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日本マイクロソフト株式会社が2021年12月14日、15日にオンラインイベント「Azure AI Days 2021 Winter」を開催しました。
同イベントでは、 「データドリブンなビジネス・組織を支えるAIの力」をテーマに、AIやデータ活用を検討している組織に向けて、Azure AIの活用事例について広く紹介されます。
Day1はAIを活用したビジネス推進(Business Session)、Day2はAI・データ人材の育成(Learning Session)をテーマに、多くの方々が登壇しました。
今回は、Azure AI Days 2021 Winterのセッションの中で、「Microsoft AIが導くイノベーションのビジネス実装」についてレポートします。
マイクロソフトは、AIをうまく導入できる企業とできない企業には、どのような差があり、AI導入において何が障壁となっていると考えているのでしょうか。
目次
りんながイベントの司会に抜擢?!
ブレークアウトセッションの冒頭では、イベントの詳細について紹介されました。司会は日本マイクロソフトのエバンジェリスト 西脇 資哲氏と、元女子高生AI りんなの2名が抜擢されました。
りんなは、2019年に高校生を卒業し、2020年夏にマイクロソフトから独立しました。その後、2020年8月にAIチャットボットを展開する「rinna株式会社」を設立しました。
現在は、登録ユーザー数が850万人を超え、国内で多くのユーザーに愛されるAIとしてさらに精度を上げています。イベント時も司会の西脇氏と流暢にコミュニケーションを取っていました。
▼りんなのテクノロジーを活かしたRinna Character Platforについて知りたい方はこちら。
次のセクションでは、「Microsoft AIが導くイノベーションのビジネス実装」をレポートします。
Microsoft AIが導くイノベーションのビジネス実装
ビジネスにAIを導入する企業と導入しない企業の3つのギャップ
このセッションでは、日本マイクロソフト Azure ビジネス本部 本部長である上原正太郎氏と、日本マイクロソフトAzure ビジネス本部 マーケティングマネージャーである小田健太郎氏により、Microsoftが描くAIの世界について紹介されました。
上原氏は「AI実装の目的は、イノベーションを加速させ、従業員のイマジネーションを増幅させることで、従業員がより多くのことを行い、達成し、ビジネスを成長させること」と指摘しました。
しかし、ビジネスを前進させるための強力な手段として、AIを導入する企業と導入しない企業に分かれます。上原氏は、これらの企業には大きなギャップがあり、3つの大きな要素に起因するとしています。
上原氏:1つ目は、AIには意味目的がなければならない点です。手段としてAIを実装することで抽象的な活用方法になり、持続的なスケールにつながりません。
2つ目は、AIはすべての人々の能力を増幅・サポートしなければならない点です。 AIの真価は、開発者やIT部門などすべての従業員が日々の業務の中でAIを実装するという点が重要になります。
3つ目は、AIは責任をもって設計・使用する必要がある点です。公平性と透明性を含むAIの原則をベースにガバナンスを実施し、責任を持ってAIを使用することで、AIの解釈性などのリスクを最小限に抑えることができます。
▼AIガバナンスの重要性に関して知りたい方はこちら。
イノベーションとDXの関連性は、ここ数年でさらに強くなっています。
マイクロソフトの調べによると、すでにDXに着手している81%の企業が他社との差別化要因として、テクノロジーやイノベーションを強みとして挙げています。
また、9割以上の経営幹部は、DXを経営戦略上の最優先事項として捉えていて、多くの企業が、今後3年以内にAIの利用や実装を計画しています。
競合他社よりも早くAIを活用して規模を拡大した組織は、中長期的な目線でビジネスレバレッジが効き、優位に立つことができます。
では、AI実装にあたり、何が変革の妨げになっているのでしょうか。次のセクションでは、実際にAIを導入する際に企業の障壁となっている点を紹介します。
ビジネスにAIを実装する際の障壁 TOP3
上原氏は、マッキンゼーが発表した調査のもと、次の3つをAI実装の障壁として挙げています。
上原氏:最大の障壁は、AIを実装した際の明確な戦略が欠如していること。
次に多い障壁が、AI業務において適切なスキルセット持つ人材が不足していること。
そして3つ目は、情報やソリューションが孤立化して連携されず、活用の妨げになっていること。
これら三つが挙げられます。
また、上原氏はイノベーションの障壁は次の5つに分類しています。
- AIを横連携で活用できる「社内政治」
- テクノロジーを活用した「成長意欲(マインドセット)」
- 現場でAIを活用できる「スキル」
- ITサービスの導入や新規ビジネスに取り組む「予算」
- AIを活用した「戦略・ビジョン」
ビジネスでAzure AIを活用する5つの導入分野
マイクロソフトが開発するAzure AIの3段構成
Azure AIの導入事例の前に、マイクロソフトが開発・提供する「Azure AI」についてご紹介します。
Azure AIとは、開発者やデータサイエンティストに向けて設計されたAIサービスのポートフォリオです。シンプルなAPIを呼び出すことで、画像認識、音声対話、データ予測、意思決定などのAIモデルにアクセスでき、ユーザー独自のAIソリューションを構築できます。
Azure AIは、以下の画像のような3段構成になっています。
「Azure Machine Learning」は、機械学習のオペレーションが働き、エンドトゥエンドで提供可能なプラットフォームです。
「Azure Cognitive Services」は、トレーニング済みのモデルを簡単に利用できるサービスです。例えば、「Vision」という機能は、物体検知や画像認識などの技術を、「Speech」の機能では音声認識や翻訳、文字起こしなどの技術を簡単に使用できます。
「Azure Applied AI Services」は、他の2つと異なり、6つのプロダクトを活用することで、ある程度のビジネスユースケースに応じたシナリオの展開が可能なサービスです。
Azure AIの5つの導入分野
ビジネスにおけるAzure AIの活用ケースは5つに分類できます。
小田氏:1つ目は、全文検索とも呼ばれる「ナレッジ マイニング」です。企業の中に散在している資料やドキュメントなどの非構造データを構造化し、検索容易性を上げることができます。
2つ目は、「会話AI(ボット)」です。近年は顧客とのエンゲージメントを向上させるために、サービス内で活用されるシーンが増えています。
3つ目は、「ドキュメントプロセスの自動化」です。ナレッジ マイニングと同じように、企業に散在している帳簿や請求書をOCRで読み込むプロセスを自動化することで、業務改善につながります。
4つ目は、特にAIとの親和性が高い「機械翻訳」です。例えば、発話している日本語を英語に翻訳できるようになります。
5つ目は、機械翻訳と親和性が高い「音声の文字起こしと分析」です。実際に発話された自然言語を書き起こし、分析できます。例えば、コールセンターに導入することで、顧客との会話の中からインサイトを見つけ、顧客のエンゲージメントの向上につながります。
小田氏:この5つのシナリオがAIと非常に親和性が高く、マイクロソフトとしてもクライアントから引き合いが大きい分野です。
Azure AIを導入していただいたクライアントの中には、Azure AIをそもそも使ったことがない、もしくはAIをそこまで活用していなかった方々も多いため、Azure AIは組織にAI人材がいなくてもビジネスに価値をもたらし、DXにつなげる一助となります。
さいごに
本イベントに関連し、日本マイクロソフトは2022年2月に下記イベントを実施します。AIの利用に欠かせないデータ活用に関するさまざまな事例が紹介される予定です。
ご興味ある方はぜひ詳細ご確認ください。
◆関連イベント
Azure Analytics Day 2022 [2022年2月24日(木)開催]
◆関連情報
クラウドによるデータ活用やAI導入により、ビジネスを無限に成長させるための事例や手法が紹介されます。
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駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。