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2019.12.18

2019年はAIにとって原点回帰の1年だった ーAINOW編集長が斬る今年のAI

最終更新日:

2019年は、2018年に続きAI・人工知能分野で多くのニュースがありました。記憶に新しいところでは、LINEとYahoo!が統合して「アジアを代表するAI テックカンパニー」になると表明し、大きな話題になりました。また、2019年は「AI戦略 2019」が発表された年でもあり、特に人材育成に注目が集まった1年でした。

新元号「令和」を迎えた2019年を振り返ると、たくさんのAI関連ニュースが報じられ、AIへの注目は依然と高い状態が続いています。

この記事では、AI専門メディア「AINOW」を通して感じた2019年のAI分野の動きについて、お伝えします。

2019年はAI技術が現場に水平展開

2019年はざっくり言うと、AI技術が水平展開した1年だったといえるでしょう。以下、ざっくりと解説していきます。

自然言語処理領域(テキストAI)では「BERT」に次ぐ「GPT2」が話題に

技術面では、特に自然言語処理領域での発展が目立ちました。2018年10月11日にGoogleが発表した汎用言語モデル「BERT」が活用されるサービスも、ちらほらと生まれました。

▼BERTについて詳しくはこちら

「BERT」は以下の図のように、さまざまなタスクに応用できる可能性を秘め、多くのベンチマークテストで高精度を達成しています。

しかし、実際に自社サービスに「BERT」を活用した企業にインタビューすると、「BERT」がまだ未成熟な面があることも明らかになっています。

インタビューに応じてくださったストックマーク CTOの有馬氏は、「BERT」の処理能力の高さを認めながらも、「BERT」のモデルの大きさの問題について指摘しています。

有馬氏:ストックマークが運営しているAnewsには既に数万を超えるユーザーさまにご活用いただいていますが、各ユーザーさまにBERTを使ってパーソナライズを行おうとすると、数万個のBERTモデルが必要になります。

さらにBERTのモデルは巨大であり、1つで500MBぐらい必要になるので、数テラバイトの学習モデルを日々運用/再学習していく必要があり、そこまでのROIは現状の技術では出せていません。

▼インタビューについて詳しくはこちら

2019年10月にはGoogleが検索システムに「BERT」を導入したと発表しています。

AIの研究開発で世界最先端を行くGoogleの「BERT」導入が、この時期だということを考えると、汎用的な自然言語処理モデルの活用は2020年以降に活発化するといえるでしょう。

また、2019年2月は非営利のAI研究組織 OpenAIが「GPT2」という文章生成ツールを発表し、大きく話題になったことも記憶に新しいでしょう。

「あまりにも危険すぎる」という開発者の危機感により、論文公開が延期されていますが、2019年8月には15億個ものパラメーターを持つ最新版がリリースされ、2020年は「BERT」に限らず、さらに自然言語処理領域での技術革新が進むと予想されます。

画像領域では生成のアプローチ:ディープフェイクが台頭

2019年は画像認識の領域では、大きなモデルのアップデートが報じられることは、ほぼありませんでした。

一方で、画像生成のアプローチが話題になった1年でした。ディープラーニングの技術を応用した「GAN(敵対的生成ネットワーク)」というモデルの可能性に注目が集まったからです。

GANは生成モデルの一種で、「ジェネレーター(generator)」と「ディスクリミネーター(discriminator)」の2種類のAIを使って画像などの生成を行います。

ジェネレーターは偽物を作ろうとするAIで、ディスクリミネーターはこれをその偽物を見破るAIです。

その2つのAIが偽物を作っては、見破る過程を繰り返します。

はじめのうちは学習量が足りず、ディスクリミネーターは容易に偽物を見破ります。しかし、次第にジェネレーターの学習量が増えていくにしたがって偽物が巧妙になり、最後にはディスクリミネーターは偽物を見破るのが困難になります。

国内ではデータグリッドがGANを活用し、存在しない人物の全身画像を自動生成するAI「全身モデル自動生成AI」を開発しています。

株式会社データグリッド「全身モデル自動生成AI」

同社はアイドルの顔を学習させた「アイドル自動生成AI」も開発しており、著作権や利用機関の制約がない、存在しない人物の生成領域において、日本を牽引する存在です。

▼データグリッドの「全身モデル自動生成AI」について詳しくはこちら

また、クリエイティブAI開発のRADIUS5(ラディウス・ファイブ)が、100万種類以上の顔イラストをAIで生成する新サービス「彩ちゃん(SAI)」を提供しています。

「彩ちゃん(SAI)」は男性キャラ、女性キャラに関わらず多様なイラストを100万種類以上生成できます。また、商用利用も可能で、加筆・修正の利用も許諾されています。

▼「彩ちゃん(SAI)」について詳しくはこちら

多くのコンテンツは権利に守られ、利用期間や露出可能な箇所が限られています。

しかし、生成されたコンテンツには、基本的に肖像権が発生しません。仮に、AI提供会社が利用料を徴収したとしても、現状の芸能人やアニメキャラクターの利用料に比べれば、安価にコンテンツを使うことができるようになると期待できます。

一方で、実際に人を使って撮影しなくてもその人を使った動画を気軽に作成できるようになってきており、ディープフェイクはフェイクニュースを助長しているとして問題にもなっています。

今後は、SNSなどを使う私達のリテラシーが求められるようになるだけではなく、法整備などをしっかり行い、AIが健全に活用されるよう議論を行っていく必要があります。

▼ディープフェイクについて詳しくはこちら

AIのツール化も進んだ1年

2019年はAI領域ではツールがさらに広がった1年だったとも言えるでしょう。Twitterでは「Cloud AutoML Vision」の便利さについて言及されることも多く、AIの構築スキルがより汎用的になった1年だったとも言えます。

▼プログラミング不要でAIを構築できるツール一覧

しかし、全てのAIモデルがツールだけで完結できるようにはなっていません。目的を決めたり、データを収集したり、AIを構築するために必要なリソースはとても多いのが現状です。

「集まったデータからモデルを構築する」ハードルが下がることで、今後はビジネスサイドの人でも簡単に検証ができるようになると考えられ、さらにAIの導入が進むようになるでしょう。

AIが「現場」に降りてきた1年

上記のような自然言語処理領域、画像生成領域では動きがありましたが、2019年のAIは、ざっくり言うと技術が現場にまで降りてきた1年ともいえるでしょう。2017年には会社レベルの取り組みや、実証実験の取り組みなど、いわば「AIをやってみた」系のプレスリリースが多かった印象ですが、2019年は、「AIを実際に導入して〇〇の成果を出した」という活用まで踏み込んだプレスリリースが多くなりました。

例えば、佐川急便はAIを活用することで8400時間の業務時間を効率化したと発表しました。

また、不動産大手のオープンハウスは、ディープラーニングや遺伝的アルゴリズムなどの技術を活用することで、年間25,700時間の工数削減に成功したと発表しました。

AIの代替として注目されたRPA領域、OCR領域も急成長

2019年は現場目線で活用が検討されるようになったと同時に、AI以外の選択肢としてRPAなどの技術にも注目が集まった1年でした。

2017年以降、多くの現場にてPoC(AIの導入前の仮説検証)が行われた一方、実際に現場に導入されたプロジェクトはまだ少ないのが現状です。

2019年8月9日に開催された日本経済新聞社が主催の「Data Science Fes 2019 プレフォーラム」では、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けてPwCコンサルティング合同会社が実施した調査の結果が発表されました。

この調査では、AIプロジェクトの企画検討のフェーズから、PoC(実証実験)のフェーズに進む際に約47%のプロジェクトが中止に陥ってしまう現状が明かされました。

用:投影スライド「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」より

また、フェーズごとの課題の調査では、ベンダー企業、ユーザ企業問わず、「課題が不明」という回答が多数を占め、課題がわからない状態で多くのAIプロジェクトが進行し、その多くが検証前に頓挫している現状も明らかになっています。

▼この調査について、詳しくはこちら

上記のように、多くのAIプロジェクトが現場に導入されない一方、業務効率化のための代替手段として2019年はRPA領域が大きく注目されています。

実際、RPAの世界市場規模は下図のように、2019年以降、線形に伸びていくことが予想されています。

厚生労働省が発表した2019年労働力需給の推計(※)によると、日本ではゼロ成長に近い経済成長で推移し、女性や高齢者の労働参加が進まない場合、2040年の就業者数は2017年に比べ約20%減となる5245万人に落ち込むと試算されています。

※出典:労働力需給の推計 ―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計ー

さまざまな企業が、人員不足に悩む今、定型業務の自動化を得意とするRPAは、決まった動作を覚えさせることで、ヒューマンエラーを起こすことなく、24時間365日低コストで稼働が可能です。

また、RPAの導入はAI導入の第一歩と考えることもできます。RPAはPoC(実証実験)が不要で、定型的な業務を素早く効率化することが可能です。

まずはRPAの導入により、業務の流れを整備し、部分的にシステム化することで、後にAIを導入する敷居が低くなる可能性があります。また、RPAの導入をきっかけにベンダーがユーザ企業の業務フローを理解することで、業務内容によってRPAとAIを使い分けて効率化することも可能になります。

2020年は、AIやRPAなどの技術一辺倒になるのではなく、課題に合わせた手段として、AI、RPA、その他システムを選んで活用していく力が重要となっていくでしょう。

▼RPAについて詳しくはこちら

また、2019年は画像内の文字をデジタル化するOCR領域が確立した1年でもありました。その象徴として、2019年11月、トップシェアを誇るAI inside 株式会社が東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が承認されたと発表しました。2019年12月25日に上場が予定されています。

OCRはAIの力で手書き文字も高精度で認識可能になっており、業務効率化の手法として注目されています。まさに「現場」で語られることが多かった2019年だからこそ、OCR領域も大きく盛り上がったと言えるでしょう。

▼AI insideの取材記事はこちら

一次産業にもAIの活用が

2019年は現場に技術が展開しただけでなく、一次産業へのAI導入事例も散見されました。

電通、電通国際情報サービスが運営するオープンイノベーションラボが、技術継承が必要になっている産業へのAI導入を行う「プロジェクト 匠テック」を開始しました。

その一環として、双日株式会社と共同で、後継者不足が深刻なマグロの目利きの技能を継承するため、天然マグロの尾部断面画像からAIが品質判定を行うシステム「TUNA SCOPE™」を開発し、実証実験を今年3月に実施しました。

一人前になるために10年はかかると言われるマグロの目利きのノウハウを詰め込んだ「TUNA SCOPE™」は、職人と85%の一致度でマグロの品質判定に成功しています。

また、農業へのAI導入も進んでいます。農業従事者の平均年齢は67歳と他の業界に比べ、高齢化が深刻で、人手不足が課題視されています。農業の優れた技術を継承していくためにも、今度はロボティクスなども含め、技術を活用していくことが必要です。

【鶏が先か、卵が先か問題】人も足りていないけど、プロジェクトも少ない

「AI戦略 2019」が発表、AI人材に注目が集まった1年

2019年は「AI戦略 2019」が発表され、民間だけでなく政府もAI人材育成に大きく乗り出した1年でした。

「AI戦略 2019」は日本政府がAI関連領域で、実行すべき政策を提言するもので、G20で政府が世界に向けて発信した日本のAI戦略の基礎となりました。

この「AI戦略 2019」では、

  • 人材
  • 産業競争力
  • 技術体系
  • 国際

の大きく4つの戦略目標が掲げられ、特に人材育成に関しては「年間100万人の全ての高校生」「文理を問わない全ての大学・高専生 年間50万人」「年間100万人の社会人」などに対してAIリテラシー教育を行う大規模な戦略などが発表されました。

また、このAI戦略を踏まえて、課題解決型のAI人材育成を目指す「AI Quest」事業が、2019年10月より始動しています。

PBL(Project Based Learning=課題解決型学習)に大きく注目し、エンジニア、ビジネスサイドの垣根を超えて、課題解決にAIを活用できる人材育成を図っており、2020年2月中旬にかけ、約200名の受講生を受け入れて実証実験を行っています。

PBLに注目した人材育成プロジェクトは他にも開始されています。合同会社DMM.comは、フランスのエンジニア養成機関「42(本部:フランス、パリ市、代表ソフィー・ヴィジェ。正式名称、L’association 42)」の東京校として、『42 Tokyo(フォーティーツートウキョウ)』を設立したと2019年11月7日に発表しました。年齢や学歴、性別に関係なく、学費が無料で誰もが平等に教育を受けられることが特徴で、16歳以上、4週間続く入学試験に合格すると在籍資格が与えられるものです。

「AI Quest」「42 Tokyo」をはじめ、PBLを中心に、現場で課題を解決できる人材育成が進んでいます。このような人材が社会に出ていく2020年以降、AIの活用がどのように進んでいくのか、目が離せません。

そもそもプロジェクトが足りないのではないか、「鶏が先か、卵が先か」問題

「AI戦略 2019」をはじめ、PBLが注目され、AI人材育成において変動があった2019年。この章では本当にAI人材が足りていないのかを考えたいと思います。

そもそもプロジェクトと人材は、「鶏が先か、卵が先か」問題と近似しています。プロジェクトは人材が集まらないと結束しませんし、逆に人材はプロジェクトが生まれなければ活躍できません。

先述の通り、検討に上がった47%のプロジェクトは、PoC(実証実験)フェーズに進むことがありません。また、AIプロジェクト進行の課題に関しても、「課題がわからない」という課題が多数を占めている状態です。

多くの成功事例がメディアで取り上げられるAIはここ数年、大きく注目されています。一方で、「課題がわからない」人が多くいるという現状をしっかり認識しなければなりません。

ディープラーニングをはじめとしたAI技術は、非構造化データ(エクセルのように表形式で保存されていないデータ)に対応できる点で、画像や音声、テキストなどさまざまな領域で大きく注目されています。

▼ディープラーニングについて詳しくはこちら

確かにディープラーニングを始めとしたAI技術は、かつてない大きな技術革新と呼べるでしょう。

▼ディープラーニングの可能性については以下の記事がわかりやすいです。

画像認識の領域では、既に人間の能力を超えたと言われます。

2012年以降の画像認識におけるエラー率の推移

一方、画像認識はロボティクス(ハードウェア)技術と密接に連携しています。

2019年も警備領域においてはロボットの導入リリースが多くあり、成田空港では実際に画像認識技術を活用した警備ロボットが施設内を巡回しています。また、製造業をはじめとした工場内では、従来からある工業ロボットがAIによってアップデートされています。

しかし、未だ看護・保育・医療・建築などの領域で現場にAIを搭載したロボティクスが本格的に導入が進むに至ってはいません。2020年はAI技術だけでなくロボティクス技術や、クラウドを介さずにロボットが自律的な判断を可能にするエッジAIの領域に大きく注目するべきでしょう。

また、自然言語処理の領域では記事冒頭で述べた通り汎用的なモデルの研究開発が活発に進んでいます。一方で、前後関係や主語が欠落した文章、ニュアンスまで汲み取る人間のテキスト処理能力にまで発展しているとは言えない状態です。

私達、多くの仕事ではメールや、会議、商談など自然言語を介してビジネスが進んでいる状態です。さらにAIの導入を進めるためには、より柔軟で軽量な自然言語処理のモデルの研究開発が必要であり、GAFAをはじめとしたAI研究の先端企業に大きく注目です。

上記のような問題から、AI分野はまだ未発達であり、課題がわからない=AIプロジェクトの導入意義がわからない人が多い現状があります。

2020年に求められるのは、AIなどの技術進歩を正しく理解した人間が、現場の課題を的確に理解し、選択肢の1つとしてAIを活用していくことです。現場の課題解決の方法としてAIを正しく使う人が増えれば、2019年に育成が進む「課題解決型人材」がさらに活躍し、社会も大きく発展するでしょう。

今、必要なDX(デジタルトランスフォーメーション)

AI以前に7割の企業が老朽化したシステムを使い続けている

2019年のAIはDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく注目された1年でした。AIの予算もDXの文脈で輩出されることが多いようです。また、働き方改革の取り組みの一環でもDXに注目が集まっています。

2019年もAIに関するカンファレンスやライトニングトークで多く語られたのは「データ」を扱う難しさです。

大企業では、部署ごとにデータベースが分断されており、使いたいデータを使いたいときに使えないという問題も多発しています。また、目的にあった活用可能データが社内に蓄積されていないケースも散見されます。

先述の調査結果の紹介では「課題がわからない」という課題が多数を占めていると述べましたが、2番目に多い課題として挙げられているのは、「十分な質・量を備えたデータの取得」です。

▼ベンダー企業、ユーザ企業全体を通してのフェーズごとの課題のアンケート結果

引用:「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」

多くのAI案件を手掛けるベンダー企業に絞って回答を見てみると、さらに「データ不足」の現状が明らかになります。

引用:「平成30年度成果報告書 産業分野における人工知能及びその内の機械学習の活用状況及び人工知能技術の安全性に関する調査」

今の日本では、AIを使いたくてもデータの整備が整っていないという現状があることがわかります。

2000年代からスマートフォンの普及が進み、データは21世紀の石油とも例えられるほど、企業にとって重要な資源になっています。しかし、多くの企業では、AI以前に、急増するビッグデータに対応するデータ基盤や、リアルタイムにデータを可視化し、ビジネスに活かす体制が準備されていません。

AIなどの先端ITの取り組みを始める以前に、社内を横断したデジタル改革を経営陣を取り込んで行い、ユーザに対して提供できる価値を最大化する努力が求められています。

平成30年に経済産業省が発表した内容によれば、国内企業の約7割が老朽化したシステムを使い続けており、デジタルトランスフォーメーションが進んでいる状況とは言えません。このまま、デジタルトランスフォーメーションが進まない場合、2025年には年間12兆円の損失が発生し続けると危惧され「2025年の壁」とも言われています。

2019年は、データ基盤の構築が進んでいない中、かろうじてデータがあった箇所にAIの活用が進んだ1年だったといえるでしょう。しかし、このままでは、根本的な課題が解決するわけではありません。

▼DX(デジタルトランスフォーメーション)について詳しくはこちら

DXを推進する法律が国会で可決

そんな中、政府もデジタルトランスフォーメーションを推し進めるべく、動きを見せています。2019年11月29日には、「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が参議院で可決され、法律が成立しました。

この可決によって、経営における戦略的なシステム利用のあり方を提示する指針を国が策定することが決定しました。

また、この指針を踏まえてDX推進を行う企業を認定する「DX推進指標」を導入し、DXに積極的に取り組む企業を、投資家などのステークホルダーに見える化し、企業のDX改革を後押しします。

2019年は原点回帰の1年

以上のことを振り返ってみると2019年はAI分野にとって原点回帰の1年だったといえるのではないでしょうか。

それは多くの現場で、AI導入の検討が行われ、「まだAIが活用できるレベルに至っていない」という現実を受け止めた方も多く、AI・RPAを含めたDX全体の士気が高まったからです。OCRの領域が確立した1年であることも先述の通りです。

2020年に必要なことは、現場の技術基盤をさらに整えながら、原点に戻り、必要な課題に対して、適材適所でAIの活用を進めていくことです。

1956年にその言葉が生まれて以降、何度も「冬の時代」を迎えてきたAI。

今、ディープラーニングを始めとしたAI技術は、2020年、市場整理が行われ、ある意味「冬の時代」を迎えることになるでしょう。

一方、ディープラーニングなどのAI技術は、適切に使えば、大きなビジネスインパクトを生み出す技術です。「冬の時代」を迎える、迎えないに関わらず、さらに技術が活用され、労働人口減少をはじめとする日本の社会課題解決につながることを期待しています。

2020年、toC領域ではデータの奪い合いが加速

大量のデータを燃料とするAIは、活用する目的にあったデータが豊富に揃っていなければ、プログラムの構築ができないという制約があります。約14億人の人口を抱える中国で展開しているサービスは多くのデータを抱えており、中国では加速度的にAIの開発が盛り上がっています。

▼中国のAIに関して詳しくは以下の記事をご覧ください

日本国内では、GAFAを始めとする世界的なサービスが市場に君臨しており、日本で生まれたデータは、そのまま海外でAI構築のために活用されてしまうという課題を抱えています。また、この課題は日本だけでなくヨーロッパの各国も共通して抱えている課題であり、G20では日本、ヨーロッパ各国を中心に、世界的にデータを流通させる必要があると訴えられたことも印象的です。

▼国際的なデータ流通の重要さについて訴えた世耕弘成経済産業大臣(当時)の講演レポート

合わせて国内ではドメスティックに展開しているLINEやYahoo!に大きな動きがありました。2019年11月18日、ヤフーの親会社であるZホールディングス株式会社と、LINEが東京都内で共同記者会見を開き、両社の経営統合の詳細が発表されました。

Yahoo!は月間利用者数6,743万人、LINEは8,200万人を誇る利用者がいて、さらに両社ともに300万を超えるビジネスクライアントを有しています。国内でも最大級のユーザを抱える両社が統合することにより、ユーザの生活にさらに根付いたサービスを展開していけるのか、注目です。

また、2019年は、ランサーズ、AI inside、スペースマーケット、freee、メドレーなど、機械学習を主な領域としないサービスを抱える企業の上場が承認されました。これらの企業が、蓄積したデータを2020年以降、どのように活用して、企業価値をさらに上げていくのかにも注目です。

さいごに

2019年、AINOWは、数多くのイベントとのパートナーシップ、多くの企業へのインタビュー、寄稿へのご協力により、大きく成長できた1年でした。

AINOWは2019年12月13日時点で、「AI」「人工知能」分野の多くのワードで上位表示を達成しており、前年同時期に比べ2倍以上の成長を果たすことができました。

また、AINOWは2020年4月から始まるテレビ番組「田村淳のAIなう」の企画から出演まで幅広く協力することになりました。TOKYO MX、BS11の2帯で同時配信されるだけでなく、2020年1月からはYouTubeでの配信も行っていく予定です。ぜひご覧いただければ嬉しいです!

今後、AINOWはAI分野のリーディングメディアとして、AIに興味がある人に情報を届けるだけでなく、AIに興味を持ってもらう人を増やす取り組みにも注力していきます。

2020年、さらにAI分野が盛り上がるよう、さらに発信を行ってまいります。

今後もAINOWを何卒よろしくお願いいたします。

2019年12月13日
AINOW編集部 編集長 おざけん

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