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2019.12.10

2045年問題とは何か?理論・根拠・反論まで

最終更新日:

2045年問題を知っていますか?

 

2045年問題とは、AIが人間の知能を超え、AIが自らAIを生み出すシンギュラリティが2045年に起きると予想され、それに伴った議論や問題の総称を言います。

この記事では、なぜ2045年問題が起こると言われたか。また、その議論が注目されている理由、2045年問題に否定的な意見まで紹介します。

AIの力に興味や恐怖がある人、2045年問題にまつわる知識が得たい人にオススメです。

2045年問題とは何か

2045年問題とは何か、その発症や根拠について説明します。

シンギュラリティと2045年問題

2045年問題の議論を大々的に展開したのは、哲学者のレイ・カーツワイルです。

彼はコンピュータの性能が急速に発達することで、AIが人間の知能を超えるとしました。また、その転換点を「シンギュラリティ」と名づけました。

シンギュラリティを超え、人知を超えるAGI(=汎用人工知能:人間っぽいふるまいをするシステム)が誕生すれば、コンピュータが自らプログラミングを行い、さらに優秀なプログラムを生み出すことができると言われています。言い換えると、AGIが最後の発明になるとも言えます。

レイツ・カーワイルは、シンギュラリティの到来が2045年になると予言しました。従って、シンギュラリティに関わる議論や起こる問題が、2045年問題と呼ばれることになりました。

▼シンギュラリティについて詳しくはこちら

2045年問題が起こる理由

さてレイ・カーツワイルは、なぜシンギュラリティを2045年に予言したのでしょうか。

彼が引用したのはムーアの法則です。

ムーアの法則とは、ゴードン・ムーア氏が唱えた、「半導体の集積率は18か月で2倍になる(半導体の性能が18ヶ月で2倍になると同時に、コスト面も半分になる)」という理論です。

例えば、ある面積あたりのトランジスタ数が、100個とした時に、18か月後(1.5年後)には、2倍の200個、3年後には、4倍の400個、わずか7.5年後には3200個になります。

1965年に唱えられてから40年間、実際にそのような半導体が成長を遂げています。

このように、指数関数的にテクノロジーが発展すれば、AIが人間を超えるのも現実的に思えてきます。

2045年問題が支持される理由

そして今日、2045年問題は改めて議論が白熱しています。理由の1つに技術的ブレイクスルーによって、AIの可能性が飛躍したことにあります。

ディープラーニングの登場です。

2012年に登場したディープラーニングは、2015年の画像認識コンテストで人間の精度を上回ります。同年には、ディープラーニングによって作られた「アルファ碁」も人間を打ち負かし、AIの可能性を強調する象徴的な出来事となりました。

▼ディープラーニングについて詳しくはコチラ

このようなAIの技術的な発展が議論に火をつけ、テレビ、小説、映画など、さまざまな媒体でAIの可能性が発信されるようになりました。まさにAIブームです。

順調に進化を遂げたAIは、時に人間を脅かすような発言もするようになります。例えばハンソンロボティクスが開発したAI、ソフィアの発言は話題になりました。「人類を滅ぼしたいか」という質問に対し。「分かった。滅ぼすわ」と答えています。

▼AI ソフィアについて詳しくはコチラ

このような問題が、2045年問題の議論を加熱させ、AIが人間を超えるかどうか、超えたらどうなるかと、さまざまな立場から意見が飛び交っています。

2045年問題やシンギュラリティに反対する意見

2045年問題や、シンギュラリティに関して繰り広げられている議論では、必ずしも「AIが人間を超える」ことを肯定しているわけではありません。

例えば、AINOWの取材で三宅陽一郎氏は以下のような理由により、シンギュラリティの理論は崩れていると主張します。

今われわれは自分の目で世界を認識しているから、たかだか100メートルぐらいしかわからないけれど、将来的には地球全体をいつでも見れるようになるかもしれません。シンギュラリティの意味は、人の拡張によって薄れていきます。

そうすると、人工知能の見え方も変わってくると思います。生身の人間と人工知能を比較したら、やはり脅威でしかありません。でも人間はヒューマンオーグメンテーションによって進化すると考えれば、テクノロジーが宿るのは人工知能側だけでなく、身体側(人間側)にもくるということですね。

出典:https://ainow.ai/2019/07/02/170473/

また、数学者の新井紀子氏もAIが人間を超えることには懐疑的です。

「真の意味でのAI」が人間と同等の知能を得るためには、私たちの脳が、意識無意識を問わず認識していることをすべて計算可能な数式に置き換えることができる、ということを意味します。しかし、今のところ、数字で数式に置き換えることができるのは、論理的に言えること、統計的に言えること、確率的に言えることの3つだけです。

出典:新井紀子.『AIvs教科書が読めないこどもたち』東洋経済新報社.2018.p164

このようにAI対人間の議論は、さまざまです。

さらに、AIが何を指しているのか。ディープラーニングのような技術か、何となく頭の良いロボットなのか。はっきりと定義がされないまま進められることがあります。

AIが人を超えるという議論も、特定の作業に特化せず、なんでもできる人間のようなAI(いわゆるAGI:汎用人工知能)が生まれるのか、特定のタスクに特化して超えるのか、意味合いによって議論が変わってきます。

これらの定義を確認しながら、考えることが大事です。

2045年問題を見据えてー人間にできること

「シンギュラリティが起きるどうか」「それが2045年かどうか」という議論では、未来を断定することはできず、今後もさまざまな議論が展開されるでしょう。

一方で特定のタスクに特化したAIが徐々に社会に浸透しているのは間違いありません。AIが人間を超えるかどうかは、議論の脇に置いておいたとしても、AIが人間を担ってきた仕事を代替していく未来には、備える必要があるでしょう。

▼AIと人間の対立について解説した記事はコチラ

AIに限らずとも、テクノロジーに応じて、産業の変化が生じるのは、珍しい話ではありません。例えば、テクノロジーによって電話交換手(電話する人と、電話を受ける仕事を、プラグを入れ替えて繋ぐ人)や蒸気機関車のかま焚き、などの仕事はなくなりました。

一方で、インターネットを使う仕事は、急増しました。例えば、エンジニアやWebデザイナーなどの仕事です。広く言えば、Webサービスの営業や、Webライターも、インターネットによって仕事を得ていると言えます。

テクノロジーの変遷に伴って、AIを使う仕事に就くか、少なくとも今の仕事にAIがどう使われ得るかを考えることが重要です。

▼AI人材の定義と、なるための手法を解説した記事はコチラ

おわりに

2045年問題、この記事の執筆からおよそ25年後です。

わずか25年のうちに、AIが人間を上回ってしまう。このキャッチ―な議論は、私たちの恐怖心を煽りがちです。

一方で、少なくとも今のディープラーニングのようなAIの技術の延長線上に、シンギュラリティが意図するような汎用で自律的なAIが実現するかどうかと問われると大きな疑問符がつきます。

議論内容をそのまま鵜呑みにすることなく、AIのポテンシャルと、その限界に関する情報を認識し続けることが大切です。

▼YouTubeでもこの記事について解説中!

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