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AI人材の育成が急務とされています。経済産業省の2016年度調査「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、ビックデータ、IoT、AIを担う先端IT人材が2020年に約4.8万人不足するとされています。
実際に政府が25万人のAI産業に応用できる人材の育成を目指したり、大学でデータサイエンスやAI専門の学科が開設されたり、民間でもAIに関するさまざま講座が開かれたりと、まさに官民学が総動員で育成に取り組んでいます。
しかし、AI人材とは具体的にどんな人材なのでしょうか。。AIに関わる人をAI人材と定義しても、ディープラーニングでモデルを開発する人や、AIのモデルを使った商材を販売する人、AIを使う意思決定をする経営層から、AIに関する情報を扱っている人まで、実に多様です。
そもそも、政府がいうAI人材もそこまで厳密な定義には及んでいません。
この記事では、AI人材とは何か?AI人材になるには?を一緒に考えていきたいと思います。
AI人材が求められる背景
AI人材の育成は、政府も具体的な目標を掲げて育成に力を入れています。
AI人材と言われると、数学的なアルゴリズムの開発をする研究者や、社会の課題に当てはめてAIを構築するエンジニアなどが想定されそうです。しかし政府はそれだけに留まらず、読み書きそろばんのように、より基礎的な学びにAIやデータサイエンスのリテラシーを位置づけようとしています。
上図のように、政府の目標は、25万人のAIを産業に応用する人材の育成を目標とするだけではありません。国民一般レベルでも、小学生のプログラミング教育の必修化や、高校生の必修科目「情報Ⅰ」などを通じて、AIに関するリテラシーの醸成を行っていく戦略を発表しています。
なぜこれほどAI人材が重要視されているのでしょうか。
AI人材が求められる理由ー技術的なポテンシャル
AI人材が求められる一つ目の理由は、AIがインターネットを超えるほどの、あらゆる産業の構造を変えるポテンシャルを秘めていると言われるからです。
孫正義は、「SoftBank World 2019」で今後さらにデータのトラフィック量が増加すると話したうえで以下のように言及しました。
100万倍やってくるデータを人間が使って推論していくのは不可能に近いくらいの規模です。だから我々は一気にAIの力を使って推論していく、こういう世界になっていくと思います。
AIはまさに人間が勘と経験と度胸に頼ってきた今までの意思決定に変わって、もっと科学的でデータに基づいた推論を成す、それによって人類の進化はこれで行き渡るのではなく、さらに加速して進化がやってくると思います。
一方で、AIに関する期待は、「シンギュラリティが訪れて、人間の仕事が奪われる」というような、大きな悲観論がメディアなどで発信され、過剰であるとも言われています。
実際にAIのポテンシャルがどれほどか、明確な予想は難しいのが現状です。。それでも、GAFAと呼ばれるようなプラットフォームを持つ企業が、大量のデータを保有して機械学習の技術開発を牽引し、時価総額でも覇権を取っている現実があります。
軍事的な技術であったインターネットは、それを活用したプラットフォーマーが富を得て、AIのマーケットも席巻しています。日本はその競争で、完全に敗北を喫してしまいました。今日、ディープラーニングというAIブームを牽引している技術的ブレイクスルーが起き、活用も進んでいます。私たちは、AI人材として挑戦するチャンスが眼の前にあると考えることができます。
AI人材が求められる理由 −社会課題の解決
AI人材が求められる2つ目の理由は、日本の労働力に関する問題と関係深いです。
日本では少子高齢化という構造的な課題が立ちはだかっています。そのため、労働を削減・代替・効率化する意味で課題と相性が良いAIの可能性に賭けられた期待があります。
上図は、内閣府による今後の推計も含めた日本の人口の統計です。2035年には3人に1人が高齢者になる予測です。この高齢者をいかに現役世代が負担するかが問題になっています。
そこでカギになるのがAIです。労働をAIに代替させたり、効率化させたりすることで、生産性をアップさせながら、人間にかかる労力を削減させることが求められています。
AI人材の種類
一言でAI人材と言っても、AIの開発・研究・実装それぞれのフェーズでさまざまな役割があります。
日本政府のAI戦略に携わった、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長の北野氏は日経新聞が主催する「AI/SUM」で下記のように言及しています。
産業界の目線では応用基礎の部分が重要です。もちろんAIの専門的なトップレベルの人材も必要です。しかし、むしろ重要なのは「適応するドメインのデータがどうなっているか」「ドメインの何が重要か」です。「AI×〇〇」のところで専門分野を持ち、よく分かっている人ではないと、ツールを使いこなせません。
AIの実情を捉え、「AIを使って」何がしたいか、あるいは「AIを対象として」何がしたいかをはっきりさせ、自分の役割と関連づけることが、AI人材の第一歩だと思われます。
それではAI人材としてあげられるのは、どのような人でしょうか。例えば以下のような役割があります。
- AIエンジニア
- 構築したAIを、周辺技術と組み合わせて実装する人
- データサイエンティスト
- 数理的な知識と統計的な処理に長け、AIのモデルを開発する人
- ビジネス
- AIの知識に精通しつつ、顧客レベルまで噛み砕いてをコミュニケーションを取れる人
- プランナー
- エンジニアとコミュニケーションを取りながら、現実の課題と組み合わせてAIで解決まで導ける人
その中で、AIのアルゴリズムを開発するエンジニアと、実際に課題を抱えているビジネスサイドの人間の認識が一致しないことがしばしば問題として取り上げられます。
それぞれの強みを活かしながら、AIの認識に対して齟齬のないコミュニケーションを通じて、活用していくことが求められています。
▼DXで変動するAI人材の役割とは
AI人材になるには
AI人材になるにはどのようなスキルの積み方をすれば良いのでしょうか。まずは、資格に挑戦してみるのがオススメです。
なぜなら、体系立った知識・能力の証明・合格者のコミュニティ形成などが手に入るからです。日本ディープラーニング協会が開いているG検定など、ビジネスサイドの人に向けた検定も開催されています。
【資格のまとめの記事】
民間でもAIに関する講座が開設されています。自分にあった学び方を見つけてみましょう。
【講座のまとめ記事】
ー現在準備中
もっと本格的にAIを学びたいのであれば、大学でAIに特化した勉強をすることもできます。一度社会人になった人が学びなおすのも選択肢の一つです。
まとめ
AI人材の不足が嘆かれています。AI自体が雲のような概念であることもあり、実際にAI人材になるには何をしていいのか分かりにくいのが現状です。
人工知能は開発から導入まで、さまざまな立場のプレイヤーが関わっています。そのなかで、自分の役割と人工知能を結びつけて、目的を持って学びに向かうのが大切です。
さらに、あらゆる産業の構造を変えるとも言われるAIは、一般教養レベルでリテラシーを身に着けるべきともされています。
つまり、AI人材は2段階で考えることができます。まずは、最低限のAIやデータサイエンスに関するリテラシーを持つこと。次にそれを土台に、自分の専門や社会の課題とAIを結びつけて開発や実装ができること。
立教大学が2020年より人工知能科学研究科を新設するに際して行ったインタビューでも、人工知能の人材が「2階建て」であることが言及されました。
文系の学生から、数理モデルの研究者まで、それぞれの特性に合わせたAI人材を目指し、それぞれが社会全体として、歯車のように組み合わさることが望まれています。