今回の記事では、AIのレベルについて紹介します。私たちの身の回りにあるAIは、仕組みが単純なものから複雑なものまでさまざまな種類があり、それらには「レベル」として区分が設けられています。
身の回りのAI製品がどのレベルに属しているのか、あるいはさらに上のレベルのAIが誕生することはあり得るのかなど、興味深いトピックを取り扱います。
目次
AIとは
AI(人工知能)という言葉には、さまざまな意味や定義が込められています。AIを簡単に説明すると、「計算という手法を用いて知能を実現する」技術のことです。
▼AIについて詳しく知りたい方はこちら
AIのことを説明する際に、より直感的に「知能を持ったコンピュータ」と言われることもあります。今回の記事で問題にしたいのは、その「知能」とは何であるかということです。
AIにはレベルがある
AIの知能の能力やできることに応じて、AIにはレベルが設けられています。レベル1から4までの区分があり、数字が大きくなるほどより複雑な仕組みを採用しています。
次の章では、それぞれのレベルのAIについて詳しく紹介していきます。
AIのレベル1~4について解説
AIは、処理の仕組みや採用しているアルゴリズムに応じて4つのレベルに分けられます。レベルは以下の通りです。
それぞれ解説していきます。
レベル1:単純制御アルゴリズム
まずは最も単純なAIである「レベル1」について紹介します。レベル1のAIは、現在のAI技術からするともはやAIとは呼べないくらい単純な制御プログラムです。
制御プログラムは条件分岐で構成されていて、大抵は入力に応じて単純な出力を行います。このことから、AI研究は制御工学の研究の一分野からスタートしたと言えます。
▶AIのアルゴリズムとは?|図を用いてわかりやすく解説!>>
レベル1の実用例
レベル1のAIは、私たちの身の回りに溢れています。AI搭載家電という言葉を聞いたことはないでしょうか。家電製品で「AI搭載」という場合、たいていはこのレベル1のAIのことを指しています。
例えば、AIを搭載した冷蔵庫は収納してある食材の種類やユーザーの生活パターンに合わせて冷却を自動制御します。また、AI搭載のエアコンは、ユーザーの位置や外の天気に合わせて風量や設定温度をコントロールします。
▶関連記事|AI搭載の冷蔵庫についてはこちらの記事で詳しく解説しています>>
▶関連記事|AI搭載の洗濯機についてはこちらの記事で詳しく解説しています>>
レベル2:ルールベースの推論プログラム
レベル2のAIは、レベル1のAIから一歩先に進んで、入力に応じて複数の行動パターンの中から次の振る舞いを自ら選択するAIのことを指します。
このような振る舞いをするAIを、ルールベースのAIと言います。事前に設計された行動パターンが「知識」として集積されていて、レベル2のAIは入力に応じて推論や探索を行います。
この意味で、レベル2のAIは自ら思考しているように映るため、一般的なAI(人工知能)のイメージに近いです。
レベル2の実用例
レベル2のAIの代表例は、質疑応答システムです。質疑応答システムとは、日本語や英語などの自然言語で質問と回答のやり取りが可能なシステムのことです。
質疑応答システムは、IBMの開発した「Watson」がアメリカのクイズ番組Jeopardy!で優勝したことで話題になりました。
▶IBM Watsonとは?|AIとの違い・できること・活用事例を解説!>>
レベル3:機械学習
レベル3のAIは、機械学習という仕組みによって学習するAIです。
レベル1やレベル2のAIは入力に応じて決まった出力をするようにルールが人間によって設定されていますが、レベル3のAIは自らデータのパターンを見つけ出して入力に応じた出力を調整します。
レベル3のAIは、AIが学習の際に参照するデータの特徴量を人間が設定する必要があります。そのため完全に自律した学習を行うわけではありませんが、レベル2のAIに比べるとはるかに多様な出力ができます。
▼機械学習について詳しく知りたい方はこちら
レベル3の実用例
レベル3のAIの代表例は、検索エンジンです。私たちが検索窓にキーワードを入力して検索を行うと、検索結果の記事がまとめて表示されます。
検索エンジンに搭載されたAIは、どの記事を上位に表示させて、どの記事を表示させないのが適切なのかを判断しています。
検索エンジンのAIは、ビッグデータと呼ばれる超巨大データ群を参考にしながら、ユーザーのニーズに合った検索結果を調整して表示します。この技術には、機械学習が使われているのです。
レベル4:深層学習(ディープラーニング)
レベル4のAIは、深層学習という仕組みによって学習するAIです。レベル3のAIと大きく異なる点は、特徴量の調整を含めた学習の過程を自ら行えることです。
深層学習は、機械学習に比べてはるかに多くのデータを処理できます。これにより、従来は技術的に不可能だったAI活用の多くが実現化に成功しました。
▼深層学習(ディープラーニング)について詳しく知りたい方はこちら
レベル4の実用例
レベル4のAIの代表例は、自動運転技術です。自動運転とは、乗り物の操縦を人間の手によらず、機械が自ら行う技術のことです。近い将来にその実現が期待されています。
自動運転技術に用いられるAIは、目の前の車や人間の動きを予測し、また目の前の障害物の種類も瞬時に判定しながら運転を続けます。
そのためには、大量のデータを一瞬で計算しなければならないため、従来の機械学習では困難とされてきましたが、深層学習技術の発達によって部分的に実用化されています。
▶関連記事|自動運転とは? 各レベル説明と15の実例を紹介>>
▶AIの活用事例について詳しくはこちらの記事で解説しています>>
AIのレベルの歴史
次に、AIのレベルの歴史について紹介します。AIの歴史では、技術革新のたびにブームが起こりました。
これまでに起こったAIブームは以下の3つです。
この章では、上記のブームとAIのレベルの関係について解説していきます。
▶関連記事|【7分でわかる】AI研究、60年の歴史を完全解説!>>
第1次AIブーム
もっとも単純なレベル1のAIは、AI黎明期に考え出されました。AIという名前が考え出されたのはこの第1次AIブームです。
1950年代から60年にかけての第1次AIブームでは、単純な推論と探索のプログラムに対する研究が盛んに行われました。しかし、すぐに技術の限界にぶつかってしまいます。
いわゆる「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」しか解けないAIを社会に応用することは難しく、アイデアだけが出て技術が追いつかない事態になり、次第にAIのブームは終息していきました。
第2次AIブーム
レベル2のAIの考案によって起こったのが、第2次AIブームです。1980年代になると、「エキスパートシステム」というAIが盛んに開発されました。
エキスパートシステムは、医学や法律などの専門的な知識を網羅的に入力することで、まるで専門家(エキスパート)のように振る舞うシステムのことです。
しかし、エキスパートシステムには未知のデータに対する対応ができないという欠点がありました。レベル2のAIでは、あらかじめ教え込まれた対応以外のことをするのが難しく、人間の持つ曖昧さに対する対応ができません。
こうして、第2次AIブームは終わりを迎えました。ただし、AIに対する研究が盛んではなくなったわけではありません。レベル3のAIなど、AIが自律的に学習をして未知のデータに対応できる技術の開発は着々と前進していきました。
第3次AIブーム
そして、レベル4のAIに用いられている深層学習によるブレイクスルーによって、第3次AIブームが巻き起こりました。
一般的に、このブレイクスルーは2012年の画像認識の世界大会で深層学習モデルを用いた研究チームが圧倒的な成績で優勝を納めたことから始まったとされています。
第3次AIブームによって画像認識や音声認識、自然言語処理など、AIが用いられる技術の幅が大きく拡大しました。
また、人間の能力を超えた将棋や囲碁のAIや自動運転技術など、これまでには考えられなかったような衝撃的な技術も開発されました。
▶関連記事|音声認識の活用事例について詳しく知りたい方はこちら>>
▶関連記事|自然言語処理について詳しく知りたい方はこちら>>
▶関連記事|ボードゲーム界最強はAI?−AlphaGoの凄さとは>>
おわりに
今回の記事では、AIのレベルとその歴史について紹介しました。私たちの身の回りにあるAIは、とても単純な仕組みのものから深層学習のような複雑なものまであることがわかります。
また、レベル1~4のAIがAIブームにどのように貢献しているのかを調べてみると、色々と興味深いことがわかります。
将来のAIブームやレベル5のAIがどのようなものになるのか予測してみるのも面白いでしょう。