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近年では、テレビを含む多くのメディアによりAIによるさまざまな分析結果が報道されています。さまざまな分野で『AIによる分析』が話題になっている今、その需要も急激に伸びています。では、このAI分析はいったい何のために使われ、どのような分析を行っているのでしょうか。
この記事ではこのような疑問に答えるため、AI分析とは何なのか、分析のプロセスやメリットや課題はどのようなものか、詳しく説明しています。さらに、データ分析の活用事例、分析ツールも紹介しています。
目次
AI分析とは
AI分析とはAIがデータの傾向を分析し、未来や今の状況の判断を行うことです。AIは知性があるかのように、人間に近い思考でさまざまな分析ができ、さらに膨大な量のデータを扱えるため、その分析の対象も広くなっています。
▼AIについて詳しく知りたい方はこちら
AIのデータ分析手法-データマイニング
マイニングとは、発掘を意味する英単語です。つまりデータマイニングとは、膨大なデータの中から有益な情報を発掘する技術・手法のことです。
データマイニングを行うとデータの中の不要な部分が除外され、有益な情報同士の関連性が見出せます。また、予測やデータの分類をするためにもデータマイニングを利用します。
データマイニングで用いられる手法として、パターン認識や回帰分析、クラスタリングなどが挙げられます。統計学やAIによる機械学習のアルゴリズムを活用してモデルを作成するのが一般的で、情報工学の理論をもとにして行われています。
AI分析によってできること
AI分析の導入を検討している人も多いと思います。そこで、ここではAI分析を導入するメリットを紹介していきます。メリットは主に3つあります。
人材活用を強化できる
1つ目は人材活用の強化に利用できることです。
従来は人間が行っていた業務をAIが代行することで、より人手が必要とされる業務に人材を回せるようになります。また、勘やコツといった抽象的なものを体系化することも可能になり、社内教育コストの削減にも繋がります。
不具合を検知できる
2つ目は不具合の検知です。
製造機器や製品の不具合を検知する業務を人間が行う場合正確性にばらつきが出てしまいますが、機械はより正確に検知する事ができます。
労働力不足を解消できる
3つ目に、人手が足りていない業務で労働力をAIが補うことで労働力不足の解消に繋がります。
AIの技術の発展に伴いAIに任せられる業務の数は多くなっているため、労働力不足の問題を抱えている企業にとっては大きなメリットといえるでしょう。
AI分析を導入する上での課題
AI分析を利用するメリットは大きいですが、導入するには以下のような課題があります。
- データの用意が困難
- AI分析を活用できる人材が少ない
- 導入までにコストや手間がかかる
これから詳しく解説します。
データの用意が困難
AIを使ってデータ分析する際には膨大な量のデータが必要です。
分析の目的に合わせて必要なデータの種類は異なってくるため、これまで保有しているデータをそのまま利用するのではなく別種のデータを用意する必要があります。
また量だけでなく質も重要であるため、データの用意がAI分析を導入する上での初めの課題といえます。
AI分析を活用できる人材が少ない
AIでデータを分析できる人材はデータサイエンティストと呼ばれています。
経済産業省による調査では2018年時点でデータサイエンティストは2万人ほど不足していました。さらに需要が伸びた現在ではデータサイエンティストの不足はより深刻になっています。
データサイエンティスト協会の調査では62%の企業が2021年度にデータサイエンティストが目標通り確保できなかったと回答しており、自社内で人材確保をするのは困難です。
AI分析を活用できる人材を確保するためには外部の企業に委託することになるでしょう。
参考データはこちら▼
・国内企業におけるデータサイエンティストの採用動向調査を実施
導入までにコストや手間がかかる
AI分析を導入するための環境整備に手間やコストがかかります。
AI分析を行うためにはデータを蓄積しておくためのストレージや分析に用いる高性能コンピュータが必要です。
またデータを効率よく収集するためのシステムや分析AIも開発しなければいけません。
自社に環境整備が行える人材がいない場合は外部に開発を委託することになり、更なるコストが発生する可能性もあります。
AI分析を導入するプロセス
次に、AIがどのように分析を行っていくのかを紹介します。AI分析の主なステップは以下の5つです。
- 目標の明確化
- データの準備
- データの前処理
- モデル作成
- モデルの評価
目標の明確化
まず、ビジネスゴールと分析のゴールを決めていく必要があります。ビジネスゴールとは売上の増加やコストの削減などの経済的な影響を、そして分析のゴールとはデータを分析した結果を意味します。
集めたデータを分析した結果が、実際にどのように役立ち、成果をあげるかを考えるうえで、これらの具体的な目標はわかりやすい指標となります。
データの準備
分析のゴールが明確になったら、次は必要なデータの準備をします。
目標から逆算して目標にあったデータを検討したうえで、準備するデータを決めることが大切です。
AI分析に入れるデータを観察するときには、機械学習に向いているか、学習データが多く安定しているか、例外的なデータは少ないか、といった指標が重要となっています。闇雲にデータを入れるのではなく、初めは簡単なデータから分析を始め、一度分析したのちに、追加データを入力する方が効率的なこともあるようです。
以下の図はそのプロセスを図式化したものになります。
自分が持っている既存データやネットなどで公開されているオープンデータ、企業や研究所などが公開しているデータセットなども活用する必要があります。
しかし、オープンデータはいつ使用できなくなるかが不明であり、データのフォーマットが変わる可能性もあるため、AI分析のように継続して運用する必要のあるシステムの場合、オープンデータはあくまで補助データとして使用するのが良いでしょう。
また、既存データから必要なデータを探すときには5W2H、「つまり、いつ、どこで、だれが、なにを、どうして、どのように」を意識すると探しやすいでしょう。
データの前処理
データを集めた次は、データの前処理段階に移行します。
一連のプロセスの中で最も時間がかかるのがデータの前処理(データの学習より前に行う処理のこと)で、実は全体の8割の工数がここにかかるという統計データも出ています。そしてこのデータの加工には以下の6つがあります。
- 目的変数の加工
- 説明変数の加工
- 異常値処理
- 学習データ数加工
- 画像データの加工
- テキストデータの加工
これらの作業により精度の高いAI分析ができるようになります。
また、分析業務を効率化し、データ活用によるビジネス改善を加速させるサービスである「nehan」のように、データの前処理を極力減らしてコスト削減などを目指すツールも徐々に出てきています。これらを利用することも考慮すると良いでしょう。
モデル作成
ここまでくると、いよいよモデル作成の段階に入っていきます。
モデル作成とはどのアルゴリズムにどのデータを入れるかを検討することです。
現在利用されているものだけでもおよそ20ものアルゴリズムがあります。モデル作成の段階では、分析のゴールと整合性のあるアルゴリズムを選ぶこと、データ数とアルゴリズムの相性を検討することの2つを重視する必要があります。
アルゴリズムによって、分析結果を人が解釈しやすいかに差があったりするなど、データ数とアルゴリズムには相性があります。
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モデルの評価
アルゴリズムを決め、機械学習で学習させたら、最後にモデルの評価をします。評価するための指標は以下の4つが基本となります。
- 精度
過去データから未来を予測するのが機械学習なのでモデルの精度は大事な指標になります。
- 過学習度合い
機械学習において、過学習はよく起きるのでこれも考慮に入れるべきでしょう。
- 解釈性
モデルが出した結果を人が理解できるのかという観点での評価になります。「どのような要因から”A”のような結論を出したのか」という点を理解できるか否かは大切です。
- 実施時間
機械学習は大量のデータを扱うこともあるため、学習処理に時間がかかることもあります。学習時間が支障ない程度のものなのかは判断材料です。
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AI分析の活用事例
次に、AI分析の活用事例を紹介します。現在、AI分析は様々な分野で活用が広がっています。
自動運転技術
近年、自動運転が話題になっています。この自動運転技術にもAI分析が活用されています。多くの走行シーンや交通データを収集・解析し、それをAIに学習させることでどのように運転すれば安全なのかを分析します。これによって自動運転でも正常な運転を実現できました。
▼自動運転について詳しく知りたい方はこちら
人材採用活動
企業の採用活動にもAI分析が活用されています。それぞれのスキルや履歴情報などのビッグデータを収集し、AI分析を行うことで会社に適した人材をリクルートできるようになりました。
また、エントリーシートの識別も、AI分析で行えます。実際に、AI分析による採用判断に加え、AIが不合格と判断したエントリーシートを人の目で再チェックするという二段階の採用システムを使っている企業もあります。このシステムにより、人間の偏見なく、応募者が平等に審査を受けれるというメリットが生まれました。
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音声感情解析API
音声感情解析APIとは、数万人の音声データベースを分析し、言語に関係なくリアルタイムで喜び、平常、怒り、悲しみの4つの感情と元気度を解析できるサービスです。これはヘルスケアなどの分野で多数の導入実績があります。
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画像による病理検査
画像を分析することで病気の兆候をAIが覚え、正確に病気を診断できるようになりました。
例えば、早期胃がんは形状が多様であり、専門家でも認識が難しい現状がありました。そこで、ディープラーニングを活用した画像認識技術を用いて、陽性的中率93.4%、陰性的中率83.6%の高精度の掲出法を確立しました。
▼画像認識について詳しく知りたい方はこちら
文章解析サービス
AIが企業が保有する「お客さまの声」「営業週報」「特許・論文」「レビューデータ」といったテキストデータを解析し、ビジネス課題の解決をサポートします。顧客の意見や感情に特化した分析できるため、より精度の良い結果が期待できるでしょう。人間の言葉を処理する自然言語処理の分野は、未だ発展段階であり、人間の言葉を認識し、理解するための研究開発が世界各地で盛んになっています。
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無料で使えるAI分析ツール
では、次に無料で使えるAI分析ツールを紹介します。
Orange(オレンジ)
Orangeは無料で提供されているデータ処理ツールです。オープンソースであるため、自社用にアレンジしてカスタマイズできます。
散布図の作成やクラスタリングのような基本的機能に加えて多次元データを平面に可視化する機能も利用できます。
有料機能を利用するとテキストマイニングやネットワーク分析などさらに高度な分析もできます。
Power BI(デスクトップ版)
Power BIは、Microsoft Corporationが提供しているデータ解析ツールです。互換性に優れており、エクセルとも連携できます。ダッシュボードを独自仕様に変更できるなど、非常に便利です。また、デスクトップ版は無料で利用できるため、お試し版として利用できます。
デスクトップの無料版であってもグループ化や予測などの機能が実装されており、見逃しがちなパターンを見出してユーザーが新たな気づきを得られます。
有料版にアップデートした場合は会話型の質問から答えを探索しユーザを補助する機能などが備わっています。
Octoparse(オクトパス)
Octoparseは、個人のユーザが無料で利用できる分析ツールです。チームや企業で利用する場合は月々1300円(89$)の利用料金がかかりますが、5日間の返金保証がついています。
Web上にある無限の情報の中から必要な情報を抽出し、競合調査や口コミ調査ができます。
コーディングが必要ないため初心者でも使いやすいツールです。スケジュール設定ができるため、事前に設定した期間に基づいて自動でデータ収集を行う機能もあります。
また、ユーザビリティが高く、データ収集におけるテンプレートも豊富です。
有料のAI分析ツール(一部無料版有り)
では、次に有料のツールを紹介します。有料でも、一部無料版もあるものもあります。
WebHarvy(ウェブハービー)
WebHarvyでは、簡単に任意のウェブサイトからテキスト、HTML、画像、URL&電子メールを切り取り、さまざまな形式で切り取ったデータを保存できます。
キーワードを登録してそのキーワードに関する情報を自動で収集する機能やWebページ上のデータをカテゴライズする機能なども備えています。
利用料金はユーザー数によって異なり、一度の買い切り形式で一人用が約2万円(129$)です。無料体験版もあります。
Talend(タレンド)
Talendは、データ統合に優れたツールです。クラウドおよびオンプレミス環境下のデータを統合し、ビジネスに有効活用できます。
データの信頼性を高めることでよりデータに基づいたビジネス運営を実現することを目標としています。
また、処理したデータは、すべてJavaコードとして出力可能です。無料で試用することもできます。
4つのプランがあり、サイト上でデモを試せます。
AIアナリスト
AIアナリストは、世界でシェアNo.1のアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」に連携するだけで利用可能です。Googleアナリティクスのデータをもとに、サイトの改善提案、わかりやすいレポート、気になるページ調査の結果などを提案します。
このサイトでも最初は無料で使えます。
サイトの利用料金はサイトの利用規模によって異なります。
Tableau(タブロー)
Tableauは、自社のデータセンターで運用できるデータ解析ツールです。豊富な解析チャートやモデルが用意され、さまざまな視点からデータを解析できます。
データはクラウド上で一元で管理できバックアップの機能も備わっています。
独自のビジュアライズ機能を実装しているため、分析結果も見やすいことも特徴です。また、無料トライアルも可能です。
有料プランは月々8400円から導入でき、追加で他の機能も購入できます。
FineReport(ファインレポート)
FineReportは、優れた可視化機能を備えたデータ解析ツールです。70種類以上のチャート解析モデルを活用することで、視覚的にインパクトのあるデータを表示できます。ユーザビリティが高く、ほかの業務効率化ツールとの連携も可能です。
ノンプログラミングでデータマイニングやデータ入力、アクセス管理などを行えます。
90日間の間、無料で全てのツールが利用できます。
SAP Analytics Cloud
SAP Analytics Cloudは、SAP社の統合基幹システム上で稼働するデータ解析ツールです。基本機能だけでなく、財務計画やシュミレーションといった応用機能も実装されています。
このツールは分析で得た結果を意思決定に利用することを主な目標としています。機能や業種ごとにパッケージが用意されているので、目的に合わせた機能が利用できます。
このサイトでも無料版を使えます。
まとめ
この記事ではAI分析について、プロセスや活用事例、分析ツールなど幅広く紹介しました。
AI分析は難しく、扱える人はまだ多くいません。しかし、AI分析の活用分野は広がってきており、需要も拡大しています。
個人だけではなく企業で積極的に導入を検討していくのもいいでしょう。