「DXと言われても、そもそも何を指しているかわからない」 「DXを導入したいけれど、何から始めれば良いかわからない」 |
物流業界に携わる方の中には、このように思っている方も多いでしょう。
人手不足、小口多頻度化などの問題を抱える物流業界で、ウィズコロナ、アフターコロナ時代に業績を伸ばしていくにあたってDXは欠かせません。
しかし、調べてみても「物流におけるDX」は専門知識や難しい言葉が多くわかりづらいこともあるかと思います。
そこで今回は物流におけるDXの言葉の解説から、DXを実現できる領域、物流DXの事例、そして導入に至るまで詳しく解説していきます。
本記事を読んだら、きっと「物流におけるDX」に対する知識がより一層深まるはずです。ぜひ最後までご一読ください!
目次
物流DXとは-機械化とデジタル化の掛け算
DXという言葉は、近年よく耳にしますが、そもそもDXに対する理解が曖昧、あるいは物流におけるDXに対する理解が曖昧である方もいらっしゃるかと思います。
そこで、まずはDXのおさらい、そして物流DXという言葉の理解を深めましょう。
DXのおさらい
本題に入る前に、まずDX(デジタルトランスフォーメーション)についておさらいします。
DXとは、そもそも2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものでした。
企業の視点としては、経済産業省が
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に,製品やサービス,ビジネスモデルを変革するとともに,業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
と定義しています。
▼DXについて詳しく知りたい方はこちら
物流DXの定義
国土交通省は物流DXを以下のように説明しています。
機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること
(物流DXにより、他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、我が国産業の国際競争力の強化につなげる)
「機械化」・「デジタル化」が指す具体的なDXの取り組みについては後ほど詳しく説明します。ここでは、機械化×デジタル化=物流DXであることを押さえておいてください。
物流倉庫DXとは
物流・運送業界では、人手不足のほかに、倉庫の空き不足が課題となっており、物流倉庫DXが注目を集めています。
ここでは、物流倉庫DXについて説明します。
ピッキング・仕分けを人ではなく機械が行う自動倉庫などを通して、空間を有効利用したり、倉庫管理に関する業務を効率化することです。
現在では、倉庫内の荷物運搬や梱包作業を行う倉庫管理システムの導入が進んでいます。
物流業界の抱える3つの課題
物流業界の課題は以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
①ドライバー人手不足
日本では少子高齢化が進んでいて、働き手不足が問題となっています。
国土交通省の『2050年の国土に係る状況変化』によると、日本の人口は2050 年には約1億人にまで減少する見通しです。
また、人口減少を年齢階層別に見ると、2015 年から 2050 年にかけて、生産年齢人口 は約 2,400 万人、若年人口は約 520 万人減少するとされています。
そんな状況下で、トラックドライバーの人手不足は深刻です。
トラックドライバーの有効求人倍率に着目すると、全産業と比べても労働力不足の度合いが高いことがわかります。
有効求人倍率
貨物自動車運転手:2015 年度 1.72 倍 → 2020 年度 1.94 倍
(参考) 全産業:2015 年度 1.11 倍 → 2020 年度 1.01 倍
※厚生労働省提供データより国土交通省において算出
②コロナ禍の新しい課題
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、物流業界は著しく変化しています。
企業間取引であるBtoB物流の運送収入は大幅に減少しています。感染対策の一環で、多くの工場で生産活動が停滞しました。
この影響で、素材や部品の需要が減少し、それに伴い、海外からの原材料の輸入も減少したことが一因として挙げられます。
一方で、企業と一般消費者間の取引であるBtoC 物流は増加しています。2020 年度の宅配便取扱個数は、対前年比で概ね10~20%増加しました。
コロナ禍で、巣ごもり消費の需要が拡大し、電子商取引(EC)市場の規模が更に拡大したことが一因として挙げられます。
また、「ソーシャルディスタンス」の推奨が広く行われたことで、「非接触・非対面」という要素が物流サービスにも生まれました。
これらの新型コロナウイルス感染症により生まれた新たな需要に対応すべく、物流業界は変化を迫られています。
③トラックの積載率減
積載率は一般的に輸送効率の尺度として用いられることが多く、積載率が高いほど輸送効率が良いと考えられます。この積載率が年々低下していることが物流業界が直面している課題です。
この原因として、配達時間帯を指定できるサービスの登場や、商品の発注から納品に至るまでに要する時間を指す、リードタイムの短い貨物が多いことが挙げられます。
トラックの積載効率:2016 年度 39.9% → 2019 年度 37.7%
※自動車輸送統計年報(国土交通省)より国土交通省において算出(輸送トンキロ/能力トンキロ(空車時 のデータを含む。)
この他にも、年々規模を広げている EC市場に関連する要因が再配達の需要の増加です。
2019年度の宅配便等取扱個数は 43.2億個で、そのうち 16%程度が再配達となっています。2020 年度は再配達率が下がっていますが、新型コロナウイルス感染症の影響による在宅率の上昇などの可能性もあることから、ポストコロナにおいて、再配達の需要に起因する積載率の減少は課題となります。
宅配便の再配達率:2017 年度 16%程度 → 2020 年度 10%程度(2019 年度 16%程度)宅配便再配達実態調査(国土交通省)
2020 年度調査の平均値として算出(4月調査分約 8.5%、10 月調査分約 11.4%)
▶日本におけるDXの課題4つ【初心者でもわかる】|解決策も徹底解説>>
物流業界でのDX化のメリット4選
DX化は、前述で述べた、物流業界の課題を解決することが可能なメリットがあります。
そこで、ここではDX化による物流業界のメリットを紹介します。
今回は、以下の4つのメリットを紹介します。
業務効率化
物流業界では、業務効率化の方法として、ピッキングロボットや自動運転技術、AIドローンなどの導入をするDX化がなされています。
その理由は、物流業界が工場や運搬、接客において業務を効率化することが求められているからです。
DX化は、業務を効率化することが主な目的で行われているので、物流業界とDX化は非常にマッチしています。
DX化が進められると、物流業界の課題が解決されるかもしれません。
運送関連手続きの効率化
運送関連手続きの効率化とは、運送の際に行う手続きを電子化することにより効率化することです。
例えば、配達の書類にハンコやサインをして手続きをすると思いますが、その手続きを電子化するというものです。
配達手続きを電子化すれば、書類を保管する必要も、整理する必要もありません。また、コストの削減も行えます。
結果的に、DX化により効率化が図れるというわけです。
顧客満足度の向上
顧客満足度を向上させるためには、配達先の顧客にサービスをまた使いたいと思ってもらう件数を増やすことが重要です。
顧客にサービスをまた使いたいと思ってもらうには、配達にミスなどがあってはいけません。
そのため、AIシステムを導入することによって梱包や配達先の振り分けを自動化することで、ミスを減らすことが考えられました。
ミスが少なくなることで、顧客満足度も上がることになるでしょう。
運転手不足の解消
運転手不足の解消方法と聞いて、皆さんが一番に頭に思い浮かべるのは、自動運転だと思います。
しかし、皆さんが思い浮かべている自動運転車は、完全自動運転の車ではないでしょうか?
実は、最近、自動運転者ではあるが、完全に自動運転ではない走行方向の実証実験が行われています。
それは、後続車無人隊列走行です。
後続車無人隊列走行は、先頭のトラックに人が乗っている状態で、後続のトラックは無人で自動制御されているというものです。
後続のトラックには、前の車と同じ動きをするというシステムが搭載されています。そのため、完全自動運転ではないのです。しかし、人手は少なくて済みます。
このように、いきなり、すべて自動運転とは行かなくても人手不足を解消するために工夫がなされています。
物流の機械化-DXを実現できる4つの領域
物流において機械化によりDXを実現できる領域は以下の4つです。
それぞれ解説していきます。
①隊列走行・連結トラック
トラック隊列走行や自動運転トラックの活用は、ドライバー不足の解消、燃費改善など生産性向上に大きな効果が期待できます。
実証実験段階ではありますが、2021年3月、豊田通商株式会社は新東名高速道路の遠州森町PA~浜松SA(約15km)において、後続車の運転席を無人とした状態でのトラックの後続車無人隊列走行技術を実現しました。
出典:高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術を実現 – 豊田通商
▶関連記事|自動運転とは? 各レベル説明と15の実例を紹介>>
②自動運航船
物流を担う乗り物はトラックだけではありません。
港湾物流では、AI、IoT 等の先進技術の活用した有人自立運航船の実用化が注目されています。
自動運航船は海難事故の減少や船員の労働環境の改善が期待されます。
実証実験段階ではありますが、2019年9月、日本郵船は自動運航技術の実証実験に成功しました。
実用化が叶えば、陸上からの船舶の状態監視や気象、海象等の周辺情報に基づく最適な航路提供のサポート、速力など操作の自動設定を可能とし、より安全かつ効率的な船舶の航行を実現します。
出典:世界初、有人自律運航船に向けた自動運航の実証実験に成功 – 日本郵船
③ドローン配送
ドローン配送は、現状、国や地方自治体の支援などにより離島や山間部等の過疎地域 等において配送の実用化に向けた実証実験が行われている段階です。
また、政府は 2022 年度を目途としてドローンの有人地帯での目視外飛行(レベル4) の実現を目指すこととしており、操縦ライセンス制度の整備や、 運航管理ルールの構築といった制度面での環境整備を推進することとしています。
レベル4が解禁すると、都市部における戸別ドローン配送の実証実験が行えます。近い将来、物流業界を助ける鍵となることでしょう。
▶AI搭載のドローンって何?|できること・活用例・今後など詳しく解説!>>
④物流施設へのロボットの導入
人手不足を解消するため、物流施設にもロボットが導入されつつあります。
2019年より、ヤマト運輸では自動配送ロボットを上海拠点の仕分けターミナル内で導入し、商品のピッキング作業と、入荷時に商品を保管棚へ運搬・格納する作業を自動化することに成功しています。
出典:中国でEC事業を展開する企業向けに、自動搬送ロボットを活用した …
物流のデジタル化-DXを実現できる3つの領域
物流においてデジタルによりDXを実現できる領域は以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
①手続きの電子化
多くの民事事業者間の貿易手続や貨物集荷の手続きは、FAXや電話で行われてい流のが現在の状況です。
これらをデジタル化することによって、各種手続を一貫して処理することが可能になり、作業効率が上がります。また、入力されたデータについて、連携基盤を介して手続に関係する者が共有することも可能になります。
特に港湾物流では、手続きの電子化が推進されていて、民間事業者間の港湾物流手続を電子化する 「サイバーポート」は日本通運、双日、日産自動車などの民間事業者によって既に利用されています。
出典:Cyber Port(サイバーポート)の運用を4月1日から開始します
②点呼、配車管理のデジタル化
トラックドライバーは、1日の業務の始めに乗務前点呼を受ける必要があります。ドライバーは、日常点検の報告や、健康状態、酒気帯びの有無についての報告をしなければなりません。
この点呼という作業をデジタル化することは既に商用化されています。
テレニシ株式会社が提供するIT点呼キーパーは、点呼をデジタル化することを可能としました。
ドライバーは営業所に行かなくても点呼ができたり、自動で検知結果を営業所に送れたりします。これにより、離れた営業所まで向かう時間が削減されます。
また、遠隔地の場合でもスマートフォンで点呼が行えます。
出典:IT点呼キーパー | 法人のお客様へ | テレニシ株式会社
配車管理のデジタル化は既に商用化されています。
今まで配車をする際、伝票をコースや地区毎に仕訳して配車を行っているのを、デジタル管理を可能としました。
デジタル化することで、効率よく配達先や積載量で配車管理が可能となります。また、帰り便を活用することで無駄なく配送することができ、輸送コストの削減に繋がります。
③AIを活用した配送ルート作成
トラック配送の生産性を上げるために効率の良いルートを見つけることは必要不可欠です。
JAXAベンチャー認定企業、株式会社DATAFLUCTは配送ルート作成システム『DATAFLUCT route-optimization.』(データフラクト ルートオプティマイゼーション)を提供しています。
このDXサービスは各地に稼働しているトラックの位置情報を収集し、荷物量、配達先の数、配達希望時間などの条件と天候や交通情報などリアルタイムの外部環境の情報を組み合わせて、AIによって最も効率の良い配送ルートを作成することを可能にしました。
出典:分析し、企業収益の最大化に寄与する配送ルート予測DXサービス …
物流DX−ベンチャー・スタートアップ企業を紹介
GROUND-人工知能を利用した物流キャッシュ・フロー改善ソフトウェア
人工知能を利用した物流キャッシュ・フロー改善ソフトウェア「Dynamic Allocation System(DyAS)を開発しました。
これは物流センター内における在庫配置およびリソース、および物流センターの拠点間配置を適正化します。またDyASを使うことでサプライチェーンの情報を可視化し、予実管理も可能です。
Infinium Robotics-倉庫内の在庫管理を代行するドローンを開発・提供
Infinium Roboticsは2013年に無人航空機システムを提供することを目的に設立された倉庫内の在庫管理を代行するドローンを開発・提供している企業です。
当初はエンターテイメントで活用するドローンや飲食店で人に代わって配膳をするドローンなどを開発してきました。
2018年以降では、倉庫での在庫管理を代行するドローン「Infinium Scan」の開発・提供に重点を置いていました。屋外でドローンを活用する場合であれば複雑な規制を遵守することが求められ、さらにブライバシー侵害などの問題にも対処しなければなりません。
一方、在庫管理のような屋内でドローンを活用する場合においては、規制遵守やプライバシー侵害への対処が必要ありません。そのためInfinium Roboticsでは屋内の倉庫内で在庫管理を代行するドローンであるInfinium Scanの開発・提供に重点を置くようになりました。
Infinium Scanは倉庫内の在庫確認作業を代行し、従来、人が行ってきた作業を自動化しコストを削減する。コア技術としては、GPS信号が弱くなりがちな屋内において、GPS信号に頼らずともドローンが自ら機体の位置を確認できる独自の技術を用いています。
Shippio
国際物流を自動化するプラットフォームを開発・提供している企業です。
Shippioは、貿易業界をより効率的なものにするべく機械学習やクラウド、ブロックチェーンを活用したプラットフォームです。
Shippioでは、画像解析と機械学習を活用することで自動で通関関係書類を作成できます。
また、必要な情報を一度入力するだけで各種書類を作成可能です。
さらに取引先を一元管理でき、作業効率を上げると同時に業務ミスを防ぐこともでき、輸出入に必要な情報を最低限Web上で入力するだけで見積を取ることも可能だそうです。
物流DXを取り入れるためにするべきこと3選
物流DXを取り入れるためにするべきことは以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
①関連書籍を読む
物流におけるDXの知識やスキルを学ぶために、最も手軽な方法は関連する方法は関連するビジネス書を読むことです。
評価の高い物流DXのビジネス書の1つとして『物流DXネットワーク: ビジネスパーソンのための〈コネクティッド・ロジスティクス〉の基礎知識』が挙げられます。
大手通信事業者、ユーピーアール株式会社でIoT事業を牽引していた中村康久氏と、日本大学、鈴木邦成教授の 図解を用いた基礎技術のわかりやすい解説が好評です。
広い範囲を網羅しており、物流DXの動向を理解できる内容になっています。
出典:物流DXネットワーク ビジネスパーソンのための〈コネクティッド …
▶≪業界別≫DXのおすすめ本12選Ιセミナーやおすすめの資格も紹介>>
②セミナーに足を運ぶ
ビジネス書を読むほかに手軽に物流DXの知識やスキルを学ぶ方法として、セミナーがおすすめです。
近々行われるおすすめのイベントの1つとして、2022年1月19日から21日にかけて東京ビッグサイトにて開催予定の「スマート物流EXPO」が挙げられます。
物流DXを促進させるIoT、AI、ロボットなど最新技術が並ぶ展示会のほかに、国土交通省、ヤマト運輸株式会社、インテル株式会社、サッポログループ物流株式会社、日本貨物鉄道、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、マツダ株式会社等16の政府機関と民間企業によるセミナーが開催される予定です。
出典:– スマート物流 EXPO | RX Japan株式会社(旧社名: リードエグジ …
▶≪2021年開催≫無料のDXセミナー/DX人材に必要なスキルや採用のポイントも紹介>>
③コンサルタント紹介
より実践的に物流DXを導入したいと考えている方には、物流を専門的に扱うコンサルタントに相談することがおすすめです。
物流業界最大級のコンサルティング会社、船井総研ロジ株式会社は、輸送・保管など、物流業務の依頼主である荷主と物流企業のどちらにもコンサルティングサービスを行なっています。
企画、提案から、実務支援まで、広範囲にサポートし、課題解決に定評があります。
出典:物流コンサルティング・物流改善なら船井総研ロジ株式会社
▶DXのコンサルって何?導入のメリットや問題点、成功事例まで解説!>>
参考:ビジネス+IT|物流テックスタートアップ16社まとめ、現場の非効率はテクノロジーが解決する
物流DXの推進ステップ
物流DXを推進する方法を3つのステップに分けて紹介します。
現状の課題を洗い出す
日頃の業務やサービスで課題となる点を洗い出し、DXで改善できる部分があるか探しましょう。また、課題ではなくてもDXで利益が向上しそうな点も出してみましょう。
DXの目的が決まったら、具体的な目標を定めましょう。特に、DXの本質は経営改革であるため、経営陣の同意や意思を揃えることが必須となります。また、現場にデジタルの必要性を理解してもらうことも重要です。
マネジメント体制の確立と人材確保
DXを推進するマネジメント体制を構築しましょう。DX計画を立てる人材・計画を指示する人材・計画を推進する人材など、必要となる人材を確保・育成する必要があります。
DX教育には、IT理解やITツール・データの活用を教育する必要があります。
データの取得
DX推進に当たり、ITツールの導入は不可欠となりますが、ITツールを導入するに当たりデータの取得が必須となります。
まずは、データの標準化から始めましょう。具体的には、データの項目・粒度・取得頻度が各現場間で共通化され、相互に利用できる状態を目指しましょう。
ITツールの導入
DXを推進するに当たり、ITツール導入は不可欠です。
物流DXを推進するにあたっては、以下のようなITツールが使われます。
- 自動倉庫システム
- 輸送・配送ルート最適化システム
- 入出荷検品システム
- 送り状・荷札・伝票発行システム
- 自動搬送ロボット
- ドローン配送
物流DXの事例4選
物流DXの事例は以下の4つです。
それぞれ解説していきます。
DX銘柄についてより詳しい説明はこちらのページを参照ください。
▶関連記事|DX銘柄2021の選出企業一覧 |選ばれるポイントから取得の秘まで>>
①SGホールディングス|佐川急便が中核
SGホールディングスは伝票情報をデジタル化することで、配送ルートの最適化に成功しました。
配達順序を考え、荷物を積み込むことは人の手によって行われていましたが、手作業では効率が悪いほか、従業員の熟練度合いによって精度は異なることが物流業界では問題となっています。
そこでSGホールディングスは、伝票情報のデジタル化に取り組みました。
AI-OCRを活用し配送情報をデジタル化することは、AIによる配送ルートの最適化、業務の効率化、及び精度をあげることに繋がります。
出典:佐川急便の配送伝票入力業務を自動化するAIシステムが本稼働 – SG …
②日本郵船|日本最大の海運会社
日本郵船は、先ほど述べた『自動車専用船による世界初の有人自律運航実証実験の実施』の他に、自動車専用船の運航スケジュール策定支援システムを開発し、運用を開始しました。
運航スケジュールは、寄港地や貨物積載量、到着日といったような運航条件と航路上の天候や港の混雑状況といったような外部環境を組み合わせて策定します。
そのため、運航担当者に負荷がかかることや、ノウハウを継承する仕組みづくりが問題となっていました。
日本郵船が開発した運航スケジュール策定支援システムは、AIによる最適スケジュールを導くことを可能としました。
このシステムを活用することにより、従来よりも効率よくスケジュールを組むことができ、長期的な知識の蓄積・継承にも繋がります。
また、船舶が排出する温室効果ガスを最小化するスケジュールの策定も可能となり、気候変動へ対応したサービス実現に大きく貢献すると見込んでいます。
出典:自動車専用船の運航スケジュール策定支援システムを開発 – 日本郵船
③日本航空 – ドローンでの配送サービス
日本空港では、AIと航空を組み合わせるDX化を進めています。
具体的には、ドローンや無人ヘリを使って、物流を行うことを目指しています。
ドローン物流や無人ヘリが稼働されることになると、新鮮な魚を直接注文者に素早く送ることも可能です。
既に、実証実験が成功しており、物流のさらなる発展に貢献する日は、近いかもしれません。
④ZARA – データを基にしたサプライチェーン
ZARAでは、売り切ることにこだわったDX化を進めています。
衣服店では、販売時期を過ぎ売れ残った衣服を安く売るという方法をとっているのは、ご存じだと思います。
そこで、ZARAでは、電子タグを活用しPOSの販売データを元に、衣服を生産しないという方法を実施しています。
また、売り切れ前提で衣類を生産しているのと、短い期間で移り行く顧客のニーズに答えるため、新商品が年に約11000点出ています。
物流に関する他の業界でのDX
三菱商事の物流DX
三菱商事はNTTと共同で、世界最大規模の位置情報データベースを持つ「HERE Technologies」に出資し、物流、都市交通を中心領域として、さまざまな取り組みを進めています。物流では、ドライバー不足や買い物難民といった課題の解決をめざし、都市交通ではAIオンデマンドバスや市民間ライドシェアなどのサービスを展開していきます。
参考:三菱商事|三菱商事が目指すDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?
富士通の物流DX
富士通では、ロジスティクス全体の最適化に向けて、「ITを活用した現場業務の見える化」「物流業務プロセスの効率化、品質向上」「マネジメントにおける継続的な改善活動の確立」を支援しています。
東海3県のコープ(コープぎふ、コープあいち、コープみえ)では、宅配担当者1人の1日の配達量は多い時で100件近くに及んでいます。
そこで業務の効率化とサービス向上を実現するために東海コープ事業連合が中心となり、富士通と共同でスマートフォンを活用した宅配業務支援システムを構築しました。
個人情報を扱う同システムにおいてセキュリティと利便性を両立し、配達先で組合員の要望に即応するサービス向上を実現したのです。また、300時間/日以上の作業時間の短縮も実現し、宅配業務の働き方改革に貢献しています。
京セラの物流DX
コロナ禍を契機にアナログ業務を見直そうという機運が高まった京セラでは、特に物流業務を改革できないか検討を開始しました。
協力ベンダーと議論を重ねた結果、受入チェックと、出荷業務のピッキングから梱包(こんぽう)までの作業に着目しました。どちらも紙やハンディースキャナーを使った作業があり、データ照合のために事務所と倉庫を往復しなければならない無駄があったためです。
こうした課題に対し、同社が導入したのがスマートグラスに拡張現実(AR)の技術を組み合わせたソリューションです。
スマートグラスには作業指示が表示され、読み込んだデータは即座に自動照合されることにより、事務所に戻って数値を入力する作業から解放され、データに食い違いがあってもその場で確認作業ができるようになりました。
参考:ITmedia|スマートグラスで現場DX、物流業務を改革した京セラの取り組みに迫る
ニトリの物流DX
ニトリホールディングスはDX(デジタルトランスフォーメーション)による変革を急いでいます。その肝になるのがブロックチェーン(分散型台帳)技術です。このブロックチェーンを使用した新システムを稼働させ、2030年までに外部受託を数百億円事業に育てる計画です。
ニトリホールディングスのDX施策は以下のとおりです。
- ブロックチェーンを使い物流に関わる情報を電子化
- AIによる配送ルートの最適化などシステム基盤の構築
- 独自の自動倉庫システムなどのノウハウを横展開
- 物流受託とデジタル化の支援で2030年を目処に数百億円稼ぐ
参考:Qoonest|ニトリのDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略
▶DXの成功事例はこちらの記事で30個まとめて詳しく解説しています>>
行政機関の3つの取り組み事例-日本の「強い物流」実現へ
日本の行政機関が行っている「強い物流」のための取り組みは以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
①ドローンを活用した物流の実用化支援|国土交通省
国土交通省は、主に過疎地域を対象にドローン配送の実用化を目指すため、実証実験に取り組む民間事業者に補助金交付を行っています。
2022年度の実用化を目指し、2021年度は補助を受けた事業者が各地で実証実験を行いました。
その1つにANAホールディングス株式会社、武田薬品工業株式会社、長崎大学、五島市など合同でドローンを用いた医薬品配送の実証実験があります。
飛行区間は長崎県五島市福江島港~久賀島、片道約16kmで、通院困難な住民に対してオンラインで診療、服薬指導をしたあと、ドローンで処方箋医薬品を配送するといった内容でした。
出典:固定翼型垂直離着陸(VTOL)ドローンを用いて医薬品配送を実施
②AI・IoTの活用した輸送効率化事業補助金|経済産業省
経済産業省は、物流におけるDXを推進するために、補助金を交付しています。
令和3年度予算案額は62億円(新規)と経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー課のなかでは3番目に予算額の大きい事業でした。
AI、IoTの活用による物流の効率化はもちろん、トラック輸送、船舶輸送の省エネ化を目指した補助金制度です。
経済産業省は具体的な数値目標を掲げていて、2030年までに、波及効果も含め、運輸部門におけるエネルギー 消費量を原油換算で年間約156万kl削減することを目指しています。
▶DXとAIの関係性について解説!AIでDXを推進するには!?>>
▶DXとIoTの違いとは?《初心者必読》事例やAI・ICTとの違いまで解説>>
出典:令和3年度予算案の概要 – 経済産業省 資源エネルギー庁
③食品流通の合理化に向けた取り組み|農林水産省
農林水産省は、トラック輸送が97%占める食品輸送の合理化に向けた取り組みをおこなっています。生鮮食品の輸送では、商品の発注量が少なく、頻度も多いため、トラックドライバーの負担が大きいことが課題となっています。
農林水産省の提言を受け、北海道では、パレットを用いて農産物輸送の効率化に取り組みました。段ボールのばら積みから、パレット輸送にかえることで、トラックドライバーの負担を減らすことを目指しました。
2020年11 月、集荷JA、納品市場で測定された積込時間やパレットの回収率などを集計して、改善策を検討し、合理化に向け取り組んでいます。
出典:食品流通合理化 (産地主導の全国規模パレット一貫管理体制の推進 …
物流に関する他の業界でのDX
DXは、物流業界以外でも、進んでいます。それは、当然のことで様々な業界で効率化すべき部分が存在しています。
そこで、ここでは、物流以外の「倉庫業界」と「農業業界」について紹介していきます。
倉庫業界
倉庫業界では、人手不足、属人的、オペレーションが複雑であるなどの課題があります。そこで、倉庫業界は、DX化をすることで、解決に向かっています。
人手不足と属人性を防ぐために、ロボットで倉庫作業を自動化します。オペレーションの複雑化を防ぐために、倉庫管理システムや倉庫制御システムを導入し一括管理します。
他にも、様々なDX化が進められています。
このように、倉庫業界でも、DX化による課題解決がされています。
農業業界
農業業界では、人手不足、属人的、データを活用していないなどの課題があります。
そこで、倉庫業界は、DX化をすることで、解決に向かっています。
人手不足や属人性を防ぐために、ドローンやセンサーを利用した効率化が行われています
データを活用し、勘や経験に頼るのを防ぐため、IOTセンサーを導入し農場や農作物の状況を把握します。
これは、農林水産省が2025年までに全国の農家に普及させるということを公言するほど、力を入れて進められています。
農業は、早急な対策が必要な業界の一つなので、DX化が期待されています。
まとめ
今回の記事内では、「物流におけるDX」の定義から、DXを実現できる領域、「物流におけるDX」の成功事例、行政機関の取り組み、そして導入に至るまで紹介してきました。
さまざまな事例を通して、「物流DX」に対する知識が深まったかと思います。また、中国企業と比べて、日本の物流業界は遅れをとっていると感じた方もいらっしゃるかと思います。
ポストコロナ、ウィズコロナの時代で、DXの導入は物流業者の明暗を分ける重要な要素となっていくでしょう。
この記事を読んで、物流DXに興味を持った方は「スマート物流EXPO」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
▶DX推進とは?|指標や課題・企業事例をガイドラインに沿って解説した記事はこちら>>
▶DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントはこちらで詳しく解説しています>>