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2018.09.20

約55億円の資金調達 / FiNC Technologiesの新代表取締役CTO 南野充則氏が語るFiNCの技術的戦略【TECH IN ASIA TOKYO 2018 レポート】

最終更新日:

予防ヘルスケア×AI・人工知能テクノロジーに特化したヘルステックベンチャーの株式会社FiNCが2018年9月20日に社名を「株式会社FiNC Technologies(以下FiNC)」に変更することを発表しました。合わせて数社の引受先から約55億円の資金調達を行うことも発表しました。

また、加速する技術発展のスピードに合わせて南野 充則氏が代表取締役CTOに就任します。2016年にFiNCが設立した人工知能研究所「FiNC Wellness AI Lab」を中心として、機械学習ディープラーニング)をはじめとするAI及び最先端テクノロジーを駆使して、ヘルスケア領域における課題の解決を目指していくといいます。

FiNCはヘルスケアプラットフォームアプリとして、App Store / Google Play共にヘルスケア/フィットネスアプリ月間No.1を更新しているほか、App Storeのヘルスケア/フィットネスアプリ月間売上No.1を獲得し続けています。今では330万ダウンロードを突破し、年内では500万ダウンロードに達する見込みだといいます。

9月20日から渋谷ヒカリエで開催されているTECH IN ASIA TOKYO 2018(以下TIA) において南野氏による講演が行われました。講演の内容を一部抜粋しながら今回のリリースに関してお伝えします。

約55億円の資金調達を実施 /使いみちは!?

新たな数社の引受先から約55億円の資金調達を実施することを発表したFiNC。新たな引受先として株式会社資生堂や中部電力株式会社、帝人フロンティア株式会社などから資金調達を実施します。南野氏によると、FiNCは日本のスタートアップの中でも大企業の株主が一番多いといいます。

TIAで登壇した南野氏は資金調達によって2つのポイントを強化していきたいと述べました。

南野氏:次の2年間の目標として国内で圧倒的な地位を築くことと、海外に布石を打つことに注力していきます。国内では特にマーケティングにも投資していきます。

海外ではアジアとアメリカを意識しており、認知を獲得していきたいと思っています。海外ではサンフランシスコに拠点を設けていますが、中国やインドにも拠点を作っていければと考えています

また、出資企業との事業提携について、積極的に進めていきたいとも述べました。

南野氏:基本的には事業提携したい会社から資金調達しています。資生堂とはFiNCのライフスタイルの知見に資生堂が持つ美容の知見を含めてUXを良くするプロジェクトを行おうと考えています。また、帝人フロンティアは睡眠に特化したプロジェクトを進めていく予定で、睡眠を改善するデバイスを共同で作るプロジェクトが進んでいます。

さらには「今後もヘルスケア領域においてナンバーワンであり続けることで、さらに提携を進めていきたい」「海外でも日本ナンバーワンのブランドで渦を引き起こし、その渦を大きくしていきたい」とさらなる提携の拡大や海外展開への意欲を見せました。

株式会社FiNC Technologiesに改名!テクノロジーをさらに強化していく

「株式会社FiNC」から「株式会社FiNC Technologies」への社名の変更はテクノロジーカンパニーになり技術力を強化することを意識していることが伺えます。合わせて南野氏が代表取締役CTOになることで、さらに開発を強化していくといいます。南野氏は大学時代から機械学習の研究を行っていた人物で、日本ディープラーニング協会の最年少理事も務めています。

2016年に同社が設立した人工知能研究所「FiNC Wellness AI Lab」での研究開発を強化し、ディープラーニングを中心とする最先端テクノロジーを駆使して、今までは解決困難であったヘルスケア領域における課題の解決を目指し、FiNCは世界的なプラットフォームを目指すといいます。

FiNCの有する技術力 / 国との共同研究も

FiNCは従来から高い技術力を持っています。食事の画像から材料の種類やカロリーを推定する研究や、写真から姿勢を認識する技術などを有しています。食事画像認識に関しては国との共同研究も行っています。

代表取締役CTOになった南野氏は、人工知能研究所「FiNC Wellness AI Lab」の展開に関して述べました。

南野氏:FiNCの技術開発の戦略はトレーナーや栄養士がやっていたことの自動化です。一貫した体験をアプリとしてユーザに届けたいです。

AIにおいては、画像認識やや言語の部分がFiNCの強みでもあるので、展開を強めていきたいです。

しかし、一番優先度が高いのはアプリのリテンションです。使い勝手を良くしていきます。

特許の取得も積極的に行ってきたFiNC

また、技術的戦略の一つとして、CEOの溝口勇児氏の知的財産に対する戦略が大きく事業提携などに結びついているといいます。ライフログと連携したパーソナライズドアドバイスや3者間チャット、食事のリコメンドや投稿のリマインドなどの特許を取得しており、これに魅力を感じた企業からの声かけも多いそうです。

一貫して強調された「UI・UX」の強化

南野氏の講演では一貫してUI・UXを向上することによるリテンションの強化について強調されていました。

FiNCは2015年にグッドパッチをデザインパートナーとして業務提携契約を結んでいます。グッドパッチのデザイン的な知見にユーザのデータから得た知見をかけ合わせて継続率の高いUI・UXを実現しているといいます。

UI・UXをここまで意識するのはなぜでしょうか。南野氏は以下のように述べています。

南野氏:ディープラーニングはアプリの質が良くないと機能しません。データが集まらないとディープラーニングを活用できないので、ユーザに継続していただくことが大事です。

UI・UXは日々データを見ながらチューニングしています。

また、社内にはライフサイエンス事業部という論文専門の部署がコンテンツを作っています。他にもインスタグラマーなどのインフルエンサーを取り込んでコンテンツ作りを行ってユーザが楽しめる工夫をしています。さらには継続して使ってポイントを貯めたユーザにはインセンティブを用意するなどの工夫もしています。

さいごに

「アプリのUI・UXを強化しなくてはデータがたまらない。データがたまらなくてはディープラーニングなどの機械学習を活用していけない。」

鶏が先か、卵が先かの問題にはなってしまいますが、ディープラーニングの産業活用を進めるためには、UIやUXなど基礎を改めて振り返ることも大切そうです。

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