AI・IoT時代で現実世界がデータに / 今こそディープラーニングの一歩を踏み出そう!【JDLA 草野理事】

ディープラーニング技術が発展し、ビジネスへの活用の可能性が見えてきました。多くの企業では、既存事業にどのようにディープラーニングなどのAI技術を導入するかの検討も行っていることでしょう。

今回は東京海上日動システムズにて開催された日本ディープラーニング協会(以下JDLA)の草野理事(ブレインパッド 代表取締役会長)による講演の内容をお伝えします。

テーマは「ビジネスにおけるディープラーニングの可能性と課題」です。AI・人工知能の要素技術であるディープラーニングの産業活用促進はJDLAの活動の大きな軸になっており、講演活動も広く行っています。

ディープラーニングの産業活用=ビジネスでの活用を進めるためには、ディープラーニングにどんな可能性があるのか、どんな課題に向き合わないといけないのかを見据えてビジネスサイドもエンジニアも一体となって進めていかなくてはいけません。

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日本ディープラーニング協会(JDLA)

新たに誕生したセブン・シスターズ

データイズニューオイル

みなさんは「セブン・シスターズ」という言葉をご存知でしょうか?第二次世界大戦後から1970年代まで、石油市場ほぼ独占状態に置いて支配した7社が通称セブン・シスターズ(Seven Sisters)と呼ばれていました。

セブン・シスターズ <<エクソン / ロイヤルダッチシェル / ブリティッシュペトロリアム / モービル / シェブロン / ガルフオイル / テキサコ >>

最近では「Data is the new oil」と呼ばれ、データが石油のような存在になっています。20世紀の多くの産業を支えていた石油ですが、現在はデータが多くの産業を支える存在になっていることを例えた言葉です。

そして現代の新たなセブン・シスターズと呼ばれる7社は以下です。

現代のセブン・シスターズ<<Apple / Google / Microsoft / amazon / Facebook / Tencent / Alibaba>>

2018年のダボス会議において「国を超える力を持った会社とどのように付き合っていくか」というテーマの中で、セブン・シスターズという言葉が使われたそうです。

ダボス会議・・・経済や政治など社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界・産業の課題を形成して世界情勢の改善に取り組むもの。正式名称は世界経済フォーラム。独立した国際機関で、ジュネーブに本部を置いている。

その実力を測るために、世界の時価総額Top10を見てみると上位8社の中にセブン・シスターズが全てランクインしている状況で、どれほどの企業規模なのかが伺えます。(数値は2018年1月時点で単位は億ドル)

世界の企業の時価総額TOP10の企業

データを集めてサービス向上を続けてきたセブン・シスターズ

セブン・シスターズのそれぞれの企業は、世界的に著名な企業でご存知の方も多いと思います。

なぜ、ここまで企業価値を向上することができたのでしょうか?

それは、「優れたサービスを提供することで多くのユーザが継続して利用し、データが集まり、そのデータを元にさらに優れたサービスを作る」という好循環のサイクルを回すことができているからだと草野理事はおっしゃいます。

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先日、FiNCの代表取締役CTOの南野氏(JDLA理事)がTech in Asia TOKYO 2018で講演していたセッションで強調されていたのも「サービスのUI・UXを向上しなければデータは集まらず、ディープラーニングも活用できない」ということでした。

約55億円の資金調達 / FiNC Technologiesの新代表取締役CTO 南野充則氏が語るFiNCの技術的戦略【TECH IN ASIA TOKYO 2018 レポート】

見落とされがちですが、継続してユーザが使えるサービスを構築することで、データが集まり、集まったデータを使ってさらなるサービスの向上につながっていくことを再認識しました。

これらはネットでの出来事 / 次はリアルへ

現代のセブン・シスターズをはじめとするネット企業たちは主にWebやアプリのデータを収集し、サービスの改善を行ってきました。そして今、さらなる成長を求め、リアルへと活動の場を広げようとしています。

話題になっているケースでは、自動運転や無人コンビニなどです。

amazonがはじめたamazon go 【撮影:

参考記事:レジがない未来のコンビニ「Amazon Go」ついにオープン! 現地からレポート!

AI / IoT時代が意味するもの

これからはAI / IoTの時代と呼ばれます。多くの企業がリアルにも活動の幅を広げようとしている今、どんな時代がくるのかを草野理事がでわかりやすく解説してくださいました。

インターネットが普及する以前の時代からモバイルインターネットの世界へ

インターネット(IT)が普及する以前の時代は企業が収集できるデータは限られたものでした。そして、その限られたデータに基づいて起こせる行動も非常に限定されたものでした。

インターネットが登場してからはユーザの行動は常にデータ化され、先述のようにサービスの向上などに柔軟に使われるようになりました。代表的な事例はamazonによる購買データを元にしたレコメンドシステムです。Webサイト上の購入過程のデータを活用することで、Webサイト上でのユーザ体験と企業の収益が改善されたのです。

そしてモバイルインターネットが加わりました。スマートフォンの普及などにより、位置情報などのデータも集められるようになり、今日ではWebやアプリでの顧客体験がさらにブラッシュアップされています。

来るAI / IoT時代ではどのような変化が!?

では、これから本格的に普及するAI / IoTによってどのように変わっていくでしょうか。まずIoT(Internet of Things :あらゆるものがインターネットに繋がること)の普及が鍵になります。IoTによって、あらゆるものにセンサーが設置されてデータの生成・取得が可能になり、そのデータがインターネットを通じて収集できるようになります。

先述のサイクルで言えば、「大量にデータが集まる部分」がIoTで拡張され、従来、アプリやネット上のサービスに限定されていたデータソースが一気に多様化し、さまざまな対象の大量データが収集可能になります。

そうすれば、そのデータを解析し、さらなるサービス / プロダクトの改善につなげることができるようになります。つまり、これまでネットの世界に限定されていた、データを通じた現実の改善というサイクルが、リアルの世界にも展開されようとしているのです。

IoT時代のデータを巡るサイクル:集めたデータを分析し、Web上だけでなくドローンやロボット、アクチュエーターなどリアル世界でも活かすことができるようになっていく

これからはあらゆる産業がが革新の対象に

IoTによってセンサーデータを集め、活かすことができるようになると、Web上だけでなくあらゆる産業がデータの力で革新される可能性があります。現代のセブン・シスターズのような企業がWeb領域以外からも生まれる可能性もあるのです。

大量のデータをリアルタイムにさばくには

しかし、ここで直面する問題があります。IoTのネットワーク上に配置されたセンサーやマイク、カメラなどが集める膨大なデータを人間では処理しきれないという問題です。動静止画や音声を機械で認識することは難しい技術でしたし、機械が処理できない情報を人で処理しようにも、集められた膨大な音声や画像を処理するには、スピードや正確さに欠けてしまいます。さらに、単調で大量なセンサーデータの分析になると、人間にも難しい状況です。

特にスピードの面では、わざわざリアルタイムに集めたデータは即処理する必要性が出てきます。例えば自動運転など、認識の1秒の遅延も許されない場合も想定されます。

つまり、大量のデータが集まるようになるIoTの時代には「分析(Analyze)」の部分で革新が起きる必要があります。そこでディープラーニングが活用されます。

ディープラーニングの衝撃

2012年6月 YouTubeからランダムに切り出した画像1000万枚を3日間をかけて学習した結果「猫」を認識することが可能になり話題になりました。Googleの取り組みです。

大量のデータを学習することで、コンピュータがそのデータの特徴を自ら学び、今までは人間しかできなかったような画像の認識が可能になりました。

それ以降、認識能力は向上し続け、ILSVRC(ImageNetのデータを利用した大規模画像認識コンペティション)におけるエラー率も改善を続けています。既に2015年の時点でMicrosoftが人間のエラー率を凌ぐ認識能力を発揮し、限定的な用途では人間以上の眼を持つまでになっています。

2012年以降の画像認識におけるエラー率の推移

人間を超えた認知能力の獲得

ディープラーニングを組み込んだシステムは一部人間を超える認知能力を獲得しました。この「眼」の誕生はカンブリア爆発を想起させるもので、松尾理事長(東京大学特任准教授)が例え話でもよく使う言葉です。

カンブリア爆発は約5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の門が出揃った現象のことを言います。古生物学者のアンドリュー・パーカーは「眼の誕生」がその原因だったという光スイッチ説を提唱しました。

カンブリア紀に初めて眼を持ったのは三葉虫です。眼を持った捕食者はものを見つけやすくなり、捕食される側は、逃げるために発達したという説です。

ディープラーニングの発達により「眼」を持った機械が誕生することで、機械・ロボットの分野でカンブリア爆発が起こる可能性があります。いかにして日本がこの流れに乗っていけるかがキーになります。人間の眼は網膜を通して映像の情報を取り入れ、視床を通じて第一次視覚野で認識しています。これをディープラーニングで置き換えると、カメラなどのイメージセンサで映像を得て、インターネット回線で情報を伝達し、ディープラーニングの部分で認識すると言えます。

加速度的な進化が起きている

機械が眼を持つことによって加速度的な進化が進行しているといいます。かつてはコンピュータにTVゲームを覚えさせただけでもすごかったのですが、その1年後にはAlphaGoが囲碁で最強の棋士を破るまでになりました。実は囲碁で機械が人間に勝利するまで、10年はかかるといわれていたこともあり、その進化の速さが伺えます。

囲碁で人間に勝利したAlphaGoはさらなる進化を遂げ、とうとう人間が生成したデータを使わずに勝利することを可能にしました。その進化の流れは以下の画像をご覧ください。

AlphaGoからさらに進化を遂げたのがAlphaGo Zeroというバージョンです。とうとう人間の棋譜を全く使わずに学習を行い、あっという間に旧バージョンにも勝る実力を得てしまいました。

無数にある囲碁の棋譜の中で、人間がトライしてきた範囲は一部です。機械学習では、人間が生成してきたデータに基づいて学習を行うため、人間が探索してきた元データに少なからず依存してしまいます。

しかし、AlphaGo Zeroでは人間の棋譜データを無視して学習を行います。結局、人間の棋譜はバイアスだったことが判明しました。

人類の生み出したデータから離脱することで、ディープラーニングでは、もはや「人にしかできなかった」はずのことも「人にはできない」規模や速度で処理が可能になりました。

ディープラーニングの発展が意味すること

[意思決定の高度さ・複雑さ]と[意思決定の頻度・スピード・量]のマトリックスで人間とコンピュータを比較してみましょう。

人間は複雑な意思決定は可能なものの、時間や量の制約があります。従来のコンピュータでは画像の認識など複雑な処理は難しかったものの、高速に大量の処理を行うことができました。

しかし、ディープラーニングを始めとする機械学習技術の台頭によって、意思決定が高度で複雑なタスクであっても処理することが可能になってきています。

いきなりの高度な人間の判断の代替は難しいですが、ディープラーニングなど機械学習技術で価値を創出できる領域から活用を進めていくことが大切です。

AIで価値を出すには

人間を超える認識力を持つようになったディープラーニングなどのAIですが、どのように価値を出していけばいいのでしょうか。

これは、ヤフー(株)のCSOの安宅さんが提唱されるAIを活用するための4要素です。このうち左側の部分について、自然言語処理技術や機械学習などの情報科学は最先端のソフトがオープンソースで提供されていますし、機械学習に必要な計算環境はクラウドサービスで提供されています。ですから、多くの企業にとって、この部分は差別化を生む領域ではありません。

右側の部分、すなわち機械学習の導入では大きく分けて以下の2つのようなシナリオが考えられます。

シナリオ1
既にデータが多く蓄積されている場合、それを利用して作れる(学習できる)自社サービスの差別化につながるAIを開発する

シナリオ2
どうしても実現したいAIがある場合に、戦略的に学習用のデータを収集(場合によっては
生成)する

構想すべき世界

もう少し抽象的に表現するとこんなイメージになるかと思います。

現実世界にある様々な理想や課題を解決するために、何をデータ化して学習をすればいいのかを考え整理すること、どんなAIを作り上げてどんな社会実装をすれば、いい未来(新しい付加価値の創出や顧客体験)を作り出していけるのかを構想し、実現していかなければなりません。

人工知能という言葉で指されるもの

そもそも、「AI・人工知能」というワードは、テレビをはじめさまざまなメディアで使われるようになっており、多くの方の中で曖昧になっている場合があります。草野理事は昨今「人工知能」と表現されるものには以下の3つのカテゴリがあるといいます。

・IT系・従来からあるIT技術の擬人化

フィンテックやIoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーションなど)
AIの定義が定められておらず、AIでないと批判することはできない。ITが重要な部分。

・機械学習や自然言語処理を使用しているもの

ビッグデータやWeb関連、コールセンターのサービスなど、データから学習しているが浅い関数で学習されているもの。

・ディープラーニング系(「眼」の技術、画像処理と機械学習)

AlphaGo、医療の診断や自動運転(に使われる物体認識)など。日本は製造業との融合に大きなチャンスがあります。

これらの中で、現在、革新の中心にあって、新しい可能性を広げているのはディープラーニングです。ですから、この技術の可能性と限界を正しく理解するところから始めなくてはいけません。

なにから始めればいいのか

ディープラーニングの活用をするにはまずはディープラーニングについて知ることが大切です。日本ディープラーニング協会では、G検定とE資格の2つの資格検定試験を行っています。

G検定とE資格はディープラーニングに関する知識を有し、事業にディープラーニングを活用する人材(ジェネラリスト)と、ディープラーニングを実装する人材(エンジニア)の育成を目指してはじめられました。

ビジネスサイドの人でもディープラーニングを理解して活用していく知識が求められます。そんな人はG検定を受けることをおすすめします。

E資格とG検定はそれぞれ必要な知識やスキルセットを定義しています。E資格では協会が認定した事業者がトレーニングを提供しています。

ディープラーニングが日進月歩する技術であることから、検定・資格実施年毎に実施年号を付与しています。また、合格すると名刺にロゴマークを挿入することもできます。

第1回G検定は約1500人が受験し、823人が合格しました。合格者のコミュニティ形成もしており、ディープラーニングの産業活用の促進のために積極的に活動をしているのがJDLAです。

さいごに

最後に草野理事は一歩目を踏み出す重要性について述べて講演を締めくくりました。

今ほど変化のペースの早い時代は過去にありませんでした。しかし、今後はさらに変化のペースが早くなり、今ほど変化が遅い時代は二度と来ないだろうと言われています。

今、ディープラーニングの可能性をどれだけ感じ、一歩目を踏み出すことができるのか。今こそ一歩目を踏み出すときかもしれません。

G検定やE資格の受験もぜひ検討してみてください!

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おざけん

人工知能・AI専門メディア AINOWデスク ┃ カメラマン
┃ Twitterでも発信しています。@ozaken_AI ┃ AINOWのTwitterもぜひ@Ainow_ai┃
出演: 日経CNBC「日経カレッジ・ラボ」日本テレビ 「ZIP!」など┃

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