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この度の新型コロナウイルス(COVID-19)に関連する感染症に罹患された方々に謹んでお見舞い申し上げます。
中国湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウイルスは2019年12月以降、短期間で全世界に広がり続けています。新型コロナウイルス感染症に関する情報に関しては、厚生労働省のWebサイトなどをご参照ください。
この記事では、新型コロナウイルスに関連し、AI分野の企業の取り組みをまとめています。AI分野のさまざまな企業が新型コロナウイルスに対峙していることが伝われば幸いです。
目次
AI分野に徐々に影響を与える経済悪化の危機感
新型コロナウイルスの感染拡大に鑑み、2020年4月7日、安倍首相は緊急事態宣言を発出しました。これにより、国内でも自粛ムードが広がるとともに、経済の悪化が大きく懸念されています。
2010年代に入り機械学習技術(以下AI技術)への注目の高まりとともに、AI分野の研究開発が進んできました。これは、Webサービスの発展によるデータの増大から発したデータ活用の士気の高まりによるものでしょう。2020年現在、Web関連だけでなく多くの分野でデータ活用が見直され、そのデータを学習し、人間同等、もしくは人間以上に迅速で正確な精度を出すAI技術の研究開発費も増加の一途をたどっていたと言えます。
一方、緊急事態宣言下における外出自粛の広がりにより、大きく消費は低迷し、AI技術の活用が進んでいた多くの分野も経済悪化の影響を免れることはできません。
例えば、外食産業では、AI技術を活用した在庫量や来店者数の予測が浸透し始めていました。旅行業界においても、インバウンド需要の高まりに応じ、AI技術を活用した翻訳技術などに注目が集まっていました。
今後、経済の悪化が進めば、多くの分野で活用の芽を出していたAI技術の研究開発は大きく滞るだけでなく、Nice to have(あったら嬉しい)域を出ていないAI系のサービスは、ユーザの離脱が増えることも予想されます。
AI技術は現在3回目のブームを迎えており、過去には2回のブームを経験し、それぞれのブームの後に冬の時代を迎えています。
データ量、コンピュータの計算リソース、AIモデルの発展などにより、ディープラーニングをはじめとしたAI技術が生活に溶け込んだ今、顧客にとって不可欠なサービス設計ができていたか否かが、大きくAI関連企業の業績に左右することになるでしょう。
一方で、民間企業におけるテレワーク需要の高まりにより、人事や財務、法務など領域のSaaSモデルのAIサービス(AIssS:AI as a Service)は、大きく利用価値を高めるチャンスと捉えることもできます。Nice to have(あったら嬉しい)なサービスからMust have(必要不可欠)なサービスづくりが求められます。
言い換えれば、フィジカル空間でのAIの研究開発は低迷の恐れがありますが、ユーザにフィットしていれば、サイバー空間でのAIの研究開発が大きく進むといえるでしょう。
新型コロナウイルスに対峙するAI
新型コロナウイルス関連の感染症の広がりを受け、日本国内のさまざまなAI分野の企業が、それぞれのリソースを活用し、取り組みを発表しています。
主に以下の2つのケースに分類することができるでしょう。
- 膨大なデータの処理・可視化
- 人間の作業/意思決定の代替
- 医療分野における探索
それぞれのケースに沿って、取り組みをご紹介します。
膨大なデータの処理・可視化
現在脚光を浴びているAI技術の根幹をなしているのは機械学習技術です。膨大なデータを元に、人間には不可能な次元で、情報の可視化や予測を行う機械学習技術はあらゆる分野で、その活用が進んでいます。
新型コロナウイルスに関しても、膨大なデータを扱うAI技術の力が大きく発揮されています。
経済予測:膨大なニュースの自然言語解析で、経済動向を予測(xenodata.lab.)
xenodata.Lab.は、提携する通信社などから提供を受けた膨大なニュースデータをテキスト解析(自然言語処理)し、経済動向を予測するサービス「xenoBrain」を提供しています。
同社は、新型コロナウイルス感染症の罹患拡大に鑑み、「xenoBrain」による独自の自然言語処理技術による膨大なニュースの解析とアナリストの独自調査によって上場企業への新型コロナウイルス感染拡大の影響を予測し、レポートを公開しました。
同レポートによれば、オリエンタルランドやゼンショーなど、人の外出を前提とするサービス・外食の減益影響が大きいと予測されています。その他、各種施設の利用需要がカジノなどの将来的な影響も含め減少し、建設工事を請け負う建設業や不動産業の減益影響も大きいと予測されています。
▼詳しくはこちら
SNS解析:SNS解析で新型コロナウイルスの感染状況を監視(Spectee)
AIを活用したSNS解析サービスなどを運営する株式会社Spectee(スペクティ)は、 AIを活用し、 TwitterやFacebookなどのSNS情報をもとに新型コロナウイルスによる肺炎の広がりを解析するシステムを開発し、関係機関に納入したと発表しました。
Twitterを始めとするSNSサービスでは、膨大な量のコンテンツがユーザによって生成されるため、人的に確認や分析を行うことは到底、困難を極めます。
同社は、テキスト解析(自然言語処理)だけでなく、投稿された画像の解析技術や、多言語対応技術などを有しています。
このシステムは、Twitterだけでなく、複数のSNSサービスから情報をリアルタイムに収集・解析し、 感染の発生場所を特定、 また中国語など複数の外国語の投稿も日本語に自動翻訳し、 関係機関に情報提供しています。
▼詳しくはこちら
SNS解析:行政や有識者からの情報をAIが解析(JX通信社)
報道ベンチャーの株式会社JX通信社は、SNS上の膨大の投稿から、全国のどこで、何が起きているかをAIが自動で分析して配信する緊急情報サービス「FASTALERT」を提供しています。
同社は、新型コロナウイルス感染症の国内外の感染者数速報や企業の対策動向、海外のニュース速報、行政や有識者からの情報などをAIを活用して収集・配信する特設ページの提供を開始しました。
以下の4つの情報が配信されています。
- リアルタイムな感染者数推移グラフ・マップ(地図)
- 企業の新型コロナウイルス感染症対策の最新情報
- 海外のコロナウイルス関連の速報
- 行政や有識者などの正確な発信
特に④に関しては、行政や有識者などの正確性の高い情報をAIで収集・分類することで、適切な対策や正確な判断の助けになる情報をリアルタイムにチェック可能になっています。
データサイエンティストの集合知:「COVID-19チャレンジ」(SIGNATE)
データ分析コンペのプラットフォーム「SIGNATE」 を運営する株式会社SIGNATEは新型コロナウイルス対策のためにデータサイエンティストの叡智を結集し、日本国内の新型コロナウイルス罹患者と患者間の関係データに関する最大規模のデータセットの構築と、そのデータの分析により感染実態などのインサイト抽出を目指すプロジェクト「COVID-19チャレンジ」を開始しました。
登録済の約3万人におよぶデータサイエンティストから有志を募り、フェーズ1として、日本国内の新型コロナウイルス罹患者数と患者間の関係データに関する、有用なデータセットの構築を目指します。続けてフェーズ2では、そのデータセットを用いてデータ分析を実施し、感染実態に迫るインサイト抽出を目指します。
AIやデータサイエンスの分野ではKaggleをはじめとしたデータ分析コンペが長年注目されています。データ分析コンペは、
- 数百人規模の分析者が集まることで、データ分析の精度の限界がわかる
- 非専門家(他分野)ならではの発想によるデータ分析結果を得ることができる
などのメリットがあり、新型コロナウイルス感染色拡大に対し、データから有用なインサイト(洞察)を得ることができるのかが注目です。
また、新型コロナウイルスに関して発表される統計値を解釈する際に生じる誤解や正しい理解にいたる統計的思考法について以下に紹介しています。ご参考ください。
人流の観測:原宿の人通りは約90%減(Intelligence Design)
緊急事態宣言が発出され、街中の人の数がどれほど、減少したのかを検証することは、重要な感染拡大対策になり得ます。
Intelligence Design株式会社は、通行量調査を機械的に実施する「IDEA counter」を活用した調査を行い、原宿/明治神宮前エリアでの1日あたりの通行者数が約90%減少したと発表しました。
人手で人流を計測しようとすると、一人ひとりが特定の場所で通行者のウォッチを休まずに続けなければなりません。緊急事態宣言下で通行者のカウントを行うことは、調査を行う人自身が、新型コロナウイルスに感染してしまう可能性もあります。
また、「IDEA counter」では、エッジ処理を行うことで、個人の情報が特定できない形で、通行者数を計測し、個人情報保護に努めた上で実施されています。
▼詳しくはこちら
来客者数の分析:3月第1週の来客者数は前年比56.3% (ABEJA)
小売業向けのAIプラットフォームなどを提供する株式会社ABEJAは、小売店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を導入している全国約700店舗を対象に、来店者数を分析し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、前年の53.9%まで来客者数が落ち込んでるという結果を発表しました。
小売業界では、AIを活用して、来店者が店内をどのように動いているのかで、棚の陳列を変更するなどの施策が活発になっています。同社が提供する「ABEJA Insight for Retail」は、店舗内に設置されたカメラやセンサーから来店者の情報を把握し、さまざまな施策につなげることができるサービスです。
人間の作業/意思決定の代替
新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークを導入する企業が増加しています。と同時に従来はオフィスでフィジカルに対応しなければいけなかった、さまざまなタスクの効率化のニーズが各企業で高まっていると言えます。
テレワーク需要の高まりと同時に、AI分野で特に注目されている技術はチャットボットです。
▼チャットボットに関して詳しくはこちら
3月11日(水)、NTTドコモは、同社のコールセンターに勤務する協力会社社員1名に新型コロナウィルス感染症の陽性反応が出たことが確認されたと発表しました。
3月31日時点で、60名に検査を実施し、そのうち10名が陽性と確認されています。
参考:NTTドコモによる報道発表資料より
これにより同社のコールセンターでは、感染拡大防止の観点から、時差出勤、出勤社員の制限による座席間隔の拡大などの対策を実施しています。また、全国のドコモショップは原則午後4時までの時間短縮営業やスタッフ出勤数を減らして運営しています。
- 対面の相談窓口の縮小
- コールセンターの制限・縮小
の2点により、今まで以上にコールセンターへのお問い合わせ件数が増加し、コールセンター内部の逼迫(ひっぱく)する状態になると予想されます。
以上のケースは、NTTドコモだけでなく、コールセンターを抱える多くの企業で発生していると考えられ、同時にお問い合わせ対応を効率化するチャットボット活用の注目が高まっていると言えるでしょう。
AINOWにおけるチャットボット関連コンテンツへの流入増
AINOWでは、日本初のAI専門メディアとして、チャットボット関連コンテンツも多くリリースしています。
AINOWにおける各記事のページビュー数などの数値は公表していませんが、例えば以下の記事におけるページビュー数の増加数を示します。
期間①2020年3月13日〜19日の1週間
期間②2020年4月13日〜19日の1週間
記事:1番構ってくれるLINEチャットボットはどれ!? 実際にチャットボットに甘えてみた!
期間②のPV数は、期間①の7.12倍に急増しました。
記事:【LINE】会話成立・多機能なLINEチャットボットアカウント5選 ~あなたの話し相手は人間だけじゃない~
期間②のPV数は、期間①の4.08倍に急増しました。
新型コロナウイルスの影響によりチャットボット利用が急増
チャットボット・プラットフォーム「バーチャルエージェント(R)」を提供するりらいあデジタル株式会社は、「バーチャルエージェント(R)」の利用データを基に、顧客サービスの利用動向を分析し、その結果を公表しました。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛や在宅勤務が本格的となった3月度においては、同社のプラットフォーム全体の利用数は前月比+38%、また一部企業(全体の25%)では+50%以上の増加を示しました。
▼詳しくはこちら
新型コロナウイルス関連のお問い合わせ対応にもチャットボットが
会社名:株式会社Nextremer
サービス名:「minarai CS Chat」 |
会社名:チャットプラス株式会社
サービス名:「ChatPlus(チャットプラス)」 |
会社名:株式会社空色
サービス名:「WhatYa free」 |
会社名:株式会社ALBERT
サービス名:「スグレス」 |
LINEは「LINE AiCall」を活用し、帰国者の健康確認を自動化
2020年4月14日、LINE株式会社は、新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的に、厚生労働省と委託契約を締結し、LINEのAI事業「LINE BRAIN」が展開している自然言語処理、文字認識などの各AI技術を活用して、都道府県等が保健所などで実施している帰国者の健康状態の確認(健康フォローアップ)を支援すると発表しました。
LINEは、帰国者が手書きで記入した質問表を読み取りデータ化する「LINE BRAIN OCR」の提供と、「LINE BRAIN CHATBOT」を用いた帰国者専用のLINE公式アカウント開設・運用、音声応対AIサービス「LINE AiCall」による架電の3点において支援を行います。
▼詳しくはこちら
医療分野での探索
FRONTEOがAI活用で約450種の候補化合物を探索
株式会社FRONTEOは、 当社のAIシステム「Cascade Eye」を利用した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の研究で、 約450種の候補化合物をリストアップしたと2020年5月1日に発表しました。
同社の創薬支援AIシステム「Cascade Eye」を利用して作成したパスウェイマップを利用することで、その中に含まれる分子や遺伝子に関する論文を解析した結果、 約450種の既存薬の転用候補が見つかりました。
通常の創薬研究においては、 臨床試験を経て承認される確率は約1/30000であるといわれています。そこで、 「Cascade Eye」を活用してリストアップされた450種のうちオートファジー、 抗炎症関連化合物など約400種の市販されている薬に関して、効果や副作用等に関する適正な治験を経たのち、 今後のコロナウイルス治療薬としての活用が期待できるとしています。
AIの活用の真意が問われるWithコロナ、Afterコロナ時代
新型コロナウイルス関連のニュースが騒がれる中、「After コロナ(With コロナ)」の世界でどう生きるのかを、一人ひとりが考える必要があります。
毎日オフィスに出勤することが大前提だった生活も一部の業界では変異し、「テレワーク(在宅ワーク)」の文化が今後、定着していくでしょう。同時に、今まで人的対応に頼りきっていた企業は、業務の一部をAIやRPA(Robotic Process Automation)によって代替し、人への依存度が低くし、リスク回避を行う必要もあります。
新型コロナウイルスの感染拡大の収束時期は、簡単に予想できません。
そんな中、企業においてはZoomなどの遠隔ミーティングツールだけでなく、あらゆるIT基盤を整理し、ガバナンスを強化していくことが必要でしょう。
特に企業内のデータなどの基盤を整備し、社内で共有することで、未知のウイルスの感染拡大などの緊急事態に対応できる柔軟な企業体にすることができます。
今まで当たり前だった生活様式や業務プロセスがデジタル技術の影響で全く異なるものへと変革することはDX(デジタルトランスフォーメーション)とも呼ばれ、日本政府を始め、日本の各企業が、DX推進に踏み切っています。
▼DX(デジタルトランスフォーメーション)について詳しくはこちら
新型コロナウイルスを一過性の事象と捉えず、これを機会に企業の企業のデジタルトランスフォーメーションを進め、適材適所でAIの活用を進めていくことが大切かもしれません。
▼YouTubeでもこの記事について解説中!
■AI専門メディア AINOW編集長 ■カメラマン ■Twitterでも発信しています。@ozaken_AI ■AINOWのTwitterもぜひ! @ainow_AI ┃
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