コロナ禍においてさらに注目を集めている「インサイドセールス」ですが、どのように取り組んでいけばよいのでしょうか。また、インサイドセールスにはどのようなやり方・種類があるのでしょうか。
インサイドセールスは、やみくもに取り組んでも理想とするような成果は上がりません。あらかじめ明確な目標を立て、自社内で連携を取りながら取り組むことが重要です。
この記事では、インサイドセールスのやり方やコツ、向いている企業の特徴を紹介します。
目次
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、見込み顧客に対して電話・メール・オンライン会議システムなどの非対面コミュニケーションツールを用いて行う営業活動です。
インサイドセールスの役割は、顧客の課題やニーズをくみ取ったうえで自社製品の特徴・メリットを紹介し、顧客の購買意欲を高めることです。顧客の購買意欲が高まったら、対面での本格的な商談に移行します。
インサイドセールスでは、獲得した見込み顧客をじっくりと育成し、特に購買意欲が高い顧客の抽出が重要です。
インサイドセールスのやり方5ステップ
インサイドセールスのやり方5ステップで紹介します。
ステップ1. 目的を明確にする
まずは、インサイドセールスに取り組む目的を明確にしましょう。「なぜインサイドセールスに取り組むのか」「インサイドセールスを通してどんなことを成し遂げたいか、どれくらい新規顧客を増やしたいか」というような観点から思考すると、インサイドセールスに取り組むうえでの目標が立てやすくなります。
明確な目的がないままやみくもにインサイドセールスに取り組むと、モチベーションが上がらないうえに、何から手を付けるべきか分かりづらくなってしまいます。自社で抱えている課題や達成したい目標を洗い出し、そのためにはどのような施策から始めるべきか考えましょう。
ステップ2.インサイドセールスの業務範囲を定める
インサイドセールスは、主に見込み顧客を獲得し、育成することが目的です。インサイドセールスの中には、本格的な商談や成約まで非対面で行うケースもあります。
営業活動のどの範囲までインサイドセールス部門が担当するのか、フィールドセールス(対面での営業活動)部門と事前に話し合ったうえで決めておきましょう。例えば、見込み顧客の獲得と育成をインサイドセールス部門で担当する場合は、見込み顧客の基本情報や会話を通して得た情報をフィールドセールス部門にしっかりと共有する必要があります。
業務内容を分担する際は、インサイドセールス部門とフィールドセールス部門の連携が必須です。
ステップ3.運用体制を整備する
インサイドセールスを立ち上げる前に、必要なツールと人材を確保し、運用体制を整備する必要があります。インサイドセールスでは、セールステック(マーケティングや営業の支援ツール)の利用が効果的です。
例えば、SFA(営業支援システム)を利用すれば営業活動の進捗を一括管理できるため、インサイドセールス部門とフィールドセールス部門での情報共有に役立ちます。さらに、CRM(顧客情報管理システム)があれば、顧客の基本情報のみならず会話内容も記録でき、社内で顧客情報を共有できます。必要に応じてセールステックを導入し、インサイドセールスの担当者に使い方を共有しましょう。
また、インサイドセールス部門を立ち上げるには営業・マーケティングやITツールの専門知識がある人材がいるとスムーズです。専門知識がある人材は、豊富なノウハウをもとにインサイドセールスの戦略や運用計画を立てられます。
▶︎マーケティングDXについてこちらの記事で解説しています>>
社内の人員が不足している場合も、インサイドセールスの立ち上げをあきらめる必要はありません。代行サービスに委託すれば、インサイドセールスの運用を代行してもらえるうえに、社内の人材を育成し営業力を高められます。
ステップ4.詳細な数値目標(kpi)を設定する
インサイドセールス目的を明確にし、運用体制を整備した後は、具体的な数値目標を設定します。今回は、数値目標の例として、KPI(重要業績評価指標)について紹介します。
KPIとは、企業や組織の業務を評価するための指標です。取り組みの達成度を評価するものであるため、自社が重視している項目に対して数値目標を設定します。
例えば、インサイドセールスにおけるKPIでは以下のようなものが挙げられます。
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このように、数値で目標を設定することで達成度を可視化できます。
ステップ5.シナリオを設計する
インサイドセールスの運用体制の整備や目標設定が終わり、ある程度見通しが立ったらシナリオを設計しましょう。インサイドセールスにおけるシナリオとは、見込み顧客へのアプローチや商談への移行のタイミングなど、インサイドセールスの全体の流れを示したものです。
シナリオを設計する際は、「顧客がこのような反応を示したらこの情報を提供する」「顧客がこのような反応を示したら商談へ移行する」というように、誰が見ても分かりやすいようにインサイドセールスの流れを示しましょう。
見込み顧客の購買意欲が高まった段階で適切なアプローチをし、商談に繋げるためには、常に顧客の反応を見ておくことが重要です。
▶︎インサイドセールスの手法についてこちらの記事でも解説しています>>
インサイドセールスの取り組みパターン4選
インサイドセールスの取り組む際の流れを以下の図に示しました。
上図のように、インサイドセールスには大きく分けて以下のようなステップがあります。まずは見込み顧客を獲得し、次に電話やメールを通して顧客にアプローチします。
そして、見込み顧客の中でも特に購買意欲が高い顧客を抽出します。特に購買意欲が高い顧客を抽出したら、その顧客に対してさらにアプローチし、商談につなげます。
このようなステップをどこまでインサイドセールス(非対面での営業活動)で行うのか、どこからフィールドセールス(対面での営業活動)で行うのかによって、取り組みパターンが変わります。今回は、以下の4つの取り組みパターンを紹介します。
①新規見込み顧客獲得型
新規見込み顧客の獲得に重きを置いたパターンを紹介します。
- 新規見込み顧客獲得に活用される主な手法
新規見込み顧客の獲得に重きを置く場合、Webサイトのコンテンツ強化は必須です。インターネットが普及している今日では、Webサイト上で情報収集し、資料請求や問い合わせをするケースが増えています。
Webサイト上のコンテンツを増やし、見込み顧客に自社製品の魅力が伝わるようにしましょう。ポップアップ表示や通知機能を活用し、資料請求や問い合わせフォームの送信を促すことも非常に重要です。
顧客の興味に合わせたコンテンツ、資料請求や問い合わせのフォームを表示するにはMA(マーケティングオートメーション)が役立ちます。
MAを導入すれば、見込み顧客がWebサイト上で閲覧したコンテンツを把握できます。閲覧履歴をもとに顧客の興味・関心を分析し、それらに合わせたコンテンツを表示することで、資料請求や問い合わせにつながりやすくなるのです。
- メリット
新規見込み顧客の獲得に重きを置くことで、現時点で見込み顧客が少ない企業も新規顧客の開拓に取り組めるようになります。見込み顧客が少ないと、アプローチする対象がいないためインサイドセールスがうまくいきません。
ある程度見込み顧客を獲得することで、その中でも購買意欲が高い顧客を抽出しやすくなります。現時点で見込み顧客が少ない企業は、まず見込み顧客の獲得を重視して取り組みましょう。
- 注意点
ウェブサイト上で資料請求や問い合わせがあった場合には、それらを逃さないようにしましょう。資料請求や問い合わせをしてくる顧客はある程度自社製品に興味があるため、じっくり育成すれば製品の購入につながるかもしれません。
資料請求や問い合わせフォームを扱う担当者を決めておき、それらのフォームで得た情報はすぐに部署内で共有・記録するよう徹底することが重要です。
②見込み顧客育成型
見込み顧客の育成に重きを置いたパターンを紹介します。
- 見込み顧客育成に活用される主な手法
見込み顧客の育成に重きを置く場合、見込み顧客の情報や抱えている課題、ニーズについて詳しく聞き取る能力が必要です。聞き取った情報をもとに、顧客に適した情報を提供し製品購入のプランを提案するため、聞き取り能力と提案力が求められます。
見込み顧客との会話をスムーズに進めるには、聞き取るべき項目と話すべき内容をまとめたトークスクリプトが役立ちます。トークスクリプトには、顧客から聞き出したい内容と、顧客に提供したい情報(製品の特徴や導入事例など)を入れ、トークの流れを大まかに決めておきましょう。
- メリット
見込み顧客の育成に力を入れると、見込み顧客の購買意欲が徐々に高まり、商談へ移行できる可能性が向上します。さらに、多数の顧客に同時にアプローチし反応を見極めれば、特に購買意欲が高い顧客を抽出しやすくなるでしょう。
時間をかけて顧客の購買意欲を高め、特に確度の高い顧客をフィールドセールス(対面での営業活動)に移行させると、商談の成約率も向上し、営業活動の効率が良くなります。
- 注意点
顧客にアプローチする際は、無理に販売を促進しないように注意しましょう。見込み顧客の購買意欲が高まっていない状態で無理に商談に移行しようとせず、顧客がどれくらい自社製品に興味・関心を抱いているか判断しましょう。
購買意欲が高い顧客にのみ本格的な商談を実施することで、成約率が向上し、営業活動の効率が高まります。
③インサイドセールス単独型
見込み顧客の獲得から本格的な商談まで、すべて非対面で実施するパターンを紹介します。
- インサイドセールス単独で行う際の主な手法
インサイドセールス単独型は、営業活動の行程をすべて非対面で行うのが特徴です。
見込み顧客の獲得・育成はもちろん、商談まで非対面で実施するため、非対面でコミュニケーションをとれる体制を整備する必要があります。電話・メールの体制を整えるだけでなく、商談に利用するオンライン会議システムも整備しましょう。
インサイドセールスに利用できるオンライン会議システムとしては、「Zoom」や「Microsoft Teams」などが挙げられます。オンライン会議システムを利用する場合は、インターネット回線も確保しなければいけません。
ツールやインターネット回線の整備には時間がかかるため、余裕をもって取り組みましょう。
- メリット
営業活動をすべて非対面で実施する場合、大きく分けて2つのメリットがあります。
1つ目は、移動時間がかからないという点です。電話やメール、オンライン会議システムで顧客と会話するため、顧客の企業まで出向く必要がありません。移動時間がかからないと、一日に実施できる商談の数が増えたり、顧客へのアプローチにかける時間を増やせたりします。
2つ目は、感染症対策ができるという点です。顧客と直接顔を合わせずに会話するため、感染症拡大を防止できます。
- 注意点
すべて非対面で実施する際の注意点は、非対面でのコミュニケーションが苦手だとインサイドセールスの運用がうまくいかないという点です。直接顔を合わせないと、相手の表情や真意を読み取れないため、コミュニケーションが難しくなってしまいます。
メールや電話、オンライン会議システムでのコミュニケーションに慣れている人材がいる場合は担当してもらい、うまくいかない場合は代行サービスの利用も検討しましょう。代行サービスについては、以下の見出し(インサイドセールスのコツ)で紹介します。
④フィールドセールスとの分担型
フィールドセールス(対面での営業活動)部門と分担するパターンを紹介します。
- フィールドセールスと分担する際の主な手法
フィールドセールスと分担する際は、情報共有が必須です。SFA(営業支援システム)を利用して営業活動の進捗を記録したり、MA(マーケティング支援システム)を利用して顧客との会話内容や、顧客の行動履歴を記録したりすると、情報共有がスムーズになります。
顧客と会話した際に得た情報を共有すれば、対面での商談に移行する際も会話がはずみます。顧客が必要としている情報は何か、製品を購入する際に重視するポイントは何か、整理したうえで商談に移行しましょう。
- メリット
インサイドセールスで購買意欲の高い顧客を分析したうえでフィールドセールスに移行すると、商談の成約率が上がります。製品の実際の質感や手触りを直接感じたうえで成約に踏み切れるため、顧客にとっても安心です。
- 注意点
フィールドセールスとの情報共有がうまくいかないと、最終的な商談でうまくコミュニケーションを取れない可能性があります。
顧客の基本情報だけでなく、電話で会話した内容や、メールの開封率、ウェブサイト上で閲覧したコンテンツなども細かく共有しましょう。特に、顧客がウェブ上でどのようなコンテンツを閲覧したか分析すると、顧客がどんなことについて知りたいか分かりやすくなります。
インサイドセールスに向いている企業
インサイドセールスに向いている企業とは、どのような企業なのでしょうか。
ITシステムが整備されている企業
インサイドセールスでは、非対面で顧客と会話するため、オンライン会議システムなどのツールを整備する必要があります。すでに回線を確保していたり、ツール利用の文化が根付いていたりする企業におすすめです。
さらに、インサイドセールスではセールステック(MA・SFA・CRM)の活用が重要です。そのため、セールステックの知識があり活用できる企業もインサイドセールスに向いています。
非対面でのコミュニケーションにも対応できる企業
インサイドセールスでは、顧客の顔を見ずに会話します。主なコミュニケーションツールは、メールや電話、オンライン会議システムです。
よって、これらのツールに慣れており、非対面でのコミュニケーションに対応できる企業におすすめです。特に、電話での営業スキルをもった人材がいると安心です。
営業・マーケティングのノウハウが豊富な企業
インサイドセールスでは、ただ単に顧客にアプローチしても成果は出ません。顧客との会話の中で、顧客の抱えている課題やニーズを洗い出し、それぞれの顧客に合わせた営業・マーケティング戦略を練る必要があります。
営業やマーケティングのノウハウがあれば、顧客に適した戦略を練り、効率よくインサイドセールスを運用できます。
インサイドセールスのコツ
インサイドセールスに取り組む際のコツを4つ紹介します。
①インサイドセールスは辛い?組織のケアも大切
インサイドセールスを立ち上げても、すぐに成果が出ないというケースは少なくありません。成果が目に見えないと、担当者のモチベーションが下がってしまう可能性があります。
インサイドセールスを立ち上げる際は、成果が出るまでにある程度時間がかかることを頭に入れておきましょう。そして、KPIの基準を少し下げ、達成しやすい目標を設定するとモチベーションの向上につながります。
インサイドセールスをまとめる立場の方は、従業員に困っていることや課題はないか定期的に確認しましょう。従業員のケアも重要な業務の一つです。
②自社内の連携を強化する
インサイドセールスを運用する際は、自社全体で取り組むという意識を持ちましょう。
インサイドセールス部門を立ち上げる際は、人材を確保したうえで、事前にフィールドセールス部門と業務を分担する必要があります。情報共有の体制を整備し、インサイドセールスの段階で顧客について得た情報があれば必ず共有してください。
③セールステックを最大限活用する
インサイドセールスの運用で成果を出すには、セールステックの活用が必要不可欠です。
例えば、CRM(顧客情報管理システム)を利用すれば、インサイドセールス部門とフィールドセールス部門で顧客の基本情報を共有しながら管理できます。さらに、MA(マーケティングオートメーション)を利用すると、顧客がウェブサイト上でどんなコンテンツを閲覧したか、メールはどれくらい開封したかなどの行動履歴を追跡できます。
インサイドセールスの段階でどの程度顧客と会話し、営業活動がどれくらい進んだか記録するにはSFA(営業カツどん支援システム)を利用しましょう。営業活動の進捗が一目でわかれば、インサイドセールスからフィールドセールスに移行すべきタイミングを判断しやすくなります。
▶︎MA・SFA・CRMの違いについてこちらの記事で解説しています>>
④困ったときはプロに相談する
インサイドセールスを初めて立ち上げる場合は、何から手を付けるべきか分からなかったり、アプローチすべき見込み顧客がいなかったり、運用につまずいてしまうかもしれません。さらに、営業活動のノウハウがないと、トークがはずまない可能性もあります。
そのような場合におすすめなのが、インサイドセールスの代行サービスです。代行サービスでは、営業のノウハウが豊富なプロが自社のインサイドセールス運用を代行してくれます。
代行サービスを利用すると、インサイドセールスの運用計画や目標をプロが一緒に立ててくれるだけでなく、見込み顧客の獲得や育成、商談への移行までサポートしてもらえます。さらに、彼らから営業トークのコツを聞いたり、自社の取り組みに対するフィードバックをもらったりすれば、自社内の営業力を強化できるでしょう。
▶︎インサイドセールスで成果を上げる7つのコツについてこちらの記事で解説しています>>
インサイドセールス成功のコツは入念な見直しと改善
今回の記事では、インサイドセールスの取り組みステップやパターン、成功のためのコツを紹介しました。
インサイドセールスを立ち上げる際は、営業活動のどの段階までをインサイドセールスで担当し、どこからフィールドセールスで移行するか決めておきましょう。さらに、インサイドセールスに必要なツール、インターネット回線を整備しておく必要があります。
インサイドセールスでつまずいた際は、自社の取り組みを見直し、自社内で解決できない場合はプロに相談することも検討しましょう。インサイドセールスをより良いものにするには、第3者の意見も必要です。
明確な目標を持ったうえでインサイドセールスに取り組み、定期的に見直しをすることでインサイドセールスの質が高まります。ぜひこの記事を参考に、インサイドセールスの運用計画を立ててください。