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「将来、AIが人の仕事を奪う」という言説を聞いたことがあるのではないでしょうか。
AIが囲碁で人間に勝利したり、無人店舗「AmazonGo」などのニュースが世間で話題になったことがきっかけで、人間が不要になるのではと懸念を持つ人が増加しているようです。
しかし、本当にAIで人の仕事は奪われてしまうのでしょうか。
【この記事でわかること】 |
AIによって仕事が奪われて失業することがあるのか、気になる人向けの内容です。本記事を通じてAIと仕事について理解を深めましょう。
目次
失業とは
失業の定義
失業とは15歳以上で就業の意思・能力があるのにも関わらず職に就いていない状態を指します。就業意思のないニートや病気や家庭事情から離職した人、定年退職者などは失業者としてみなされません。
そして、失業率とは「失業者数/労働力人口(15歳以上で就業の意思・能力のある人の人口)」で定義されます。
なぜ経営者は労働者をAIに代替したいか
経営者が労働者をAIに代替したい理由は主にコスト削減と仕事の質向上です。
AIがサービスとして社会に浸透し導入コストが低くなれば、従業員を雇うよりもAIを導入した方がコストが低くなります。
また、特定の仕事であれば、AIは人間よりも高精度・高速にこなすことができる上に365日24時間稼働可能です。
そのため、経営者からするとAIは人間に比べて非常に費用対効果の高い存在だと言えます。
世間で広がるAI失業への懸念
労働者の40%はAI失業を懸念
AIの発展に伴って、AIに仕事を奪われるのではと危惧する人も増加しています。
実際、エンジャパンが2019年に労働者に対して行った調査によると、労働者の40%はAIの発展による失業を心配しているそうです。
そのため、AIは企業にとって嬉しい存在であるのと同時に、労働者からすると脅威と認識されている面もあるということです。
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン氏は人間の仕事の47%がなくなると予想
オックスフォード大学でAIの研究をするマイケル・オズボーン准教授は「20年後には今ある仕事の47%がAIによって消失する」と予測しています。
そのような事態が実際に発生するかどうかはともかくとして、この予測は世界に衝撃を与え、AIに対する不安感を増幅させる結果になりました。
知的労働も代替される可能性が
また、オズボーン氏の予測には、AIによってなくなる仕事として、銀行の融資担当者や保険の審査担当者など知的労働者も多く含まれています。
今まで技術発展によってなくなる仕事は工場の工員など肉体労働が中心で、知的労働は人ならではだと思われてきました。しかし、AIは状況に応じた判断が可能で、知的労働もAIで代替できる可能性が高くなっています。
大規模なリストラへ踏み出す業界も
金融業界では人員削減に向けて再編
AIの発展により、実際に人員削減が始まっている業界もあります。
金融業界、特に銀行ではAIなどを活用するFinTechが台頭して、リストラ計画が進められています。
例えば、みずほフィナンシャルグループは2026年末までに全従業員の3割にあたる1万9000人を削減すると発表しました。
そして、三井住友フィナンシャルグループは2017~19年度の中期経営計画で5000人分の業務量削減を目指すとのことです。
このように金融業界では、人員削減の傾向が既に現れ始めています。
▶︎AIによって仕事がなくなる?なくならない仕事も紹介 >>
一方でAI失業の心配がない意見も
しかし、一方でAIによる失業は心配ないと考える人も多いです。
クリエイティブ分野の仕事では依然として人が必要
ディープラーニングなどの現状のAI技術は大量のデータを学習して、状況にあった判断を行うことは可能ですが、ゼロの状態から新たなものを生み出すことはできず、人間にしかできない仕事です。
そのため、ただ定型業務をこなすだけでなく、クリエイティブな思考を要求される仕事はAIにはとって変わられないと言われています。
クリエイティブ分野の仕事では人間に対するニーズが増加するのではないでしょうか。
「方向性を決める」「責任を取る」ことは人間にしかできない
AIはあくまでもプログラムされたシステムであり、その行動は人間の方針に従っていなければなりません。
目的が示された上での、他律的(他からの命令、強制、利益など)な行動に責任の概念は生まれません。責任は人間の自由意志の裏付けによってはじめて存在する概念です。
そのため、人間が設定した目的に対して他律的に作動するAI自体に責任の概念はないと言えます。
もし、ビジネスで社会や他人に責任を感じないAIに人間が盲目的に従ってしまえば、やがて企業の利潤最大化という目的のために非倫理的・不正な行動につながる危険があるのではないでしょうか。
企業には株主価値最大化の義務があると同時に、社会的責任(CSR)も求められます。
つまり、企業は株主だけでなく社会との関係によって存在できるのであり、社会を犠牲にして自社の利潤を追求することは許されないという考え方です。
AIに人間が他律的に従うのではなく、自らの価値観に従った自由な意思決定によってのみCSRは実現できるのではないでしょうか。
そこでAI活用社会で求められる人材は、AIに他律的に従うのではなく自分の価値観や倫理観に沿って未知の未来への方向性を定められるマネージャー的ポジションです。
自分で判断したからこそ、AIが何か事故を起こした際には自分で責任を取らなければなりません。
そのような責任を取ることができるマネージャーの存在は、今後も変わらず必要とされ続けるでしょう。
AIに仕事を奪われないための対策
AIに仕事を奪われないために人間がとるべき対策には以下のようなものがあります。
これから詳しく解説していきます。
変化に対応できるよう学び続ける
仕事にAIを導入する流れは加速していく見込みです。AIが導入されると業務内容には様々な変化が生じます。
その変化に対応できるよう学び続ける必要があります。
また、仕事の一部がAIに代替されたとしても学び続ければ、その中で生じる新たな業務に携われます。
多様な業務に対応できるようにする
これからAIは現状人間が行っている業務の一部を代替していくとされています。一つの業務や業種だけに専念してしまうとその業務がAIに代替されると仕事がなくなってしまいます。
副業や兼業をして多様な業務に対応できるようにしておけば、仕事がなくなる心配がありません。
AIを使える人材になる
AIに仕事を奪われないためにはAIを使う仕事に就くのも一つの手です。AIによって生まれた新たな職業であるAIエンジニアやデータサイエンティストはAIによって奪われない業種の一つです。
AI開発言語として人気のあるPythonなどを勉強してもいいかもしれません。
▶︎AIの発達によってなくなる仕事って?-今すぐするべきこと3選>>
AIによって新たな仕事が生まれる
AIによってある程度の仕事は不要になるものの、同時に新たな仕事が生まれるため雇用には影響を与えないと考えることもできます。
例えば、AIエンジニアやデータサイエンティストはAIやデータサイエンスの領域が発展したからこそ生まれた職業です。今後も、今はない仕事が次々と生まれてくるかもしれません。
そのため、AIによって既存の仕事が消滅しても、新しく生まれた仕事でカバーできると言えます。
▼詳しくはこちら>>
・「AIは仕事を奪う」は偏見? 気になる事実とAIによって生まれる4つの仕事
・AIによって生まれる仕事10選 – AIに代替されない人材とは
AI活用によって働き方改革に
AIは決して人間の仕事を奪う存在ではありません。AIは人間と協力して働き、仕事を助けてくれるパートナーです。
仕事を効率化・省人化できる
AIは業務を人間のように高精度・高速にこなすことがでるのがメリットの一つです・
そのため、AIを使えば業務を効率化・省人化でき、業務負担の削減に繋げることができます。
膨大な業務を抱えて長時間労働に悩んでいるという方こそAI活用を検討してみてはいかがでしょうか。
深刻な人手不足の解決に
日本が抱えている課題として深刻な人手不足があります。
実際、2019年4月に帝国データバンクが実施した調査によれば、日本国内で50.3%にあたる会社で従業員が不足しているそうです。
そのような人手不足問題の解決にもAIは有効です。人手に代わる新たな労働力としてAIで不足する人手を補っていけば仕事を省人化することができます。
そのため、日本の人手不足解決のためにもAIは貢献するのではないでしょうか。
AIで仕事を自動化することでより豊かな働き方を実現できる
仕事にAIを導入することで人間は仕事を奪われるのではなく、より豊かな働き方を実現することができます。業務を圧迫する定型業務をAIで自動化すれば、その人自身の価値を発揮できるような働き方を実現できるのではないでしょうか。
そのため、今後は仕事にいかにAIを活用するかが重要になります。
AIを活用した新たな働き方
AIの発展により仕事が奪われるのではと考える人が依然として多いのは事実です。
しかし、実際にAIが原因で大量の失業者が発生することはないのではないでしょうか。
AIを生かすことで仕事の効率化につながり、人は今まで以上にクリエイティブ分野の業務に集中できるようになります。また、日本の人手不足解決にもAIは欠かせません。
今後はより一層、各産業でのAI活用が進展すると期待できます。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。