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警備員に代わって、ロボットに警備業務を代替させようとする動きが進んでいます。
警備分野で活躍するロボットとして、以前、三菱地所が活用する警備ロボット「SQ-2」をご紹介しましたが、このたび新たな警備ロボットが東京都立産業技術研究センター(都産技研)、アースアイズ 、日本ユニシスの3社によって開発されました。
前回の三菱地所が進めるビル管理業務へのロボット導入について詳しくはこちら▼
今回は、3社によって開発された人工知能(AI)搭載警備ロボット「Perseusbot(ペルセウスボット)」の西武新宿駅のコンコースにおける実証実験を取材し、その性能や実用性についてご紹介していきます。
警備業界の現状
警備業界が現在抱えている問題として、国内の人口減少による深刻な人手不足が挙げられます。2018年7月に帝国データバンクによって行われた「人手不足に対する企業の動向調査」によれば、「メンテナンス・警備・検査」分野の企業のうち66.2%が人手不足に陥っているそうです。また、2020年の東京オリンピック開催に伴って、訪日外国人の増加から警備員の需要は今後さらに伸びていくと予想されます。
そのため、これからはロボットが人の手に代わって警備業務を担い、人手不足をカバーする必要があるのではないでしょうか。
警備ロボット「Perseusbot(ペルセウスボット)」とは
開発
ペルセウスボットとは駅構内の警備を効率化・省人化するために都産技研、アースアイズ 、日本ユニシスの3社が開発した警備ロボットです。
都産技研の自律移動型案内ロボット「Libra(リブラ)」と屋外用大型ロボットベース「Taurus(トーラス)」を組み合わせて、アースアイズ のAI監視カメラを搭載することで開発されました。
概要
ペルセウスボットは駅構内を自律的に移動し、搭載された監視カメラおよび定点カメラによって異常を自動検知し、駅係員に知らせます。
その際にロボットは以下のようなものを異常として検知・通知します。
・不審者(周囲をキョロキョロする、座り込む、喧嘩など)
・異常者(倒れているなど急病人と推定される人物)
・不審物(スーツケースなど長時間放置されている物体)
通知を受けた係員は現場へ向かい、対象者に声がけをするなどして事故を未然に防ぎます。
見た目
ペルセウスボットは転倒防止のため比較的低い位置に重心がくるような形になっています。また、周囲の障害物などにぶつかる危険を減らすため突起物もありません。
しかし、自律型警備ロボットとしてセンサーやカメラを搭載する必要があるため、それらが有効に働くよう高さは高く設計されています。
そして、機体の下半身が膨れて設計されているのは、万が一機体が障害物や人に衝突したとしても、機体全体でぶつかるのではなく下半身のみで接触し、最低限の衝撃で急停止できるようにするためです。
仕組み
ペルセウスボットの主な機能として、自律走行と異常検知の2つに分けることができます。人間のように駅構内を自由に移動し、異常を検知するという画期的な機能の裏にはAIが深く関わっています。
自律走行
ペルセウスボットはフロアを自由に移動するために、あらかじめインプットされた駅構内の地図に基づいて行動しています。
また、駅という常に人が行き来する環境での運用が想定されているため、人や障害物を避けるための機能が必要となります。そこで、ペルセウスボットには物体との距離を認識するための測位機や超音波センサーといったセンサーが複数台搭載され、周囲の状態を的確に認識し、安全重視の最適な行動を自律的に取ることができます。
特に、ロボットが段差などで落下することを防ぐために機体の斜め下を認識するための設計や、万が一障害物や人にぶつかった時のためのバンパーなど安全を守るための様々な工夫が凝らされています。
異常認識
ペルセウスボットが駅構内で異常を認識するためには、アースアイズ が手がけるAIカメラが採用されています。アースアイズ は画像認識技術を活かしたカメラを手がける会社で、前回ご紹介した万引き防止カメラ「AIガードマン」を開発した会社でもあります。
アースアイズ 社の「AIガードマン」について詳しくはこちら▼
今回は、その技術を警備の分野でも応用し、同社のカメラをペルセウスボットの機体および駅の構内に設置することで、構内の異常を自動で検知できるようになっています。
その際に使われている技術が画像認識です。事前に、不審者のキョロキョロした行動や座り込み、喧嘩といった特徴的な言動や急病者のうずくまった様子をデータから学習し、現実の世界からもそれらを自動検知できるようになっています。また、空間を3Dで認識し、駅構内の地図との比較から放置された不審物などを検知することができます。
そして、異常を検知すればペルセウスボットは駅係員にその異常を通知します。駅係員はその通知を自身のスマホで確認することができ、異常を検知した場所まで行って不審物の処理や対象者への声かけを行います。
▽床に屈み込む急病者をペルセウスボットが自動検知し、赤いランプで知らせます。
三菱地所が活用する警備ロボット「SQ-2」との比較
以前にご紹介した、三菱地所がビル管理業務に導入予定の警備ロボット「SQ-2」との共通点や相違点について考えてみましょう。
外見
まず、見た目の点ではどちらも非常に似た形をしています。
人が多い環境をを自由に移動するため、倒れたりぶつかったりしないよう、周りの人の安全を考慮した形になっております。
しかし、ペルセウスボットにはたとえ人や障害物にぶつかったとしても最低限の衝撃で抑えられるような独自の工夫がなされているのが特徴です。
性能
性能の面ではペルセウスボットもSQ-2はどちらもセンサーによって周りの環境を認識している点では共通しています。しかし、ペルセウスボットは3Dセンサーによってそのまま空間を3Dで認識しているのに対して、SQ-2は空間から2Dのデータを集めて3Dのデータを作成しています。
また、不審者や不審物などの異常に関してはどちらも同じように検知することができますので、その点でも性能には大きな差はありません。
導入に向けての課題
導入されれば警備業界に大きなインパクトを与えうるペルセウスボットですが、その実現に向けては課題も存在します。
安全性
ペルセウスボットは人が行き来する環境で活用することが想定されているため、安全性への配慮は重要な問題です。
ペルセウスは周囲の人に威圧感を与えないように工夫されたデザイン・設計になっております。しかし、人がロボットに衝突してしまう危険を考えると、周りの人に対して自分の存在に気づいてもらえるようにする必要があります。
そのため、人に対して安心感を与えながらも、その存在に気づいてもらえるような工夫が取り組まれています。
完全な自動化
ロボットが完全に自律して行動するためには、駅構内を移動するだけでなく充電などまで自動化する必要があります。
しかし、ロボットの充電に関してはいまだに人の手で行わなければならないのが実情です。充電の自動化を実現するためには人のためにデザインされた駅構内をロボットにも適応させるために新たな電力システムを構築しなければなりません。そのような環境を整備するためには日本ユニシスと西武鉄道とのお互いの歩み寄りが必要です。
まとめ
深刻な人手不足に陥っている警備業界に警備ロボットが導入されれば、業界改革の大きな助けになることが期待されます。
今回、開発されたペルセウスボットは自動で不審物や不審者、急病者を自動検知してくれるため、警備員や駅係員の業務負担の大幅な削減に繋がります。
ペルセウスボットは東京オリンピックが開催される2020年までに本格的に活用することが目指されています。まだまだ実用化に向けて課題はありますが、2020年には警備の仕事も今とは大きく違ったものに大きな発展を遂げているのではないでしょうか。
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慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。