【5分でわかる】AI研究、60年の歴史を完全解説!

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近年、注目を浴びるAI。さまざまなメディアで毎日のように目にするAIに対して、みなさんはどのような印象を持っていますか?

「AIはすごい」「AIは怖い」「AIは最新テクノロジー」などさまざまな印象をお持ちだと思いますが、実はAIの研究には長い歴史があり、実は過去に二度の大きな挫折を経験してきました。

この記事では、それぞれの時代のAIが何ができて、何ができなかったかについて紹介し、なぜ今、AIが盛り上がってきているかについて解説していきます。

AI研究の歴史の全体像

毎日のように「人工知能」や「AI」というワードを耳にしますが、実はまだ完全な人工知能は2019年現在、できていません。本当の意味で、「人間と同じように考えるコンピューター」はまだ世界中どこを探してもありません。

人間の知能をコンピューターで再現させようとする研究は昔から、一生懸命取り組まれてきていましたが、未だに完璧に再現されてはいません。

なぜ、まだAIは完成しないのか?

歴史を紐解きながらその理由を探っていきましょう。

AI歴史全体像 『人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの』より

引用元: 松尾豊『人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの』KADOKAWA 発行

上の図に見られるように、AIの研究は「ブームの時代」と「冬の時代」を交互に経験してきました。

第1次AIブームは、1950年代〜1960年代。コンピューターに「探索・推論」させることによって、問題を解かせる研究が進みました。

第2次AIブームは、1980年代。コンピューターに「知識」を入れるアプローチでのAI研究が盛んに行われました。

そして、2000年代のインターネットの広がりとともに、現在第三次AIブームに差し掛かっています。

このように今まで、大雑把にAIの研究は3回のブームを経験してきました。

第1次AIブーム

初めてAIという言葉が使われた『ダートマス会議』

会議

初めてAI、「Artificial Intelligence」という言葉が使われたはいつか知っていますか?

実は「AI」という言葉は60年以上前にもうすでに誕生していたのです。

1956年の夏にアメリカ東部の都市、ダートマスで開催されたワークショップ、『ダートマス会議』で初めて人間のように考える機械のことを『人工知能』と呼ぶことになったのです。

この会議において人工知能という概念が、科学の一分野として社会に広く認識されました。多くの人がAIの研究に乗り出すきっかけにもなった、AIを語るには外せない会議が『ダートマス会議』です。

『推論』と『探索』の研究

第1次AIブームでは、人工知能は実現できるという楽観的な展望のもと、「推論」と「探索」の研究が数多く試されてきました。

「推論」とは人間の思考過程を、記号を使って表現してみようとする試みです。処理としては「探索」と似ているので、「探索」について簡単に説明していきましょう。

「探索」とは、解き方のパターンを場合分けしていき、目的となる条件(答え)を探すプロセスのことです。例として迷路を解くときを想像してみてください。

人間は迷路を解くとき、指やペンで道をなぞりながら行き止まりを避けてゴールを目指していきます。

それに対して、コンピューターは分かれ道があったら、こっちにいった場合とあっちにいった場合に「場合分け」します。また、分かれ道があったら「場合分け」をします。

コンピューターは、このような単純な場合分けをすることは得意なので、どんどん場合分けをしていつしか答えを見つけてきてくれます。

この技術により、AIは人間には不可能なほどのパターンの「場合分け」を瞬時にできるようになり、難しいパズルや迷路を人間よりも圧倒的に早く解く事が可能になりました。

メディアでよく取り上げられる将棋やチェストいったボートゲームへのAIの挑戦も基本的には、この「探索」の技術が使われています。

当時のAIの限界

1960年代に花を咲かせた第一次AIブームでは、迷路やパズルなど難しい問題をコンピューターが解いていけるようになりました。しかし、これらの問題は決められたルールの中で次の一手を探すようなものでした。

私たちが普段直面するような問題はもっと複雑ですよね?

例えば、会社の利益を増やすためにどのような製品開発をすればいいか、ダイエットを成功させるにはどうすればいいか、などなど。

第1次AIブームでは、AIはいわゆる「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」しか解けない事が次第に明らかになってきました。チェスや将棋で人間に勝つといった、ルールが決められた中で最適な答えを探すのはコンピューターにとっては案外簡単でした。

しかし、現実問題を解くのは難しく、AIに対しての失望感が広がってしまった結果、AI研究は冬の時代を迎えてしまいます。

第2次AIブーム

コンピューターに知識を入れる

1970年代に「トイ・プロブレム」しか解けない事が明らかになったAIですが、1980年代になるとまた勢いを取り戻します。

第2次AIブームでは、「知識」をコンピューターに入れるという研究が進められました。例えば、コンピューターに医者の代わりをしてもらおうと思えば、「医療に関する知識」をコンピューターに入れる、法律家の代わりをしてもらおうと思えば、「法律に関する知識」を入れるということです。

このようにすれば、病気の診断をしてもらえたり、法律に関する情報を教えてもらえます。つまり、『トイ・プロブレム』だけでなく、現実的な問題も解ける!ということで脚光を浴びました。

エキスパートシステム

この時に特に注目を集めたのが、『エキスパートシステム』です。

『エキスパートシステム』とは、専門分野の知識を取り込み、第一次AIブームで見られたような推論を行うことで、コンピューターが専門家(エキスパート)のように振る舞うプログラムのことです。

コンピューターに多大な専門的な情報を入れ、もし「XXX」という条件が揃えば、「YYY」という答えを返すようにプログラムを作ります。このような条件式を作っていくことで、質問に順番に答えていくと、求める答えが返ってくるという専門家のようなことをコンピューターが代わりにすることが可能になりました。

医療・生産・金融・会計・人事などさまざまな分野でこの『エキスパートシステム』が作られました。1980年代のアメリカの大企業の3分の2が何らかの形で、日常業務にこのようなAIを使っていたと思えば、この『エキスパートシステム』の熱狂ぶりが想像できるかと思います。

当時のAIの限界

『エキスパートシステム』はうまくいったかのように見えましたが、知識の量が膨大になりルールの数が数千、数万となるとルール同士で、矛盾や一貫性の無さが出てくるようになりました。

医者の代わりに『エキスパートシステム』で症状の診断をしようとしても、「なんかだるい」「頭が重い」「お腹が痛い」というような曖昧な事例に対して、判断することが難しいことが分かったのです。「だるい」とはどういうことか、「痛い」とはどのような痛みか、「頭」は具体的にはどこか。

このような「常識レベルの知識」をコンピューターに理解させるのが思いの外、難題であったことが分かったのです。

一つ例をあげましょう。1984年からアメリカではCycプロジェクトと呼ばれる、人間のもつ一般常識を全てコンピューターに入力しようというプロジェクトがスタートしました。例えば、「東京は日本の首都だ」「ライオンはネコ科だ」「江戸幕府を作ったのは徳川家康だ」といった一般常識を入力していきます。ただ、このプロジェクト、30年以上経った現在もまだ続いているのです。ここからも、人間のもつ常識の量の多さと、それを具体的に記述することの難しさがわかるでしょう。

知識を書ききることの難しさが露呈し、AIブームはまた冬の時代を迎えてしまいます。

第3次AIブーム

現在、迎えている第3次AIブームを理解するためにはまず『機械学習』について知っておく必要があります。

機械学習の登場

機械学習とは、AIが自身で学習する仕組みのことです。『学習』をもう少し噛み砕くと、学習とは「分ける」処理のことです。うまく「分ける」ことができれば、ものごとを理解して、行動できます。例えば、目の前にある物体がりんごか。銀行がある人とローン契約を結んでいいか。投資家がある企業に投資をするべきか。このような判断は、全て状況をうまく「分ける」ことによって答えを出せます。

機械学習とは、コンピューターが大量のデータを処理しながら、このうまい「分け方」を学習することです。機械学習によって、「分け方」をコンピューターが自ら探し、見つけることができたことで、未知のものに対する判断や予測が可能になりました。

過去二回の「冬の時代」の根本的な原因

しかし、機械学習にも弱点がありました。それが「特微量設計」です。特微量とは、機械学習の入力に使う変数のことです。この特微量に何を選ぶかによって、「分け方」の精度は大きく変わります。

例えば、ある人の年収を予測したい時を考えてみましょう。「居住地」や「年齢」「職業」は年収に影響を及ぼすでしょう。しかし「好きな色」や「誕生日」「星座」はほとんど関係はないでしょう。しかし、コンピューターは良い特微量を判断することができません。「どんな特微量を入れるか」が機械学習の精度を上げる要因でしたが、「どんな特微量を入れるか」は人間が考えることしかできなかったのです。

第二次AIブームの時期も、「頭」や「お腹」といった一般的な常識の概念をコンピュータに理解させることが難問でした。

つまり、「どの特微量に注目して、情報を取り出して、分けるか」に関して、AIは人間の力を借りなければなりませんでした。これが、コンピュータが自分で概念を理解できず、AIが実現できなかった原因です。

しかし、現在、コンピュータがデータの中から人間の力を借りずに重要な「特微量」を作る方法ができてきています。それが、みなさんもよく耳にするであろう『ディープラーニング』です。

今回のブームの牽引役、ディープラーニング

ディープラーニングは、データからコンピュータが自動的に特微量を抽出できる点で、従来の機械学習と大きく異なります。

従来は、「りんご」を認識するためには「丸い」「赤い」などという特徴を人間が教える必要がありました。しかし、ディープラーニングでは、コンピュータが自動的に特徴を分類して、人間には識別できない特徴のかたまりを形成していくことが可能になりました。つまり、ディープラーニングでは、人間がいちいち「りんご」の特徴を教えなくても、機械が自身で「りんご」の特徴を捉えることが可能になりました。

このプロセスは人間の脳のプロセスと非常に似ていることから、ニューラルネットワークとも呼ばれています。

ニューラルネットワークの例: 「ニューラルネットワークの構造とその歴史」 より

ディープラーニングにより、機械が自身でデータから特徴を見つけ出し、その特微を使って概念を獲得できるようになりました。概念が獲得できれば、その概念を使って知識を記述することも可能になります。今までAIがずっと直面していた難問に一つの新しい光が示されたことが、現在AIとディープラーニングが脚光を浴びる本当の理由なのです。

▼ディープラーニングについて、さらに詳しくはこちら

第3次AIブームは終わるのか? ~現在のAIの課題~

ディープラーニングが引っ張ってきた今回のブームの行き先はどうなるのでしょう。現在挙げられている問題をいくつか紹介していきます。

まず、ディープラーニングの問題点として、コンピュータが中間の「隠れ層」での処理がブラックボックス化されているです。私たちは「りんご」を認識するときに、「赤い」「丸い」といった特微量を使いますが、コンピュータが獲得した特微量が何か、またなぜこの特微量を選んだかは人間には理解できない可能性があります。これでは、その特微量によるAIの判断が道徳的・倫理的にも本当に正しくて信用できるかという問題が浮き彫りになります。AIを自動運転や軍事など安全面の産業に活用する際に問題になります。

また、研究の面でも、日本ではデータの利用に対して非常に警戒感が強い、データ利用の法整備が遅れている、国内でAI技術に投資する企業の少なさなどが挙げられています。

おわりに

ここまで長々と、AIの歴史について紹介してきました。

何度も困難を経験しながら、60年もの間着々とAIの研究は進められてきました。そして、ディープラーニングの誕生により、機械が人間と同じように考えることがより現実味を帯びてきました。

今までの歴史を理解した上で、「AIは怖い」などという先入観なしに真正面からAIについて理解する機会になれば幸いです。

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※この記事は以下の書籍を参考に執筆しました。
松尾豊『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』KADOKAWA発行

2019年11月29日

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