
AIエージェントフレームワークとは、AIエージェントの状態管理やツール実行、エージェント間の連携をまとめて扱う開発基盤です。
候補が乱立している状況で機能の多さだけを基準に選ぶと、承認フローやログ設計といった本番運用の壁に半年後にぶつかります。反対に判断軸を先に決めておけば、自社の体制に合う候補を短時間で絞り込めます。
本記事では、フレームワークを比較する5つの判断軸と主要12種の比較、目的別の選び方、導入で失敗しやすい落とし穴を中心に解説します。
読み終える頃には、自社がどのフレームワークでPoC(概念実証)を始めるべきかを、根拠を持って社内に説明できる状態になります。
目次
AIエージェントフレームワークとは自律型AIを動かす開発基盤

AIエージェントフレームワークを理解するうえで押さえる論点は3つです。
- フレームワークが担う4つの役割
- LLMのAPIを直接使う開発との違い
- コード型フレームワークとノーコードツールの違い
この3点を押さえておくと、比較表を見たときに各フレームワークがどの層を担っているのかを判断できます。
フレームワークが担う4つの役割
AIエージェントフレームワークは、エージェントを動かすうえで必ず必要になる共通処理を提供します。
具体的には次の4つです。
- 状態管理:どのステップまで進んだか、途中の結果は何かを保持する
- ツール実行:社内システムのAPIやデータベースをAIに呼び出させる
- エージェント間の連携:複数のAIに役割を分けて協調させる
- 実行ログの記録:どの判断でどのツールを呼んだかを追跡できるようにする
これらはどの業務のエージェントを作る場合でも共通して必要になります。フレームワークを使えば、自社が本当に作りたい業務ロジックの部分に開発リソースを集中できます。
LLMのAPIを直接使う開発との違い
フレームワークを使わず、LLMのAPIを直接呼び出してAIエージェントを作ることも可能です。
ただし、その場合はツール連携の実装やエラー時の再実行、途中状態の保存といった仕組みをすべて自作します。1つの業務なら作り切れますが、対象業務が増えるほど保守が重くなります。
たとえば「請求書を読み取り、金額を照合し、差異があれば担当者に確認する」という流れでは、確認待ちで処理を止め、回答を受けて再開する仕組みが必要です。この中断と再開の仕組みを自作すると工数が膨らみます。
一方で、1回のやり取りで完結する単純な処理であれば、API直接利用のほうが構成をシンプルに保てます。対象業務の複雑さで使い分けると、無駄な学習コストを避けられます。
コード型フレームワークとノーコードツールの違い
AIエージェントの開発手段は、コード型フレームワークとノーコードツールの2つに分かれます。
コード型はPythonやTypeScriptで記述し、分岐条件や権限制御を細かく作り込めます。その代わり、開発と保守にエンジニアの工数が必要です。
ノーコードツールは画面上でフローを組み立てるため、業務部門の担当者でも構築できます。ただし複雑な分岐や独自の権限設計には限界があります。
| 項目 | コード型フレームワーク | ノーコードツール |
|---|---|---|
| 作る人 | エンジニア | 業務部門の担当者も可能 |
| 制御の細かさ | 分岐や権限まで作り込める | 提供された機能の範囲内 |
| 立ち上がりの速さ | 学習コストがかかる | 数日で試作できる |
| 向いている場面 | 基幹業務への組み込み | 部門単位の小さな自動化 |
まずノーコードで小さな業務を自動化し、効果を確認してからコード型へ移す進め方が現実的です。段階を踏むことで、社内の合意を取りながら内製化を進められます。
AIエージェントフレームワークを比較する5つの判断軸
AIエージェントフレームワークを比較する判断軸は5つあります。
- 開発言語とチームのスキルセット
- マルチエージェント対応とワークフロー制御の柔軟性
- 社内データ連携とRAGの実装しやすさ
- MCP対応と外部ツール連携の広さ
- 開発ステータスとセキュリティ・ガバナンス要件
この5つを自社の要件に当てはめておくと、12種の候補を2〜3種まで絞り込めます。
開発言語とチームのスキルセット
最初に確認すべきは、実際に開発と保守を担うチームが使える言語です。
どれほど高機能なフレームワークでも、チームが読み書きできない言語で書かれていれば運用が続きません。障害対応のたびに外部ベンダーへ依頼する状態になります。
主要フレームワークはPython中心ですが、TypeScript専用のMastraやVercel AI SDKも選択肢になります。Webアプリの開発チームがTypeScriptで統一されている場合、言語をそろえたほうが保守しやすくなります。
自社の体制に合う言語を先に決めておくと、比較対象を半分程度まで減らせます。
マルチエージェント対応とワークフロー制御の柔軟性
次に見るのは、複数のAIを連携させる方式と、処理の流れをどこまで制御できるかです。
業務によって必要な制御は変わります。定型の承認フローがある業務では、途中で人の判断を挟み、承認後に処理を再開する仕組みが不可欠です。
たとえばLangGraphは、処理の任意の地点で実行を止め、状態を書き換えて再開できます。CrewAIは役割を持たせた複数のエージェントを並行して動かす構成に向いています。
自社の業務に「人の承認」が入るかどうかを確認しておくと、選定を大きく間違えずに済みます。
社内データ連携とRAGの実装しやすさ
社内文書やデータベースを参照させる業務では、RAG(検索拡張生成)の実装しやすさが効いてきます。
RAGは、社内のマニュアルや過去の議事録をAIに検索させ、その内容をもとに回答させる仕組みです。参照精度が低いと、現場から「使えない」と判断されます。
LlamaIndexやHaystackは文書の取り込みから検索までを一通り備えており、社内文書の検索基盤を短期間で構築できます。Difyもファイルをアップロードするだけで検索対象にできます。
参照させたい社内データの種類と量を先に洗い出すと、RAG機能をどこまで求めるかを判断できます。
MCP対応と外部ツール連携の広さ
MCP(Model Context Protocol)は、AIと外部ツールをつなぐ接続方式をそろえるためのオープン標準です。Anthropicが公開しました。
MCPに対応していると、対応済みのツールを共通の手順で追加できます。ツールを増やすたびに独自の接続処理を書く必要がなくなります。
主要フレームワークはMCP対応を進めており、Mastraのように自らMCPサーバーを立てられるものもあります。今後ツールを増やす前提なら、MCP対応は確認しておきたい項目です。
連携したい社内システムを一覧化しておくと、必要な連携方式が見えてきます。
開発ステータスとセキュリティ・ガバナンス要件
見落とされやすい軸が、そのフレームワーク自体が今も開発され続けているかです。
開発が止まったフレームワークを土台にすると、新機能が追加されず、数年後にコードを書き直す判断を迫られます。マルチエージェントで広く使われたAutoGenは、2025年10月にメンテナンスモードへ移行しました。新機能の追加は行われず、コミュニティ管理となっています。
ライセンス条件と権限管理の仕組みも合わせて確認します。オープンソースでも商用利用に条件が付く場合があり、法務確認が必要になることがあります。
公式リポジトリの更新状況とライセンスを事前に確認しておけば、稟議で必ず問われる継続性の質問に答えられます。
>AutoGenの公式リポジトリはこちらから
AIエージェントフレームワークおすすめ12選の比較表
主要12種を、コード型・RAG型・ノーコード型の3つに分けて整理しました。
| 名称 | 種別 | 対応言語 | マルチ エージェント | 主な強み | スター数 |
|---|---|---|---|---|---|
| LangGraph | コード型 | Python TypeScript | 対応 | 分岐と状態管理を精密に制御でき、任意の地点で人の判断を挟める | 約3.9万 |
| Microsoft Agent Framework | コード型 | Python .NET | 対応 | Semantic KernelとAutoGenを統合した企業向けSDK | — |
| CrewAI | コード型 | Python | 対応 | 役割分担型のチーム構成を短期間で組める | 約5.7万 |
| OpenAI Agents SDK | コード型 | Python | 対応 | 抽象化が少なく軽量、100以上のLLMに対応 | 約2.8万 |
| Claude Agent SDK | コード型 | Python TypeScript | 対応 | ファイル操作やコマンド実行の標準ツールを内蔵 | — |
| Google ADK | コード型 | Python | 対応 | Apache 2.0のコードファースト設計、Google環境と親和性が高い | 約2.1万 |
| Mastra | コード型 | TypeScript | 対応 | 40以上のモデルを統一インターフェースで扱える | 約2.7万 |
| PydanticAI | コード型 | Python | 対応 | 型定義で出力の構造を保証し、検証失敗時は再試行 | 約1.9万 |
| LlamaIndex | RAG型 | Python | 対応 | 社内文書の取り込みと検索基盤の構築に特化 | 約5.1万 |
| Haystack | RAG型 | Python | 対応 | 検索から生成までをモジュール単位で制御できる | 約2.6万 |
| Dify | ノーコード | 不要 | 対応 | 画面操作でエージェントとRAGを構築、日本語対応 | 約15.1万 |
| n8n | ノーコード | 不要 | 対応 | 1500以上の外部サービスと連携できる | 約19.9万 |
※GitHubのスター数は2026年8月時点の公開値です。Microsoft Agent FrameworkとClaude Agent SDKは複数リポジトリに分かれるため記載していません。
スター数は利用者の多さの目安になりますが、選定の決定要因にはなりません。自社の言語と制御要件に合うかどうかを優先して判断してください。
目的別に見るAIエージェントフレームワークの選び方
代表的な5つの状況について、選ぶべきフレームワークを示します。
- 承認フローがある業務を自動化する場合
- 複数の業務を並行処理させる場合
- 非エンジニアが主体で構築する場合
- Web開発チームが内製する場合
- 大企業が全社導入する場合
自社に近い状況から読むと、PoCで試す候補をすぐに決められます。
【承認フローがある業務】LangGraphで人の判断を組み込む
経理や法務のように人の承認が必須の業務では、LangGraphが有力な選択肢です。
LangGraphは処理をグラフ構造で表現し、任意の地点で実行を止めて状態を確認し、書き換えてから再開できます。本番の承認フローで求められる挙動をそのまま実装できます。
たとえば支払依頼の処理で、一定金額を超えた場合だけ課長の承認を挟み、承認後に登録処理へ進める流れを組めます。障害からの自動復帰にも対応しています。
承認と例外処理を織り込んだ設計ができるため、既存の業務ルールを崩さずに自動化を進められます。
【複数業務の並行処理】CrewAIで役割を分担させる
調査や資料作成のように、作業を分担できる業務にはCrewAIが向いています。
CrewAIは各エージェントに役割と担当タスクを設定し、チームとして協調させる構成を前提に設計されています。少ないコード量で最初の構成を動かせます。
たとえば競合調査であれば、情報収集役と要約役、資料化役に分けて並行処理させられます。条件分岐を厳密に制御したい場合は、イベント駆動のFlows機能を組み合わせます。
役割分担の設計が業務の分担とそろうため、現場に説明しやすい構成になります。
【非エンジニア主体】Difyで業務部門が自作する
社内にエンジニアが少ない場合は、Difyから始めるのが現実的です。
Difyは画面上のキャンバスでワークフローを組み立て、文書を登録するだけでRAGを構成できます。日本語のドキュメントも用意されています。
たとえば問い合わせ対応であれば、社内マニュアルを登録し、回答案を生成するエージェントを業務部門だけで構築できます。自社サーバーへの導入にも対応しています。
業務部門が自分たちで改善を回せるため、情報システム部門は基盤とガバナンスに集中できます。
【Web開発チーム】Mastraで言語をTypeScriptに統一する
WebアプリをTypeScriptで開発しているチームには、Mastraが適しています。
MastraはTypeScript向けに設計されており、フロントエンドと同じ言語でエージェントを実装できます。Pythonの実行環境を別に用意する必要がありません。
React・Next.js・Node.jsとの統合に対応し、単独サーバーとしての運用もできます。評価機能と実行状況の可視化機能も標準で備えています。
既存のWeb開発の進め方をそのまま使えるため、学習コストを抑えて内製化を進められます。
【大企業の全社導入】Microsoft Agent Frameworkで統制を効かせる
全社規模で展開する場合は、Microsoft Agent Frameworkが候補になります。
Microsoft Agent Frameworkは、Semantic KernelとAutoGenを1つのSDKに統合したものです。前者は企業利用向けの基盤、後者はマルチエージェント制御を担っていました。2026年4月3日にバージョン1.0が正式リリースされました。
Pythonと.NETの両方に対応し、Semantic KernelやAutoGenからの移行を支援する仕組みも提供されています。既存資産を活かしながら移行できます。
Microsoft製品を基盤にしている企業であれば、権限管理や監査の要件を既存の運用に乗せやすくなります。
>Microsoft Agent Framework 1.0の公式発表はこちらから
コード型のAIエージェントフレームワーク8選
実装の中心になるコード型フレームワークは8種類あります。
- LangGraph
- Microsoft Agent Framework
- CrewAI
- OpenAI Agents SDK
- Claude Agent SDK
- Google ADK
- Mastra
- PydanticAI
それぞれ得意な領域が異なるため、自社の要件に近いものから検証すると判断が早まります。
LangGraphは分岐と状態管理を精密に制御できる
LangGraphは、長時間動き続ける状態付きエージェントを構築・運用するためのフレームワークです。
処理をノードとエッジのグラフとして表現するため、条件分岐や繰り返しを設計として明示できます。短期の作業記憶と長期の永続記憶の両方を扱えます。
実行の任意の地点で状態を確認・変更できるほか、障害からの自動復帰にも対応しています。実行内容の可視化ツールとの連携も用意されています。PythonとJavaScript/TypeScriptに対応し、GitHubのスター数は約3.9万です。
承認や例外処理を含む業務をそのまま設計に落とせるため、本番運用まで見据えた構築ができます。
>LangGraphの公式リポジトリはこちらから
Microsoft Agent Frameworkはエンタープライズ運用を前提に設計されている
Microsoft Agent Frameworkは、企業での本番運用を前提としたオープンソースのSDKです。
Microsoftが個別に進めていたSemantic KernelとAutoGenの成果を1つに統合しました。企業向けの基盤とマルチエージェント制御を同じSDKで扱えます。
2026年4月3日にバージョン1.0が正式リリースされ、安定したAPIと長期サポートが示されています。Python版はPyPIで、.NET版はNuGetで提供されています。
すでにMicrosoft環境を使っている企業であれば、既存の権限管理や監査の枠組みに乗せて展開できます。
CrewAIは役割分担型のマルチエージェントを短期間で構築できる
CrewAIは、複数のAIエージェントをチームとして連携させることに特化したPython製フレームワークです。
各エージェントに役割と背景、担当タスクを設定し、協調して目標を達成させる構成をとります。役割ベースで設計するため、業務の分担と対応づけやすいのが特徴です。
自律的な協働に適したCrewsと、実行経路を細かく制御するFlowsの2つの仕組みを備えています。Flowsはイベント駆動で状態管理に対応し、条件分岐を含む業務ロジックを扱えます。GitHubのスター数は約5.7万です。
並行して進められる業務が多い組織では、短期間で成果を出しやすい構成になります。
>CrewAIの公式リポジトリはこちらから
OpenAI Agents SDKは少ない抽象化で軽量に実装できる
OpenAI Agents SDKは、OpenAIが提供する軽量なエージェント開発SDKです。
抽象化が少なく、必要な概念が絞られているため、学習コストを抑えて開発を始められます。まず動くものを作りたい段階に向いています。
中核となる概念は次の4つです。
- Agents:指示とツール、制約をまとめたエージェント本体
- Handoffs:特定のタスクを他のエージェントへ委任する
- Guardrails:入力と出力を検証する安全性チェック
- Sessions:会話履歴を自動で管理する
対応モデルの範囲も広く、OpenAI以外にも100以上のLLMを利用できます。
特定のモデルに縛られずに検証できるため、PoCの立ち上げを最短で進められます。
>OpenAI Agents SDKの公式リポジトリはこちらから
Claude Agent SDKは開発業務そのものの自動化に強い
Claude Agent SDKは、AnthropicのコーディングツールであるClaude Codeをライブラリとして利用できるようにしたSDKです。
ファイルの読み書きや編集、コマンド実行、ファイル検索、Web検索といった標準ツールをあらかじめ内蔵しています。ツールを自作せずにエージェントを動かせます。
エージェントのループ処理や履歴管理、権限設定、サブエージェント、MCP連携も備えています。PythonとTypeScriptの両方で利用できます。
コード修正やレビューを自動化したい場面では、必要な機能が最初からそろっている状態で始められます。
>Claude Agent SDKの公式ドキュメントはこちらから
Google ADKはGoogle Cloud環境との連携に優れている
Google ADK(Agent Development Kit)は、Googleが公開したコードファーストのエージェント開発キットです。
Apache 2.0ライセンスのオープンソースで、Python 3.10以上に対応しています。柔軟性と制御性を重視した設計です。
グラフ構造で処理を実行するワークフローランタイムに加え、エージェント間でタスクを委任する仕組みや、繰り返し処理、人の判断を挟む制御にも対応しています。Gemini系モデルを利用でき、GitHubのスター数は約2.1万です。
Google Cloudを基盤にしている企業であれば、既存の環境に沿った形で構築を進められます。
>Google ADKの公式リポジトリはこちらから
MastraはTypeScriptだけでエージェントを開発できる
Mastraは、TypeScript向けに設計されたAIエージェント・ワークフロー開発フレームワークです。
40以上のモデル提供元を統一されたインターフェースで扱え、OpenAI・Anthropic・Geminiなどを切り替えられます。言語をTypeScriptに統一したままエージェントを実装できます。
グラフベースのワークフローエンジン、実行を一時停止して入力を待つ機能、会話履歴やRAGを含む文脈管理を備えています。評価機能と実行状況の可視化、MCPサーバーの作成にも対応し、GitHubのスター数は約2.7万です。
Web開発の体制をそのまま活かせるため、フロントエンド主体のチームでも内製を進められます。
>Mastraの公式リポジトリはこちらから
PydanticAIは型定義で出力の品質を担保できる
PydanticAIは、Pythonのデータ検証ライブラリPydanticを開発したチームが提供するエージェントフレームワークです。
Pydanticのモデルで出力の構造を定義でき、指定した型で結果が返ることを保証します。検証に失敗した場合はエージェントに再試行させます。
開発環境やコーディング支援AIに多くの文脈を渡せるよう設計されており、補完と型チェックが働きます。OpenAI・Anthropic・Gemini・DeepSeekなどに対応し、GitHubのスター数は約1.9万です。
後続システムにデータを渡す処理では、想定外の形式による不具合を減らせます。
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社内データ活用に強いRAG型フレームワーク2選
社内文書の検索を軸にする場合は、RAGに強い2種類が候補になります。
LlamaIndexは社内文書の検索基盤を短期間で構築できる
LlamaIndexは、LLMアプリのためのデータフレームワークとして位置づけられています。
データの構造化と高度な検索インターフェースの提供に強く、RAGを中心とした用途に向いています。文書の取り込みから検索までの流れを一通り備えています。
エージェント型アプリの構築も支援しており、文書処理向けのLlamaParseも提供されています。主要言語はPythonで、GitHubのスター数は約5.1万です。
社内マニュアルや過去案件の資料を活用したい場合、最初の検索基盤を短期間で立ち上げられます。
>LlamaIndexの公式リポジトリはこちらから
Haystackは大量ドキュメントの処理と検索精度の調整に強い
Haystackは、本番運用を想定したLLMアプリ開発向けのオープンソースフレームワークです。
検索・振り分け・記憶・生成の各処理を明示的に制御できるモジュール型のパイプラインを設計できます。検索精度を工程単位で調整できます。
エージェント機能では、LLM呼び出し前やツール実行前のフック、ステップ数の追跡、トークン使用量の監視が組み込まれています。ライセンスはApache 2.0で、GitHubのスター数は約2.6万です。
回答精度に厳しい要件がある業務でも、工程ごとに原因を切り分けて改善を進められます。
>Haystackの公式リポジトリはこちらから
ノーコードで使えるAIエージェント開発プラットフォーム2選
エンジニアを介さず構築するなら、次の2種類が現実的な選択肢です。
Difyは画面操作でエージェントとRAGを構築できる
Difyは、ノーコードでAIエージェントやRAGアプリを構築できるプラットフォームです。
画面上のキャンバスでワークフローを組み立て、その場で動作を確認できます。PDFやPowerPointなど複数の形式に対応したRAG機能も備えています。
エージェントはLLMの関数呼び出しまたはReAct方式で定義でき、50以上の組み込みツールを利用できます。クラウド版と自社環境への導入の両方に対応し、Docker Composeで構築できます。日本語のREADMEも用意され、GitHubのスター数は約15.1万です。
ライセンスはApache 2.0を基礎に追加条件を加えた独自ライセンスのため、商用利用の前に条件を確認してください。
>Difyの公式リポジトリはこちらから
n8nは既存の業務システムとの連携を軸に自動化できる
n8nは、業務システムの連携を軸にAIワークフローを構築できるプラットフォームです。
1500以上の外部サービスとの連携に対応しており、既存の業務システムをつないだ自動化から着手できます。試作から本番運用まで同じ環境で進められます。
AIを前提とした設計になっており、複数ステップのエージェントも構築できます。OpenAI・Anthropic・Googleなど複数のモデルに対応し、Dockerやnpxでのセルフホストもできます。GitHubのスター数は約19.9万です。
ライセンスはSustainable Use Licenseと商用ライセンスの組み合わせのため、利用範囲を事前に確認してください。
>n8nの公式リポジトリはこちらから
AIエージェントフレームワーク導入で失敗しやすい4つの落とし穴
選定と導入でつまずきやすい落とし穴は4つあります。
- 機能の多さを基準に選んでしまう
- PoCを優先して本番運用の設計を後回しにする
- ログと評価の仕組みを用意しないまま動かす
- 乗り換えコストとベンダーロックインを見落とす
これらを知らずに進めると、動くものはできても本番稟議を通せない状態に陥ります。
機能の多さを基準に選んでしまう
比較表の対応項目が多いフレームワークを選ぶ判断は、失敗につながりやすいです。
機能が多いほど概念や設定も増え、チームが使いこなすまでの時間が伸びます。使わない機能の学習に工数を取られます。
たとえばマルチエージェントを使わない単一業務の自動化に高機能なフレームワークを選ぶと、抽象化に振り回されて開発が停滞します。
自社の業務に必要な機能だけを要件として書き出し、それを満たす最小構成から選ぶと、立ち上がりを早められます。
PoCを優先して本番運用の設計を後回しにする
動くものを早く作ることだけを目標にすると、本番移行の段階で作り直しが発生します。
PoCでは扱わない要素が、本番では必ず要件になります。
- 誰がどのデータにアクセスできるかの権限管理
- 金額や内容に応じた承認フロー
- 個人情報や機密情報の取り扱い
- 障害が起きたときの再実行と復旧
これらはいずれも稟議で必ず問われる項目です。
とくに人の承認を挟む処理は、後付けが難しい部分です。処理を止めて再開する設計を前提にしていないと、構造から見直すことになります。
PoCの段階で本番要件を一覧化しておけば、選定の時点で必要な機能を判断できます。
ログと評価の仕組みを用意しないまま動かす
実行ログと精度評価の仕組みがないまま運用を始めると、改善の手がかりを失います。
AIエージェントは、同じ入力でも判断の経路が変わることがあります。どのツールを呼び、どの情報をもとに回答したかを追えないと、原因を特定できません。
現場から「回答が間違っている」と指摘されても、修正すべき箇所が分からない状態になります。結果として利用が止まり、PoC止まりで終わります。
実行状況を可視化する機能と評価の仕組みを、選定条件に含めてください。MastraやHaystackのように標準で備えるものもあります。
乗り換えコストとベンダーロックインを見落とす
選定時に乗り換えの前提を置いていないと、方針変更のたびに大きな作り直しが発生します。
フレームワークごとに設計の考え方が異なるため、コードをそのまま移すことはできません。開発が止まる可能性も考慮しておく必要があります。
実際にAutoGenは2025年10月にメンテナンスモードへ移行しました。公式リポジトリでは、後継のMicrosoft Agent Frameworkへの移行が案内されています。
特定のクラウド製品に依存した実装も、方針変更時の負担になります。
業務ロジックをフレームワークから切り離して実装しておくと、移行時の影響範囲を抑えられます。
2026年のAIエージェントフレームワークの最新動向
選定に影響する動向は5つあります。
- MCPがツール連携の事実上の標準になった
- A2Aでフレームワークをまたいだ連携が始まった
- AutoGenがメンテナンスモードに移行した
- TypeScript製フレームワークが急成長している
- 可視化と評価の整備が選定条件になった
これらを押さえておくと、数年先を見据えた選定ができます。
MCPがツール連携の事実上の標準になった
AIと外部ツールをつなぐ方式として、MCPが標準的な位置を占めるようになりました。
MCPはAnthropicが公開したオープン標準で、接続の手順を共通化します。フレームワーク側が対応していれば、対応済みツールを同じ形で追加できます。
Mastraのように自らMCPサーバーを構築できるフレームワークも登場しています。社内システムをMCPサーバーとして公開すれば、複数のエージェントから同じ形で利用できます。
MCP対応を選定条件に入れておくと、ツールを増やすたびの追加開発を抑えられます。
A2Aでフレームワークをまたいだ連携が始まった
エージェント同士を連携させるA2A(Agent-to-Agent)プロトコルへの対応が進んでいます。
A2Aは、異なるフレームワークで作られたエージェントを相互に連携させるための取り組みです。CrewAIはA2A対応を追加しています。
これにより、部門ごとに異なるフレームワークを使っていても、後から連携させる余地が生まれます。全社で1つのフレームワークに統一する必要性は下がります。
部門ごとに最適なものを選びながら、将来の連携を残す選定ができます。
AutoGenがメンテナンスモードに移行した
マルチエージェントの代表格だったAutoGenは、2025年10月にメンテナンスモードへ移行しました。
公式リポジトリでは、新機能の追加は行われず、コミュニティによる管理になると明記されています。修正はバグ対応やセキュリティ対応、ドキュメント改善に限られます。
あわせて、後継となるMicrosoft Agent Frameworkの利用が案内されています。新規開発はMicrosoft Agent Frameworkから始め、既存利用者は移行を検討する形です。
比較記事の情報が古いままだと、開発が止まったフレームワークを選ぶおそれがあります。公式リポジトリで最新の状況を確認してください。
TypeScript製フレームワークが急成長している
エージェント開発はPython中心でしたが、TypeScript製の選択肢が広がっています。
MastraやVercel AI SDKといったTypeScript向けフレームワークが利用者を伸ばしています。Webアプリの開発体制をそのまま活かせる点が支持されています。
フロントエンドからバックエンドまでTypeScriptで統一している組織では、Python環境を別に用意する必要がなくなります。採用や引き継ぎの面でも扱いやすくなります。
自社の開発言語を基準に選べる状況が整いつつあります。
可視化と評価の整備が選定条件になった
実行状況の可視化と精度評価の機能が、選定時の判断項目になってきました。
本番運用では、エージェントの判断経路を追えることが求められます。ログが取れなければ、業務部門への説明も改善もできません。
Mastraは評価機能と可視化機能を標準で備え、Haystackはトークン使用量やツール呼び出しの追跡を組み込んでいます。LangGraphは可視化ツールとの連携を用意しています。
運用開始後の改善サイクルを回せるかどうかは、選定時点でほぼ決まります。
AIエージェントフレームワークに関するよくある質問
AIエージェントフレームワークに関する質問は以下の5つです。
- LangChainとLangGraphはどう違いますか
- 無料で使えるAIエージェントフレームワークはありますか
- 日本語のドキュメントが整っているフレームワークはどれですか
- フレームワークの習得にはどれくらいの期間が必要ですか
- 複数のフレームワークを組み合わせて使えますか
質問に対する回答を確認して、社内での検討の参考にしてみてください。
LangChainとLangGraphはどう違いますか
LangChainはLLMアプリ開発の汎用的な部品群で、LangGraphは状態を持つエージェントの処理の流れを組み立てるためのフレームワークです。
LangChainはモデル呼び出しや文書処理などの部品を提供します。一方でLangGraphは、処理をグラフとして表現し、分岐や繰り返し、中断と再開を扱います。
複数ステップにまたがるエージェントを本番運用する場合は、LangGraphを軸に検討してください。
無料で使えるAIエージェントフレームワークはありますか
本記事で紹介したフレームワークの多くはオープンソースで、フレームワーク自体は無料で利用できます。
ただしLLMのAPI利用料やサーバー費用は別に発生します。ライセンス条件も一律ではなく、Difyのように独自ライセンスを採用しているものもあります。
商用利用の前に、ライセンス条件と運用にかかる費用の両方を確認してください。
日本語のドキュメントが整っているフレームワークはどれですか
ノーコード系のDifyは日本語のREADMEが用意されており、日本語の情報を探しやすい状況です。
コード型のフレームワークは公式ドキュメントが英語中心です。ただし利用者が多いLangGraphやCrewAIは、日本語の解説記事や実装例が比較的多く見つかります。
社内の英語ドキュメントへの抵抗感が強い場合は、利用者数の多いものを選ぶと情報収集の負担を下げられます。
フレームワークの習得にはどれくらいの期間が必要ですか
必要な期間はフレームワークと目的によって変わります。
抽象化が少ないOpenAI Agents SDKやCrewAIは、最初の構成を動かすまでの手順が少なく済みます。一方でLangGraphのように制御が細かいものは、設計の考え方を理解する時間が必要です。
まず小さな業務で1つ作り切ることを目標にすると、習得の進み方を判断しやすくなります。
複数のフレームワークを組み合わせて使えますか
組み合わせて使うことは可能です。
実務では、検索基盤にLlamaIndexを使い、処理の流れをLangGraphで制御する構成がとられます。業務部門の試作はDifyで進め、基幹業務への組み込みはコード型で行う分担も現実的です。
ただし組み合わせが増えるほど保守の対象も増えます。担当と役割分担を決めてから採用してください。
AIエージェントフレームワークは判断軸を固めてから比較するのが近道
AIエージェントフレームワークは、開発言語・制御の柔軟性・社内データ連携・MCP対応・開発ステータスの5つの判断軸で絞り込めます。
まずは自社の業務要件と開発体制を書き出し、候補を2〜3種に絞ってPoCを始めてください。
一方で、フレームワークを正しく選べても、ログと評価の仕組みや承認フローの設計を後回しにすると本番運用には届きません。
選定と同じ熱量で運用設計にも向き合い、AIエージェントの内製化を成果につなげていきましょう。



















