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「不動産業界におけるDXの現状は?」 「不動産業界でDXを成功させるポイントは?」 「不動産業界でDXを実現するために導入すべきツールは?」 |
このように、不動産業界におけるDXについて詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
しかし不動産業界では、社内におけるDX推進・IT技術による業務効率化が推進されています。
今回の記事では、コロナ禍で注目されている不動産業界におけるDXの現状から、不動産DXに活用できる厳選ツール5選まで解説します。
▼DXについて詳しく知りたい方はこちら
目次
コロナ禍で注目されている不動産業界のDXの現状と課題
以下は社内におけるDX推進の目的を示した図です。
全体の90%以上が何らかの方法で「DX推進をしている」と回答しました。2020年6月に不動産テック6社・1団体が実施した不動産業界のDX意識調査で同回答したのは約60%で、回答率で比較すると、DX推進は1年間で約1.5倍も拡大しています。
DX推進の目的としては、「業務効率化」が最多数で約85%に上ります。昨今のリモートワーク・非対面接客の増加で、Web会議システム・電子契約システム導入が進んだことが背景に挙げられます。
新型コロナウイルスの影響でデジタル化の動きが加速する中、不動産業界においても、業務効率化・生産性向上のためのビックデータ活用・DX推進が大きな課題として掲げられています。
▶DX推進とは?|指標や課題・企業事例をガイドラインに沿って解説した記事はこちら>>
不動産業界のDX導入企業は約50%以下
株式会社イタンジが115社の不動産業界を対象に行なった「DX意識調査アンケート」の結果を見ると、全体の約60%がDXに既に取り組んでおり、残り約40%がまだ取り組んでいないことが分かります。
特に企業規模別では、100人以下規模企業の約50%以上がまだ取り組んでいない・取り組む予定なしという結果で、理由としては「知識・ノウハウを持っていない」「人的リソースが足りない」という回答でした。
不動産販売におけるDX推進の必要性をしっかりと理解し、効率的に進めていく必要があります。
DX化を阻むアナログ体制
不動産業界のDX化は急務とされているものの、現状のアナログ体制を変革するためには中長期的な期間が必要です。
売買・賃貸物件の契約に至るまでの過程でツールを有効活用し、業務効率化を実現するまでにはあと3~5年はかかるという声もあります。また、不動産業界では紙の接客・契約資料などが実際の現場で多く使われています。
アナログ業務に依存している場合、将来的に業務が立ち行かなくなる可能性があります。また、高齢化による離職・新卒人材の減少で働き手が今よりも減少する可能性もあります。
しかし、急激なペーパーレス化・集客ツールを活用するといった変化は現場の混乱を引き起こしかねません。DXの必要性を上層部から現場の従業員までしっかりと理解し、現状の体制を少しずつ変革していく必要があります。
▶DXの必要性4つ《初心者必読》|3つの成功事例や推進方法も徹底解説>>
不動産業界のDX推進メリット3選
不動産業界でDXを推進するメリットは以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
業務効率化による働き方改革
また、オンライン業務を増加させれば対面での接客のために外へ出る機会が少なくなり、自宅からでも仕事ができるテレワーク環境の整備にも活躍するといえます。
▶DXで働き方改革を実現するには?実現までの4つのステップから事例まで紹介>>
バーチャル内見などによる新規顧客獲得機会増加
DX推進によって、新たなビジネスチャンスの創出が可能です。例えば、バーチャル内見などによって遠隔地の見込み客への営業をすれば新規顧客獲得機会を増加させられます。また、Webコンテンツ拡充で問い合わせ増加・オンラインでの接客を実現できます。
DX推進は既存のビジネスモデルを大きく変化させると同時に、企業利益へ繋げるきっかけになります。
▶【徹底解説】営業DXの導入方法|営業DX成功のポイントや事例を紹介>>
人材不足の解消
DXによって業務負担を軽減できれば必要な人手を減らせます。現在よりも少ない人数で業務を遂行できれば、結果的に人材不足解消に繋がります。
また、働きやすい環境を整備は誰もが働きたいと考える職場づくりに貢献・優秀な人材を集めやすくなります。
不動産DX推進委員会の取り組み
ここからは、不動産DX推進委員会の主な取り組みとして、「不動産取引の重要事項説明の電子化」と「不動産履歴情報の一元化・有効活用」の2つを紹介します。
不動産取引の重要事項説明を電子化に
DX不動産推進協会は不動産取引の全面電子化、生活の住生活環境・利便性向上を目的に設立されました。
また、2021年4月より国土交通省は権利関係や浸水のリスクなどを説明する「重要事項説明」と呼ばれる手続きの電子化を認めました。
他にも、電子署名の活用・BIMによる住宅履歴情報の設計・物件情報のID統一化・不動産履歴情報の整備などを進める方針です。
不動産履歴情報の一元化・有効活用
不動産履歴情報の一元化・有効活用は業界のDXにおいて重要です。
顧客データ・業務ノウハウなど、あらゆるカテゴリーの社内情報を一元管理できれば、問い合わせ処理などの業務全般が効率化されます。
また、履歴情報の有効活用によって新たなビジネスモデル創出に繋がる可能性も大いにあるため、不動産業界のDXで不動産履歴情報の一元化・有効活用の推進は必要不可欠といえます。
不動産テック協会の取り組み
不動産業界でDXを推進するにあたって、不動産テック協会の取り組みには着しておきたい点です。ここでは不動産テック協会の取り組みを紹介します。
不動産テック協会とは
まずは、不動産テック協会について説明します。
正式名称は、「一般社団法人不動産テック協会」です。
不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産に係る事業並びに不動産業の健全な発展を図り、国民経済と国民生活の向上並びに公共の福祉の増進に寄与することを目的として発足されました。
上記に挙げた目的に資するため、次の事業を行っています。
- 不動産テック(不動産×IT)業務に関する調査研究及び情報発信
- 不動産テック(不動産×IT)業務の標準化及びルールの確立
- 不動産テック(不動産×IT)従事者等の育成・指導
- ビジネス機会創出のための各種活動
- 国内外の関連諸団体等との情報交換や連携・協力のための活動とイベント開催
- 国及び地方公共団体等に対する協力並びに建議及び要望
- 前各号に掲げる事業に附帯又は関連する事業
不動産テックのカオスマップ
不動産テック協会では、不動産テックのカオスマップを公表しています。
以下のカオスマップは、2021年7月に公表された第7版のカオスマップです。不動産業界において、サービスや商品を提供する事業者を集めているため、今後不動産業界でDXを推進する上で活用してみましょう。
不動産業界におけるDXの成功事例3選
ここからは、不動産DXの成功事例として以下の3つを紹介します。
それぞれ解説していきます。
【成功事例1】三井不動産:AIカメラ導入でオンライン内見をスムーズに
- 以前までは直接の内見のみの対応・遠方のお客様への対応が課題
- →AIカメラ「OPTiM AI Camera」を導入
建物内の状況を離れた場所からチェック、入店者の数や性別、年齢層などのグラフ化でオフィスビルの内見をスムーズに
引用:住宅研究所公式ホームページ「注目のDX!不動産業界のDX事例と特徴を徹底解説」
【成功事例2】あいホーム:バーチャル展示場でのノーコード戦略で契約数が128%増に
- コロナ禍で展示場への来場者が通常の半分程度まで落ち込む
- →バーチャル展示場オープンでスマホ内見可能に
昨年の4月と比較すると契約数は18件から20件に増え、5月は昨年11件だったのが16件まで伸びる
契約数が128%増に
引用:NoCodeメディア「【不動産DX成功事例】あいホームのバーチャル展示場で契約数が128%増になったノーコード戦略とは」
【成功事例3】スペースリー:VR技術によるオンライン内見を実現
- ブラウザ上から賃貸物件のパノラマ画像を閲覧できるオンライン内見サービスを開発
- 検討者の体験を向上させるだけでなく、クリック・滞在時間を集計
→どの部屋や写真にユーザーが興味を持ったかを計測し、物件の成約率や反響の向上を実現
引用:NOC公式ホームページ「【業界別】デジタルトランスフォーメーションの事例36選とDX推進のポイント」
【成功事例4】上総屋不動産株式会社:電話対応の質が向上
- 電話の内容がわからない恐怖心や取次ミスなども生じており、電話の分析方法も専用のメモを配布して、メモの内容を毎日エクセルに入力というアナログな業務を負担に感じていた
- →電話での対応に限界を感じていたところで、カイクラ(通話自動録音、音声テキスト化、発着信履歴、
顧客情報管理、SMSが1つになったCTIツール)を紹介されて導入し、電話対応の負担が低減され、電話対応の質が向上
参考:デジタルトランスフォーメーション(DX)が不動産業界にもたらす効果とは?導入すべきメリットと成功事例を徹底解説。カイクラ
【成功事例5】GA technologies:DX銘柄に認定
- 経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「DX調査2020」においてDX銘柄に認定
- →資料や契約書作成、電話・FAXなどのデジタル化や、投資用ローンの申し込みや審査のオンライン化など、不動産取引プロセスを包括的にデジタル化したことをはじめ、完全非対面での不動産販売による優れた顧客体験の提供など、不動産業界の中では他社に先行して圧倒的な優位性を発揮
参考:不動産業界におけるDXの必要性とは? 課題や導入のメリット、成功事例を徹底解説!営業ラボ
【成功事例6】ヒロ・コーポレーション:電話業務を効率化
- 繁忙期における物件確認の応対時間増加が問題視されており、サービスの向上における大きな足枷に
- →電話対応の自動応答サービスの導入により、入電の6割は自動で対応ができ、電話対応にさいていた時間を別のコア業務に充てられるようになったため、多くの成約と集客、働き方が改善
参考:不動産業界におけるDXとは?導入のメリットと成功事例 コボット
▶DXの成功事例はこちらの記事で詳しくまとめて解説しています>>
三井不動産の2020DX白書からみるDX推進
三井不動産の2020DX白書では、DX推進において顧客満足度向上・社会課題の解決を目指す「事業変革」と、生産性・従業員満足度向上のための「働き方改革」、それらの実現のために整備すべき「推進基盤」の各領域について、それぞれの注力テーマ・推進事例をまとめています。
主な内容は以下の通りです。
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「働く」「住まう」「楽しむ」といった人々の行動を起点としたサービスの実現にはDX推進が必要不可欠であると捉え、現在のDX進捗状況・注力テーマを著しています。
▶【DX白書2021】IPAが日本企業におけるDX動向を解説した『DX 白書 2021』を無料公開>>
三井不動産のDX推進事例
ここからは、三井不動産のDX推進事例として以下3つの事例を紹介します。
それぞれ解説していきます。
【推進事例1】ICTを活用したサテライトオフィス・サービスで、顧客の新しいワークプレイスづくりを支援
- 「ワークスタイリング」でのICT活用
- →例:従業員はWebページから手軽に会議室・個室を予約可能
- LINEミニアプリ(サービスをLINE上で提供できるウェブアプリケーション)を開発・より簡単にチェックイン可能
- テレワークに適したWEB会議対応の個室を利用したいできる個室特化型サテライトオフィスを開発
【推進事例2】ICTを活用した物流ソリューションの提案実施
- 需要が高まる一方で人手不足が深刻な物流業界において自動化・効率化は必須
- →物流施設と合わせてICTを活用したソリューション提案を実施・顧客の課題解決を目指す
- 物流ICT体験型ショールーム「MFLPICT LABO 2.0」をオープン・人の手を一切介さない「フルオートメーション物流モデル」を展示
【推進事例3】最新ICT技術を活用した次世代型ホテル「sequence」
- 感度の高いゲストに自由な時間と過ごし方を提供・「やさしいつながり」の理念のもと『SMART』『OPEN』
- 『CULTURE』の3つをコンセプトとした次世代型ライフスタイルホテル
- →ゲストはアプリ上で事前登録。顔認証・非対面でのセルフチェックイン等が可能
- 顔認証ひとつでチェックインから鍵の開錠まですべて行える施設は日本初
- 宿泊者専用「セルフクローク」の開閉にも顔認証システムを採用・よりスマートなホテルステイを提供
引用:三井不動産株式会社公式ホームページ「2020DX白書(サマリ版)」
▶注目のDX推進企業《事例あり》|コロナ禍のDX推進企業・推進ポイントも解説>>
不動産業界でDXを成功させるポイント3選
不動産DXを成功させるポイントは以下の3つです。
それぞれ解説していきます。
DXに関する方針や重要性を社内全体で理解する
DXの推進には各事業部の協力だけでなく、経営トップの変革意識が必要です。どのような価値を生み出し現状の体制を変革するのかを明確にし、社内全体の意識を変えていかなければなりません。
DXの推進はすぐに成功するものではなく、中長期的な期間のプロジェクトになることを見据え、全社を挙げてDXに関する方針や重要性の理解に努めましょう。
IT人材を確保する
企業ではIT人材が不足しているケースが多いため、DX推進に精通したIT人材の確保・育成が重要です。
また、DX推進に関わる人材は適材適所に配置する必要があります。DXに関する豊富な知識・経験を有した人材が確保できても、上手く能力を発揮できなければ改革を進められません。
DXを成功させるためには、IT人材の育成・確保はもちろんのこと、プロジェクトに沿ったシステムを構築するために必要なIT人材を適切に配置する必要があります。
▶【DX人材】 6つの業種、4つのスキル、3つのマインドセットについてはこちらの記事で詳しく解説しています>>
▶DX人材の育成方法や育成のポイントを詳しく知りたい方はこちら>>
PDCAを早く回し業務効率化に繋げる
PDCAを早く回せば、現状の体制の問題点を早期に発見・改善行動に繋げられます。
システムを導入後、気づけば最新のシステムが古くなり、競合他社に追い抜かれていることも少なくありません。取り組み後常に問題点を改善し、新たな技術を取り込む必要があります。
不動産DXにおすすめ!厳選ツール5選
ここからは、不動産でDXを推進する際におすすめのツールを紹介します。今回紹介するツールは以下の5つです。
それぞれ解説していきます。
いえーるダンドリ
住宅ローン業務効率化サービスです。
住宅ローン関連業務の時間を25%削減。営業活動に専念可能。メガバンク、地銀、信金、フラットなどお客様の与信力に合わせ最適な金融機関を選別、住宅ローン審査手続きを進める。活用により住宅ローン業務の煩雑さや工期の遅れ解消・住宅ローンの集客活用などのメリットあり。
機能
- チャット機能
- スケジュール機能
- タスク共有機能
料金
お問い合わせ
Forest
仲介営業ツールです。
メールアドレス1つから顧客情報を管理できる機能を搭載。これまで使っていた顧客リストも簡単にアップロード可能なため、業務フローの切り替えやシステム移行もスムーズ。
お客さんの急な来店でも図面PDFをその場でサクサク編集可能。自前オビも自動で用意、大きさも異なる3パターンに対応。編集したファイルをPDFからJPEG、PNG形式に変換可能。
機能
- PDF編集
- AI-OCR・自動文字認識
- 顧客・物件管理
料金
- 個人向け無料プラン:0 円/月
- 個人向け有料プラン:8,000 円/月
- 小規模チーム向け有料プラン:15,200 円/月
SpaceCore
新築・既存、集合・戸建に関わりなく、すべての住居をスマートホーム化できるサービスです。
これからの住宅に必要なあらゆる設備や家電とスマートスピーカーとの連携はもちろん、セキュリティや子供の見守りまで対応しています。
機能
- スマートホーム機能
- 生活サービス機能
- リレーション機能
料金
お問い合わせ
SMSハンター
SMSハンターは、携帯電話・スマートフォンのSMS(ショートメッセージサービス)での見込み客長期追客に特化したサービスです。
見込み客の携帯電話に開封率の高いSMSでステップメールを送信し継続的にコンタクトを取り続けます。
また、問い合わせを受け付けるランディングページ(LP)もセット。電話を敬遠しがちなエンドユーザーでも、LPの問い合わせフォームからわずか1クリックで連絡できる工夫が施されています。
機能
- 不動産ビジネス向け原稿サンプルを300種用意
- 開封率90%以上のSMS配信
- ステップメールによる長期オート追客
料金
お問い合わせ
nomad cloud
あらゆる反響を取り込み即座にスマホアプリに通知するシステムです。
リアルタイム業者間サイト「ITANDI BB」と連携し、空室状況を自動チェック&日程調整メールを自動送信します。営業時間外の問い合わせに対する機会損失をブロック。また、顧客専用マイページ機能でポータルサイトへの離脱を防ぎます。
機能
- 顧客の行動ログ分析
- 反響の自動取り込み・通知
- 顧客専用マイページ機能
料金
お問い合わせ(無料で使用可能)
▶DXソリューションを提供している企業5社まとめ|特徴や事例も紹介>>
まとめ
今回は不動産DXについて解説しました。いかがだったでしょうか。
アナログ体制によるDXの遅れ・コロナウイルスの影響による売上減少が懸念されている不動産業界では、早急な「スマホだけで賃貸契約がオンライン完結できる」DX体制の構築が求められています。
自社の状況をしっかりと認識し、効率的にDXを進めていきましょう!
▶DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントはこちらで詳しく解説しています>>
◇AINOWインターン生
◇Twitterでも発信しています。
◇AINOWでインターンをしながら、自分のブログも書いてライティングの勉強をしています。