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近年、新型コロナウイルスの影響によって、リモートワーク推進が急増すると共にDX(デジタルトランスフォーメーション)への注目が集まっています。
しかし、2019年のIMD(スイスのビジネススクール)が発表した世界における「デジタル競争ランキング」で、日本は23位という結果でした(1位:米国、2位:シンガポール、3位:スウェーデン)。
ちなみに、韓国は10位、中国は22位、台湾は13位であり、他のアジア諸国と比べても日本のデジタル競争力は遅れを取っていることが分かります。
DXで諸外国に遅れをとっている日本にとって、DX事業はこの先需要が増していく領域の1つです。とはいえ、「どのようにDX事業を進めていけばいいか分からない」という方も多いでしょう。
そこで今回は、「DXの事業」について推進の手順や他社の成功事例など詳しく解説していきます。
現在社内でDX事業を行おうと思っているものの、「実際他の企業はどのようにデジタル技術を活用して事業を行なっているのだろうか?」「他の企業のDX事業について参考にしてみたい!」と考えている経営者や幹部の方には必見の内容ですので、ぜひご一読ください。
目次
DXとは?
最初に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義や解釈をおさらいしていきましょう。
結論、日本で最も浸透している定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。
上記の定義は日本経済産業省が2018年に「DX推進ガイドライン」にて発表したものであり、ビジネス的視点がメインとなっております。
また、世界でのDXな一般的な定義は「人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活がよい方向に変化する」です。
▼DXについて詳しく知りたい方はこちら
DX事業に注目が集まっている訳
DX事業に注目が集まった背景として、「2025年の崖」の存在が挙げられます。
2025年の崖とは、2018年9月7日に経済産業省が発表した「今後日本がDX競争力が低下した場合、2025年以降最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる」という予測の通称です。
日本企業の既存のITシステムでは技術面の老朽化やシステムのブラックボックス化が問題になっています。
このようなITシステムはレガシーシステムと呼ばれ、自社でのシステム修正が難しくなっています。
2025年の崖という予測が提唱されて以降、レガシーシステムを持つ日本企業がどのようにDXを推進していくのかが大きな課題となっています。
また最近では、DX事業を行うGAFAMなどの海外大型IT企業の時価総額が、ある国の国家予算に匹敵するまで伸びていることも、DX事業に注目が集まっている理由の1つです。
▶2025年の崖についてはこちらの記事で詳しく解説しています>>
DX事業を推進する手順
大半の企業がDX事業の進行に失敗してまう原因の1つに、しっかりとした手順を踏まずにプロジェクトを進行してしまうことがあります。こちらで、まず社内でのDX推進がわからない方は、次のDX事業を推進するための手順を見ていきましょう。
DX事業を推進する手順は、以下の6ステップです。
- 目的設定
- 現状分析
- プランニング
- 組織編成
- プロジェクト実行
- 効果測定
それぞれ解説していきます。
①目的設定
DX事業を始める際、一番最初に目的設定を明確にしましょう。先に述べたようにDXの定義は広く、「社内の業務効率を向上させたいのか」「新たなビジネスモデルで収益を拡大させたいのか」など、目的によって応用されるデジタル技術が異なります。
DX事業への投資資金や時間を無駄にしないよう、まずは具体的な方向性と数値化したゴールを設定して、戦略の方向性を決めやすくしたり、社員の事業に取り組むモチベーションを向上させたりするべきでしょう。
▶DXの目的を知ろう《初心者必読》|IT化との違いから推進ステップまで解説>>
②現状分析
目的設定が完了した後は、現状とDX事業達成までの乖離を測るために社内のリソースやデジタル化に対応できる人材、事業を達成するにあたりどのような技術が必要になってくるのか分析をしてみましょう。
▶DXに必要な4つのスキル| DX人材の採用方法や書籍を紹介!>>
③プランニング
現状分析によって、ゴールまでの必要な人材やデジタル技術などが明確になったら、「いつまでに適応した人材や技術を揃えるのか」「いつまでプロジェクトを本格的に開始して、いつまでにどのくらいの効果を実現するのか」を逆算して計算してみましょう。
▶︎DX人材についてこちらの記事で詳しく解説しています>>
▶DX人材の育成方法や育成のポイントを詳しく知りたい方はこちら>>
④組織編成
プランニングが完了したら、実際に組織編成を行なっていきましょう。事業の目的によって効率的に事業を推進できる組織体制が異なるため、組織編成を行う際は注意が必要です。
下記にてDX事業を効率化するための各組織体制を整理しているので、代表的な組織の座組みを知りたい方はぜひチェックしてみてください。
▶組織にてDXを推進する6ステップを紹介|失敗・成功事例など解説!>>
⑤プロジェクト実行
プロジェクトを実行する際は、社内の従業員にDXの推進を周知させましょう。
プロジェクトを成功させるためには、事業を展開していく幹部たちの手腕も必要となりますが、社内の社員一人一人が変化を受け入れる状況を作り出すことも必要です。
もし周知できなければ、1つの部署内での出来事で終わってしまい、会社全体としてのシナジーが生まれかねません。
⑥効果測定
プロジェクトが完了したら、企業のDX化においてどれだけ効果が出すことができたのか測定してみましょう。
また、通常プロジェクト完了の際にプラニングで立てた目標数字を100%達成できるとは限りません。
もし目標が未達成なのであれば、未達の原因を追求をして再度「〇月までには現状の課題を解決する」など具体的なプラニングを立てていきましょう。
▶「DX推進」の概要や必要性、成功事例についてはこちらで詳しく解説しています>>
DX事業を推進する際に重要な5つのポイント
ここからは、DX事業を推進する際にDX化が実際に成功している企業のポイントを紹介していきます。
以下は、マッキンゼー・アンド・カンパニー社による「DX化が成功している企業の特徴」の調査をまとめたものです。
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社内でのDXを推進する際、経営陣目線から見ると実際の効果の変化が可視化できず、不安になってしまうこともあるかもしれません。
しかし、上記の5点を確実に抑え、DX事業に日々改善を繰り返せば、3、5、10年の長期スパンで他企業と差つけられるようになるでしょう。
▶DX推進時のロードマップ作成法|実用的なフレームワークも紹介>>
▶中小企業がDXに取り組む際のポイントは?3つの成功例も紹介>>
DX事業の成功事例5選
DXを導入して成果を上げた事例を5つ紹介します。
これから詳しく解説していきます。
①地方自治体 – AIチャットボットの導入
地方自治体ではAIチャットボットの導入が加速しています。
AIチャットボットは主に問い合わせ対応に活用されています。
自治体の窓口の受付時間は平日昼間が中心ですが、AIチャットボットを利用すればいつでもすぐに問い合わせができ、住民の利便性が向上します。
また自動翻訳を利用して外国語での問い合わせにスムーズに対応できることも大きなメリットです。
また、これまで問い合わせ対応に割いていた人件費なども節約できます。
②IKEA – VR導入
北欧スウェーデン発祥の世界最大家具屋「IKEA」は、DX推進の1つに「VR/AR技術を活用して顧客へのIKEAの世界観をその場で体験できるように」という志を掲げています。
IKEAは2016年に「IKEA VR Experience」という無料VRアプリをリリースしました。このアプリを利用すると、仮想空間でIKEAのキッチンを歩き回れます。
続いて2017年にカナダの店舗でもVRシミュレーターサービスを導入しています。
このVRサービスでは仮想空間でホットケーキを作ったり、自分でデザインしたキッチンを使ったりすることができます。
購入後の家具と部屋のミスマッチを塞ぎ、返品率も圧倒的に削減できるなどの企業と顧客の双方にとってメリットが生まれます。
また、顧客からフィードバックを受け取ることで新たな修正点を発見できるというメリットもあります。
③GMOメイクショップ – CRM導入
GMOメイクショップはCRM導入以前、案件情報の管理をExcelで行っていましたが、顧客数の増加に伴って管理に限界を感じたことをきっかけにCRMを導入しました。
CRMの主な役割は顧客管理です。
顧客に関する情報が一元的に管理されることで情報の食い違いや案件への対応漏れがなくなりました。
その結果、売上を192%達成、会議の時間を90分から15までに短縮、顧客管理による業務ミスの削減などの成果を上げられました。これは、ITツールの導入で膨大な成果が出た一例です。
④トライグループ – データ活用
家庭教師の派遣事業を主力に展開してきたトライは、2015年より「Try IT」と呼ばれる無料映像事業により、多数の個人塾を抑えて多くの生徒の獲得に成功しました。
「Try IT」は無料の映像授業と有料の質問対応で構成されています。
生徒が集中できるように1回15分という短い授業映像で授業の要点を解説していることが特徴です。
また、過去の生徒の特徴を分析して効率よく学習できるような仕組みづくりも行われています。
「Try IT」は今まで家庭教師事業で蓄積してきた膨大な教育のノウハウや生徒の成績データを活用してDX化を成功させた事例の一つと言えます。
⑤Shake Shack- キオスク端末導入
Shake Shackは、アメリカのニューヨークで創業されたハンバーガーショップです。
Shake Shackは2017年に完全キャッシュレス店舗をオープンしました。
この店舗ではキオスク端末を利用して顧客がセルフオーダーします。注文はそのままキッチンに伝えられ、完成したら登録した電話番号宛にメッセージが送られます。
店舗側にとっては人件費が削減できる、キャッシュレスのためレジ締め作業が不要になるなどのメリットがあります。
顧客側にとってもレジの混雑が解消されるという利点があります。
結果としてこの店舗では人件費削減に加えて、顧客単価が15%上昇するという成果が上がりました。人手不足が深刻な飲食業界においてはDX化の必要性は高まっています。
DX事業を展開している日本企業3選
株式会社 LegalForce-法務DX
LegalForceは法務手続きのDX化を支援する企業です。
LegalForceは主に契約書のチェックをサポートしています。
契約書をアップロードすると弁護士監修のAIが、注意すべき点などを洗い出してくれます。また、契約書の修正の際に役立つ条文なども表示してくれます。
それ以外にも契約書の雛形を搭載していたり、契約書のバージョンを管理する機能も備えています。
株式会社アイデミー-DX人材教育
アイデミーはAIを中心としたDX人材の育成を支援する企業です。
DX人材とは、データやデジタル技術を使って企業を強い組織に変革する人材のことです。特に自社の文化やシステムに詳しいDX人材が求められています。
アイデミーは「Aidemy Business」というDX人材育成のためのe-learningプラットフォームを提供しています。
Aidemy BusinessではDXを学ぶための様々な学習コンテンツや学習サポートを提供しています。
また、管理者向けの機能も充実しており学習者の進捗状況が可視化されるため、将来のDXリーダー人材を見つけ出すこともできます。
三菱総研グループ-一貫してDXをサポート
三菱総研グループは戦略立案から制度・組織・実装まで一貫してDX化をサポートしています。
手がけている分野は自治体・行政・金融・シンクタンクと幅広く、それぞれに合ったサポートを提供しています。
場当たり的なデジタル活用ではなく、短期から中長期まであらゆる目的を達成できるように計画的にDX化を進めていくことを宣言しています。
そのために顧客に合わせて「DXジャーニ」という目標達成までの道のりをデザインし、課題解決を支援しています。
DX事業のために導入できるDX促進ツール
DX事業のために導入できるDX促進ツールは以下の8つです。
- データ保存・共有
- 単純作業の効率化
- ビッグデータの保存・分析
- 生産管理
- バックオフィス
- セールス
- マーケティング
- カスタマーサポート
それぞれ解説していきます。
データ保存・共有
インターネットの普及により社内でのペーパーレス化が進み、膨大なデータが蓄積されて管理が複雑化しました。
現在のデータ保存は、インターネット上でサーバに情報を保存できるクラウドストレージサービスを活用するのが主流です。有名なクラウドストレージサービスとして、Googleドライブ、DropBoxなどが挙げられます。
またデータを共有する面では、ZoomやGoogle meeting、Microsoft Teamsなどのオンライン会議ツールが多く活用されています。オンライン会議ツールは、新型コロナウイルスで企業がリモート作業をするようになり、爆発的に普及しました。
▶DXのためのデータ活用法-活用までの5ステップや活用事例を徹底解説>>
単純作業の効率化
近年では日本の労働不足が叫ばれる中、ロボットを活用した作業の自動化が進んでいます。
主に現在流行している技術は、RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれるデータの移し替え作業や単純な入力作業を自動化してくれるサービスです。有名なRPAサービスとして、WinActor、Blue Prism、BizRobo!などが挙げられます。
▶絶対に今さら聞いてはいけない!RPAとは?>>
▶5つのサービスから考える、RPAって実際いくらかかるの?>>
ビッグデータの保存・分析
DX推進に伴い、ビッグデータの保存と分析は新たなビジネスモデルを構築する際に必要不可欠なデジタル技術となる一方で、多くの企業がデータの活用ができていないことが大きな課題となっています。
そんな課題を解決できるITツールが「BI」(ビジネスインテリジェンス)です。BIとは、企業に蓄積された大量のデータを集めて分析し、迅速な意思決定を助けるのためのツールであり、経営の発展に貢献してくれます。
有名なBIツールとして、Qlik Sense、Tableau、Dr.SUMなどがあります。
生産管理
現在DX推進は、メーカーや工場にまで浸透しています。
特に製造業で注目を浴びている「EPR」( 企業資源計画)と呼ばれるITツールは、各部署間の情報管理を統一することでコミュニケーションロスを防ぎ、業務を効率化できます。
有名なEPRツールとして、Reforma PSA、クラウドERP freeeなどがあります。
バックオフィス
近年、人事、財務、総務など会社のバックオフィス業務でも業務効率化するために積極的にITツールを導入している企業が増えています。
例えば、給与・経費管理システムの「Focus U 給与明細」や会計ソフトの「マネーフォワード」、人材管理システムの「ジョブカン勤怠管理」などがあります。
セールス
近年、営業関連のDXツールも普及しつつあります。中でも多くの企業の営業利益に貢献しているサービスが「Salesforc」です。
Salesforcは、顧客情報管理や商談管理ができ、蓄積されたデータを搭載されたAIによって自動的に学習と分析を行ってくれるサービスです。
▶【徹底解説】営業DXの導入方法|営業DX成功のポイントや事例を紹介>>
マーケティング
現在マーケティング部署のDX事業において、MAツールやCRMツールの導入があります。主な機能として、顧客の管理や解析、お問い合わせ管理などがあり、顧客中心のビジネスを発展させるのに欠かせないツールとなっています。
有名なものとしては、SansanやMarketo Engage、SATORIなどがあります。
▶マーケティングDXの考え方|成功するために必要な3つのポイントを解説!>>
カスタマーサポート
現在カスタマーサポートのDX事業として、チャットボットツールを取り入れて人件費の削減や業務の効率化を行う企業も増えてきました。
また、ただロボットが顧客のテキストに返信するだけでなく、顧客のテキストをデータとして蓄積する機能を持ったツールも登場してきました。有名なカスタマーサポートツールとしては、Repl-AIがあります。
まとめ
今回はDXの事業について、推進の手順や他社の成功事例など解説してきました。いかがだったでしょうか?
近年DX事業を行う企業が年々増加にあり、この傾向は今後も続いていくことが予想されます。
このDX推進の波に乗り遅れないためにも、企業はこの先DX事業にきちんと向き合っていく必要があるでしょう。
「DX事業をどのように進めていけば分からない」という方は、今回紹介した手順や事例、DX促進ツールなどを参考にしながら進めてみてはいかがでしょうか。
▶︎DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントについてこちらで紹介しています>>
◇AINOWインターン生
◇Twitterでも発信しています。
◇AINOWでインターンをしながら、自分のブログも書いてライティングの勉強をしています。