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近年は、掃除機やスマートフォンなど身近なものにAIが活用されていることが増えてきました。その中で、今までAIがどのような歴史をたどりながら発展してきたのか知りたい人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事ではAIの歴史を時系列に沿って簡単に紹介していきます。
▼AI(人工知能)について詳しく知りたい方はこちら
目次
AI研究の歴史の全体像
現在、AIは私たちの生活と非常に密接に関わっており、もはや切っても切り離せないほどの存在となっています。
しかし、実はまだ完全なAIはできていません。AIとは自律的思考が可能なコンピュータのことですが、人間と同じように考えることが可能なAIコンピュータはまだ開発されていません。
次の図のように、AIはおよそ60年前からブームと冬の時代を繰り返しながら発展してきました。以下では、それぞれの時代について詳しく紹介していきます。
(出典:松尾豊『人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの』)
1950年代:AIの出現
1950年代はAIの出現期とされています。AI、つまり人工知能の概念の起源は、イギリスの数学者アラン・チューリングの著書、『計算する機械と人間』(1950)で提唱されました。
このなかで、「機械は考えることができるか?」という問題が初めて考えられました。
このとき、機械が思考したかどうかは「人との会話が成立したかどうか」で判断されており、これはチューリングテストと呼ばれていました。
1956年:『ダートマス会議』
そして、初めて人工知能という言葉が使われたのが、1956年にアメリカのニューハンプシャー州にあるダートマス大学で開催された『ダートマス会議』です。
ここで初めて「人間のように考える機械」が人工知能(AI)と名付けられました。
1956~1974年:第1次AIブーム~推論と探索の研究~
1956~1974年は第1次AIブームとされています。この時期は、人工知能は実現できるという楽観的な展望のもと、「推論」と「探索」の研究が数多く試されてきました。
「推論」とは人間の思考過程を、記号を使って表現してみようとする試みです。
そして「探索」とは、解き方のパターンを場合分けしていき、目的となる条件(答え)を探すプロセスのことです。
この技術により、AIは人間には不可能なほどのパターンの「場合分け」を瞬時にできるようになり、難しいパズルや迷路を人間よりも圧倒的に早く解く事が可能になりました。
主な技術
この時期に発展した技術は主に以下の5つです。
- 探索・推論
探索・推論は、データよりもアルゴリズムを重視するものです。これによりロボットが場合分けをできるようになりました。
自然言語とは、人間が普段話している言葉です。自然言語処理では、人間の言葉をコンピュータが理解できるように処理します。
ニューラル・ネットワークは人間の脳の仕組みを模倣することで、コンピューター・プログラムがパターンを認識できるようになります。
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- 遺伝的アルゴリズム
遺伝的アルゴリズムとは、生物の進化の仕組みを模したもので、近似解を探索するアルゴリズムです。英語では「Genetic Algorithm」と書き、その頭文字から「GA」と略されます。優秀な個体を次世代へと受け継ぎ、優秀でない個体を排除するという考えに基づいています。
エキスパートシステムとは、特定の専門分野の知識を持ち、専門家のように事象の推論や判断ができるようにしたコンピューターシステムのことです。エキスパートシステムを使うことで、専門知識のない人であっても専門家と同等の問題解決・判断が可能になります。
1958:ニューラルネットワークのパーセプトロン開発
1958年にはニューラルネットワークのパーセプトロンが開発されました。パーセプトロンとは、複数の入力値に重み付けをした後、合算して1つの出力を得るという基礎的なアルゴリズムです。
このパーセプトロンは、重みを調整することで、機械学習の基本命題である「回帰」と「分類」を行うことができます。
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1964:人工対話システムELIZA開発
そして、1964年には人工対話システムのELIZAが開発されました。
これは文章を用いて自然言語を処理し、人と対話することができるプログラムで、現在のSiriの起源とも言われています。この技術により、コンピュータと人間のコミュニケーションが可能になりました。
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1974~1980年:冬の時代~AIの限界~
しかし、この時期のAIは迷路の解き方や定理の証明のような単純な仮説の問題を扱うことはできても、さまざまな要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになり、一転して冬の時代を迎えました。
おもちゃの問題
AIは現実的な問題は解決することができず、科学者の間でもAIの知能に対する疑問が生まれました。このとき、AIが解くことができた単純な問題は「おもちゃの問題」と呼ばれ、役に立たないものとされました。
1980~1987年:第2次AIブーム~知識表現~
1980~1987年は第2次AIブームとされています。1970年代に「おもちゃの問題」しか解けないことが明らかになったAIですが、1980年代になるとまた勢いを取り戻します。
第2次AIブームでは、「知識」をコンピュータに入れる研究が進められました。そしてAIが実用可能な水準に達し、多くのエキスパートシステムが生み出されました。
エキスパートシステムとは、専門分野の知識を取り込んだ上で推論することで、その分野の専門家のように振る舞うプログラムのことです。
このようにして『おもちゃの問題』だけでなく、現実的な問題も解決できるということで脚光を浴びました。
主な技術
この時期に発展した技術は主に以下の4つです。
- 知識ベース
知識ベースとは、エキスパートシステムに取り込まれた対象領域に関する知識の集合のことです。推論処理で利用できるように形式化されています。
音声認識とは、コンピュータにより音声データをテキストデータに変換する技術です。コンピュータは、音響モデルや言語モデルを用いて音声を解析し、認識します。
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データマイニングとは、大量に蓄積された未加工のデータの中に存在する、ある傾向や相関関係などの情報を見付け出すための技術・手法とされています。
- オントロジー
オントロジーとは、知識の共有化や再利用の方法として研究開発が進み「対象世界をどの様に捉えたか、つまり、概念化したかを記述するもの」を指します。
1984:知識記述のサイクプロジェクト
1984年には知識記述のサイクプロジェクトが始まりました。サイクプロジェクトとは一般常識をデータベース化し(知識ベース)、人間と同等の推論システムを構築することを目的とするプロジェクトのことです。
同プロジェクトにより、人間の常識に根ざした推論が可能になったとされています。
1986:誤差逆伝播法の発表
1986年、誤差逆伝播法が発表されました。誤差逆伝播法はバックプロパゲーションとも呼ばれ、機械学習においてニューラルネットワークを学習させる際に用いられるアルゴリズムを指します。
これが現在発展しているディープラーニングの基本となりました。
1987~1993年:冬の時代~AIの限界~
しかし、当時はコンピュータが必要な情報を自ら収集して蓄積することはできなかったため、必要となる全ての情報について、人がコンピュータに理解できるように内容を記述する必要がありました。
世にある膨大な情報全てを、コンピュータが理解できるように記述して用意することは困難です。
そのため実際に活用できる知識量は、特定の領域の情報などに限定する必要がありました。こうした限界から、AIは再び冬の時代を迎えました。
1993年~現在:第3次AIブーム~機械学習~
1993年から徐々に第3次AIブームへの土台が着々とでき始め、2000年代からは第3次AIブームとされて現在まで続いています。「ビッグデータ」と呼ばれているような大量のデータを用いることで、AI自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化され、AIは大きく発展しました。
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主な技術
この時期に発展した技術は主に以下の2つです。
- 統計的自然言語処理
従来型の自然言語処理では解釈の可能性の組合せが指数関数的に増大していき、処理が困難になります。統計的自然言語処理は、確率論的あるいは統計学的手法を使ってこの問題解決できます。
2006:ディープラーニングの提唱
2006年にディープラーニングが提唱されました。ディープラーニングとは、知識を定義する要素をAIが自ら習得する技術のことで、これにより機械学習がより実用的なものとなりました。
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2012:ディープラーニングを画像認識に適用
2012年にはディープラーニングが画像認識に適用され、画像認識の技術が向上しました。
画像認識はディープラーニングが適用されたことで、顔認証システムや欠陥の検査など、生活の身近な場面で利用される重要な技術となりました。
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第3次AIブームは終わるのか?~現在のAIの課題~
過去2回のブームでは、AIが実現できる技術的な限界よりも社会がAIに対して期待する水準が上回っており、その乖離が明らかになることでブームが終わったと考えられています。
そのため、現在の第3次ブームに対しても、AIの技術開発や実用化が最も成功した場合に到達できる潜在的な可能性と、実現することが確実に可能と見込まれる領域には隔たりがあることを認識しなければならないとされています。
現在、ディープラーニングがさまざまな場面で適用されていることで、AIが人間を超える知能を持つようになる「シンギュラリティ」が訪れると考えられています。
しかし、本当の意味で人間と同じように考えられるAIはまだ存在していません。
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現在のAIにできること
AIは特化型人工知能と汎用人工知能に分けられています。現在のAIはすべて特化型人工知能です。
特化型人工知能は人間としての感性や思考回路は持っておらず、「弱いAI」とも呼ばれます。限定された領域の課題に特化して自動的に学習、処理を行うため、特定の課題にしか対応できません。
この限定された課題を解決する上で利用されているのが、音声認識、画像認識、自然言語処理といった技術です。現在、AIはこれらの技術を利用してさまざまな分野で活用されています。
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最新のAIの動向
2021年9月にはデジタル庁が発足し、国全体のデジタル化が進められるようになったことで、企業だけでなく行政でもDXが急激に推進されるようになっています。
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、「デジタル技術を活用することで、企業や行政が事業や組織のあり方を変革し、人々の生活をより良い方向に導くこと」です。
その中で、さまざまな企業や自治体で文字認識・音声認識を中心に年々活用が進んでいます。
そして現在は、「DX人材」に注目が集まっており、それに伴い多くの企業でDX人材の育成の取り組みが始められています。また今後は、今までのようにAIに関わる人材だけではなく、企業のデジタル化を進め、競争優位性を高められる人材の重要性がより高まっていくでしょう。
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年表

まとめ
この記事ではAIの歴史について紹介してきました。AIの起源や、AIがこれまで辿ってきた軌跡が分かったのではないかと思います。
AIの歴史について知ることで、これからのAIに対する興味も湧いてきたのではないでしょうか。
過去を知ることで未来にも活かすことができます。AIの発展が進む中、AIの歴史を知ることは重要になってきていると言えるでしょう。

文系大学生で、現在経済学部に所属しています。
AIのことを文系の人にも分かりやすく伝えていきたいと思っています。ジャズダンスと旅行が趣味で、昨年は3週間東欧を一人旅していました。