し、作業の優先順位を定めるのがプロダクトバックログです。

このプロダクトバックログに基づいてスプリントで実装するべき目標を定めます。

プロダクトバックログはチーム内全体に共有し、顧客の要望が変わるたびに柔軟に作り替える必要があります。

2.スプリントバックログを作成する

スプリントとはアジャイル開発における反復の単位で、一つのスプリントの期間内に一定の成果を上げる必要があります。プロダクトバックログの中から、スプリントで実装するべき目標を選んで作成するのがスプリントバックログです。

スプリントバックログをより細かなタスクに分解してそれぞれの開発メンバーに作業を割り当てます。

3.スプリントを実施し、成果物を評価する

それぞれ割り当てられたタスクをスプリント期間内にこなして、チームで合わせて一つ成果物を作り上げます。スプリントの期間内は毎日それぞれの進捗状況を報告するデイリースクラムを行います。デイリースクラムでは作業の内容だけでなく、発生した問題点の報告も行うのが重要です。

スプリント期間の終了後に、スクラムで作った成果物を評価するためにスプリントレビューを実施します。

成果物の評価を行った後は次回のスプリントに備えてスプリントを振り返り、改善点を考えます。

DXにおいてアジャイル開発が注目されている理由

なぜDXにおいてアジャイル開発が注目されているのでしょうか。それは近年のDXを推進するためのツールが著しく進化しているためです。

ITツールは次々と商品が出てきます。そのため、新しく仕様を変更しやすいアジャイル型開発が向いています。

アジャイル開発のDXにおけるメリット2つ

①素早い修正が可能

アジャイル開発は機能ごとに開発から実装までを行うので、問題点や変更したい点が発生した時に修正するのが容易です。製品で一貫した開発計画を立てるウォーターフォール開発では一つの機能に変更を加えようとすると全体の計画の修正が余儀なくされ、手間がかかってしまいます。

アジャイル開発では顧客とコミュニケーションを取りながら、機能ごとに短期間で修正を加えられるので、変化する顧客や市場のニーズに合わせてDX化を進められます。

②スピーディーな開発

アジャイル開発は優先順位の高い機能から短期間でリリースを繰り返し、徐々に機能を改善していくことを目標にしているので開発スピードが速いことが強みです。

早急なDX化が求められている現在、アジャイル開発でスピーディーにDX化を進めていく必要があります。

アジャイル開発のデメリット

スケジュールコントロールが困難

アジャイル開発は機能ごとにスケジュールを決めて開発するため、全体の製品の完成する期間やスケジュールが管理しにくいというデメリットがあります。

また、顧客のニーズの変化に合わせて修正を繰り返すこともあるので、納期がしっかりと決まっているような仕事には向きません。

アジャイル開発成功ポイント3つ

アジャイル開発を成功させるポイントは以下の3つです。

  1. プロジェクト開始前の準備
  2. プロジェクト管理者を採用
  3. 顧客との信頼関係の構築

それぞれ解説します。

①プロジェクト開始前の準備

チーム単位で要件定義・計画・テスト・効果検証までするため、チームの中にベテラン人材を採用しておきましょう

また、プロジェクトの軸が定まっていなければ、何度もイテレーションを繰り返すうちに、完成したいプロジェクトからずれたものができてしまうため、プロジェクトの目的や最終的なゴール、最低限の目標を共有しておきましょう。

②プロジェクト管理者を採用

チーム単位でイテレーションを繰り返しますが、全体でどの程度進んでいるのか確認する人が必要です。

③顧客との信頼関係の構築

工数が多い場合や、従来の開発方法と異なる場合、顧客側は不安をいだいてしまいます。そのため、進捗状況をこまめに共有するなどして顧客との信頼関係を構築して不安を払拭しましょう。

アジャイル開発成功事例

アジャイル型開発の成功事例を紹介します。

アクサ生命のCRM開発

アクサ生命は、アジャイル型開発でCRMを開発しました。CRMは、顧客管理システムで営業パーソンにも多く使われるため、多くの営業パーソンを抱える保険会社にとってはかかせないシステムです。

顧客データが社内の複数のシステムに散在していて、正確な情報を確認するのに時間がかかっていましたが、このCRMにより1人の顧客にまつわる情報を一元的に参照できるようになりました。

参照:アジャイルの成功例がそろそろ出てきている(orangeitems’s diary)

▶DXの成功事例はこちらの記事で30個まとめて詳しく解説しています>>

アジャイル型組織とは

次に、アジャイル型組織について紹介します。アジャイル型組織は、アジャイルの意味の通りスピード感に優れた組織を指します。

意思決定や実践までのスピードが早く、方針の変化にも柔軟に素早く対応できる組織であるため、変化が求められるDX推進の中では、有利な組織体系となります。

アジャイル型組織に対して、従来の組織をピラミッド型組織と呼びます。ピラミッド型組織は、人材を効率的に動かすことが目的です。そのため、縦割りと表現されるように、指示は立場が上のものから下に流れるだけであり、上からの指示を実現する集団が一つひとつ形成されています。

ピラミッド型組織は、人材が上からの指示を実施するために、機能単位で分けられていました。しかし、アジャイル型組織は、課題をさまざまな人材がいるチームで解決します。

アジャイル型組織の組織図

アジャイル型組織の組織図と従来のピラミッド型組織と組織図で比較してみましょう。下記の図は従来のピラミッド型組織です。

それに対し、下記の図はアジャイル型組織を指します。

このようにアジャイル型組織はフラットなチームであると言えます。また、メンバー全員に権限があることも特徴です。

DX推進にはアジャイルマインドが必要

DX推進に当たり、経営や事業戦略を見直す必要があったり、新しいことに挑戦したり新しいものを導入します。このようにDX推進は工数が多いため、競合優位性を獲得したいならば、生産性向上が不可欠です。

生産性向上のためには、アジャイル要素、アジャイルマインドが必要です。アジャイル型開発は、それぞれのメンバーに、役割や責任・意思決定の権限を与えます。これは、従業員のモチベーションを高め、パフォーマンスを向上させます。 さらに、スピーディに業務がまわるため、組織全体の生産性が向上できます。

このように、DX推進においては生産性向上が必要なため、アジャイルマインドが求められます。

▶︎DX人材の必要な3つのマインドセットに関してはこちらでも解説しています>>

アジャイル型組織に向いている企業・事業

アジャイル型組織に向いている企業の特徴は以下です。

試行錯誤を繰り返す事業

アジャイル型組織の特徴は、スピーディーに業務がまわる点です。そのため、一つのことを長期間戦略し、慎重に実行する事業には向いていません。

意思決定が一つのチームで完結する

ステークホルダーなど他の組織と接点が多くあると、アジャイル型組織の組織体系や、スピードの速さが生かされません。

メンバーの能力

アジャイル型開発は、メンバーの一人ひとりに役割・権限・意思決定が渡されます。そのため、個々の能力が不十分である場合、欠陥が出てしまいます。

アジャイル型組織のメリット3つ

アジャイル型組織のメリットは以下の3つです。

  1. ビジネスチャンスをつかみやすい
  2. 意思決定までの時間が短い
  3. 従業員のエンゲージメントが向上しやすい

それぞれ紹介します。

①ビジネスチャンスをつかみやすい

アジャイル型組織は、実行までのスピードが早いため、柔軟に変化できます。そのため、ビジネスチャンスをつかみやすい傾向にあります。

DX推進においては、事業変革など柔軟な変化が求められるため、ビジネスチャンスも掴みやすくなります。

②意思決定までの時間が短い

意思決定までの時間が短いのも、アジャイル型組織の特徴です。また、意思決定の際には、メンバーの一人ひとりに権限が付与されているため、意見が言いやすく活発に意見交換が期待できます。

③従業員のエンゲージメントが向上しやすい

メンバーの一人ひとりに責任、役割が明確に存在するため、存在意義が果たせます。モチベーションが向上すれば、生産性向上も期待できます。

アジャイル型組織のデメリット2つ

アジャイル型組織にもデメリットが存在します。デメリットは以下の2つです。

  1. 自律性が必要
  2. マネジメントが困難

それぞれ紹介します。

①自律性が必要

アジャイル型組織のメンバーには意思決定が一人ひとりに付与されるため、自律性が求められます。従来の組織体系の意思決定が特定の人に偏っていた場合は、メンバーの自立性の確立から対策しなければなりません。

②マネジメントが困難

裁量や立場が均等なフラットな組織であれば、マネジメント体制が構築されづらく、ときにメンバー同士がうまくいかなかったり、機能しないメンバーがでるおそれがあります。

アジャイル型組織成功ポイント3つ

では、どのようにすればアジャイル型組織は成功するのでしょうか。先ほど紹介したデメリットも踏まえて紹介します。

アジャイル型組織を成功させるポイントは以下の3つです。

  1. 挑戦を促す組織文化にシフト
  2. 自律性を育む
  3. コミュニケーション力を高める

①挑戦を促す組織文化にシフト

アジャイル型組織は、戦略から実行までチームで行うため、スピーディーに動けます。この特徴を活かすために、挑戦を促す組織文化を構築する必要があります。

具体的には、事業で失敗した際の組織と経営のフォロー体制を策定しましょう。

②自律性を育む

個々のメンバーに自律性がなければ、アジャイル型組織は機能しません。メンバーの自律性を育みましょう。一人ひとりの意見を求めたり、自律性あまりない場合は役割をより細分化しましょう。

③コミュニケーション力を高める

チーム単位で事業に取り組むため、さまざまな人とコミュニケーションをとらなければなりません。そのため、コミュニケーション能力が問われます。コミュニケーションが円滑にされるためにも、まずはメンバー同士のコミュニケーション頻度を増やしましょう。

アジャイル型組織事例

アジャイル型組織にシフトした成功事例を紹介します。

スポティファイ・テクノロジー

音楽配信サービスSpotify(スポティファイ)を運営するスポティファイ・テクノロジーは、「Spotifyモデル」というアジャイル型組織体型を採用しました。「Spotifyモデル」は、分隊(Squad)部隊(Tribe)支部(Chapter)ギルド(Guild)という4つのチームから成り立っています。

まず、組織の最小単位は分隊と呼ばれる開発チームであり、プロダクトオーナーを中心に同じ場所に集合して実務に当たります。プロダクトを通して関連する分隊がいくつか集まったものが部隊です。

分隊はそれぞれが意思決定権を持つ独立したチームですが、企業全体として団結力を持ってまとまるために、同じスキルを持つ人材を集めた支部と、同じ知識を共有したいコミュニティであるギルドが設けられています。

2006年にスウェーデンで創業した同社は、たった10数年で、音楽配信サービスの分野では世界最大手の企業に急成長を遂げました。アジャイル型組織運営によって業務効率と生産性を最大限に高め、社会のニーズをどこよりも早く捉えてきたことが、急成長の決め手になったと考えられます。

参考:「アジャイル型組織」に必要な人材育成とは?

DX推進においては開発方法と組織を変革する必要がある

DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応しながらデータとデジタル技術を活用して、社会や顧客のニーズを基にサービスやビジネスモデルを変化させることです。またそれに伴い、組織や業務プロセス、企業文化・風土に改革を起こし、競争上の優位性を確立することでもあります。

サービスやビジネスモデルを変革する際、従来の組織や開発方法を見直す必要があります。アジャイル型開発やアジャイル型組織へのシフトも検討してみましょう。

▶︎DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントについてこちらで紹介しています>>

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