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デジタル技術が急速に発展する中、DXやIoTなどの言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。
しかし「DXとIoTの違いが分からない」「IoTの活用方法が分からない」と考える方も多いと思います。
こちらの記事ではDXとIoTの違いから、ICTやRPAの特徴、DX推進のポイントまで解説します。
目次
DXとは
そもそもDXとは何かについて解説します。経済産業省は、DXを以下のように定義づけています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
要約すると、DXとは「データやデジタル技術の活用を前提とした経営や組織体系の改善を行い、環境変化の中でも成長し続けること」となります。
政府は積極的にDXを推進しており、政府主体の制度である「DX銘柄」や「DX認定」なども存在します。また各経営者もDXを重要視し、多くの企業がDXに着手、もしくは着手しようとしているのが現状です。
今やDXは、企業の経営に欠かせない要素の一つとなっています。
DXとIoTの違い
DXとIoTの違いとは何でしょうか。DXとは前述の通り、「デジタル技術を活用した経営を変革し、変化の中でも市場で優位性を保つこと」を指します。
対してIoTとはデジタル技術の一つであり、「モノをインターネットに接続し、相互に情報を交換する仕組み」を指します。
「外出先からエアコンの温度を調整する」「ペットの健康状態を遠隔地から把握する」などの遠隔操作がIoTの代表的な活用例です。
端的に言うとIoTはDX推進に役立つ、デジタル技術の一つです。こちらの章では、IoTの特徴や身近なIoT活用例を解説します。
IoTとは
IoTとは上述の通り「モノをインターネットに接続し、相互に情報を交換する仕組み」を指します。
具体的なIoTの機能には、「モノを遠隔操作する機能」「モノや人の状態確認」「モノの動作検知」「モノ同士の通信」などが挙げられます。AI(人工知能)とは違い、IoTは電化製品などの「モノ」がなければ真価を発揮できない点が特徴の一つです。
IoTの用途は多岐にわたり、我々の日常に役立つ製品から企業の生産を支える機会まで、幅広く活用されています。IoTは、業界・産業を問わず活用されるデジタル技術の一つです。
身近なIoTの活用事例
IoTは日常的に活用されているデジタル技術です。実際にIoTが活用された製品は以下の3つです。
- スマートスピーカー
- IoT家電
- スマートロック
それぞれ詳しく解説します。
スマートスピーカー
人々の生活にIoTが活用された事例として、代表的なものは「スマートスピーカー」です。スマートスピーカーとは音声操作に対応したAIアシスタントが搭載されたスピーカーであり、音声だけで様々な指示を行えます。
スマートスピーカーを用いて、「音楽再生」や「IoT家電の操作」、「ニュースや記事の読み上げ」が可能です。例えば「音楽流して」と伝えれば音楽を流し、「ニュースを読んで」と伝えればその日のニュースを自動で読み上げます。
今やAmazonやAppleなどを始め、多くの企業がスマートスピーカー製品を提供しており、我々の日常に浸透しています。
IoT家電
IoT家電とは、「電化製品をインターネットに接続することで、家電の遠隔操作や状況確認を可能にした製品」を指します。
IoT家電には、外出先から操作できる「洗濯機」や温度調整ができる「冷蔵庫」などが挙げられます。また、テレビや照明なども、遠隔操作可能です。
また、類似した言葉に「スマート家電」があります。スマート家電はIoT家電の一つですが、スマートフォンを用いて操作する製品を指す言葉です。
どちらもWi-Fiがあれば接続可能なので、どのご家庭でも気軽に利用できます。
スマートロック
スマートロックとは、スマートフォンを通じて鍵の開錠や施錠をするシステムを指します。主に自宅の玄関扉で多く利用されています。
スマートロックの活用により、スマートフォンだけで扉の開閉が可能になるため、鍵を持ち出す必要がなくなります。また遠隔地から扉の開閉状態を確認できる製品もあるため、鍵の閉め忘れ防止にも繋がります。
デメリットとしては「スマートフォンの電源が切れると使えない」「スマートロックの電池交換が手間」などが挙げられますが、総合的に見ても利便性の高い製品です。
近年ではしっかりと固定できる「穴あけタイプ」だけでなく「粘着テープタイプ」もあるため、どの家庭でも気軽に設置できます。
IoTを活用した業界別のDX事例5選
ここまで、身近なIoTの活用例をご紹介しました。しかしIoTは家庭内だけでなく、幅広い業界・産業で活用されている技術です。
IoTを活用している代表的な業界は以下の5つです。
それぞれ詳しく解説します。
製造業界
製造業界では、製品だけでなく生産ラインにおいてIoTの技術が活用されています。IoTの活用により、「不具合監視」や「故障予知」、「重機の遠隔操作」「製品の検査」などが可能です。
IoTを活用した企業の成功例には、トヨタ自動車株式会社の「工場のIoT化」が挙げられます。トヨタ自動車株式会社は工場にIoTを導入したことで、生産ラインの状況をリアルタイムで一元管理可能になりました。
このように、IoTは製造業における業務効率化に貢献した技術です。
参照:トヨタが挑んだ「工場IoT」の成果と課題 – PTC Forum Japan 2017>>
交通業界
近年、交通業界における積極的なIoTの活用が多く見られます。
例えば、「バスの運行状況や渋滞状況をリアルタイムで把握する」などのシステムがあります。
また交通におけるIoTの活用例には、Uber Japan株式会社が提供する「Uber」が挙げられます。Uber Japan株式会社は「Uber Eats」などのサービスを提供するグローバル企業です。
「Uber」はスマートフォンのGPS(位置情報)をもとに自分のいる場所にタクシーを呼べるサービスです。移動する手間もなく、登録したカードで自動決済可能なため、気軽に利用できます。
農業
農業分野において、近年ではIoTなどのデジタル技術を用いて農作業を効率化する「スマート農業」が注目されています。
具体的には、「土壌・生育状況・害虫などの情報収集」「農機の自動運転」「センサー管理されたビニールハウスの導入」などが挙げられます。
上記の技術を活用することで作業時間が短縮し、生産性が向上するため、「人手不足」の解決に繋がります。
またゆくゆくは24時間365日無人の農作業が実現される可能性が高いため、属人性の高い農業が誰でも従事可能になり、「後継者不足」の解消に寄与できます。
参照:スマート農業とは?IoT・ICTを活用したスマート農業の導入メリットと課題とは【IoT活用事例】>>
DXとICT・RPAの違い
またIoTやDXと混同されがちな言葉として「ICT」や「RPA」などがあります。デジタル化が進む中、どちらも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし「聞いたことはあるが、具体的に何か分からない」という方も多いと思います。
こちらの章では、ICT・RPAについてそれぞれ詳しく解説します。
ICTとは
ICTとは「Information and Communication Technology」であり、日本語では「情報通信技術」と訳されます。AI(人工知能)やIoTと同じように、ICTもDX推進に役立つデジタル技術の1つです。
上記2つとの最大の違いは、ICTは「技術の伝達や情報共有など、コミュニケーションに重きを置いたデジタル技術」であるという点です。
LINEやTwitterなどのSNSや、電子黒板、オンライン授業などがICTに含まれます。また医療業界では、ICTを活用したオンライン診療なども例に挙げられます。
RPAとは
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、「従来人がPCで行っていた事務作業を自動化する技術」を指します。
RPAの導入により、受注処理やHP(ホームページ)更新などを自動で人間より正確かつ高速で処理できるため、業務効率化や人手不足解消に繋がります。また24時間休まず稼働できるため、企業の生産性向上にも役立ちます。
しかしRPAも万能ではなく、設定された通りにしか動かないため「アクシデントや例外処理に弱い」などのデメリットがあるので、導入の際には注意が必要です。
DXを推進するメリット
ここまでDXに関連する、ICTやRPAなどのデジタル技術について解説しました。
しかし、中には「そもそもなぜDXを推進しなければいけないのか」「DXを推進するメリットは何か」など、疑問に思う方もいらっしゃると思います。
DXを推進するメリットは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
柔軟な環境変化への対応
消費者ニーズの多様化やデジタル技術の発達、市場のグローバル化など、目まぐるしいスピードで日々環境は変化しています。そのような中で企業が生き残るには、市場やニーズの変化にいち早く気づき、柔軟に対応するスキルが必要不可欠です。
また、環境変化は新しいサービス・ビジネス創出のチャンスでもあります。例を挙げると、「ZOZOTOWN」や「Amazon」はオンラインマーケットをいち早く活用したことで、今や国内外問わず圧倒的なシェアを誇っています。
DX推進により、市場での優位性を図ると同時に、新しいビジネスチャンスを得ることが可能です。
働き方改革
働き方改革とは「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を指します。
現在日本は「少子高齢化」「育児や介護との両立」などの問題に直面していますが、DXはこれらの問題を解決する可能性があります。
例えばセキュリティ環境の整備やコミュニケーションツールの活用により、「リモートワーク」や「在宅勤務」などが実現可能です。これらは働き方改革の柱である「柔軟な働き方がしやすい環境整備」に当たります。
このようにDXは働き方改革と強い相関があります。積極的なデジタル技術の利用により、時間や場所を選ばない働き方が実現できるのもDX推進の魅力です。
「2025年の崖」対策
「2025年の崖」とは経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」の言葉を引用したものです。
DXレポートの主な内容は以下の通りです。
- 多くの経営者が将来の成長・競争力強化のために、DXの必要性について理解している
- しかし、既存システムが事業部門ごとに構築・過剰なカスタマイズがされているため全社横断的なデータ活用ができない
- 既存システムの問題を解決・業務自体の見直しが先行するためDX推進が難しい
現在21年以上使われている基幹系システムが全体の2割であるのに対し、2025年では6割に上り、システムの維持管理費が高額化しIT予算の9割以上を占めると予測されています。
また現状のままでは、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるとも予測されています。そのため2025年までに、各企業は既存システムの改革・運用改善を行い、DXを推進する必要があるのです。
▶「2025年の崖」問題についてはこちらで詳しく解説しています。>>
DXに成功した企業3選
DXは今後の環境や働き方の変化に対応するための必要条件です。デジタル技術を活用し、自社サービスや製品だけでなく、経営や組織まで改革した組織が、今後市場で優位性を保てるでしょう。
しかし「どのようにDXを進めたらいいか分からない」「参考になるような例を知りたい」という方もいらっしゃると思います。
DXに成功した企業の中でも、特にDX推進の参考となる企業は以下の3社です。
こちらの章では、それぞれの会社について詳しく解説します。
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社は1986年に設立された、日本の通信業界を牽引する代表的な日系企業です。政府主体のDX認定制度である「DX銘柄2022」にも選出されており、政府から認められたDX先進企業であると言えます。
ソフトバンク株式会社の具体的なDX取組内容には「ヘルスケアアプリ「HELPO」の提供」や「次世代モビリティサービスの推進」などが挙げられます。
HELPOとはオンライン診療や病院検索、医薬品の購入などが可能なヘルスケアアプリであり、一般向けに公開されています。こちらのサービスは、利用者の健康増進や医療費高額化への対策などに役立ちます。
また「次世代モビリティサービスの推進」では、「無人バスの導入」が挙げられており、人手不足が深刻な交通業界に恩恵をもたらしています。
参照:ソフトバンク公式ホームページ 経産省と東証が2年連続でソフトバンクを「DX銘柄」に選定~「誰一人取り残さない」デジタル社会への貢献を目指した取り組みが高い評価を受ける~>>
株式会社メルカリ
株式会社メルカリは2013年に設立された、フリマアプリ「メルカリ」を提供する企業です。
従来個人間の売買は、ヤクオフ!などパソコン上で行われるものがほとんどでした。しかしメルカリの台頭により、スマートフォンで気軽に取引できるようになりました。
今やメルカリアプリのダウンロード数は全世界で1億を突破しており、国内外のフリーマーケット市場を代表するサービスの一つです。
デジタル技術を活用して新しいサービスを作り出し、圧倒的なユーザー数と高い認知度を得た代表例がメルカリです。
株式会社ファミリーマート
株式会社ファミリーマートにおけるDX事業例は「無人決済店舗」と「ファミペイの導入」が挙げられます。
「無人決済店舗」とは、株式会社TOUCH TO GOが提供するウオークスルー型無人決済サービス「TTG-SENSE」の導入により実現した、完全無人の店舗を指します。
TTG-SENSEとはカメラなどの情報から顧客を認知し、バーコードの読み取りなしに、会計ゾーンに立つだけで決済ができるシステムです。
また「ファミペイ」は、ファミリーマートでの利用だけでなく、公共料金の支払いやローンなども可能な利便性の高いアプリです。2021年11月には、ダウンロード数が1,000万を突破しました。
このようにDXに成功した企業では、デジタル技術を利活用した製品やサービスを展開しています。
参照:株式会社ファミリーマート公式ホームページ デジタル推進による利便性の向上>>
▶DXに成功した企業に関してはこちらで詳しく解説します。>>
DX推進のポイント
ここまで、DX推進に成功した企業例をご紹介しました。しかし、IoT・ICT・RPAなどのデジタル技術を取り入れるだけではDX推進に成功できません。
DX推進の際、必要なポイントは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
明確な目標の設定
DX推進において最も重要なのは「明確な目標設定」です。デジタル技術の導入により、どのような課題を解決できるのか、どのような状態を目指すのか、社内で共通認識を持ちましょう。
デジタル技術の種類によっては、効果が発揮されるまでに時間がかかる場合もあります。長期的な期間を要する場合は社内の混乱を避けるためにも、綿密な計画策定が必要です。
また、デジタル技術はあくまでDX推進の一手段のため、目標設定の際は「デジタル技術の導入」が目標にならないように気を付けましょう。
社内での意識共有
目標設定の後に必要な行動は「社内での意識共有」です。
DX推進のためには、まず会社の経営層がDXの重要性を認め、明確なビジョンを持つ必要があります。DX推進の過程で「新しいデジタルツールの導入」など、コストのかかる場面が起こり得ます。
経営層がDXへの意識を持っていれば、こうした場合でも適切な予算・人材の割り当てが可能です。
また経営層だけでなく、社員一人ひとりがDXへの意識を持つ必要があります。前述の通り、DXはすぐに成果が出るものではなく、長い期間をかけて行います。そのため、DXを順調に進めるためには、社員間の定期的な意思疎通が必要です。
社内全体での意識共有が、DX成功の鍵を握ります。
IT人材の確保と教育
デジタル技術を導入しても、それらを使いこなす人間がいなければ無用の長物となってしまいます。DX推進には、デジタル技術の知見を持ち、DXを先導できるような人材が必要です。このような人材を、一般的にIT人材と呼びます。
IT人材に関する代表的な職業は「エンジニア」や「データサイエンティスト」「AIプランナー」などです。しかしそういったIT人材は不足しており、確保が難しいと言われています。
そのため社内研修や研修サービスなどを活用し、既存の社員をIT人材として教育することも視野に入れる必要があります。
IoTはDX推進に役立つ技術の1つ
ここまでDXとIoTの違いを、その他デジタル技術の特徴やDX推進時のポイントなどと併せて解説しました。デジタル技術は複数あり、どれもDX推進のための一手段でしかありません。
またデジタル技術は利便性が高く導入が推奨されていますが、反対に「コストがかかる」「知識がある人が少ない」などというデメリットもあります。
デジタル技術を導入する際は、導入の目標を設定した上で綿密な計画を立てましょう。ぜひ、こちらの記事を参考にしてデジタル技術を活用したDX推進を行ってみてはいかがでしょうか。