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2017.07.03

人工知能(AI)とは?定義や歴史など徹底解説!最新のAIがヤバすぎる。

AI(人工知能)の話題が連日のようにニュースに登場するようになりました。

富士キメラ総研の「2020 人工知能ビジネス調査」によると、2020年度の国内AIビジネス市場規模は、前年度比15.4%増の1兆1084億円に拡大すると見込まれています。

また、2021年度以降はDX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な要素として、AIの利用がさらに拡大し、2025年度には2019年度比2.0倍の1兆9357億円になると予測されています。

しかし、まだAIの活用は十分に進んでいるとはいえない状況です。2020年3月に実施されたIT専門調査会社 IDC Japan 株式会社の「日本企業のAIシステム利用率」に関する調査によると、AIシステムを全体的に利用している企業は16.0%に留まっていると報告されています。

みなさんはAI(人工知能)について、どのくらい知っていますか?機械学習やディープラーニングとAIの違いがわかりますか?

近い将来、AIが仕事を奪っていくというネガティブな意見まで散見される今、しっかりAIについて理解し、活用を進めることが大切です。

この記事では、そもそもAIとは何なのか、その歴史、活用事例まで幅広く解説します。

目次

AI(人工知能)とは

AI(人工知能)の定義|”AI”とは何の略

そもそもAIとは何なのでしょうか。実は、AIの定義は専門家の間でも定まっていません。

そのため私たちAINOWでは、AIを「人間のような頭の良さを連想させるなんとなく賢いシステム」程度の認識にとどめつつ、要素技術として機械学習やディープラーニングなどの定義を理解することに重点を置いています。

続いて13人の専門家のそれぞれのAIの定義を表にまとめて紹介します。

研究者(所属)
※敬称略
定義
中島秀之(公立はこだて未来大学)

武田英明(国立情報学研究所)

人工的につくられた、知能をもつ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能全体を研究する分野
西田豊明(京都大学) 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である
溝口理一郎(北陸先端科学大学院) 人工的につくった知的な振る舞いをするためのもの(システム)である
長尾真(京都大学) 人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである
堀浩一(東京大学) 人工的に作る新しい知能の世界である
浅田稔(大阪大学) 知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない
松原仁(公立はこだて未来大学) 究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと
池上高志(東京大学) 自然にわれわれがペットや人に接触するような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法制に関係なく、あるいは逆らって、人工的に作り出せるシステム
山口高平(慶應義塾大学) 人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム
栗原聡(慶應義塾大学) 人工的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人の超えているものを想像している
山川宏(元ドワンゴ人工知能研究所) 計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んで良いのではないかと思う
松尾豊(東京大学) 人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術。人間のように知的であるとは、「気づくことができる」コンピュータ、つまり、データの中から特徴量を生成し、現象をモデル化することの出来るコンピュータという意味である

(出典)松尾豊「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA)p.45

AI(人工知能)の種類とは

AI(人工知能)は「特化型人工知能」と「汎用人工知能」の2つに分けられます。

「人工知能を搭載!」「世界初!人工知能を使った○○」といったようなフレーズをよく耳にします。しかし、ここでいう人工知能という言葉は、定義が曖昧なまま「賢い」「人間のような振る舞いをしてくれる」というニュアンスで使われていることが多い現状です。

なんでもできるドラえもんのようなAI(人工知能)はまだ実現しておらず、AI(人工知能)の種類をしっかり理解して、正しく区別することが大切です。

特化型人工知能

特化型人工知能とは、1つのタスクに特化したAI(人工知能)を指します。

例えば画像を認識するAIは音声を認識できません。音声を認識するAIはテキストを認識することができません。1つのタスクに特化した特化型人工知能は、AlphaGo(囲碁AI)やPonanza(将棋AI)などが代表的です。

▶︎特化型AIとして代表的な囲碁AI「AlphaGo」について詳しくはこちら>>

現在では、人工知能関連の研究のほとんどが、この特化型人工知能の研究で、さまざまな分野で新たな取り組みが行われています。

汎用人工知能(AGI)

汎用人工知能は、簡単に言うと「なんでもできる人工知能」のことを指し、AGI(Artificial General Intelligence)とも略されます。

特化型人工知能は1つのタスクに特化し、それ以外のタスクをこなすことができませんが、汎用人工知能は与えられた情報をもとに自ら考え、応用することができる人工知能です。

まさに「人のようなふるまいをする」イメージで、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」のように、まるで人間のようなロボットを想像する人も多いでしょう。

汎用人工知能が完成した時、シンギュラリティが起きるといわれており、汎用人工知能が人間最後の発明になるとも言われています。

汎用人工知能の実現可能性については、さまざまな思想家が独自の考えを展開しています。未来の技術革新について的確に予測ができないなか、さまざまな意見を踏まえた上で、自分なりの見方を持つことが重要です。

▶︎AI思想家について詳しくはこちら>>

強いAIと弱いAI

AI(人工知能)は「強いAI」と「弱いAI」にも分類できます。これらの言葉は哲学者のジョン・サール氏によって作られました。

ジョン・サール氏によると、強いAIとは、「正しい入力と出力を備え、適切にプログラムを与えられたコンピュータは問題を本当の意味で理解することができる。それは人間と同じように意識・思考を持っている」と定義されています。

強いAIは、人間のように自意識を備える人工知能とも言えるでしょう。「ドラえもん」や「鉄腕アトム」は強いAIとも言えます。

一方、弱いAIは「意識・思考を持たない人工知能」と定義されます。特化型人工知能と同じように、人間の知性の一部を代替し、特定のタスクに特化しています。

現在開発されているAI(人工知能)は意識を持っているものはなく、弱いAIに分類されます。

人間と「強いAI」、「弱いAI」の知能レベルを可視化すると以下の図のようになります。

強いAI」は汎用人工知能に近い概念で、「弱いAI」は特化型人工知能に近い概念とも言えます。

強いAIと弱いAIの知能レベルの比較

AI(人工知能)の歴史

現在、さまざまな産業領域でAI(人工知能)を活用したモノやサービスが普及してきています。

その中でも私たちの身近にあるAI(人工知能)と言えば、SiriやAlexaなどの「スマートスピーカー」や、自動で家の間取りを学習して効率よく掃除を行う「お掃除ロボット」などがあります。

最近ではAIを活用した自動運転車が話題になるなど、生活の中で人工知能に触れる機会は多くなっていることが実感できると思います。

それでも、「AIに関するニュースをよく耳にはするけど、あまりピンと来ない」という人がほとんどではないでしょうか。そこで、AI(人工知能)について歴史からひも解いていきたいと思います。

AIの歴史(第一次AIブーム〜第三次AIブームまで)

(出典)松尾豊「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA)p.61

第一次AIブーム:推論・探索の時代(1950年代後半~1960年代)

この時代、コンピュータで「推論・探索」をすることによって問題を解決する研究が進んでいました。

「コンピュータが推論・探索する」とは、人間の思考回路を記号で表現して実行することや場合分けして問題に対する解を求めることを意味します。

1950年代後半〜1960年代にかけて、推論・探索を行うコンピュータが迷路や定理の証明など知的で難解な問題を解くようになったことから、第一次AIブームが起こりました。

それに伴い機械翻訳などの研究も盛んに行われるようになります。

しかしこの時代にAIが解けたのは、迷路からの脱出やパズルを解くなどといった単純かつルールが明確な問題のみでした。

現実の問題にはルールが不明確なものが多く、当時のAIでは扱えませんでした。このことが発覚したことでAI(人工知能)に対する失望感が増し、1970年代には冬の時代(人工知能技術が停滞する時代)に突入してしまいます。

 第二次AIブーム:知識をいれると賢くなる(1980年代)

エキスパートシステム」の開発・導入がきっかけとなり、1980年代に第二次AIブームが起こりました。

エキスパートシステムとは特定の分野の知識をルールとしてコンピュータに教えておき、その知識に基づいて専門家のように判断を下すことを目標としたシステムです。

エキスパートシステムは、現実的な問題が処理できなかった第一次ブーム時のAIの問題点を解決する画期的なシステムに見えましたが、AIには「常識」がないという新たな問題に直面します。

例えば、「熱を下げるにはどうしたらいいか」という質問に対して、「常識」のないAIは「解熱剤を飲ませる」または「殺す」と答えてしまいます。確かに死ぬと体温は下がりますが…。

これは、当時のAIに命を守る必要があるという常識が備わっていないためにこのような解答が導き出されてしまったのです。

人間の持つ膨大な常識をルールとして整備することはほぼ不可能なため、エキスパートシステムを導入してもAIの実用化には程遠く、第二次AIブームは収束しました。

 第三次AIブーム:機械学習・深層学習技術の発展(現在)

過去2回のブームは、共にAI(人工知能)の本質が見えないまま去っていきました。

しかし、機械学習の一部であるディープラーニング(深層学習)技術が発展したことやビックデータが普及したこと、計算機(CPUなど)の能力が向上したことなどをきっかけに、2006年から現在にかけて第三次AIブームが起きています。

中でもディープラーニングは、AIの目標である「自ら学習し、推測する」ことを実現できる技術として大きな注目を浴びており、ビッグデータのような膨大なデータの中からAI自らがデータの特徴やルールを見つけ出すことができます。

ディープラーニングの発展により、画像や映像、音声から情報を抽出したり、音楽や文字を生成したりすることが可能となったほか、従来人間が設定していたデータを分析するための特徴やルールをAI自身が設定するというブレークスルーが起こりました。

現在、第三次AIブームは徐々に去りつつありますが、ディープラーニングがこれからのAIの発展に大きく関わってくることは間違いないでしょう。

▶︎AIの歴史について詳しくはこちら>>

▶︎AIの歴史をまとめた年表はこちら>>

AI(人工知能)と機械学習、ディープラーニングとは

機械学習やディープラーニングなどの技術について解説する前に、AI(人工知能)と機械学習、ディープラーニングの関係性について解説します。

簡単に説明すると、機械学習はAIの1つの要素技術であり、ディープラーニングは機械学習の1つの要素技術です。

機械学習とディープラーニングが同列に扱われることもあり、注意が必要です。

AI(人工知能)と機械学習とディープラーニングの関係性

機械学習とは

ここからは機械学習について説明します。

機械学習は与えられたデータ(問題)を基にプログラム自身が学習する仕組みになっており、大まかに「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに分類することができます。

教師あり学習、教師なし学習、強化学習の比較

教師あり学習

教師あり学習」は「データ」と「問題の正解」のセットを与えることによって自律的にその特徴を学習する仕組みです。

過去のデータから未来の数値を予測する回帰と画像に何が写っているかを判別する分類などが、教師あり学習の代表的な手法です。

回帰では、将来の売上など数値の予測、分類では、分類ではカメラ映像からの人物の検知など、現在でも活用が進んでいる機械学習の手法と言えます。

教師なし学習

教師なし学習」は、「教師あり学習」のように正解データを必要としない学習方法です。

主な手法として、与えられたデータの傾向を分析することができるクラスタリングなどがあります。

クラスタリングのイメージ

例えば、ユーザーがショッピングサイトで買っているものの傾向を導き出すなど、情報の可視化に使われるケースが多いことが特徴です。

強化学習

強化学習」は与えられた問題に対してAI(人工知能)が試行錯誤をすることにより、問題を解決する行動を学習する手法です。

強化学習では、AI(人工知能)の行動結果に報酬を設定することで、その報酬が最大化するように行動パターンを自律的に学習します。イルカなどの動物に芸を覚えさせる際に、芸が成功したときだけに餌(報酬)を与える考え方に近いでしょう。

最近では、強化学習とディープラーニングを組み合わせた手法「深層強化学習(DQN:Deep Q Network)」なども主流で、囲碁AI「AlphaGo」が世界最強の棋士を破るに至ったのもDQNの仕組みを取り入れたことが一因となっています。

▼機械学習についてさらに詳しく知りたい方はこちら

ディープラーニングとは

ニューラルネットワークとディープラーニング

ディープラーニングは、機械学習分野でも、その精度の高さから世界的な注目を集めている技術です。今までの機械学習技術は、人間がデータ内の特徴を指定する必要があったのに対し、ディープラーニングは、特徴を自動で学習します。

そのため、エクセルデータのように構造化されたデータだけでなく、音声や画像、テキストなどの複雑な非構造化データも学習できる点が大きなメリットです。

ディープラーニングは、人間の脳の神経回路を模倣したニューラルネットワークをさらに発展させた技術です。

ニューラルネットワークの構造は、入力となるデータを入れる入力層、入力層から流れてくる重みを処理する隠れ層(または中間層)、結果を出力する出力層で構成されます。

神経細胞とニューラルネットワーク

ディープラーニング はニューラルネットワークの隠れ層をたくさん増やし、精度の向上を図ったモデルです。

隠れ層の数を増やすことにより、複雑なデータの学習を可能にしています。

ディープラーニングの画像認識の例

▼ディープラーニングについて詳しくはこちら

AI(人工知能)のメリット

判断の代替:労働力不足の解消

現在、日本では少子高齢化の影響により、日本の労働人口は減少を続けています。

帝国データバンクによると2021年、アフターコロナへと向かうなかで人手不足を経営上の課題としてあげた企業は30.6%に上りました。

(参照:人手不足に対する企業の動向調査(2022 年 4 月))

今後も深刻化すると予想される人手不足への対策として、AI(人工知能)の活用に注目が集まっています。簡単な判断が必要な人的な作業をAIに任せることにより、限られた人的資源を社内で有効に活用することができるかもしれません。

例えばアメリカでは、レジなしのコンビニ「Amazon Go」が大きく注目されました。Amazon Goは、カメラの映像をAIで解析してカゴの中身を判別し決済できるためレジ打ちの人員が削減できます。

このようにしてAIは人手不足の解消に役立っています。

▶︎Amazon Goについて詳しくはこちら>>

人間の拡張:サービスの新たな価値の創出

AIの活用を行う上で、単なる効率化だけでなく、新たな価値を創出するために、人間にできないことを代わりに行う「拡張」の考え方が重要です。

例えば、日本を代表するフリマアプリのメルカリは、商品画像を撮影すると、AIが自動で商品名・カテゴリ・ブランドを認識し、入力してくれる「感動出品機能」を搭載しています。

同システムは、何千人もの人間を雇っても不可能な処理で、まさにAIが人間の判断を拡張している例と言えるでしょう。

このようにAIの高度な処理機能を活用して新たなサービスを作り出すことができます。

AI(人工知能)のデメリット

責任の所在

AIのデメリットの1つとして、責任の所在が不明な点が挙げられます。

例えば、AIの誤認識によって自動運転車が事故を起こしてしまった場合、その責任はどこにあるのでしょうか?AIを作った企業なのか、自動運転車に乗車していた人なのか、これらは明確に法律で定義されていません。

今後は、AIの活用を見据えた上で、議論を重ね、法律の整備を進めることも重要です。

思考のプロセスが不明

AIには「ブラックボックス問題」が指摘されています。「ブラックボックス問題」とは、AIの判断の根拠やプロセスが見えない問題のことです。

2016年にAIがプロの囲碁棋士に勝った事例が有名になりましたが、思考のプロセスが見えないため、どのような根拠で判断し、AIがプロに勝つことができたのかは誰も分かりません。

雇用の減少

AIの技術が進歩していくことで、レジ係や事務員などの仕事は人間がやらなくても良いことになります。企業の中でも単純作業はAIが担っていくことになり、人員削減に繋がることが予測されます。

スーパーの店員や電話オペレーター、ホテルの受付係などルーティンワークや単純作業が中心で、特別なスキルが必要ない仕事は今後減少していくでしょう。

▶︎AIのメリット・デメリットについて詳しくはこちら>>

AI(人工知能)の活用事例 / サービス

AIを活用した事例やサービスについて以下の5つを紹介します。

これから詳しく解説していきます。

 自動で画像を生成する「Midjourney」

引用:midjourney

Midjourneyとはユーザが入力したキーワードをもとにAIがハイクオリティなイラストを生成してくれるサービスです。

Midjourneyは、CLIP誘導方式を用いて画像を生成しています。

CLIP誘導方式とはユーザが指定したキーワードとAIの生成した画像の違和感ができるだけ小さくなるように調整しながらイラストを完成させる技術です。

2022年8月に開催されたデジタルアートの品評会では、Midjourneyで生成された絵が1位に入賞するなどの功績も挙げており、Midjourneyの提供するイラストのクオリティの高さが伺えます。

優勝作品(引用:Colorado State Fairのツイート

自然な翻訳ができる「deepl」

引用:DeepL

deeplとは、ドイツのDeepL社が開発した高性能の自動翻訳サービスであり、他の翻訳サービスに比べても極めて自然な翻訳ができることから大きな注目を集めています。

deeplは、機械翻訳に適したデータをもとに教師あり学習を行って翻訳の品質向上に努めており、これから更に自然な翻訳が期待されています。

また、機械翻訳を行うために必要となる膨大な処理を分散型のネットワークを利用して行うことで、大企業にも負けない翻訳性能を発揮しています。

マスクのままでも自動で検温できる「SenseThunder」

引用:sense thunder

SenseThunderはサーモグラフィカメラと顔認証システムを組み合わせて検温や勤怠管理を行うサービスです。

AIを活用した高度な顔認識によりマスクをしたままでも検温が可能なため、効率的な感染症対策として注目されています。

同サービスは検温機能だけでなく、個人識別機能にも優れており、生体認証を利用するため成りすましができない勤怠管理システムとしても活躍しています。

AIが面接を担う「SHaiN」

引用:SHaiN

SHaiNは受験者と面接を行い、受験者が自社の求める素質をどれだけ有しているかを評価する面接用AIです。

企業にとっては面接が効率化できることに加えて、先入観や面接官ごとの評価のばらつきを是正して公平な面接が行えるという利点があります。

応募者側にとっても面接官がAIのため時間や場所の調整が非常に簡単になるというメリットがあります。

バーチャル環境で試着できる「ALTRM」

引用:ALTRM

ALTRMはユーザの3Dアバターを作成してそのアバターを用いてバーチャル試着体験ができるサービスです。

3Dアバターやアバターが試着する服のバーチャル化などの技術開発にはソフトバンクが関わっており、複雑な計算処理を要するバーチャル環境をスマートフォン上でも成立させる技術を実現しました。

バーチャル試着を行うことにより、購入前にサイズ感や着丈を確認できるため返品が減ることが期待できます。

バーチャル技術とAIを組み合わせてユーザにおすすめの服を選び出す取り組みも考えられています。

その他の事例

さまざまな分野で活用が進むAIは、膨大な事例やサービスが生まれています。

AINOWでは、AI関連のサービスをまとめた「AIサービスマップ」を公開しています。合わせてご覧ください。

・AIサービスマップについて詳しくはこちら>>

・AIの活用事例について詳しくはこちら>>

ビジネスにおけるAI(人工知能)とは?

ビジネスにおいて、AI(人工知能)の導入を進めるプロセスは主に以下の通りです。

  1. 課題を把握し、AIプロジェクトを企画する
  2. AIプロジェクトの要件を定義する
  3. 必要なデータを集め、精査する
  4. 実際にモデルを構築し、検証を行う(PoC)
  5. 本格的に開発を行う
  6. AIをシステムに組み込む

PwCコンサルティングが実施した調査によると、17%のAIプロジェクトしか実用に至らないと結果が報告されています。

AIプロジェクト実用の割合

「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」を元にAINOW編集部が作成

また、AIのプロジェクトを進める上で、どんな課題があるのかを理解することが大切ですが、約4割の企業が「課題が不明」を回答しています。

AI導入におけるフェーズ別の課題

「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」を元にAINOW編集部が作成

▶︎AIの活用についての調査結果はこちら>>

また、冒頭で紹介した通り、多くの企業ではまだAIの導入までに至っていません。

▶︎中小企業でのAI活用についての調査結果はこちら>>

もしかしたら、上司に「AIが流行っているらしい…とりあえずAIで何かしてよ」なんて言われるかもしれません。

以下の記事では、ビジネスにAIを導入する流れを紹介していますので、ぜひご参考ください。

・AIビジネスプランニングについて>>

・初心者のためのAI導入の教科書>>

DXへの注目の高まり ーDXとAIの関係性は?

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっています。AIなどの技術発展を背景に、デジタル技術の利活用が企業にとって事業拡大の鍵となっているからです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)はスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱し、「人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活がよい方向に変化する」という概念です。

また、日本経済産業省は2018年に「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しました。

▼DX(デジタルトランスフォーメーション)について詳しくはこちら

AI専門ニュースメディア AINOW
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https://ainow.ai/2020/10/13/228560/
日本最大級のAI・人工知能専門メディア

DXとAIの関係性

AIとDXの関係性

DXを推進する上で大切なのはさまざまなデジタル技術を複合させ、課題を解決し、会社全体を変革していくことです。人間がさまざまな機能で構成されているように、DXにおいても、さまざまな技術を適材適所で活用していく必要があります。

しかし、人間の脳が大切なように、AIがDXの中で果たす役割の重要性も高まっています。

DXでは、デジタル技術だけでなく「データの利活用」が重要視されています。

収集された膨大なデータをAIで認識・判断・予測をすることで、人的なコストを大きく下げ、事業のスケールアップが可能です。従来では、人的対応をしていたがために時間的な制約や効率性が悪かった作業が開放されるからです。

実際に、多くの企業では収集された膨大なデータを活用し、AIを用いることで、競争優位性を確立しています。

最新のAIの動向

AI業界はめぐるましいスピードで変化しています。今日、最新だった技術が明日には、時代遅れの技術になっている可能性もあるのです。

そのため、AI業界のビジネスマンや技術者たちは最新のAI技術や研究をキャッチアップしていく必要があります。

この章では、最新のAIの動向を3つ解説します。

エッジAI(AIのエッジ化)

エッジAIとはネットワークの末端となる手元のデバイスなどでAI処理を行う仕組みのことです。

クラウドに送る前にAI処理を施すことによって以下の3つの利点があります。

  • 通信コストの削減:処理をしてからクラウドに送るため通信コストが削減できます。
  • 遅延の少ない処理:クラウドに送らずに処理できるためリアルタイムで処理できます。
  • プライバシーリスクの低減:手元の端末で個人情報などを加工してから送ることができます。

エッジAIは製造業でのモニタリングをはじめとして自動運転やドローンの自動航行、AIスピーカーなど、さまざまな形で活用されており、IoTの普及によりますます注目を集めています。

例えば2022年6月には大宮駅の「JRE MALL Meet」という店舗でエッジAIを活用したオンライン接客が導入されました。

店舗に設置したカメラにAIを搭載して人が来たときに年齢や性別などを判断して店員に情報を送り、その情報をもとにオンライン接客を行います。

エッジAIを活用すれば、オンラインでもタイムラグなどの違和感がなく接客できます。

▶︎エッジAIについて詳しくはこちら>>

 コンテンツの生成

最近AI分野で注目を集めているのが、「AIによるコンテンツの生成」です。

例えば、AIが画像から動画を生成できるようになったり、AIが映画監督となって映像作品を自動生成したり、小説を書いたりなど、さまざまな部分でAIによるコンテンツ生成が進んでいます。

先ほど述べた「Midjourney」などもAIによるコンテンツ作成の例と言えます。他にも、イラストだけでなくWEBの記事に載せる文章を書くAIなども登場しています。

AIによるコピーライティングサービス「Jasper」は文章作成ツール「GPT-3」を応用して検索に引っかかりやすく、かつ人が書いたような自然な文章を生成してくれます。

多少の推敲は必要なものの、人間のライターに頼むより安価で手軽なため注目を集めています。

需要予測のニーズの高まり

AIによる需要予測の活用事例は、これまで多数ありました。しかし、近年さらに需要予測のニーズが高まりつつあります。

需要予測に活用されるデータは、売上や在庫数など、企業内でも蓄積されているケースが多い傾向にあります。また、需要予測による在庫や人員配置の最適化などによって、コストメリットがわかりやすく、多くの企業で導入されやすい傾向です。

変動が激しく、複雑化・多様化が進む現代のビジネス環境において、経験や勘を頼りにするのは困難になりつつあります。不確実性が増す今、あわせて需要予測のニーズがさまざまな分野に広がっています。

AI(人工知能)の未来

深層強化学習の発展

深層強化学習は、文字の通り深層学習(ディープラーニング)と強化学習を組み合わせた技術です。 画像認識や自然言語処理などの領域への適用が進むディープラーニング技術ですが、強化学習への適用事例はまだ多くありません。

一方で、AIの汎用性を大きく上げる手法として注目を集めています。汎用性を高めるとは、言い換えれば「環境に対応すること」を指します。練習を重ねて子供が自転車に乗れるようになったり、動物は環境に応じて複雑な行動をしています。

深層強化学習では、動物が環境に適応するように、ディープラーニング(特徴抽出)と強化学習(予測制御)を組み合せ、ロボット制御などの複雑なシステムの制御ができるようになります。

囲碁の場合では、盤面を認識し、その特徴を得た上で、次の一手を予測します。自動運転では、カメラやセンサーから取得したデータを元に運転操作を行わければなりません。

半教師あり学習の発展

半教師あり学習とは、少量のラベル付けされたデータを活用することで、その他の大量のデータを生かした学習を行える手法です。人間が「これは車だよ」と教えてもらった後に、何度も車を見ながら自己学習をしていくように、学習効率の高さが注目されています。

半教師あり学習ではまず、一部のデータに対して、人間が手動でアノテーションを行います。そのアノテーション済みのデータを用いて、残りのデータのアノテーションを自動で行ってくれる手法です。

例えば、人間の画像に対して、性別の判定を半教師あり学習で行うとします。まずは、人間がアノテーションを行います。続いて、アノテーション済みのデータから、「この特徴をもっていると男性、これだと女性に分類」と学習させます。そして残りの画像データのラベルを予測して、確信度の高いものをデータに加えます。(ブートストラップ法)

これがうまくいけば、教師データの作成において、コストの削減が可能です。

汎用言語モデルの発展

自然言語処理の分野では、汎用言語モデルの開発が進められています。Googleが発表したBERTや、アメリカの非営利団体 OpenAIが発表したGPTなどが大きく話題になりました。

これらの汎用言語モデルは、新聞記事や百科事典、小説、コーディングなどの膨大な言語データを学習させ、その上で少量のデータを用いて、再学習することで、高い精度の言語処理を実現可能です。

これらの汎用言語モデルは、新聞記事や百科事典、小説、コーディングなどの膨大な言語データを学習させ、その上で少量のデータを用いて、再学習することで、高い精度の言語処理を実現可能です。

国内ではLINE社が日本語初の汎用言語モデルを開発すると2020年11月に発表しています。

AI(人工知能)は人間を超える?シンギュラリティとは?

シンギュラリティとは2017年に人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士が提唱した言葉です。

AIが人間の知能を超える特異点のこと、もしくはその際に巻き起こるさまざまな変化のことを意味しています。

シンギュラリティがいつ起きるのかについてはさまざまな説がありますが、現時点では2045年であるとするレイ博士による説が有力です。

そもそもシンギュラリティが起きることを否定する意見もあります。

人工知能研究の権威であるジェリー・カプラン教授は2017年に行われた特別講義で次のように述べています。

Machines don’t have minds, and there is precious little evidence to suggest they ever will.

ー人工知能は心を持たない、そして将来的に心を持つことを示唆する証拠もほとんどない。

引用:Artificial Intelligence: Think Again

このように、シンギュラリティについては、専門家の間でさまざまな議論が交わされています。

▼シンギュラリティ関連する記事はこちら

・シンギュラリティとは?技術特異点による私たちへの影響を解説>>
・2045年問題とは何か?理論・根拠・反論まで>>

AI時代、私たちはどうすればいいのか

AIの導入があらゆるところで進み、私たちのライフスタイルや働き方が変わる「AI時代」が到来しつつあります。

そんなAI時代、私たちはどうすればいいのでしょうか。AIに仕事を代替されないために、そしてAIとうまく共存していくために、私たちには何ができるのでしょうか。

AIに関する知識をつける

AIとうまく共存していくために今やるべきこととして、AIの知識をつけることは最も合理的な手段だと言えます。

AIの基礎知識をつけ、普段から最新のAIニュースをキャッチアップしていれば、AI時代の到来にも柔軟に対応できるはずです。

また、豊富なAIの知識があれば、AIを使う側になれる可能性もあるため、より会社から求めれる人材になれます。

AIが苦手とされるスキルをつける

AIに仕事を代替されないために考えられるのが、AIの苦手分野のスキルを高めるという方法です。

人間にはできて、AIにはできない、難しいと言われるスキルを紹介します。

  • コミュニケーション能力
  • ITスキル、知識
  • 交渉力
  • 情報収集力
  • 積極性、行動力
  • 柔軟性
  • リーダーシップ
  • 洞察力
  • 創造力
  • 課題解決能力

※総務省の調査研究報告などを参照

これらのスキル生かした職業は、仕事として残る可能性が高いと考えられ、今後さらに需要が高まるかもしれません。

しかし、AI技術は加速度的に進化しており、今のAIできないことが数年後にはできるようになっている可能性もあります。そのため、AIに関する知識や最新の情報をキャッチアップすることが、ますます重要になってくるでしょう。

AI(人工知能)関連スキルの学び方

プログラミングを学ぶ

プログラミングを学ぶと、AI技術の一部である機械学習を実装・開発できるようになります。

プログラミング学習は、効率的にAIを学ぶこと可能で、仕事の幅を広げることにも繋がるためAIを学ぶ手段としてオススメできます。

Web系のプログラミング言語「Python」は、機械学習を構築する上で最も用いられる言語です。Pythonは他のプログラム言語に比べて、コードがシンプルで扱いやすいため、プログラミング初心者でも学びやすい言語となっています。

▼AI開発に不可欠なPythonの学び方について詳しくはこちら

▼機械学習入門者が学ぶべきこと、学習方法はこちら

AI(人工知能)関連の本で学ぶ

AIに関連したさまざまな書籍が発売されています。

以下の記事では、ディープラーニングに関連した書籍を中心に、AIについて網羅的に学べる書籍も紹介しています。

▼AI関連おすすめ書籍のまとめ

AI(人工知能)関連のWebサイトで学ぶ

現在、Pythonを学べるWebサイト、Webサービスがインターネット上に溢れています。無料でAIに関する豊富な知識を得られるサイトも多数存在します。

AI Academy

AI Academyは、個人に最適化されたカリキュラムで、PythonやAIを実践的に学べるAIプログラミング学習サービスです。機械学習に必要な数学や統計学、プログラミング(Python)の初歩から機械学習・ディープラーニングまで、390種類以上のオリジナルテキストが提供されています。無料プランもあるため、手軽にAIの学習を始められます。

キカガク

キカガクは、無料でデータサイエンスの基礎や機械学習の基礎などを学べるサイトです。TensorFlowやPyTorchなどのフレームワークまで網羅されており、初学者が最短でコスト0で学ぶには最適です。

Aidemy

Aidemyは、AIの学習に特化したオンライン学習サイトです。Pythonを中心に、CSSやHTMLなどのフレームワークも効率的に学ぶことができるので、プログラム初心者でも挑戦することができます。無料のコースも用意されているため、気軽に学習を始められるという点もAidemyの魅力です。

AI(人工知能)関連の講座を受ける

今、オンラインだけでなく対面式の講座や、学習サービスが多く提供されています。以下の記事を参考に、AIについて学べる講座をぜひ受講してみてください。

▼AIについて学べる講座まとめ

AI(人工知能)関連の資格・検定を受ける

AI関連の資格検定試験の受験もおすすめです。日本ディープラーニング協会が実施するG検定・E資格をはじめ、さまざまな資格検定試験が実施されています。資格検定試験のシラバスを網羅することで、体系的にAIについて学ぶことが可能です。

▼AI関連資格まとめ

・2020年度版AI関連の資格まとめ>>
・ディープラーニングに関するD検定について>>

AI(人工知能)関連の研究室で学ぶ

AINOWでは、AI関連の研究を行っている約300の研究室を地方別にまとめて公開しています。

AIについて学びたい方だけでなく、産学連携を模索している方も、ぜひご参考ください。

▶︎「AI Lab Map 2018」について>>

インターンで学ぶ

学生であれば、インターンでAI(人工知能)を学ぶというのもオススメです。インターンは実際の環境でAIを構築するスキルを得ることができたり、AIに関する幅広い知識をつけられたりするため、社会で使えるAI知識を最短で身につけることができます。

▶︎機械学習インターンについて詳しくはこちら>>

▶︎機械学習インターンまとめ>>

まとめ

活用事例に挙げたように、AI(人工知能)は既にさまざまな分野に活用され、成果を上げています。これからさらに研究が進むにつれ、幅広く利用されることは間違いないでしょう。それによって人間は仕事を奪われる、といったネガティブなイメージがありますが、ポジティブに捉えればやらなくてよい仕事が増えるとも考えられます。

AI(人工知能)が発達していくにつれ、世の中はさらに便利で住みやすくなっていくことでしょう。人工知能の今後の発展にますます期待が高まります。

参考書籍

  • 松尾豊(2015)『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』
  • KADOKAWA [参考書籍] AIビジネス研究会「60分でわかる!AIビジネス最前線」技術評論社